これ海の音聞こえるよ、と私。すかさず真似をして、足元の安山岩に耳を当てる息子(当時5歳)。
昨年秋、東京都・豊洲の一角に現れた「403号蒸気機関車」。鉄道開通150年を祝し、芝浦工業大学附属高校の敷地横に復元されました。通勤・通学、週末は散歩や買い物で多くの人が通り過ぎるため、テツやレキジョに限らず、周辺は結構な賑わいに。
そんな人だかりから少し離れた場所でしゃがみ込む親子。別途展示されている2つの岩をペタペタ触り、しまいには抱き抱えたりする始末。ちなみに、機関車の展示台にも同じ築石がふんだんに使われている。これがどれほど贅沢なことか!
「高輪築堤」が世間の話題を程よくさらったのは今から3年前。山手線の新駅・高輪ゲートウェイ駅周辺の開発に伴い発掘された遺構は、新橋ー横浜間で日本初の鉄道が開業したとき(1872)のもの。品川の浅瀬に作られたため、当時は「海上を陸蒸気が走る」と名物になり、歌川広重が描いたほど。実はこの親子、前年に発掘現場を訪れているが、遠くから眺めただけだったため、実物を間近で見るのはこの時が初めて。
築堤の石垣には取り壊し予定だった江戸城の見附や櫓台の石垣なども転用されています。その後の複線化に伴い、遺構は遅くとも19世紀末には地中に埋もれたとみられますが、この度、そんな“聖遺物”が再び地上で日の目を見たわけです。
「きこえないよ」と息子。
そんなはずはない。100年以上も地中で潮の音を染み込ませた石なんだから。どれどれ、、、ほら聞こえた。もう一回やってみな。
「、、、あ、きこえた!」
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