(続き)
拝殿のあたりから南へ脇道を下って行くと南谷に至ります。南谷にはかつて三千六百坊もの坊院が設けられていたとされ、白山神社所蔵の平泉寺の絵図にも多数の坊院が軒を連ねる様子が描かれていますが、平成の発掘調査では階段状に造成された多数の平坦地(坊院跡)が確認され、石垣や石畳道が発掘・整備されています。
奥に謀反岩と呼ばれる岩壁のある神社のあたりから南に続く脇道に「南谷発掘調査地」の案内表示があり、案内に従って進むと発掘調査で発見された石畳道にたどり着きました。石畳道には南側を流れる女神川の河原石が敷き詰められており、坊院は石畳道によって縦横に区画されています。両脇の石垣には坊院への出入口が設けられ、排水路側の出入口には石橋まで架けられていました。石垣には矢穴の跡も見られます。石畳道をさらに上って行くと、発掘調査の成果に基づき土塀と門が復元されています。石畳道や石垣の整備だけでも充分満足でしたが、こうして土塀や門を復元してもらえると、往時の姿が一目瞭然でなお嬉しいですね。
復元土塀・門で引き返して、今度は分岐を南側(若宮神社)へ。こちらにも石畳道と石垣が続いていますが、石畳道沿い(西側)に幅広い横堀が! しかも横堀の向かい側にも石垣が施されています。おいおい、マジかよ…。ちょっと寄り道くらいのつもりが、こちら側にもこんな見どころがあったとは。城郭寺院は数あれど、これほど大規模かつ明瞭に復元された遺構はそう滅多に見られないんじゃないでしょうか。
…白状しますと、白山平泉寺を訪れたのはニッポン城めぐりのイベントのスポットに指定されていたからで、せっかく訪れるんだから一応ひと通り見て回ろうか、程度でしかなかったんですが、思いがけない収穫でした(続日本100名城公式ガイドブック巻頭の山城マニアックで写真付きで紹介されているのは帰宅してから知りました)。平泉寺も苔むす参道などなかなか見応えがありましたが、城好きとしては何と言っても南谷坊院跡がおすすめです。
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