2019/05/27
超入門! お城セミナー 第67回【鑑賞】再建された天守で一番高いのは何城?
お城に関する素朴な疑問を、初心者向けにわかりやすく解説する連載「超入門! お城セミナー」。前回に引き続き天守を様々なテーマで比べていきます! 今回は、昭和以降に再建・復元された天守の高さを徹底比較。果たして、日本一に輝くのは何城なのでしょうか?
日本一高い再建の天守は天下人が造ったあの城!
この連載の第11回「日本一高い天守は何城?」で、日本で一番高い天守は姫路城(兵庫県)とお話ししました。しかし、大阪城(大阪府)や名古屋城(愛知県)を訪れた際、「あれ、この天守、姫路城より大きくない?」と思った事がある人はいませんか? そう、実は現在建っている天守には姫路城より大きいものもあるのです。
現存天守1位の姫路城。大天守の高さ31.5mを超える城は、果たしていくつあるのだろうか?
では、なぜ前回のランキングには入らなかったのか。それは、これらの天守が昭和時代以降に建て直されたものだから。江戸時代から残っている天守は、全国に12基しかなく、第11回ではこの12城の高さを比べたため、大阪城や名古屋城はランクインしなかったのです。という訳で、今回はこの再建された天守の高さ比べをしてみましょう。
さて、ひと口に再建された天守といっても、【復元天守】【外観復元天守】【復興天守】【模擬天守】という種類があります。これは現在判明しているデータから、再建天守が「史実に忠実かどうか」で段階的に分類したもの。詳しくはこの連載の第17回「「模擬天守」と「復元天守」「復興天守」はどう違う?」で解説していますのでこちらを参考にしていただくとして、今回は、模擬天守を除いた復元天守・外観復元天守・復興天守の総合高さランキング・ベスト5をご紹介します。
<再建された天守の高さベスト5>
1位 大阪城(大阪府)復興天守 41.5m
2位 名古屋城(愛知県)外観復元天守 36.1m
3位 島原城(長崎県)復興天守 33.0m
4位 熊本城(熊本県)外観復元天守 29.5m
5位 小倉城(福岡県)復興天守 28.7m
となります。九州の城が3つもランクインしています!
1位の大阪城。復興天守は豊臣時代の天守を模しているが、その高さは41.5mと徳川時代の天守に近いものになっている
4位の熊本城。創建時の天守は西南戦争で焼失し、1960年に再建された(写真は熊本震災以前に撮影)
5位の小倉城。復元にあたっては資料に基づいて考証が行われたが、地元の要望により本来はなかった破風が追加されている
このうち4万石の松倉重政が築城した島原城(3位)は、4万石には「分不相応」といわれるほど大規模な城で、築城に際して領民に過酷な税や労役を課したことが島原の乱の原因の一つになったともいわれています。確かにこのラインナップは、島原城以外は1位・2位は天下人の城、4位・5位は加藤清正と細川忠興という大大名の城。6位以下も北条氏の小田原城(神奈川県)、毛利・福島・浅野氏の広島城(広島県)、水野・松平・阿部氏の福山城(同)、蒲生・上杉・加藤・松平氏の若松城(福島県)と大大名の城が続いており、島原城の規模の大きさが特異であることが実感できますね。
島原城天守は、日記などの資料に基づいて寸法が正確に復元されている
これらはあくまで再建天守の高さですが、現存の天守台の上に史実を参考にして築かれている天守たちなので、往時の規模を考える上では参考になるでしょう。
天守台を含めた高さということになると、名古屋城が55.6mで逆転1位。大阪城は僅差の54.8mで2位となります。(天守台石垣の高さは現在正確な情報が出揃っておらず、残念ながら3位以下のランク付けができません)
天守台込みだと日本一の高さになる名古屋城。名古屋城には戦前に作られた天守の図面や多数の古写真などが残っているため、外観は史実に忠実に造られている
50mがビルの15〜20階くらいに相当します。著名なもので天守台込みの名古屋城・大阪城といい勝負なのは……奈良の東大寺大仏殿49m、東京ディズニーランドのシンデレラ城51m、パリの凱旋門50m、イタリアのピサの斜塔55.8mなどなど。また、(実際に見られるわけではないですが)古代の出雲大社神殿や初代ゴジラ(!)も50m前後だとか。
木造復元天守や現存天守とも比較してみよう
ところで、高さランキングベスト5には、最も史実に忠実に復元している木造復元天守(実質的天守だった三階櫓も含む)が残念ながらランクインしていません。復元が古い順に、白河小峰城(福島県)、掛川城(静岡県)、白石城(宮城県)、新発田城(新潟県)、大洲城(愛媛県)という顔ぶれなのですが、これらの天守の高さも10〜20m程度と充分に大きく、なかでも2004年に復元された大洲城の19.5mが最大となっています。
木造復元最大である大洲城の天守は、創建時の姿をかたどった模型や古写真などの史料をもとに内部まで忠実に復元されている
そして、ちょっと気になる現存天守高さ1位の姫路城との比較。大天守の31.5mは、熊本城と小倉城の間に入ることになります。また、史上最大の高さを誇った寛永期の江戸城天守は44.8mと、大阪城再建天守を余裕で抜き去る大きさでした。こうして見ていくと世界遺産の姫路城より大きな天守はいくつもあったわけで、現存していないことがやっぱり残念ですね。
また、史実には忠実ではないとしても、町のシンボルとして愛されている全国の模擬天守に関しても、またいつかご紹介できたらなと思っています!
執筆・写真/かみゆ歴史編集部
ポップな媒体から専門書まで編集制作を手がける歴史コンテンツメーカー。かみゆ歴史編集部として著書・制作物多数。