この間から、天守論争の記事を何度か投稿させていただいてすいません。今回はまた地元新聞に、作家「澤宮優」さんの、福岡城天守議論に対する感想のコラムが掲載されていたので御紹介します。この方の著書に「天守のない城をゆく:城の楽しみ方、活かし方」という本があり、私もまだ読んではいませんが、天守のある城は天守に目が行きがちだが、天守は城の一要素に過ぎず他の部分も見て欲しい、また天守のない城にも魅力はありますと、彦根城や金沢城などを例に上げ、縄張りや石垣や現存櫓などにも目を向ける事の大切さや、それを活かした事例などが記事に語られていました(写真⑩)。なるほどな~と思い、今度その本を読んでみたいと思いました。
ここからは私の個人的意見ですいません。
福岡城は100名城なので、今まで訪れた事がある城びと諸氏はたくさんいると思います。その方々にお尋ねします。皆さんは福岡城を訪れて、その時どう思われたでしょうか? この広大な敷地に再建された下之橋御門と現存の天守台と多聞櫓、城の東側(打込接)と西側(長政時代の野面積)で異なる石垣、ぐるりと取り囲む広大な堀には梅・桜・水仙・蓮・花菖蒲などの季節の花々が咲き(現在の花写真⑤⑥)、遣唐使時代の接待施設「鴻臚館」、官兵衛隠居の地「御鷹屋敷跡」、移築中の潮見櫓などと見所はたくさんあります。しかし、どこに何があるのかわかりにくく、歴史的な品々が展示されているところもなく、確かに大きなお城に来たという実感は湧いても、何かちょっと物足りなさを感じたのではないでしょうか? 城内には「むかし探訪館」(100名城スタンプ場所)がありますが、小さな小屋に模型があるだけ(え!たったこれだけ?)という感じです(写真⑦)。城の説明や見所のパンフレットすら充実していません。だから観光客も来ては天守台に登っただけで、わけがわからないまますぐに帰り、結局は大宰府の方が喜ばれる人気スポットになっています。
福岡城から北西に2km離れた福岡タワーのそばに、「福岡市博物館」という立派な市の施設があります。ここを訪れると、福岡の歴史(金印発見や山笠の歴史など)から、福岡城の歴史や黒田家所有の数々の貴重な品々など、多くを見て学ぶ事ができます(写真⑧⑨)。ここはオススメですので是非来られたら立ち寄って下さい。しかし今までは、福岡城を訪れても博物館がある事を知っている人は、ほとんどいないのではないかと思います。また知っていてもこんなに離れていては、時間的にもなかなか行けないでしょう。
市の中心部である天神から多くの方々が徒歩で通る登城ルート、上之橋から天守台までの登城路沿いには、裁判所跡地・平和台球場跡地・少年ラクビーやテニスのグランドなどがあり、城の中でもあまり見栄えがいい場所とは言えませんでした。ここは当時「東出丸」と呼ばれたエリアで、最近「セントラルパーク構想」という福岡市の開発計画が始まって整備が少しずつ進んでいます。
その中で、先月新たに上之橋御門跡の登城路が整備され、福岡城の玄関口としてのイメージアップが計られています(写真①)。また平和台球場跡地には鴻臚館の復元整備計画も策定されています。それはそれでうれしいのですが、裁判所跡地はインバウント観光客用の数十台分の大型バスの大駐車場が現在整備され、さらに高層ホテルの建設まで予定されているようです(写真②)。
私はこのあたり一帯には、福岡市博物館を移転し、そして見所パンフレットを充実させ、その見所をめぐる遊歩道を歩きやすいよう整備して、歴史を正しく学んでかつ楽しめる博物館と一体化した城址公園にしてほしいなと思っていました。幻の天守再建や高層ホテルの建設を急ぐより、既存の見所をうまく活かす方が日本人観光客や福岡市民は喜ぶのではないかと思ったからです。しかし私の考え方とセントラルパーク構想は少し異なっていて、現在増え続けるインバウンド観光客への対応を中心に考えられているようです。福岡城はこれからいったいどう変わって行くのでしょうか? この先も見守り続けていきたいと思います。
幻の天守とライトアップイベントも5月31日まで延長されます。また5月3-4日は「博多どんたく」も開催され福岡の街はお祭りムード一色に変わります。もしお時間あれば是非訪れて、福岡城の新しい部分と現存する遺構部分を見比べて、ライトアップなどの幻想を楽しんで、できれば博物館まで足を延ばし、福岡城や黒田家の歴史を知ってほしいなと思います。そしてこれを機に、お城の楽しみ方を再度考えるきっかけになればと思っています。
また勝手な意見を長々とつぶやいてしまい、すいませんでした。
+ 続きを読む