2023/03/27
姫路城、二条城、首里城のほかにもある!? 世界遺産に登録されている日本のお城紹介!
ユネスコの指定を受けて保護される、過去から現在、そして未来へと受け継がれていくべき人類共通の宝物。それが「世界遺産」です。日本でも25件が世界遺産に登録されていて、その中には誰もが知る有名なお城も! どんなお城が世界遺産として認められているのでしょうか? またその認定ポイントは?
世界遺産とは? どうやって決まるの?
文化的・歴史的に普遍的な価値を持つ建造物や自然環境を、ユネスコ(国際連合教育科学文化機関)が保護すべき対象として指定したものが「世界遺産」。ユネスコには195もの国が加盟し、2023年1月時点で1157件の世界遺産が登録されています。
世界遺産は著しく普遍的価値を持つ有形の不動産が対象で、建造物や記念物、遺跡、文化的景観など人工物が対象の「文化遺産」、地形や地質、生態系など自然を対象とした「自然遺産」、そしてその両方を兼ねた「複合遺産」の3種類があります。いずれの場合も、まずはユネスコ加盟国が世界遺産登録を目指す暫定リストの中から世界遺産委員会に推薦。その後、専門機関が現地調査し、その結果を踏まえた厳しい審査を通過すれば世界遺産に登録されます。
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日本のお城は世界遺産になっている?
日本のお城も、複数、世界遺産に登録されています。
世界遺産に登録されているお城には、主に2つのタイプがあります。1つは城郭の価値が認められたお城、もう一つは別テーマの構成資産であるお城です。複数のお城が世界遺産登録されていますが、実は前者に該当するのは姫路城(兵庫県)だけで、その他は後者に該当します。
世界遺産に登録されている日本のお城と、評価ポイント
では、世界遺産に登録されている日本のお城をいくつかご紹介します!
①姫路城(兵庫県姫路市)
遊如さんご投稿画像
南北朝時代に赤松貞範が築城し、山名氏、黒田氏を経て、羽柴秀吉が近世城郭に改修した姫路城。池田輝政の大改築によって白漆喰で塗り固められ、白亜の天守群が青空に翼を広げたシラサギのように見えることから「白鷺城」とも呼ばれました。日本に12しかない現存天守の1つであり国宝にも指定されていて、平成5年(1993)、法隆寺とともに日本で初の世界文化遺産となりました。
姫路城が世界遺産に登録された理由は、大きく分けて2つあります。まず1つは、その美的完成度が日本の木造建築の最高レベルにあり、世界的にも優れたものであること。そしてもう1つが、防御面で工夫された17世紀初頭の城郭建築の構造を最もよく示し、かつ良好に保存されていること。つまり、日本独自の史跡建造物としての歴史的価値と芸術的価値が、それぞれ高く評価されたということです!
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所在地:〒670-0012 兵庫県姫路市本町68
アクセス:JR・山陽「姫路」駅から徒歩20分。または姫路駅北口から神姫バス乗車、「大手門前」下車徒歩5分
世界遺産登録種類:世界文化遺産
世界遺産登録年月:1993年12月
②二条城(京都府京都市)
ミッピのパパさんご投稿画像
慶長8年(1603)、江戸幕府の初代将軍・徳川家康が、天皇の住む京都御所の守護と将軍上洛の際の宿泊所として築いた二条城。慶応3年(1867年)に15代将軍・慶喜が大政奉還の意志を表明して幕府の歴史に幕を閉じた場所としても有名で、その舞台となった二の丸御殿が国宝に指定されています。平成6年(1994)、清水寺や平等院などとともに「古都京都の文化財」として世界文化遺産に登録されました。
二条城は「古都京都の文化財」の構成資産として登録されました。ポイントは、二の丸御殿や唐門など絢爛豪華な桃山文化の遺構が数多く残っていることと、徳川家の栄枯盛衰と日本の長い歴史を見守ってきた貴重な歴史遺産であることです。特に江戸幕府の始まりと終わりを象徴するという点で、二条城は唯一無二の歴史的価値があると言えるでしょう。
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所在地:〒604-8301 京都府京都市中京区二条通堀川西入二条城町
アクセス:市バス「二条城前」下車すぐ、または市営地下鉄東西線「二条城前」駅すぐ
世界遺産登録種類:世界文化遺産「古都京都の文化財」
世界遺産登録年月:1994年12月
③原城(長崎県南島原市)
スティクラさんご投稿画像
戦国大名の有馬晴信が居城として築いた原城。海沿いの丘に自然の地形を活かし、周囲約4kmという広大な城域の中に、本丸、二ノ丸、三ノ丸、天草丸、鳩山出丸などが設けられました。晴信は九州平定で豊臣秀吉に協力したことから良好な関係を築き、金箔瓦が出土するなど秀吉流城づくりの影響が随所に見られます。
原城は「長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産」の構成資産として登録されています。寛永14年(1637)に勃発したキリシタン弾圧に対する反乱“島原の乱”の舞台となったため、潜伏キリシタンの文化的伝統が形成されていった様子を物語る遺構や遺物が発見されました。
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所在地:〒859-2412 長崎県南島原市南有馬町乙
アクセス:島原鉄道「島原」駅から島鉄バス「原城前」バス停より徒歩15分
世界遺産登録種類:世界文化遺産「長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産」
世界遺産登録年月:2018年7月
④首里城(沖縄県那覇市)
朝田 辰兵衛さんご投稿画像
日本の本州から遠く離れた沖縄では古くから独自の文化が育まれ、14世紀中頃には三王国が分立し、15世紀前半には琉球王国が成立。こうした歴史の中で築かれたお城は、沖縄以外でよく見るものとは造りや構造が異なり、「グスク」と独自の名称で呼ばれています。首里城、今帰仁城、座喜味城、勝連城、中城城の5つのグスクと4つのグスク関連遺産が、平成12年(2000)に「琉球王国のグスク及び関連遺産群」として世界文化遺産に登録されました。
その中でも首里城は、琉球王国の国王がその居所と統治機関を設置するために築いた、450年間にわたる琉球王国の中心地。城壁の中に多くの施設や広場が造られ、正殿前の広場では王国の重要な儀式が行われていました。曲線を描く城壁というグスクの特徴を保ちつつ、中国と日本との交流で影響を受けた独特の建築様式や石組み技術、そして沖縄文化の独自性をよく表す歴史遺産として、他のグスクと合わせて評価されています。
なお、首里城は令和元年(2019)10月31日に発生した火災で正殿など9施設が焼失してしまいました。現在「見せる復興」を掲げ、復興過程を公開しています。
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所在地:〒903-0811 沖縄県那覇市首里
アクセス:沖縄都市モノレール「首里駅」または「儀保駅」から徒歩約15分
世界遺産登録種類:世界文化遺産「琉球王国のグスク及び関連遺産群」
世界遺産登録年月:2000年12月
⑤今帰仁(なきじん)城(沖縄県国頭郡)
昌官忠さんご投稿画像
琉球の北山(沖縄本島北部)・中山(同中部)・南山(同南部)で三大勢力が分立していた三山鼎立時代に、北山を支配する北山王が居城としていた今帰仁城。外郭を含めて7つの郭からなる城域は首里城に次ぐ大きさです。その周囲を取り囲む城壁は、地形を巧みに利用した曲線を描いていて、見事な美しさです。王国が成立する以前も含め、琉球の歴史を物語る貴重な文化遺産として、他のグスクと合わせて評価されています。
所在地:〒905-0428 沖縄県国頭郡今帰仁村
アクセス:名護バスターミナルから路線バス66系統にて「今帰仁城跡入口」バス停下車、徒歩約15分
世界遺産登録種類:世界文化遺産「琉球王国のグスク及び関連遺産群」
世界遺産登録年月:2000年12月
沖縄県中城村観光協会さんご投稿画像
14世紀後半に豪族の先中城按司(さちなかぐずくあじ)が、沖縄本島中部の標高150m~170mの石灰岩丘陵上に築いた中城城。現在の城の形は、琉球王国の按司(あじ)として活躍した築城名人・護佐丸が15世紀半ばに行った拡大改修によるもの。沖縄のグスクの中で最も多くの遺構がほぼ原形のまま残されているそうで、琉球石灰岩で積まれた城壁が今も地形に沿って美しい曲線を描いています。
幕末にペリー艦隊の一行が立ち寄ったことでも有名で、こうしたエピソードも含めて琉球の歴史を物語る貴重な文化遺産として、他のグスクと合わせて評価されています。
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所在地:〒901-2314 沖縄県中頭郡中城村泊/北中城村
アクセス:那覇バスターミナルから東陽バス(30番)に乗り「中城小学校」バス停を下車、徒歩約30分
世界遺産登録種類:世界文化遺産「琉球王国のグスク及び関連遺産群」
世界遺産登録年月:2000年12月
⑦座喜味(ざきみ)城(沖縄県中頭郡)
詠狸庵さんご投稿画像
琉球王国の初代国王・尚巴志(しょうはし)に仕えた護佐丸が、国王に対抗する勢力を監視する目的で15世紀初頭に築いたとされる座喜味城。堅城と名高い今帰仁城を参考にしたそうで、敵を追い込むために城壁を曲線に積み上げるなど、戦に備えた工夫が随所に見られます。御嶽(うたき)と呼ばれる祭祀施設が含まれていないことからも、戦闘に特化した城であったと考えられ、琉球の歴史を物語る貴重な文化遺産として他のグスクと合わせて評価されています。
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所在地:〒904-0301 沖縄県中頭郡読谷村
アクセス:那覇バスターミナルから読谷線(29番)に乗車。「座喜味バス停」か「高志保入り口」で下車し徒歩約15~20分
世界遺産登録種類:世界文化遺産「琉球王国のグスク及び関連遺産群」
世界遺産登録年月:2000年12月
⑧勝連(かつれん)城(沖縄県うるま市)
橋吉さんご投稿画像
15世紀に海外貿易で巨万の富を得た阿麻和利(あまわり)が居城とした勝連城。標高約60~98mの丘陵に築かれ、一の曲輪を頂点に二の曲輪、三の曲輪、四の曲輪、東の曲輪と5つの曲輪が徐々に低く設けられました。中国の陶磁器が大量に出土していることから、勝連城が海外貿易の中心地であったと考えられていて、琉球の歴史を物語る貴重な文化遺産として他のグスクと合わせて評価されています。
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所在地:〒904-2311 沖縄県うるま市勝連南風原1710
アクセス:那覇バスターミナルから与勝線(52番)で勝連城跡前バス停下車、徒歩すぐ
世界遺産登録種類:世界文化遺産「琉球王国のグスク及び関連遺産群」
世界遺産登録年月:2000年12月
ほかにもある世界遺産のお城
別テーマの構成資産として世界遺産登録されているお城は、上記以外にもあります。
例えば、世界遺産「石見銀山遺跡とその文化的景観」の構成資産である矢滝城跡と矢筈城跡、石見城跡(いずれも島根県大田市)、世界遺産「紀伊山地の霊場と参詣道」の構成資産である吉野山(中世の吉野城、奈良県吉野町)などです。ほかにも、世界遺産「百舌鳥・古市古墳群」の構成資産である津堂城山古墳(大阪府藤井寺市)は古墳が城郭化されており、「城びと」サイトでは小山城(大阪府藤井寺市)として登録されています。
さらに城下町へと視点を広げてみると、世界遺産「明治日本の産業革命遺産 製鉄・製鋼,造船,石炭産業」の構成資産には萩城下町(山口県萩市)が含まれています。
お城ファンならではの視点で世界遺産をめぐると、新たな発見があるかも知れませんね。
吉野城に築かれたと伝わる堀に架かる大橋(奈良県吉野町)。護良親王(後醍醐天皇の子)が鎌倉幕府軍と戦った時の激戦地(藪内成基撮影)
萩城下町。産業化を試みた、幕末の地域社会が有した江戸時代の伝統と身分制、社会経済の構造を示す点が評価された(藪内成基撮影)
2024年世界遺産登録を目指す彦根城。暫定リスト入りを目指すは松本城、犬山城、松江城、金沢城!
現在世界遺産に登録されているお城の他にも、全国には歴史的・文化的な価値の高いお城はたくさんあります! そんな中、名城を有するいくつかの自治体が「我が町のお城も世界遺産に!」と意欲的に活動しています。
世界遺産への登録に向けて、実際にステップを重ねているのが、国宝天守を持つ彦根城(滋賀県彦根市)。日本がユネスコの世界遺産条約を締結した1992年に暫定リスト入りしていて、2024年度の世界文化遺産登録を目標に推薦書素案を提出しています。
同様に、金沢城(石川県金沢市)がある石川県と金沢市も、暫定リスト入りを目指して、金沢城や兼六園等を構成資産とする「城下町金沢の文化遺産群と文化的景観」を文化庁に提案しています。
このように世界遺産に登録されているお城を振り返ると、建造物としての完成度の高さや保存状態の良さだけでなく、世界に通じる歴史的価値がしっかり確立されていることが分かりますね。今後さらに数々のお城が歴史的・文化的な価値を認められて世界遺産に登録され、そのストーリー性に惹かれた多くの人たちがお城に興味を抱いてくれることを願います。
執筆/城びと編集部、藪内成基 画像/遊如さん、ミッピのパパさん、スティクラさん、朝田 辰兵衛さん、昌官忠さん、沖縄県中城村観光協会、詠狸庵さん、橋吉さん、藪内成基