2018/06/20
車使わず9日で九州平定!? 「続日本100名城」攻略モデルプラン!(中編)
公共の交通機関を使用して効率よく九州の続日本100名城をめぐるプラン。今回は、旅の4日目からスタートです。宮崎県の佐土原城から始まり、鹿児島県の志布志城・知覧城、熊本県の八代城・鞠智城、さらには長崎県の原城跡まで機動力が求められる3日間。九州のダイナミックさにふれながら、鉄道、バス、フェリーを駆使して続日本100名城を攻略していきましょう!NHK大河ドラマ『西郷どん』のロケ地、知覧の武家屋敷庭園群もお見逃しなく。(※2021年7月5日更新)
知覧武家屋敷庭園群にはNHK大河ドラマ『西郷どん』のロケ地が点在している
4日目:日南海岸から大隅半島、薩摩半島まで一気に駆ける!
垂水港から鴨池港へと渡るフェリーでは迫力満点の桜島が見られる
<DAY4>
宮崎駅
↓「宮崎駅」停留所から宮崎交通バス40分(770円)「交流センター前」徒歩約5分
佐土原城
↓宮崎交通バス40分(770円)
宮崎駅
↓「宮崎」駅からJR日南線約2時間30分(2170円)「志布志」駅から徒歩約20分
志布志城
↓徒歩約20分
志布志駅
↓「志布志駅前」停留所から鹿児島交通バス1時間50分(1240円)
※最終は18時51分発
垂水港
↓「垂水港」から鴨池・垂水フェリー40分(500円)
※最終は21時(2021年2月〜当面の間は臨時臨時ダイヤ。利用の際は事前にご確認ください)
鴨池港
↓「鴨池港」停留所から鹿児島交通バス20分(190円)
鹿児島中央駅(鹿児島泊)
この日1城目の佐土原城へは、JR佐土原駅から路線バスでもアクセスできますが、今回は宿泊地の選択肢を考え宮崎駅からスタート。路線バスを使って宮崎駅と佐土原城を往復し、その後は鉄道を利用して志布志城へ。最寄りの志布志駅はJR日南線の終点なので、これより先は鉄道で行くことはできません。
路線バスで垂水港を目指し、フェリーで鹿児島湾(錦江湾)を横断し、大隅半島から薩摩半島へ渡ります。薩摩半島側の鴨池港まで着けば、あとは路線バスに乗り鹿児島随一のターミナル鹿児島中央駅へと向かいます。翌日に備え、宿泊は鹿児島中央駅周辺の宿がおすすめ。翌朝、西郷隆盛ゆかりの城山に登って、桜島と錦江湾が広がる雄大な景色を見るのも気持ちいいですよ。
■佐土原城(宮崎県宮崎市)
現在は資料館になっている二の丸跡(鶴松館)
本丸跡に残る天守台は「日本最南端」。残念ながら、江戸時代初期に取り壊され、発掘調査の結果により、石材はほぼ持ち去られていることが判明しています。
室町時代の頃からあった城は天文6年(1537)に焼失しますが、日向地方を治めた伊東義祐(よしすけ)が再建し、繁栄しました。その後、島津氏に奪われ、豊臣秀吉の九州平定後も島津氏の領有が認められました。江戸時代には薩摩藩の支藩として佐土原藩となり、島津氏の一族が明治維新まで治めました。
■志布志城(鹿児島県志布志市)
志布志城跡から志布志湾と町並みを望む
大隅半島に位置し、4つの城郭から構成される大規模な山城。シラス(火砕流堆積物)台地を掘削して造られた空堀も目を引きます。城下には武家屋敷群や庭園が数多く残っており、散策が楽しめます。
南北朝時代の記録に登場しますが、築城年代は不明です。肝付(きもつき)氏や、島津氏の一族・新納氏など、城主が様々に入れ替わりながら、豊臣秀吉の九州平定後に廃城に。この時点では建物を壊さず、元和元年(1615)に出された一国一城令で、廃城になったと考えられています。
5日目:大スケールを感じながら鹿児島と熊本を縦断
<DAY5>
鹿児島中央駅
↓「鹿児島中央駅」停留所から鹿児島交通バス1時間14分(890円)「中郡(南九州市)」停留所下車徒歩約15分
知覧城
↓「中郡(南九州市)」停留所から鹿児島交通バス1時間14分(890円)
鹿児島中央駅
↓JR鹿児島本線50分(950円)
川内駅
↓肥薩おれんじ鉄道2時間30分(2670円)
八代駅
↓「八代」駅から九州産交バス10分(160 円)「八代宮前」下車すぐ
八代城
↓「八代」駅からJR鹿児島本線40分(760円)
熊本駅(熊本駅または熊本交通センター前泊)
鹿児島中央駅を起点に路線バスで知覧城まで往復。鹿児島中央駅に戻ってからは、長い鉄道移動の始まりです。JR鹿児島本線で川内駅まで移動し、肥薩おれんじ鉄道に乗り換えおよそ3時間30分ほどで八代駅へ。鹿児島中央駅から九州新幹線に乗車し、新水俣駅または新八代駅で乗り換える方法もあります。八代駅から路線バスを利用して八代城を攻略し、翌日に備えて熊本駅まで移動。熊本駅周辺か、バスターミナルがあり繁華街が広がる「熊本交通センター」近くで宿泊するのが便利。
熊本駅から熊本交通センター前までは、路線バスや市電で約10分。どちらも熊本城にアクセスしやすい場所なので、夜や翌朝に、復興が進む熊本城を見学されてみてはいかがでしょうか?
知覧城へのアクセスにはバスを利用。砂風呂で有名な指宿温泉も近い
■知覧城(鹿児島県南九州市)
シラス台地上にある知覧城本丸跡には石碑が立つ
NHK大河ドラマ『西郷どん』のロケ地としても知られる武家屋敷群が有名。通りの両側に正方形や長方形に切り出した切石や、丸みを帯びた玉石が積まれ、内側は屋敷地となっており、中には庭園を見学できる屋敷もあります。4つの曲輪から構成される山城には、鹿児島特有のシラス台地の浸食谷を天然の空堀として利用。迫力ある大空堀も見事です。
また、知覧と言えば第二次世界大戦末期に陸軍特攻基地が置かれました。「知覧特攻平和会館」にも立ち寄ってみてはいかがでしょうか。
■八代城(熊本県八代市)
八代城本丸大天守の石垣は創建時のものと考えられ、熊本城より古い部分もある
元和8年(1622)に築城され、城下町とともに江戸時代の姿をよくとどめています。
創建時のものと考えられる本丸大天守台の石垣はひときわ高さがあり、かつては四層の大天守が立っていたそう。本丸跡は八代宮として、明治期に創建され、石垣の一部が撤去されて参道となりました。細川三斎(忠興)作庭の庭園跡が残るなど、みどころがたくさんあります。
6日目:アクセス難易度の高い2城を確実に攻略
<DAY6>
熊本駅
↓熊本電鉄バス「菊池プラザ」行き約1時間20分(910円)
菊池プラザ停留所
↓タクシー5分
鞠智城
↓タクシー5分
菊池プラザ停留所
↓熊本電鉄バス「熊本駅」停留所行き1時間20分(910円)
熊本駅
↓連絡バス「熊本港」停留所行き30分(490円)
熊本港
↓熊本フェリー・オーシャンアロー30分(1100円)
島原港
↓島鉄バス55分(910円)
原城前停留所※17時頃着
↓徒歩約10分
原城跡(※原城真砂温泉泊)
鞠智城を早めの時間に攻略するのがポイントです。公共の交通機関でのアクセスができない鞠智城へは、熊本駅または熊本交通センター前から、路線バスに乗車。「菊地プラザ」停留所で下車し、タクシーを利用するのがおすすめ。歩くと片道約4kmの起伏のある道ですし、ここで時間を取ると以降の予定に影響が出てきます。
熊本に戻った後は、熊本駅から連絡バスで熊本港へ移動し、フェリーで島原港を目指します。熊本フェリー・オーシャンアローを利用すれば、島原湾を約30分で横断して島原半島に上陸。路線バスで原城跡へ。熊本港を13時に発ったとしても16時過ぎの原城前到着。続きの旅も路線バスを利用するので、この日は原城跡近くに宿泊するのが賢明です。「原城温泉 真砂」という温泉付きの宿泊施設のほか、城好きなら一度は泊まってみたい「旅館 城」などがあります。
熊本港から島原港まで高速船で30分。船上からは島原城が見える
■鞠智城(熊本県山鹿市)
目を引くのは八角形をした独特の建物。「八角形鼓楼」とよばれ高さ約15.8m。1日目に訪城した基肄城(続日本100名城)や大野城(日本100名城)とほぼ同時期に造られたと推定される古代山城のひとつ。大宰府の防衛を担い、食料や物資の補給基地としての役割もあったと考えられます。起点となる菊池プラザから約1kmのところに菊池観光協会があり、周辺には立ち寄り湯も楽しめる菊池温泉があります。「美肌の湯」として有名ですので、もしバスを待つ時間に余裕ができれば浸かってみてください。
鞠智城のシンボル的存在である八角形鼓楼
■原城(長崎県南島原市)
原城本丸跡に立つ天草四郎像。作者は、南島原市出身の北村西望。長崎の平和記念像なども手がけた
世界遺産候補「長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産」の構成資産のひとつ。寛永14年(1637)に起きた島原・天草一揆で天草四郎ら約3万人が籠城。一揆鎮圧後は、二度と一揆を起こせないように、城は徹底的に破壊されました。
慶長4年(1599)からキリシタン大名・有馬晴信が築城。ちなみに、原城跡のある南島原市は毎年「南島原市平成遣欧少年使節団」をイタリアに派遣し、交流を重ねています。原城跡からスタンプ設置場所の有馬キリシタン遺産記念館まで約2kmあるので注意が必要です。
※時刻やアクセス、料金につきましては、事前に関係施設や交通機関で最新情報をご確認いただくのをおすすめします。所要時間は乗る列車によって差が生じます。
※スタンプ設置場所は事前にご確認ください。
「車使わず9日で九州平定!?「続日本100名城」攻略モデルプラン!」
執筆・写真/藪内成基(やぶうちしげき)
奈良県出身。30代の城愛好家。国内旅行業務取扱管理者。出版社にて旅行雑誌『ノジュール』などを編集。退職し九州の城下町に移住。観光PRやガイドの傍ら、「城と暮らし」をテーマに執筆・撮影。『地域人』(大正大学出版会)など。海外含め訪問城は500以上。知識ゼロで楽しめる城の情報発信を目指す。
※歴史的事実や城郭情報などは、各市町村など、自治体や城郭が発信している情報(パンフレット、自治体のWEBサイト等)を参考にしています