2020/02/26
【お城TOPICS】2019年被災した日本100名城・続日本100名城は?
各地に甚大な被害をもたらす災害が多かった昨年。お城も例外ではなく、昨年末のお城EXPOでも被害状況を示したパネルが展示されました。今回は、日本100名城および続日本100名城に向けて日本城郭協会が2019年11月に行ったアンケート結果をもとに、お城の被災状況をまとめます。※すべての情報は2019年11月時点のもので、最新ではありません。
■その数40城。2019年に被災した日本100名城および続日本100名城
「2019年に災害による被害があったか」の質問に「あり」と答えたお城は、なんと40城! いかに災害が猛威を振るったかがわかりますね。被災したお城はこちらです。
■日本100名城編
・根城(青森県八戸市) 5月8日~9日暴風により板塀1基傾倒(国庫補助で改修予定)、野鍛冶工場覆い屋1棟傾倒。台風19号により板塀1基傾倒、野鍜治場覆い屋2棟、工房屋根破損、井戸1基傾倒(修理計画策定中)。一部施設は立入禁止。
・盛岡城(岩手県盛岡市) 堀の法面に生育しているヤナギが倒木。隣接地の石垣(明治期に設置、平成7年改修)一部が崩落。修復は未着手。見学に支障なし。
・仙台城(宮城県仙台市) 台風19号により、倒木5本、崖崩れ4ヶ所。未確認の部分もあり。倒木は場所によっては撤去済み、崖崩れは土砂の除去を実行中。仙台城本丸跡をはじめ通常の見学箇所については支障なし。
・二本松城(福島県二本松市) 法面の崩落2ヶ所、歩道の崩落1ヶ所、赤松の倒木1本。今年災害復旧する予定。一部通路が通行止め。
・鉢形城(埼玉県大里郡) 堀の法面崩落、倒木。修復調整中。見学に支障なし。
・佐倉城(千葉県佐倉市) 土砂崩れ、クラック、倒木。できるところから復旧を進めている。見学に一部支障あり。
・八王子城(東京都八王子市) 御主殿北川斜面・屋外模型広場土砂崩れ。本丸までの公園入口橋崩落、林道土砂による段差。崩落した橋も含め補正予算を組んで対応を検討中。林道及び市管理道(古道)については、御主殿まで問題なく通行できるが、本丸までの林道は都と対応協議中であり、現状通行不可。
・小田原城(神奈川県小田原市) 台風15号により堀を覆う表土に亀裂が入り崩れかけている。現場周辺は立ち入りを制限して、経過観察中。
・上田城(長野県上田市) 南櫓入口前の木柵扉が破損。修復済み。
・松本城(長野県松本市) 総堀の石垣の一部が崩落。文化庁との協議の準備中。見学に支障なし。
・岐阜城(岐阜県岐阜市) 9月落雷により緊急地震速報の故障。復旧済。
・山中城(静岡県三島市) 台風19号により、法面の崩落多数、遊歩道から流れた土砂により田ノ尻池の1/3が埋まった。令和元年度は被害が広がらないためにブルーシートを掛ける保護作業を行う。令和2年度以降は復旧工事を実施予定。迂回路利用で見学可能。
・駿府城(静岡県静岡市) 台風19号により、駿府公園坤櫓の3層部分の外壁に設置していた定点カメラが故障し、映像が映らなくなった。業者に原因分析と見積を依頼中。
・掛川城(静岡県掛川市) 塀の漆喰が落ち、木舞があらわになっている。数ヶ所崩落している。応急処置としてビニールシート(白)で覆っており、今後の見通しについては、令和2年度専門家による調査に基づき中長期の修繕計画の策定がある。景観を損ねているため写真を撮る際に支障あり。
・伊賀上野城(三重県伊賀市) 北面一層及び一層二層の破風の下面。城壁の一部の白壁(漆喰)の剥離、一、二階の雨漏り。修復の見積作業中。見学に支障なし。
・大阪城(大阪府大阪市) 天守閣の銅板瓦(屋根)が3枚剥がれた。城郭内になる施設MIRAIZA Osaka-joと大阪城音楽堂にて一部雨漏りあり。修復済み。
・明石城(兵庫県明石市) 坤櫓の引き戸の漆喰の剥離。今年中に修復予定。見学に支障なし。
・福山城(広島県福山市) 天守屋根の避雷針の1本が台風により折れた。修復済み。
・郡山城(広島県安芸高田市) 倒木(数本)。撤去済み。
・萩城(山口県萩市) 8月末の前線に伴う大雨により、外堀整備箇所の法面土砂が幅5m・高さ1.5m程度にわたり崩落、指月山南側斜面の土砂が幅10m・高さ10程度にわたり崩落。いずれの修復も令和2年度以降での実施を検討中。見学に支障なし。
・宇和島城(愛媛県宇和島市) 倒木及び隣接私有地に落枝。対応済み。
・佐賀城(佐賀県佐賀市) 本丸御殿の瓦1枚が台風で落下。復旧済。
■続日本100名城編
・三春城(福島県田村郡) 何か所か小規模な土砂崩れあり。
・笠間城(茨城県笠間市) 倒木2本。復旧済み。
・菅谷館(埼玉県比企郡) 倒木による通路の遮断。復旧済み。
・本佐倉城(千葉県印旛郡) 斜面崩落・倒木。立入禁止措置にし、順次できるところから復旧作業を進めている。城山(Ⅰ郭)~奥の山(Ⅱ郭)~倉址(Ⅲ郭)~Ⅳ郭~東山・東山馬場(Ⅴ郭)は見学可。その他の部分は一部立ち入り禁止区域あり。今後現状復旧を進めていく。
・滝山城(東京都八王子市) 倒木、地滑りの発生。対応中。見学は可能だが十分注意が必要。
・小机城(神奈川県横浜市) 樹木の倒木等。目立ったものについては撤去完了。小さいものについても順次対応予定。見学に支障なし。
・石垣山城(神奈川県小田原市) 倒木、枝折れなど。緊急性のあるものから順に対応中。見学に支障なし。
・要害山城(山梨県甲府市)ハイキングコースに複数の倒木。対応協議中。倒木への注意が必要。
・美濃金山城(岐阜県可児市) 大堀切に倒木。伐採済み。
・興国寺城(静岡県沼津市) 台風による倒木で見学路の一部が通行不可になった。撤去済。
・諏訪原城(静岡県島田市) 曲輪や堀内に倒木。見学路に接した部分は撤去済み。
・福知山城(京都府福知山市) 城壁の漆喰約2㎡が剥離。修復済み。
・一宮城(徳島県徳島市) 倒木2~3本による登山道の封鎖。復旧済。
・基肄城(佐賀県三養基郡、福岡県筑紫野市) 遺構(土塁)の下部の表層流出、本体に被害なし。平成30(2018)年7月豪雨による基山町の城門~城内の被災箇所の復旧がなされておらず、筑紫野市所在の東北門への見学ルートは使えない状況。復旧は被害が甚大なため、見込みがたっていない。
・金田城(長崎県対馬市) 登山道(旧軍道)、園路の表土(土砂)流出(部分的に)。令和2年(2020)1~3月中に復旧の見込み。見学の際は、路面の表土が流された部分など場所によっては足元に注意が必要。
・福江城(長崎県五島市) 石垣の一部破損。現状のまま。見学に支障なし。
・佐土原城(宮崎県宮崎市) 城内北側に位置する、通称弁天山の東斜面が崩落し、約30m×30mの範囲にわたって土砂崩れ発生。修復作業なし。平成30年(2018)9月の台風24号による立入禁止区域あり。
・志布志城(鹿児島県志布志市) 曲輪斜面からの倒木・少量の土砂流出。一部倒木以外は復旧済み。倒木により一部園路の通行止めあり。
※アンケート結果の詳細については、日本城郭協会のHPをご覧ください。
いかがでしょうか。上記以外でもなんらかの被害を受けているお城がありますので、実際には40城以上にのぼると思われます。また、鳥取城、津山城、高松城、丸亀城、熊本城、田丸城など、昨年は被害がなかったものの、それ以前の災害で受けた被害の復旧を進めているお城もあります。
そう考えると、今お城が残っているのは「お城を残そう、復元しよう」と陰に日向に尽力している人々がいるからだ、と改めて思い至ります。被災したお城への募金をよびかけているお城もあり、お城同士の相互扶助も見逃せません。お城を愛する者として、自分のできる援助をしていきたいですね。
執筆/城びと編集部