萩原さちこの城さんぽ 〜日本100名城・続日本100名城編〜 第10回 座喜味城 石垣の曲線とアーチ門が美しい、絶景のグスク 

城郭ライターの萩原さちこさんが、日本100名城と続日本100名城から毎回1城を取り上げ、散策を楽しくするワンポイントをお届け!今回は、石垣の曲線とアーチ門が美しい沖縄県の座喜味城をご紹介します。



座喜味城、城壁、眺望、
独特の城壁のラインが魅力。眺望がすばらしく、慶良間諸島や久米島、伊江島、伊平屋諸島なども見える

本土の城とは異なる、なめらかなカーブを描く石垣

グスクとは、奄美諸島から沖縄諸島、宮古島、八重山群島などの島々に300以上築かれた沖縄地域の城のこと。海岸に突き出した丘陵や険しい断崖上などに築かれることが多いため、絶景が楽しめるのも特徴です。

標高120メートルの高台にある座喜味城も、とにかく見晴らしが抜群。沖縄の青い空とエメラルドグリーンの海をも取り込んだ、言葉にならない空間が広がります。朝焼けに染まる早朝も、神秘的なグラデーションが広がる夕暮れ時も素敵です。

最大の特徴は、なめらかなカーブを描く城壁の美しさ。加工しやすい琉球石灰岩が用いられ、また本土の城とは技術の系譜が異なるため、独特の曲線美が叶います。

石垣は、黒部ダムのように平面的なアーチ型に築かれています。座喜味城の土質は国頭マージという崩れやすい赤土。屏風のように幅を広げているのは、軟弱な地盤をカバーするためとも考えられるのだそうです。もちろん、戦闘的な意図も隠されていると思われます。

座喜味城、アーチの石門
2つの郭で構成され、アーチの石門がつくられている

護佐丸が築城した

3つの勢力(北山、中山、南山)が争った三山時代は、1429年に中山の尚巴志が統一したことで終わりを告げ、琉球王国が誕生しました。尚氏が北山王の居城・今帰仁城を攻め滅ぼす際に活躍したのが、座喜味城を築いた護佐丸でした。

護佐丸はもともと北山王の血縁者ともいわれる読谷山の按司(地方領主)でしたが、尚氏の北山討伐に加担。平定後、北山守護職に任命され、北山の旧勢力を見張るために築いたのが座喜味城といわれます。護佐丸は、中国や東南アジアとの海外交易で黎明期の第一尚氏王統の安定を経済的にも支えたとも伝わります。

座喜味城は一の郭と二の郭の2つの曲輪から成るシンプルな構造で、城壁の高さは高いところで約13メートル、低いところで約3メートル。郭内の面積は城壁を含めて7,383平方メートルに及びます。独特の城壁のラインと各郭に設けられたアーチ門が、とにかく見事。アーチ門両側の中央部分にはめられた、くさび石がポイント。珍しい技術に感服です。

座喜味城、くさび石、アーチ門
くさび石。アーチ門の中央部分にはめて2つの石をかみあわせている

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執筆・写真/萩原さちこ
城郭ライター、編集者。執筆業を中心に、メディア・イベント出演、講演など行う。著書に「わくわく城めぐり」(山と渓谷社)、「お城へ行こう!」(岩波書店)、「日本100名城めぐりの旅」(学研プラス)、「戦う城の科学」(SBクリエイティブ)、「江戸城の全貌」(さくら舎)、「城の科学〜個性豊かな天守の「超」技術〜」(講談社)など。「地形と立地から読み解く戦国の城」(マイナビ出版)2018年9月14日発売、「続日本100名城めぐりの旅」(学研プラス)2018年9月18日発売。ほか、新聞や雑誌、WEBサイトでの連載多数。公益財団法人日本城郭協会理事兼学術委員会学術委員。

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