2020/10/12
お城にゆかりの御城印・御朱印・武将印・御城印帳 【九州・沖縄編】豊かな自然環境と古代から近世まで時代も多彩な御城印
近年、登城の記念となる「御城印」が注目を集めています。多数の書籍が刊行されたり、テレビなどでも取り上げられたりすることもしばしば。どのような特徴の「御城印」が、どこで購入できるのかなど、一城ずつ城びと編集部が丁寧にご紹介! 今回は【九州・沖縄編】。古代山城や南九州特有のシラスを利用した城、沖縄のグスク文化など、独特の城が残る九州・沖縄には、どのような御城印があるのでしょうか…!?
御城印って? 九州・沖縄地方ではどこのお城が出しているの? その特徴は?
九州・沖縄地方の御城印の一部
「御城印」とは、 半紙(和紙)に城名やゆかりある城主の家紋や花押などの印を押したもの。お寺や神社でいただける御朱印を参考にして作られ始めて、今では多くのお城で登城の記念として頒布されています。「御城印」以外にも、「登閣記念印章」「登城記念御朱印」「城郭符」「御城朱印」など、呼び方は城によってさまざまです(本記事では「御城印」で統一します)。
広大で多様な自然環境に加え、古代から近世まで様々な時代にちなんだ御城印がそろう九州。つい先日、令和2年9月20日には、ついに沖縄初の御城印も登場しました! どんなお城のどんな御城印があるのか、見ていきましょう! ※掲載内容は、令和4年(2022)5月19日更新の情報です。掲載以外でも御城印を領布しているお城をご存知でしたら、編集部までご連絡ください。(城郭名は、100名城、続100名城に続き、北から南、もしくは東から西の順に掲載。掲載の許可を得られなかったお城の御城印はご紹介しておりませんので、ご了承ください)
【沖縄地方の御城印】
<沖縄県>
中城城/首里城
【九州地方の御城印】
<福岡県>
■名軍師・黒田官兵衛が手掛けた巨大城郭「福岡城」
令和元年(2019)10月から約1か月間開催の福岡城の秋祭り「福岡城下町サムライフェア~秋の陣~」にて、イベント参加者や物販購入者に無料で1000部限定配布。
藩主・黒田家の家紋「藤巴紋」にちなんで藤の花をイメージした藤色の背景に、福岡城を築城した初代藩主である黒田長政がかぶっていた黒漆塗桃形大水牛脇立兜(くろうるしぬりももなりだいすいぎゅうかぶと)を配置。
花押は、長政の書状からとった直筆のものです。
福岡城(福岡県福岡市)
領布場所:福岡城跡周辺エリア(南丸多聞櫓、福岡城むかし探訪館、鴻臚館跡展示館、三の丸スクエア)
価格:イベント参加者等に無料配布。イベント終了後から福岡城内で有料販売予定。
▼福岡城に関する記事はこちら
■細川忠興が築城した「唐造り」の名城「小倉城」
天守閣入城者限定の「登城記念」版(左)と、小倉城に来城した記念の「来城記念」版(右)の2種類あります。昭和34年(1959)に再建された際に天守閣入り口に揮毫された字を御城印の「小倉城」に採用しています。家紋は細川・小笠原両家の家紋を基に新たにデザインされたもの。奉書舞鶴(特殊紙)を使用。
▼令和2年(2020年)9月16日から10月22日まで小倉城で開催される『かずら筆の書家・下枝董村 展』にあわせて、令和2年(2020)9月16日より、かずら筆で城郭名を書いた御城印が1000枚の数量限定で頒布されました。かずら筆とは、かずらというつるを叩き、ほぐして作った筆のこと。小倉藩士で、10代小倉藩主の書道師範も務めた下枝董村(しもえだとうそん)が愛用したそうです。御城印の揮毫は、かずら筆の第一人者である書家・棚田看山氏。
ご担当の方より「高級台紙に半紙に書いたように印刷した文字を手作業で貼り合わせた、手の込んだ作品となっております。是非、額に入れて飾っていただきたい御城印となっております」とのメッセージをいただきました。文字の躍動感を味わうため、あえて城郭名以外をすべて省いた、他にはない御城印です。
▼以前頒布されて人気を博したプレミアム版が再登場です! 書家であり芸術家でもある杉田廣貴(こうき)氏の上品かつ芯の強い文字が金色に輝く特別な一枚。
▼【完売】令和2年(2020)12月4日から、プレミアムゴールド版が1000部の枚数限定で登場しました。画像ではあまり伝わりませんが、現物を見るとその輝きに驚くほど、金色がまぶしい豪華版です! ご担当の方よりみなさまへメッセージをいただきました。
「小倉城のシンボルである「迎え虎」の迫力と、ダイナミックな杉田廣貴さんの書と、金色の華やかさ、全てのバランスを取るのが大変難しかったのですが、何度も何度も試作を作り、ようやく完成しました! 見る角度で、全く表情の変わる「プレミアムゴールド」を、ぜひお楽しみください!」
「小倉城のシンボルである「迎え虎」の迫力と、ダイナミックな杉田廣貴さんの書と、金色の華やかさ、全てのバランスを取るのが大変難しかったのですが、何度も何度も試作を作り、ようやく完成しました! 見る角度で、全く表情の変わる「プレミアムゴールド」を、ぜひお楽しみください!」
▼「迎え虎」には「送り虎」がいなければ! 小倉城天天守閣2階に飾ってある「送り虎」をモチーフにしたプレミアムゴールド版が発売中! 「迎え虎」版と同じく、杉田廣貴氏による揮毫。
頒布場所:小倉城しろテラス
価格:かずら筆版・・・700円(税込)、プレミアム版・・・500円(税込)、プレミアムゴールド版(「迎え虎」版は完売・「送り虎」版のみ)・・・1,000円(税込)
※通信販売サイト(https://shop.kitakyushu-dmo.jp/)でも頒布中。
▼令和3年(2021)1月13日に福岡県に緊急事態宣言が出たことを受け、1月18日から「令和3年版籠城印」が頒布されました! 令和2年(2020)にも「緊急事態宣言中」、宣言が解除されてからは「外出自粛中」が頒布されましたが、今回は再び「緊急事態宣言中」となっています。地紋は未来永劫の平安を祈る吉祥紋・青海波。現地での販売はなく、緊急事態宣言発令中に通信販売サイトのみで販売されます。お城に行かれなくてもお城を応援できるいい機会ですね!
領布場所:小倉城通信販売サイト(https://shop.kitakyushu-dmo.jp/)
価格:500円(税込)
▶小倉城主の細川忠興や正室の細川ガラシャ、また小倉藩にゆかりある宮本武蔵などの”武将印”も頒布中。詳しくは「最近気になる「武将印」を勝手に特集しちゃいます!」(https://shirobito.jp/article/994)をご覧ください。
▼小倉城に関する記事はこちら
<佐賀県>
■『葉隠』で有名な鍋島氏の城「佐賀城」
佐賀藩祖・鍋島直茂が大友軍を打ち破った今山の合戦以降、戦勝吉例の家紋として使用した「杏葉(ぎょうよう)」を中央に大きく配置。
右下に揮毫者である佐賀県出身の書家・江島史織氏の名前が入っています。
佐賀城(佐賀県佐賀市)
領布場所:佐賀城本丸歴史館内ミュージアムショップ
価格:300円(税込)
▼佐賀城に関する記事はこちら
■秀吉の朝鮮出兵のために築かれた総石垣造りの大城郭「名護屋城」
名護屋城跡出土の「五七桐文飾瓦」(ごしちきりもんかざりがわら)の拓本をデザイン。「五七桐紋」は、秀吉が豊臣を名乗るようになってから後陽成天皇から与えられた家紋。
名護屋城(佐賀県唐津市)
領布場所:佐賀県立名護屋城博物館の受付
価格:300円(税込)
名護屋城では、オリジナル御城印帳も発売中! 詳しくは「続々増加中!お城や城下町で買える御城印帳大特集!」をチェック!
仕様:40ページ(片面PPポケット付き)/保護カバー付き
発売場所:名護屋城博物館受付カウンター
価格:2,200円(税込)
▼名護屋城に関する記事はこちら
■海に浮かぶかのような姿が美しい海城「唐津城」
唐津城の歴代藩主(6代)の家紋をあしらった御城印。右上から初代・寺沢氏の「陣幕」、2代・大久保氏の「大久保藤」、3代・松平氏の「蔦」、左上にいき4代・土井氏の「水車」、5代・水野氏の「沢瀉(おもだか)」、6代・小笠原氏の「三階菱」。「唐津城」の文字は唐津城の二の丸にある早稲田佐賀高校の書道部による揮毫。平成30年(2018)12月から領布開始。
はがきサイズの和紙に印刷。日付を記入し、「唐津城天守閣の印」を押印して渡される。収益の半分程度が熊本城の復興支援に寄付されるそう。
▼唐津城に関する記事はこちら
<長崎県>
■山鹿流で築かれた松浦氏の城「平戸城」
元禄17年(1704)に5代平戸藩主・松浦棟(まつらたかし)が築き始め、享保3年(1718)6代・篤信(あつのぶ)の時代に完成した平戸城。4代・鎮信(しげのぶ)が軍学者・山鹿素行(やまがそこう)と親しく、素行の助言を受けて山鹿流で築城されました。令和3年(2021)4月には、懐柔櫓が日本初の常設宿泊施設として生まれ変わりました。
御城印には、松浦氏の家紋「三つ星」と「梶の葉」を配置。書は、文部科学大臣賞はじめ、書道日本一を12回も受賞されている長崎出身の書道家・樋口友紀(晟瑤・せいよう)さんによるもの。台紙は奉書紙。令和3年(2021)7月31日発売。
平戸城(長崎県平戸市)
領布場所:平戸城天守閣窓口
頒布元:株式会社狼煙
価格:350円(税込)
▼平戸城に関する記事はこちら
■安土桃山様式の壮麗な天守閣が映える「島原城」
奈良五城から転封した松倉文豊後守重政が寛永元年(1624)頃に完成させたと言われている島原城。令和6年(2024)に築城400年を迎えるにあたり、御城印の頒布を開始。通常版(上)と「島原城築城400年記念御城印」(下)の2種類があり、どちらも文字は福岡在住の書道家・井上龍一郎氏のもので、用紙は長崎市平和公園に手向けられた千羽鶴を使用した再生紙。松倉氏の「九曜」、高力氏の「四方木瓜(しほうもっこう)」、松平氏の「重ね扇」、戸田氏の「六つ星」と歴代城主の家紋も配置。通常版は家紋と島原城天守閣が印刷されています。
記念御城印は令和2年(2020)4月6日「城の日」から令和6年(2024)までの5年間、毎年「城の日」を初日として400枚ずつ限定で頒布。観賞用の専用台紙つきで、専用台紙の内側には毎年異なる島原城内の古地図があしらわれます。ちなみに令和2年(2020)版は、「嶋原之城図」国立国会図書館所蔵。家紋は購入者が直接押印。記念御城印の売上の一部は公益財団法人長崎平和推進協会の平和関連事業へ寄付されます。
島原城(長崎県島原市)
領布場所:島原城天守閣券売所
価格:通常版 300円(税込)、島原城築城400年記念御城印及び通常版セット 1,500円(税込)
※島原城入館券購入者1名につき1枚販売。
▼島原城に関する記事はこちら
■NHKの第4弾「最強の城」に選ばれた絶景の古代山城「金田城」
浅茅湾の南岸に突き出た標高275mの山城・金田城。
中央には、石積み越しに見える海の景観や谷の風景のスタンプが配置されていますが、
よく見ると山の斜面の石塁などがスタンプの円い線になっています。
ちなみに、この金田城の御城印は、城びとがデザイン・制作を担当させていただきました!
金田城(長崎県対馬市)
領布場所:観光情報館 ふれあい処つしま
価格:300 円(税込)
※購入者は観光案内所備え付けの「登城記念」印を押して持ち帰ることができます。
▼金田城に関する記事はこちら
<熊本県>
■復興城主増加中!築城の名手・加藤清正が手掛けた名城「熊本城」
令和元年(2019)10月から始まった特別公開第1弾、天守閣の大天守外観復旧を記念して作成。
配置されている家紋は、熊本城を築城した加藤家家紋の「蛇の目」と、加藤家の後に熊本藩を治めた細川家家紋「九曜」。
左下には加藤清正の座右の銘「履道応乾」も押印されています。
■稲葉氏が15代にわたって居城とし、臼杵藩を治めた「臼杵城」
臼杵城の前身である「丹生島(にうじま)城」を築いた大友氏の家紋「抱き杏葉」版(上左)と、江戸時代に城主をつとめた稲葉氏の家紋「隅切り折敷に三文字」版(上右)、さらには両家の家紋版(下)の3種類。「臼杵城跡」の文字は大分県を代表する書家で、臼杵市在住の大塚静峰氏によるもの。「城」の文字が中国古代の書体で表現されているのは、臼杵城の御城印だけです!
臼杵城(大分県臼杵市)
領布場所:臼杵市観光交流プラザ
価格:大友氏家紋版・稲葉氏家紋版 各300円(税込)、大友・稲葉両家版 500円(税込)
▼臼杵城に関する記事はこちら
■黒田官兵衛が築いた日本三大海城の一つ「中津城」
「登城記念符」と呼称。通常版(上)と限定版(下)があり、通常版は、150年あまり城主として中津城に居住した奥平家の家紋「奥平団扇」と、中津城のシルエットがデザインされています。「登城記念符」の文字は印刷ではなく手書き。
限定版には、築城主である黒田官兵衛の名言に黒田家家紋「藤巴」と中津城のシルエットが配されており、月30枚の限定販売です。
中津城(大分県中津市)
領布場所:中津城天守
価格:通常版300円(税込)・限定版800円(税込)
※限定版は月30枚の限定販売
▼中津城に関する記事はこちら
<鹿児島県>
■シラス台地を利用して築かれた「清色城」
独特の書体が味わい深い御城印。中央の家紋は、城主を務めた入来院(いりきいん)氏の「丸に十字」(「菊花」との説もあり)。売り上げの一部はお城の保存活動資金に充てられます。
清色城(鹿児島県薩摩川内市)
領布場所:入来麓観光案内所
価格:300円(税込)
■「島津の退き口」で武勇伝を全国に轟かせた島津豊久が生まれた城「串木野城」
串木野城址の通称「亀ヶ城」から、亀の甲羅に島津氏の家紋「丸に十の字」を組み合わせたデザイン。
令和元年(2019)6月に、串木野城址を含む麓地区は「日本遺産」に認定されました。
串木野城(鹿児島県いちき串木野市)
領布場所:いちき串木野市総合観光案内所
販売価格:300円(税込)
【沖縄地方の御城印】
<沖縄県>
■琉球石灰岩が描く優美なカーブと固い守りを持つ世界遺産の城「中城(なかぐすく)城」
世界遺産「琉球王国のグスク及び関連遺産群」の一つで、自然の岩石や地形を利用して造られた左右対称の城壁や、野面積、布積、相方積とさまざまな技法で築かれた石垣を見ることができる中城城。固さとは裏腹に、琉球石灰岩が描くカーブは優美そのもの。
沖縄初の御城印は、通常版(左)と、世界遺産登録20周年記念版(右)の2種類。2種類ともに琉球和紙が使われており、通常版はみつまた紙、記念版は芭蕉紙です。芭蕉紙は明治時代にいったん技術の継承が途絶えてしまいましたが、復興され、現在に至ります。御城印の用紙は復興させた勝公彦氏の流れを汲む安慶名(あげな)清氏による手すき。筆耕者は、「世界遺産登録20周年を村民みんなでお祝いしよう!」という意図から中城村で公募されました。
記念版は初回生産200部限定(手作りのため増産予定未定)で、なんと、中城城の入城券つき!
中城城(沖縄県中頭郡中城村)
領布場所:中城城跡、中城村観光協会
価格:記念版800円(税込。中城城入城券つき)、通常版500円(税込)
中城城ではオリジナル御城印帳も販売中! 最後の城主で築城の天才といわれる護佐丸が、当時最高レベルの石積み技法を用いて築いた三の郭やアーチ門のほか、中城城跡に自生するツワブキなどの自然や風景を、紅型テイストで描いた鮮やかな一冊。くわしくは「続々増加中!お城や城下町で買える御城印帳大特集!」をご覧ください。
仕様:40ページ(片面PPポケット付き)/保護カバー付き
発売場所:中城城跡、中城村観光協会
価格:2,750円(税込)
※「なかぐすく商店」(https://nakakanko.stores.jp/)でインターネット販売にも対応中。
▼中城城に関する記事:
■450年間王城であり続けた「首里城」
(左)初回販売限定のロゴ入り、(右)通常版
首里城は、1429年に尚巴志(しょうはし)が首都を首里に定めて以降、明治政府に城が明け渡される1879年まで、450年間にわたり琉球王国の王城でした。
御城印の題字は、書をこよなく愛したことで知られる尚育王(第二尚氏王 18代国王)の遺墨を参考に製作されました。中央には、琉球王国時代の琉球王府の公印「首里之印」を再現。その下には、令和の復元で使用される予定の久志間切弁柄の色をイメージした正殿が広がります。台紙の「三椏(みつまた)紙」は琉球紙のひとつで、首里の紙すき職人が手作りしたもの。初回販売分には左上に「沖縄本土復帰50周年記念ロゴ」入り(画像左)。
領布場所:ミュージアムショップ球陽 首里城公園 有料区域「女官居室」
頒布元:首里城公園管理センター
価格:600円(税込)※売り上げの一部は「首里城基金」及び「首里城未来基金」へ寄付。
※2022年5月15日発売
※現在、一人につき3枚までの販売
※現地販売のみ
▼首里城に関する記事:昭和お城ヒストリー 〜天守再建に懸けた情熱〜(https://shirobito.jp/article/942)
▼首里城のオリジナルポケット式御城印帳も発売中! 詳しくは、「続々増加中!お城や城下町で買える御城印帳大特集!(https://shirobito.jp/article/1119#syurijyo)」をご覧ください。
いかがでしたか? 登城の記念に、はたまたちょっとしたお土産にも最適!な御城印、ぜひコレクションしてみてはいかがでしょうか。
もちろん、ほかのエリアにも各お城のシンボルや城下のこだわりなどが活かされた御城印が多数!
ほかのエリアをチェックするならこちら!
執筆・写真/かみゆ (「歴史(はエンタテインメント!」をモットーに、ポップな媒体から専門書まで編集制作を手がける歴史コンテンツメーカー。)&城びと編集部
協力:若狭国吉城歴史資料館館長 大野康弘さん