都道府県のお城シリーズ 【沖縄県のお城】琉球王国の歴史を感じられる独自の「グスク」

日本100名城・続日本100名城を中心に、各都道府県を代表するお城をご紹介する「都道府県のお城シリーズ」。今回は沖縄県編です。本州から離れた沖縄のお城は「グスク」と呼ばれ、私たちが沖縄以外でよく見るお城とは見た目がだいぶ異なります。首里城など世界文化遺産に登録されているグスクを中心に、その特徴や見どころを紹介します。

そもそも沖縄にお城ってあるの?

「沖縄のお城」と聞いたとき、抜けるような青い海、どこまでも広い空を背景に、天守がばーんとそびえたお城の姿を想像しますか?
実は沖縄のお城は、イメージでよくある「ザ・お城」ではありません。琉球石灰岩や古期石灰岩を材料に用いて優美な曲線を実現した見た目だけでなく、祈りを捧げる信仰の場も設けられた精神的な側面もあわせ持つ「グスク」なのです。

かつて沖縄には琉球王国と呼ばれる独立国家が存在し、中国をはじめアジア諸国との交易によって栄え、本土とはまったく異なる文化が育まれました。こうした歴史的背景から、沖縄のお城は九州以北の本土のお城とはまったく別系統で発達しました。戦国時代に本土で石垣造りの城が誕生するのは戦国時代ですが、それよりも数百年早く、石を使った城壁が造られていたのですから驚きです! 沖縄には2~300のグスクが存在すると言われ、2000年12月には5つのグスクと4つのグスク関連遺産が「琉球王国のグスク及び関連遺産群」として世界文化遺産に登録されました。

▼沖縄のグスクについてさらに詳しく解説した記事はこちら

【コラム 「世界遺産 琉球王国のグスク コラボ御城印」発売中!】
2022年12月から、世界遺産に登録されている5つのグスク(首里城・中城城・勝連城・座喜味城・今帰仁城)が連携した「コラボ御城印」が発売中です。各城跡にて売られているコラボ御城印をあつめて5枚全部を並べると、「首里城に昇った太陽が中城城、勝連城、座喜味城と巡り、最後の今帰仁城に着いたときには月になっている」ストーリーの一幅の絵になります。新垣雅之さん筆耕、琉球史イラストレーターの和々さんデザイン。沖縄県産月桃を使った月桃紙が台紙で、琉球王国の歴史などの解説カード付。各500円(税込)で、各城跡にて販売。

今帰仁(なきじん)城(国頭郡・日本100名城)

今帰仁城,城びと
城とマスクさんご投稿画像

1429年に三山が統一されて琉球王国が成立する前から沖縄で覇権を争っていた3国の一つで、沖縄本島北部を支配していた北山王の居城です。13世紀後半に創建され、14世紀中頃には主郭に石垣を築き、15世紀前半には大隅・志慶真門郭など10の郭からなる現在の姿になったと伝えられています。琉球王国の成立後は、王府から派遣された監守の居城とされました。

城壁は長さ約1.5km、高さは最も高い所で8mという圧倒的なスケールで、城全体の規模としては首里城に次ぐ大きさです。古期石灰岩という太古の堅い岩石を用い、野面積みによって積まれています。正門「平郎門」には天井に大きな一枚岩がのっていて、守りの堅さが伺えます。2000年に「琉球王国のグスク及び関連遺産群」の1つとして世界文化遺産に登録されました。

所在地:〒905-0428 沖縄県国頭郡今帰仁村
アクセス:名護バスターミナルから路線バス66系統にて「今帰仁城跡入口」バス停下車、徒歩約15分
楽しみ方:カンヒザクラが咲く桜の名所としても知られ、「日本一早く咲く桜」として人気です。

中城(なかぐすく)城(中頭郡・日本100名城)

今帰仁城,城びと
昌官忠さんご投稿画像

14世紀後半に豪族の先中城按司(さちなかぐずくあじ)が沖縄本島中部の中城湾を望む丘陵上に築いた中城城。15世紀前半、築城名人として知られる護佐丸が王の命令で座喜味城から移封し、勝連城の勢力の攻撃に備えて6つの郭が連なる連郭式へと拡大改修。護佐丸が亡き後は王府の直轄地となりました。

中城城の城壁はなだらかで美しい曲線が見事で、城門をアーチ式にするなど高度な石積み技術で築かれています。1853年に琉球に上陸したペリー艦隊の島内調査隊も、その技術を称賛しました。また、丘陵上に立地するグスクからの眺望は風光明媚で、沖縄本島屈指の景勝地として人気です。2000年に「琉球王国のグスク及び関連遺産群」の1つとして世界文化遺産に登録されました。

▼中城城についてさらに詳しくはこちらの記事をご覧ください。

所在地:〒901-2314 沖縄県中頭郡中城村泊/北中城村
アクセス:那覇バスターミナルから東陽バス(30番)に乗り「中城小学校」バス停を下車、徒歩約30分
楽しみ方:護佐丸が増築した城壁とそれ以前の城壁が共存していて、石積み技術の変遷をたどることもできます。

首里城(那覇市・日本100名城)

首里城,城びと
牛若丸さんご投稿画像

1429年に琉球王国が成立して、1879年に沖縄県が設置されるまでの450年間にわたり、国王の居城として、そして政治・外交・文化の中心地として栄華を誇った首里城。2000年に「琉球王国のグスク及び関連遺産群」の1つとして世界文化遺産に登録されました。

信仰儀式の場である「京の内」、王族の生活空間「御内原」、様々な儀式が行われた広場「御庭(うなー)」の3エリアに大きく分けられます。トレードマークである守礼門はもちろん、外郭の櫓付き門や、曲線の優美さと武者走りの防御力を兼ね備えた城壁も見事です。御庭にある朱色の正殿は日本と中国の建築様式が取り入れられた沖縄最大の木造建造物でしたが、2019年10月の火災で焼失。現在は2026年の完成を目指して復元工事中です。

▼首里城についてさらに詳しくはこちらの記事をご覧ください。

所在地:〒903-0811 沖縄県那覇市首里
アクセス:沖縄都市モノレール「首里駅」または「儀保駅」から徒歩約15分
楽しみ方:「見せる復興」をテーマに首里城の復旧・復元作業が進行中。仮設デッキなどから首里城再建の過程を見学できます。

座喜味(ざきみ)城(中頭郡・続日本100名城)

座喜味城,城びと
詠狸庵さんご投稿画像

中城城を築いた築城名人・護佐丸が15世紀初頭に手がけた座喜味城。1416年(1422年の説もあり)に北山城(今帰仁城)攻略に参戦した直後、国王に対抗する勢力を監視する目的で築いたとされています。2000年に「琉球王国のグスク及び関連遺産群」の1つとして世界文化遺産に登録されました。

そんな座喜味城の見どころは何と言っても、重厚で美しい曲線の城壁。アーチの石門は沖縄に現存する最古のものとされ、護佐丸の築城技術の真骨頂と言えるでしょう。また、座喜味城は標高約120mの丘陵地に立地しており、最も高い所からは読谷村の全域はもちろん、晴れた日だと首里城のある那覇まで見渡せます。

所在地:〒904-0301 沖縄県中頭郡読谷村
アクセス:那覇バスターミナルから読谷線(29番)に乗車。「座喜味バス停」か「高志保入り口」で下車し徒歩約15~20分
楽しみ方:敵を追い込むための行き止まり通路「武者隠し」など、軍事要塞としての巧みな造りに要注目!

勝連(かつれん)城(うるま市・続日本100名城)

勝連城,城びと
todo94さんご投稿画像

15世紀、海外貿易で勝連に繁栄をもたらした阿麻和利(あまわり)が居城とした勝連城。4つの曲輪を階段状に配置した梯郭式の城で、自然の地形を巧みに利用しながら城壁をめぐらせています。2000年に「琉球王国のグスク及び関連遺産群」の1つとして世界文化遺産に登録されました。

沖縄本島の東海岸にある勝連半島の根元にあり、断崖の丘陵に築かれた勝連城は、最上部から青い海を一望できる景観の素晴らしさが特筆モノ! もちろんグスク特有の城壁も、なだらかで優雅な曲線を描いていて見事な美しさです。

▼勝連城についてさらに詳しくはこちらの記事をご覧ください。

所在地:〒904-2311 沖縄県うるま市勝連南風原1710
アクセス:那覇バスターミナルから与勝線(52番)で勝連城跡前バス停下車、徒歩すぐ
楽しみ方:かつて勝連城は巨大な帆船にたとえられたそうです。城の全景を眺めながら帆船を思い浮かべてみては?

浦添(うらそえ)城(浦添市)

浦添城,城びと
朝田 辰兵衛さんご投稿画像

15世紀に王宮が首里城に移される以前、舜天(しゅんてん)王統、英祖(えいそ)王統、察度(さっと)王統の居城だったとされる浦添城。城壁の外周約600m、面積約2万平方mという大規模なグスクでした。首里遷都後は荒廃し、太平洋戦争や戦後の採石で城壁の多くが失われましたが、近年になってその一部が見つかり、復元整備で往時の美しい姿を取り戻しました。

浦添城は標高約130mの琉球石灰岩の丘陵に立地し、北は宜野湾・北谷から読谷までの街々、南は島々や首里・那覇の街々を通して南部の丘陵を望むことができます。浦添城や王の墓「浦添ようどれ」など多くの文化財を含む一帯が、浦添大公園の歴史学習ゾーンとして整備されています。

▼浦添城についてさらに詳しくはこちらの記事をご覧ください。

所在地:〒901-2103 沖縄県浦添市仲間2
アクセス:沖縄自動車道 西原ICから車で約10分
楽しみ方:城跡の東端に高く突出した石灰岩は「ワカリジー」と呼ばれ、かつては信仰の対象でした。今も浦添のランドマークとして親しまれています。

糸数(いとかず)城(南城市)

糸数城,城びと
昌官忠さんご投稿画像

琉球王国が誕生する前の三山分立時代に、玉城城の西の守り城として築かれたとされる糸数城。慶良間列島まで見渡せる標高180m前後の高台に立地し、天然の断崖を生かして城壁をめぐらせていました。

沖縄本島南部最大のグスクであり、その城構えは沖縄のグスクの中でも群を抜くほど立派! 龍がうねるような城壁、そして天に向かってそびえ立つようなアザナ(城壁を突出させた物見台で、側面から敵に攻撃を仕掛けることが可能)は迫力満点です。

▼糸数城についてさらに詳しくはこちらの記事をご覧ください。

所在地:〒901-0606 沖縄県南城市玉城糸数133
アクセス:路線バス51番百名(船越・向陽)線(琉)/53番志喜屋線(琉)に乗車、「糸数入口」バス停から徒歩約20分
楽しみ方:観光用に整備されておらず、自然を感じながらお城めぐりをしたい人にオススメ! ただし足元が不安定なので、歩きやすい靴で出かけましょう。

執筆/城びと編集部 画像/城とマスクさん(今帰仁城)、昌官忠さん(中城城・糸数城)、牛若丸さん(首里城)、詠狸庵さん(座喜味城)、todo94さん(勝連城)、朝田 辰兵衛さん(浦添城)