一度は行きたい!日本全国のおすすめ城下町20選

多くの武将や大名たちがお城と共に造った城下町は、古き良き町並みだけでなく食べ歩きや買い物も楽しむことができる、人気の観光スポットとなっています。すてきな城下町が多いですが、その中からおすすめの城下町をいくつか選んでご紹介します! 名城と合わせて訪れてみてはいかがでしょうか?

そもそも「城下町」とは

犬山城下町
犬山城下町の一幕

城下町とは、戦国時代から江戸時代にかけて、武将や大名の居城を中心に整備された町のこと。一般的に、家臣が住む武家地、庶民が暮らしながら商売を行う町人地、寺院を集中的に配置した寺町などによって構成され、当時の町割や建造物が残っている町が今も全国にたくさんあります。また、城下町は武士や庶民の居住地としてだけでなく城を防衛する機能も備えていて、町の中にめぐらせた堀や、見通しがきかないよう食い違いにしたり鍵の手に曲げられた道などからその名残を見ることができます。

▼お城を愛してやまないライターのいなもとかおりさんが金沢城下町を前後編で紹介!

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お城と共に歴史を刻み続けてきた城下町には、風情豊かで写真映えするスポットが満載!(マップ作/いなもとかおり)

江戸と西洋の文化が融合!弘前城下町(青森県弘前市)

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(左)弘前城水堀(画像提供:藪内成基)、(右)弘前城公園の桜(画像提供:公益社団法人弘前観光コンベンション協会)

弘前城の城下町は、南北に長く東西に短い城域を囲むように町割りされました。北側に位置する仲町は、かつて武家屋敷が立ち並んでいたエリアです。サワラの生垣や板塀が通りに連なる緑豊かな歴史的町並みが、国の重要伝統的建造物群保存地区に選定されています。天気の良い日は、町並みの遠景として岩木山の絶景を望むこともできます。また、弘前公園は「日本さくら名所100選」に選ばれているほどの桜の名所なので、春の季節は夢のような景色が広がります!

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(上段左から)カランカランアイス、青森銀行記念館、(下段左から)旧弘前市立図書館、アップルパイの数々(画像提供:公益社団法人弘前観光コンベンション協会)

弘前城下町にはレトロモダンな洋風建築が多く残っているのも特徴的。旧弘前市立図書館や青森銀行記念館など明治・大正期に建てられた洋館をめぐると、お城とはまた違った歴史ロマンに浸ることができます。“お城と桜とりんごのまち弘前”のキャッチフレーズにたがわない、豊富な種類の絶品アップルパイを味わいながら、ゆっくり楽しみたいですね。

弘前城
慶長16年(1611)に弘前藩津軽氏の居城として築かれ、全国に12カ所ある現存天守の1つを有する弘前城。東北では唯一の現存天守です(画像提供:藪内成基)


「みちのくの小京都」とも呼ばれる角館城下町(秋田県仙北市)

角館城下町の武家屋敷
角館城下町の武家屋敷(石黒家)と桜(画像提供:田沢湖・角館観光協会)

一般的に城下町は防衛のため道幅が狭くなっているのですが、角館城下町のメインストリートにあたる武家屋敷通りは道幅約11mとかなり広いのが特徴的。黒板塀に囲まれた広大な武家屋敷が通りに沿って建つ町並みが、国の重要伝統的建造物群保存地区に選定されています。武家屋敷の前庭にはシダレザクラやモミの大木が植えられ、春には桜、夏には緑陰、秋には紅葉、冬には雪景色と四季折々の風情を堪能できます。

角館城下町、名産品
(左)伝統工芸品の樺細工 (右)角館名物のなると餅とえびす餅(画像提供:田沢湖・角館観光協会)

角館城下町は、芦名氏断絶の後に領主となった佐竹義隣(よしちか)によって取り入れられた京風文化と、東北の豊かな自然が融合しているところも魅力的。佐竹氏といえば東北地方を代表する戦国大名でしたが、世継ぎの関係から、公家出身の義隣が養子として佐竹氏一門の佐竹北家を相続し、角館の領主となりました。山桜の皮を使用した工芸品「樺細工」や、もち米を挽いて餡を包んだ銘菓「なると餅」もお土産におすすめ!

角館城
角館城。戦国時代に戸沢氏が拠点とした山城で、関ヶ原の戦いの後に城主となった芦名氏が城の麓に城下町を形成した(画像提供:藪内成基)


白虎隊の史跡とレトロな町並みが人気!会津若松城下町(福島県会津若松市)

七日町通り
(左)七日町通り (右)市内を循環するレトロなハイカラバス(画像提供:公益財団法人 福島県観光物産交流協会)

会津若松城(鶴ヶ城)の城主となった蒲生氏郷が城郭の改修と合わせて整備した城下町。戊辰戦争で命を落とした白虎隊の悲劇と共に語られることも多く、城下町とその周辺には会津藩校「日新館」や旧滝沢本陣など、白虎隊ゆかりのスポットが点在します。

七日町通り
(左)会津地方のラーメンはちぢれ麺と醤油ベースのさっぱりしたスープが特徴的 (右)会津地方で厄除けのお守りや縁起物として長年愛されてきた郷土玩具「赤べこ」(画像提供:公益財団法人 福島県観光物産交流協会)

会津若松城下町でぜひ足を運びたいのが、江戸時代から昭和時代にかけて会津一の繁華街としてにぎわった七日町通り。当時の面影を伝える町家、蔵、洋館が立ち並び、みそ田楽や会津ラーメンなどのご当地グルメを味わうことができます。散策に疲れたら、蔵を利用したレトロな喫茶店で一休みしましょう。

会津若松城
国内唯一となる赤瓦の優美な天守がトレードマークの会津若松城(鶴ヶ城)。蒲生氏郷が天守や石垣を備えた近世城郭に改修した(画像提供:藪内成基)


蔵造りの町で食べ歩き!川越城下町(埼玉県川越市)

川越城下町
川越城下町(画像提供:藪内成基)

通商や交通の要衝地としても栄えた川越城下町には、商人たちが築いた重厚な蔵造りの町家が今も多く残っています。こうした江戸情緒の色濃い町並みから「小江戸」とも呼ばれ、国の重要伝統的建造物群保存地区にも選定されています。

川越城下町
(左)川越名物の芋を使った芋けんぴをトッピングしたキュートなソフトクリーム (右上)川越名物のさつまいもを大胆にスライスした「おさつチップ」 (右下)川越氷川神社の夏の風物詩「縁むすび風鈴」

川越城下町の魅力は、歴史ロマンだけではありません。味噌や和菓子の老舗店をはじめ、江戸時代から栽培が始まった名産品さつまいものスイーツなど食べ歩きを楽しめるグルメが充実! 小江戸らしいおしゃれな和雑貨屋も多く、1日があっという間に過ぎること間違いなし! インスタ映えする写真を撮りたい人は、縁結びのパワースポットとして知られる川越氷川神社にもぜひ足を運びましょう。

川越城
江戸の北西部に位置する川越城は江戸城の防衛拠点として重視され、徳川家康の家臣・酒井重忠が城主を務めた(画像提供:藪内成基)

▼川越城下町の魅力についてはこちらの記事もチェック!

北国街道の宿場町として栄えた上田城下町(長野県上田市)

真田神社、真田赤備え兜
真田神社の境内にある巨大な真田赤備え兜は人気フォトスポット

真田氏に代わって上田へ入封した仙石忠政が上田城を再建し、城下町を併せて整備。上田城下町は北国街道の宿場町としても栄え、なかでも柳町と呼ばれるエリアには「うだつ」の上った古い町家が立ち並び、当時の雰囲気を今も感じさせてくれます。

上田城下町・柳町
上田城下町・柳町(画像提供:藪内成基)

そんな由緒ある上田城下町は、350年の歴史を誇る酒蔵や信州味噌の蔵元などの老舗をはじめ、信州蕎麦、ご当地グルメ「美味(おい)だれ焼き鳥」、ワインまで楽しめる店が軒を連ねる、グルメな城下町でもあります。江戸時代の風情を残した町並みと合わせて満喫してはいかがでしょうか。

柳町
(左上)後を引くおいしさ!「美味(おい)だれ焼き鳥」 (右上)信州蕎麦はやっぱり絶品! (左下)こんなおしゃれでおいしい甘酒があるなんて!完全無添加「りんごあまざけスムージー」(画像提供:柳町観光振興会事務局) (右下)地元の素材をふんだんに使った「アップルたまごタルト」(画像提供:柳町観光振興会事務局)

上田城
戦国武将・真田氏が築き、徳川軍を2度にわたって退けた上田合戦の舞台としても有名な上田城(画像提供:藪内成基)

▼城下町のみどころも紹介!「はじめての上田城」ガイドマップを城びとストアで絶賛発売中です

フォトジェニックな歴史スポットとして人気!犬山城下町(愛知県犬山市)

犬山城下町
(左)犬山城下町では着物をレンタルして歩く人の姿も (右)カラフルで美味な恋小町だんご

現存12天守にして国宝天守をもつ犬山城。動乱の戦国時代を乗り越えて江戸時代には城下町が発展し、太平洋戦争の戦火を逃れたおかげで江戸時代の町割や歴史的建造物が今も残っています。そんな歴史ある犬山城下町は、SNS映えするフォトジェニックなスポットとして大人気! カラフルなフルーツ餡がついた団子など、見た目が可愛いくて食べ歩きにも便利な串グルメが充実しています。

犬山城下町、三光稲荷神社、大縣神社、絵馬
(左)三光稲荷神社のハートの絵馬 (右)大縣神社の四つ葉の絵馬

他にも、ハートの絵馬で縁結びをお願いできる三光稲荷神社や、四つ葉の絵馬で開運祈願する大縣神社も! 由緒ある歴史スポットであり思わずワクワクする、幅広い世代におすすめの城下町です。

犬山城
織田信長の叔父・信康が築いたと伝わる犬山城(画像提供:藪内成基)

▼お城大好きライターのいなもとかおりさんが犬山城下町を楽しく紹介した記事はこちら!

飛騨大工の技が光る飛騨の小京都・高山城下町(岐阜県高山市)

高山城下町三町通り
高山城下町三町通り(画像提供:(一社)飛騨・高山観光コンベンション協会)

高山城下町は江戸時代には幕府直轄の天領として栄え、統治の拠点だった高山陣屋が今も当時の姿をとどめています。また、江戸時代から明治時代初期にかけて築かれた日本家屋も良好に残り、その美しい町並みは「飛騨の小京都」とも形容されています。

高山城下町
(左上)蕎麦の実の原産地である飛騨の蕎麦絶品 (右上)甘くない醤油だれを表面につけて香ばしく焼く高山流みたらし団子 (左下)時を重ねるごとに漆が透けて木目が浮き出る飛騨春慶 (右下)丁寧な絵付けが美しい渋草焼(画像提供:(一社)飛騨・高山観光コンベンション協会)

当時の雰囲気を体感できるスポットとして外せないのが、国の重要伝統的建造物群保存地区に選定されている「三町(さんまち)通り」。飛騨大工による凝った意匠を施した町家が軒を連ね、洗練された美しさを醸し出しています。また、飛驒高山は昔からお茶と菓子を楽しむ文化があり、和菓子処も充実しています。みたらし団子、草まんじゅう、わらび餅など、どれを食べるか迷いそう!

高山城
天正16年(1588)に豊臣秀吉の家臣・金森長近が標高686.6mの城山に築いた高山城(画像提供:藪内成基)

加賀百万石の伝統と文化を今に伝える金沢城下町(石川県金沢市)

金沢城下町ひがし茶屋街
金沢城下町ひがし茶屋街(画像提供:藪内成基)

江戸時代に加賀藩前田家の居城となった金沢城。総構えの内外に形成された城下町は、前田家の治政の下で人口10万人を超える大都市へと発展し、藩政時代の町並みや、漆器・金箔などの美術工芸に代表される優雅かつ絢爛豪華な文化が今も大切に守られています。

金沢城下町
(左上)金箔が工芸品を華やかに引き立てる (右上)蒔絵など伝統工芸の体験も楽しめる (左下)日本海の新鮮な魚を寿司で堪能 (右下)寒い時期に訪れたら絶対食べたい金沢おでん(画像提供:金沢市)

往時の面影を色濃く残す代表的スポットといえば、かつて加賀藩士たちが住んでいた長町武家屋敷跡。趣のある土塀や石畳の小路が今も見られ、冬に雪から土塀を守るために行われる「こも掛け」は冬の風物詩です。文化的な風情を楽しむなら、国の重要伝統的建造物群保存地区に選定されている「ひがし茶屋街」と「主計町茶屋街」がおすすめ。出格子を構えた茶屋建築の町家では、バラエティ豊かな飲食店や雑貨店が営業していて、散策して飽きることがありません!

金沢城
金沢城。賤ヶ岳の戦いの後、金沢城に入城した前田利家が近世城郭として大改修し、2代・利長と3代・利常が総構えを築いた(画像提供:藪内成基)

自然豊かな山あいに江戸情緒が香る岩村城下町(岐阜県恵那市)

岩村城下町
岩村城下町(画像提供:藪内成基)

岩村城の麓に広がる城下町には、商業で栄えた商家の町並みが東西約1.3kmも広がっていて、国の重要伝統的建造物群保存地区に選定されています。商家の軒先には昔ながらの木製看板も残っていて、実にノスタルジック!

岩村城下町
(左)朝ドラの影響で五平餅の人気がさらにアップ (右)明智町の大正ロマン館(画像提供:岐阜県観光連盟)

岩村城下町に行ったらぜひ体験したいのが、江戸時代から変わらない製法で作られている、カステラの元型ともいわれる「カステーラ」。NHK連続テレビ小説『半分、青い』の舞台になって知名度を高めた五平餅も、店によって味や形が異なるのでぜひ食べ比べてください。 時間があれば、車で20分ほど離れた明智町にも足を運び、大正ロマンあふれるレトロな町並みも散策してみてください。

岩村城
日本三大山城の1つに数えられる岩村城。ひな壇状の六段壁など壮大な石垣が圧巻(画像提供:藪内成基)

▼ローカル線で楽しむ城下町として岩村城下町を紹介した記事もあります!

風流な八幡堀めぐりがおすすめ!近江八幡城下町(滋賀県近江八幡市)

近江八幡城下町
近江八幡城下町の八幡堀(画像提供:(公社)びわこビジターズビューロー)

近江八幡城(八幡山城)の築城と合わせて整備された城下町は、江戸時代に商家町として発展。碁盤の目状の町割に、商人たちの繁栄ぶりを物語る町並みが今も残り、国の重要伝統的建造物群保存地区に選定されています。

近江八幡城下町
(左)鉄分で赤く染められた健康にも良い「赤こんにゃく」 (右)天然の竹皮で手包みした銘菓「でっち羊羹」(画像提供:(公社)びわこビジターズビューロー)

そんな近江八幡城下町の景観を特徴づけているのが、築城時に水路として掘削された八幡堀。両岸には商家の町家や白壁の土蔵が立ち並び、和舟の遊覧船に乗って眺めを楽しむことができます。握り寿司、コロッケ、牛まんなどで近江牛を手軽に味わえるお店にもぜひ立ち寄ってみてください。名産品の「赤こんにゃく」や「でっち羊羹」もお土産にぜひ!

近江八幡城
天正13年(1585)に豊臣秀吉の甥・秀次が築いた近江八幡城(八幡山城)。文禄4年(1595)に秀次が謀反の疑いで切腹し、城も破却された(画像提供:藪内成基)

国宝天守と江戸情緒がともに楽しめる彦根城下町(滋賀県彦根市)

彦根城下町
彦根城下町(画像提供:藪内成基)

現存12天守にして国宝天守をもつ彦根城。井伊家35万石の城下町は大いに栄え、大名庭園の玄宮園や中濠沿いの松並木「いろは松」など、風情豊かな歴史スポットが多く残っています。

町歩きを楽しみたい方におすすめなのが、彦根城のお堀にかかる京橋からすぐの場所にある「夢京橋キャッスルロード」。かつての商人町のにぎわいを再現するため、白壁に黒格子の江戸時代風町家が新しく建てられ、和菓子店、食べ歩きグルメ、レストラン、雑貨店などが軒を連ねています。モダンな外観で統一された、大正ロマンあふれる「四番町スクエア」も近くにあるので、併せて足を運びましょう。

彦根城下町
(左)夢京橋キャッスルロードの食べ歩きの定番といえば、アツアツほくほくのコロッケ (右上)彦根発の自転車タクシー「彦根リキシャ」 (右下)和ろうそくやキャンドルを揃えたショップとミュージアムが一体となった「夢京橋夢あかり館」(右2枚の画像提供:(公社)びわこビジターズビューロー)

彦根城
関ヶ原の戦い後に徳川家が豊臣勢を監視するために築かれた彦根城(画像提供:藪内成基)

▼名古屋おもてなし武将隊®の前田慶次様も「夢京橋キャッスルロード」を堪能なさった!?

武家町の素朴さと商家町のにぎわいを併せ持つ篠山城下町(兵庫県丹波篠山市)

篠山城下町
篠山城下町の武家地(左)と町人地(右)

慶長14年(1609)に徳川家康が天下普請で築いた篠山城。丹波国篠山藩6万石の中心地として城下町は栄え、武家地と町人地を含む地区が国の重要伝統的建造物群保存地区に選定されています。篠山城下町がユニークなのは、武家地と町人地で雰囲気がまったく異なること。瓦を葺いた京風町家がびっしりと立ち並ぶ町人地に対して、武家地は土塀で囲まれた茅葺屋根の武家屋敷が続き、日本の原風景さながらの素朴さを醸し出しています。

丹波篠山ブランド
丹波篠山ブランドを代表する黒枝豆(左)と丹波栗(右)

町人地にあたる河原町には東西600mほどの通りに商家が建ち並び、内部を改装し飲食店や雑貨店として営業しています。“丹波篠山ブランド”の丹波栗・黒大豆・黒枝豆・丹波松茸・丹波茶・丹波篠山牛などもこの機会にぜひご堪能ください。

篠山城
築城名人・藤堂高虎の縄張りによる堅い守りを備えた篠山城(画像提供:藪内成基)


堀川めぐりと武家通り散策で江戸時代にタイムスリップ!松江城下町(島根県松江市)

松江城、堀川めぐり
城下町の堀を小船で遊覧する「堀川めぐり」(画像提供:一般社団法人 松江観光協会)

宍道湖を中心とする湿地帯に築かれた松江城下町。一帯に堀川が流れる「水の都」となっていて、遊覧船に乗る「堀川めぐり」を体験できます。水運で栄えた往時に思いを馳せながら、水上から松江城や町並みの風情を満喫してはいかがでしょうか。

そんな松江城下町で特に昔ながらのたたずまいを残しているエリアが、「塩見縄手」と呼ばれる武家通り。松江城の北側の堀に沿って続く約500mの道沿いに、武家屋敷や松並木が並んでいます。縁結びスポットとして有名な「ハートのくぐり松」は要チェック! 松江名物のうなぎ料理や松江おでん、松江藩七代藩主の松平不昧が好んで食べたという鯛めしもぜひご堪能ください。

松江城、塩見縄手
(左)松の枝の切り口がハートに見えることから「ハートのくぐり松」と呼ばれている (右)武家屋敷や松並木が並ぶ「塩見縄手」(画像提供:一般社団法人 松江観光協会)

松江城、蒸し寿司、八雲塗
(左)松江の郷土料理「蒸し寿司」 (右)茶の湯文化の中で育まれた伝統工芸「八雲塗」(画像提供:一般社団法人 松江観光協会)

松江城
現存12天守の1つにして国宝天守をもつ松江城(画像提供:藪内成基)

▼実は優れた防衛力を誇る松江城下町のすごさを武将に案内してもらいたい人はこちらをチェック!

歴史と風情を感じさせる山陰の小京都・津和野城下町(島根県鹿足郡)

津和野城下町
津和野城下町(画像提供:藪内成基)

津和野城が関ヶ原合戦後に近世城郭へと改修されたのに合わせて城下町も整備。江戸時代の町割は現在も良好に残っていて、国の重要伝統的建造物群保存地区に選定されています。メインストリートにあたる殿町通りは、武家屋敷の表門や藩校養老館跡など歴史を感じさせる建物が連なり、実に壮観! 通りの脇に設けられた堀割(水路)を鯉が泳ぐ光景も風情たっぷりで、「山陰の小京都」と呼ばれるのも納得です。

太皷谷稲成神社
太皷谷稲成神社の千本鳥居(左)とお供え用の油揚げ(右)

また、城下町からひと足延ばしたエリアにも、豪商・堀家の栄華を物語る美しい庭園など見どころが満載。日本五大稲荷の一つに数えられ、油揚げや狐の絵馬を奉納するユニークな参拝方法で知られる太皷谷稲成神社にも足を運んでみましょう。

津和野城
津和野城は標高362mの霊亀山上に築かれた山城。関ヶ原合戦後に入城した坂崎氏が高石垣を有する近世城郭へと改修した(画像提供:藪内成基)

幕末ファンなら一度は訪れたい!萩城下町(山口県萩市)

萩城下町
萩城下町(画像提供:藪内成基)

碁盤の目状に区画された萩城下町は良好に残り、中・下級の武家屋敷が軒を連ねていた江戸屋横町や、美しい白壁となまこ壁が続く菊屋横町などの町並みが当時の面影を伝えています。見通しが利かない鍵曲(かいまがり)の道と、通りに続く土塀から夏みかんが顔を出す景観も萩城下町ならでは。

松下村塾、藩校明倫館
(左)幕末の志士たちを多数輩出した松下村塾 (右)かつて高杉晋作らが学んだ藩校明倫館が、改修整備され新たな観光施設に

また、長州藩の拠点だった萩城下町には、高杉晋作や木戸孝允の生家に旧萩藩校明倫館など幕末の名士ゆかりのスポットも多数残っていて、歴史好きにはたまりません! 萩焼を扱うお店や古民家カフェにもぜひ立ち寄ってください。

萩城
毛利輝元が天然の要害を活かして築き、鉄壁の防御力を誇った萩城。現存しているのは石垣と堀のみ(画像提供:藪内成基)

「坊っちゃん」の世界に思いを馳せる──松山城下町(愛媛県松山市)

松山城下町
松山城から城下町を見下ろす(画像提供:藪内成基)

松山城が建つ標高132mの勝山の周囲に城下町が形成され、今は繁華街や官庁街が広がっています。松山城下町といえば、夏目漱石の小説「坊っちゃん」の舞台として有名! 小説に登場する列車や団子にちなんだ「坊っちゃん列車」「坊っちゃん団子」を体験し、坊っちゃんたちが生きた明治の世界に思いを馳せてみてください。

文学ロマンの散策が終わったら、路面電車で日本三大古湯の1つ「道後温泉」まで足を延ばし、旅の疲れを落としましょう。鯛の養殖が盛んな松山を代表する郷土料理「鯛めし」もぜひ!

松山城下町
(左上)道後温泉駅前には坊っちゃん列車の客車を展示 (右上)国の重要文化財に指定されている道後温泉本館 (左下)松山の人気郷土料理・鯛めし (右下)3色の餡にお餅が入った坊っちゃん団子

松山城
現存天守をもち、城内に21棟もの国重要文化財が残っている松山城。現在の天守が安政元年(1854)に再建されたものであることから「日本最後の完全な城郭建築」とされている(画像提供:藪内成基)

堀割めぐりで水の都を満喫!柳川城下町(福岡県柳川市)

柳川城下町
柳川城下町では水郷めぐりを楽しめる(画像提供:藪内成基)

水の利を活かして周囲に水路を張りめぐらせた堅城・柳川城。中心部の2km四方には約60kmもの掘割(柳川市全域では総長930km!)が迷路のように張りめぐらされていて、今も城下町に残っています。

そんな柳川城下町でぜひ体験したいのが、掘割で舟に乗る水郷めぐり。船頭さんの軽妙な語りと竿さばきと共に風情を味わいながら、国登録文化財の赤レンガ建物「並倉」などの歴史的町並みを水上の高さから眺めることができます。堀割沿いには郷土料理やショッピングを楽しめるお店も並んでいるので、併せてお楽しみください。

柳川城下町
(左)柳川の春の風物詩である雛祭り「さげもんめぐり」 (右)柳川は「うなぎのせいろ蒸し」発祥の地でもある

柳川城
永禄年間(1558~1569)に筑後(福岡県南部)の有力武将・蒲池氏が築いた柳川城。関ヶ原の戦い後に、徳川家康の家臣・田中吉政が天守を備えた近世城郭として築いた(画像提供:藪内成基)

▼もっと詳しく柳川城下町ヒストリーを知りたい方は、こちらの記事をご覧ください!

高台と谷に広がる江戸時代の町並み!杵築城下町(大分県杵築市)

杵築城下町
杵築城下町(画像提供:藪内成基)

杵築城下町は17世紀初頭、細川忠興の家臣・松井康之が縄張りをし、その後に入封した松平氏によって地割がおおむねね整いました。南北にのびる高台と、高台にはさまれた谷から成るユニークな形状な特徴的です。高台には武士が住む武家地、谷には商人が住む町人地が形成され、その珍しい形から“サンドイッチ型城下町”と称されています。

杵築城下町
(左)くの字型に美しくカーブを描く飴屋の坂 (右上)杵築の守江湾は県内屈指の牡蠣の産地 (右下)杵築で獲れたての車エビを味わえる(画像提供:一般社団法人杵築市観光協会)

国の重要伝統的建造物群保存地区に選定されている高台の武家町には、上級武士の格式高い武家屋敷が今も残っています。そしてさらに注目したいのが、その地形的特徴から生まれた石畳の坂道です。南北の高台をつなぐ「塩屋の坂」と「酢屋の坂」、くの字形の曲線美を描く「飴屋の坂」など、レンタル着物を着ながら歩けば写真映えすること間違いなし! 豊富な海の幸もぜひご堪能ください。

杵築城
応永元年(1394)、豊後(大分県)を治めていた大友氏の一族、木付頼直が守江湾を望む高台に築いた杵築城(木付城)。昭和45年(1970)に建てられた模擬天守は“日本一小さい城”としても親しまれている(画像提供:藪内成基)

山に囲まれたコンパクトな町に歴史的スポットが凝縮!岡城下町(大分県竹田市)

岡城下町
岡城下町(画像提供:藪内成基)

標高325mの険しい岩山の上に築かれた岡城。その城下町も周囲を断崖のような山に囲まれていて、さながら天然の要塞です。城下町全体はそんなに広くありませんが、むしろコンパクトだからこそじっくり散策することができます。

藩政時代の面影を残すスポットとしてぜひ訪れたいのが、「歴史の道」と呼ばれる武家屋敷通り。武家屋敷や神社仏閣を縫って走る石畳の道を歩いていると、タイムスリップしたような気分を味わえます。また、キリシタン文化の名残を感じさせるキリシタン洞窟礼拝堂や、作曲家・瀧廉太郎が少年期を過ごした居宅など、様々な注目スポットが満載! 大分のご当地グルメ「とり天」「唐揚げ」の名店にもぜひお立ち寄りください。

岡城下町
(左上)毎年11月に城下町で約2万本の竹灯籠を灯すイベント「竹楽」 (右上)魚のあらゆる部分を切り分けて全身を味わう「頭料理」 (右下)味噌を塗った豆腐をあぶった「竹田田楽」(画像提供:竹田市観光ツーリズム協会)

岡城
豊後(大分県)の戦国大名・大友氏が、島津軍を撃破した豊薩合戦の舞台として知られる岡城。現在残る高石垣を多用した近世城郭となったのは、文禄3年(1594)に豊臣秀吉の家臣・中川秀成が入って以降のこと(画像提供:藪内成基)

▼岡城下町を文字で味わいたい方へ!

醤油や味噌で栄えた町ならではのソフトクリームは絶品!臼杵城下町(大分県臼杵市)

臼杵城下町
臼杵城下町(画像提供:藪内成基)

臼杵城から一望できる城下町は、宗麟亡き後に臼杵城が近世城郭へと改修されたのと合わせて整備されたものです。かつて臼杵城下町にはキリスト教関連施設が多く存在したとされていますが、現在は臼杵を治めていた稲葉家の下屋敷をはじめとする武家屋敷や寺社仏閣が残っています。

石畳が敷き詰められた道の両脇に武家屋敷や寺が軒を連ねる「二王座歴史の道」は、国の都市景観100選にも選ばれているほど風情豊か! また、臼杵は醤油や味噌など醸造業で栄えた町でもあり、江戸時代の趣を感じさせる商店街「八町大路」では醤油や味噌を使った絶品ソフトクリームを味わうことができます。

臼杵城下町
(左)城下町一帯を活用して開催されるイベント「うすき竹宵」 (右)臼杵はふぐの名産地(画像提供:公益社団法人ツーリズムおおいた)

臼杵城
九州北部を支配したキリシタン大名・大友義鎮(宗麟)の居城として知られる臼杵城。かつて四方が断崖の島だった場所に築かれた海城で、その島の名前から丹生島城とも呼ばれていました(画像提供:藪内成基)

執筆/城びと編集部 

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