都道府県のお城シリーズ 【愛知県のお城】信長・秀吉・家康、三英傑のふるさとはお宝級のお城がてんこ盛り

「国宝」や「国の特別史跡」のお城をもつ愛知県。そのお城の価値もさることながら、なんといったって戦国時代の歴史がアツいです! 織田信長、豊臣秀吉、徳川家康のいわゆる三英傑ゆかりのお城はもちろん、戦国時代、今川義元や武田信玄と奪い合ったお城もあります。有名な武将たちが実際に歩いたかもしれない!?愛知県を代表する8城をご紹介します。

愛知県にあるお城は?

かつての愛知県は、「三河」と「尾張」の2つの国がありました。戦国時代、東には今川義元や武田信玄、北には斎藤道三といった大きな勢力が存在し、彼らに挟まれ成長していった武将が織田信長や、豊臣秀吉、徳川家康です。

信長は、尾張で生まれ育ち、はじめて城主となったのも、はじめてお城を築いたのも尾張の国でした。また、家康も三河の岡崎城で生まれ、幼少期に人質時代こそありましたが、三河に戻って平定したのちに天下人への道を歩いていきます。そして、豊臣秀吉も尾張の農家の家で生まれました。つまり、愛知県は、織田信長、豊臣秀吉、徳川家康のふるさと。三英傑にゆかりのあるお城や、隣国の大きな勢力と奪い合ったお城が点在する地域なのです。一方で、この大きな勢力の間で翻弄する小さな領主の存在も忘れてはいけませんね。

江戸時代になると、徳川家康の子を初代藩主とする尾張(名古屋)藩が誕生しました。愛知県では名古屋城が最も目立つお城ですが、犬山城や岡崎城、吉田城西尾城といった近世城郭も見どころとなっています。それでは、愛知県を代表する8つのお城をみていきましょう!

犬山城(日本100名城)

犬山城

天文6年(1537)、織田信長の叔父・織田信康(おだのぶやす)によって築かれた犬山城。天守が現存する国宝のお城です。最新の研究では、年輪年代法によって天正13〜18年(1585~1590)頃に、天守の1階から4階までが一連で築かれたことが判明しました。このことから現在残っている12の天守の中で「日本最古の天守」の候補の最有力候補にあがっています。華やかすぎないけれども、古風な感じがたまらない犬山城の天守は、お城ファンからも絶大な人気です。

城下町も賑やかで、老若男女が訪れる愛知県屈指の観光名所となりました。昔ながらの町屋建物を改修した、レトロかわいいお店が並び、ひと昔前の時代にタイムトラベルしたような気分が味わえます。

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所在地:愛知県犬山市犬山北古券65-2
アクセス:名鉄「犬山駅」より徒歩約20分。名鉄「犬山遊園駅」より徒歩約20分
楽しみ方:レンタル浴衣・着物でお城めぐりがおすすめ! お城デートするならここ。

名古屋城(日本100名城)

名古屋城

慶長15年(1610)、諸大名に命じて築かせる「公儀普請(こうぎふしん)」によって築城を開始した名古屋城。徳川家康の9男・義直(よしなお)を初代藩主とする尾張徳川家の居城です。なんといっても、名古屋城は国が指定する特別史跡。お宝中のお宝のお城です!!

名古屋といえば「金のシャチホコ」。地域を代表するおなじみのシンボルに定着しましたが、シャチホコがのる天守は、現在耐震性の問題で休館しています。そんな名古屋城の新たな名所は、本丸御殿。10年かけて行われた復元工事が完了し、平成30年(2018)には全面オープンしました。

ちなみに、名古屋城は城びとでも連載を執筆されている前田慶次様が所属する「名古屋おもてなし武将隊」も有名です。週末の土曜・日曜には演舞が行われ、訪れた観光客を魅了しています。

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前田慶次の自腹でお城めぐり【第1回】凸名古屋城(前編) ~武将隊の聖地~
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所在地:愛知県名古屋市中区本丸1-1
アクセス:地下鉄名城線 「名古屋城」 駅より徒歩約5分、名鉄「東大手」 駅より徒歩約15分、「名古屋城正門前」バス停下車すぐ 
楽しみ方:お城を見学したあとは、隣接する金シャチ横丁で名古屋グルメも堪能して、心とお腹を満たす旅を。

岡崎城(日本100名城)

岡崎城

令和5年(2023)NHK大河ドラマ「どうする家康」の主人公、徳川家康が誕生した地! 岡崎城主・松平広忠の嫡男として生まれた家康は、人質として送られる6歳までの間、このお城で幼少期を過ごしました。城内には、家康誕生の折に使われた井戸(東照公産湯の井戸)や、へその緒を埋めて成長を願ったと伝わる塚(東照公えな塚)が残っています。

家康が江戸で幕府を開いてからは「神君出生の城」として大事にされ、格式の高い譜代大名が代々城主を務めました。

現在、復元された天守の中は資料館になっており、三河や岡崎城の歴史や、岡崎の文化と産業を紹介した展示が見られます。隣接する「三河武士のやかた家康館」もおすすめです。

※施設リニューアルのために、天守と三河武士のやかた家康館は令和5年(2023)1月20日(金)まで休館中。

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お城の現場より〜発掘・復元最前線 第9回 【岡崎城】明らかになる江戸時代の岡崎城

所在地:愛知県岡崎市康生町561番地1
アクセス:名鉄「東岡崎」駅より徒歩約15分、愛知環状鉄道「中岡崎」駅より徒歩約15分、JR「岡崎」駅より康生町方面行きバスに乗車、「康生町」バス停下車、徒歩約5分
楽しみ方:さまざまな種類の石垣が見られる! 天守内の資料館で配布されている石垣のパンフレットをゲットして、城内の石垣散策に出発だ!

長篠城(日本100名城)

長篠城

現在の愛知県や長野県、静岡県、山梨県へと通じる利便性のよい立地にあった長篠城は、戦国時代に武田氏・徳川氏の2つの勢力間でたびたび奪いあいがありました。

最も有名な戦は、天正3年(1575)にあった「長篠の戦い」です。徳川方の城主だった奥平氏が守る長篠城を、武田氏の大軍がとり囲みました。すると、鳥居強右衛門(とりいすねえもん)という男が長篠城を抜け出し、織田・徳川の本軍に助けを求めに行きます。強右衛門は武田方に捕まってしまいますが、自分の命を顧みず援軍の到着を伝え、長篠城の兵を救った「勇気の士」として語り継がれるヒーローになりました。長篠城を落とせなかったことで、結果的に、武田氏は滅亡への道を歩むことになったのです。

そんな歴史ロマンが詰まった長篠城。城が築かれた地形や、城内に残る空堀を散策しながら、歴史の分岐点を味わってください。

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所在地:愛知県新城市長篠字市場22-1(長篠城址史跡保存館)
アクセス:JR「長篠城」駅より徒歩約8分
楽しみ方:長篠の戦いの折、武田軍は長篠城を囲むように砦を築きました。長篠城を訪れた際は周辺の砦も一緒にめぐってみよう。

吉田城(続日本100名城)

吉田城

現在見られる吉田城の基礎を築いたのは、徳川家康の娘婿として知られる池田輝政(いけだてるまさ)。天正18年(1590)に入城すると、城と城下町の大規模な改修・拡張整備を実施しました。本丸は、石垣を積み上げた強固な造りでしたが、二の丸や三の丸は空堀を何重にも巡らせた土造りのお城だったのです。

本丸の石垣の多くは、江戸時代に名古屋城の普請で使われた石材を転用したものが積まれています。ですが、吉田城のシンボルにもなっている鉄櫓下の石垣は、輝政時代に積まれたものと考えられており、石垣技術の進化の様子を観察することができます。戦国時代、江戸時代、どちらの石垣もグッとくる美しさです。

江戸時代には、小笠原氏や松平氏など9家22代の譜代大名が藩主を務めた吉田城。幕府の要職を務めた大名が多かったことから、「出世城」とも言われています。

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所在地:愛知県豊橋市今橋町3
アクセス:JR・名鉄「豊橋」駅より豊鉄市内線に乗車、「市役所前」駅または「豊橋公園前」駅にて下車、徒歩約3分
楽しみ方:刻印(こくいん)のある石垣が60個近くあるので、探してみてください!

小牧山城(続日本100名城)

小牧山城

織田信長がはじめて築いたお城。岐阜にお城を建てるまでの4年間しか滞在していなかったにもかかわらず、石垣が多用され、城下は東西南北に延びる街路で区画された、本格的な城造りが行われました。

信長亡き後の天正12年(1584)小牧・長久手の戦いでは、織田信雄・徳川家康方の本陣として再利用され、小牧山城に土塁と空堀の防衛ラインが加わります。信長と家康、二人の足跡を辿れるとは、なんと贅沢なお城めぐりでしょうか。

そして、小牧山城の麓にある「れきしるこまき(小牧山城史跡情報館)」は、デジタル映像技術を活用した展示施設。なかでも、等身大の「石垣模型」は注目していただきたい展示の一つで、発掘調査結果や石垣の構造などを楽しく・わかりやすく、学ぶことができます。

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所在地:愛知県小牧市堀の内1-1
アクセス:名鉄「小牧」駅より徒歩約20分。名鉄「小牧」駅より 「岩倉駅行(小牧市役所前経由)」バスに乗車、「小牧市役所前」バス停下車すぐ。名鉄「岩倉」駅より「小牧駅行(小牧市役所経由)」バスに乗車、 「小牧市役所前」バス停下車すぐ。
楽しみ方:小牧山城を散策する前に「れきしるこまき」に立ち寄って! 北駐車場付近にある土塁の断面展示もユニークで面白い。

古宮城(続日本100名城)

古宮城

江戸時代に書かれた文献によると、武田信玄が、家臣の馬場信春(ばばのぶはる)に命じて築かせたお城です。徳川氏攻略のために置かれた前線の基地で、お城の構造にも武田流の築城術が見てとれます。とくに、大手口の枡形は武田氏のお城の特徴が色濃く残る見事なもの。しかし、長篠の戦いで武田氏の勢力が弱まった後に、徳川氏がお城を改修している可能性もあるため、現在残る遺構は、武田氏か徳川氏どちらの技術で造られたのか、お城ファンが注目する論争となりそうです。

城内は、横堀と土塁が巧みに配置され、まさに迷路。そして、お城を東西に分割する大きな堀切は、素晴らしすぎて感動すること間違いなしです。建物は残っていない戦国時代のお城ですが、土の城の迫力を肌で感じることができる貴重なお城です!

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所在地:愛知県新城市作手清岳字宮山地内
アクセス:JR「新城」駅から「作手高里」行きのバスに乗り「鴨ヶ谷口」バス停下車、徒歩約2分。
楽しみ方:堀底まで降りて、攻撃されている自分を想像する。

西尾城

西尾城

令和2年(2020)に復元された「屏風折れの土塀」。実は、全国的にも珍しい遺構で、復元されているお城はほんのわずかしかありません! 西尾城にはいくつか絵図が残されていますが、正保元年〜4年(1644~1647)の間に藩主が幕府へ提出した「正保城絵図」に、この屈折した土塀が描かれていました。

他にも、本来はお城の中心である本丸にあるべき天守が二の丸に存在しているなど、かなり個性的な西尾城。日本100名城や続日本100名城ではありませんが、西尾城のような隠れた名城にも注目です。

ちなみに、西尾市は日本有数のお抹茶のまち! 周辺には抹茶のスイーツが楽しめるお店があるので、散策後はぜひ立ち寄ってください。

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所在地:愛知県西尾市錦城町231番地1
アクセス:名鉄「西尾」より徒歩約15分。名鉄「西尾」より六万石くるりんバス「平坂中畑線」または「寺津矢田線」に乗車、「歴史公園北」バス停下車、徒歩約2分。
楽しみ方:二の丸にある「旧近衛邸」は京都から移築された江戸時代末頃の建物。縁側でお抹茶をいただきながら、庭園や本丸丑寅櫓を眺める時間は至極。

いなもとかおり
 執筆・写真/いなもと かおり
 お城マニア&観光ライター
 年間120城を巡る城マニア。國學院大學文学部史学科古代史専攻卒。19歳の時に、会津若松城に一目惚れしてから城の虜となる。訪城数は700ほど。国内旅行業務取扱管理者、日本城郭検定1級、温泉ソムリエ、夜景鑑賞士2級の資格をもつ。城めぐりの楽しみ方を伝えるべく、テレビやラジオにも出演中。

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