滋賀県守山市にある大庄屋諏訪家屋敷は淀藩の飛び地で代々農民をまとめる大庄屋の屋敷です。元々は諏訪左近将監長治が永正年間(1504~1521)に信州より移住して来たことに始まるようなのですが詳細は不明です。
主屋や書院は江戸期の文化年間(1804~1818)に築かれたようなのですが、この建物がなかなか一癖あるのです。門をくぐって正面に主屋の玄関が見えますが、右手にも門があり、その先は書院になっています。
この書院に隠し通路が付いていて侵入者を見張っているんですね。ドアノブは内側についていますが、外側からは隙間から紙などを通してスコッとあける仕掛けになっていたと思います。すこし変態じみていませんか? 玄関の天井も通路が回り込んで屋根裏に逃げ込めるようになっています。脱出用の仕掛けがあるとさらに完璧なのですが‥。
鬼門には社が置かれ、北西の隅部には茶室が置かれていて、まるで櫓のようにも見えます。北には水路が流れ、水門が水路に面して設けられ、少し手を加えれば枯山水の堀に水を引き込むことも可能なようです。鬼門に設けられた社から南西への延長線上は絶妙に建造物の配置を逸らしています。この構造は米沢城に似ていますね。
こうしてみると防御性を備えた居館というより、ミニチュアの城郭のようにも見受けられます。ここの城主は平時は庄屋のふりをしていますが、実は根っからのマニア(変態)だったのではないでしょうか?
ちなみにこのマニアックな屋敷は市の文化財の指定を受けていますが、日本遺産にも登録されています。
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