超入門! お城セミナー 第125回【歴史】お城って誰のものだったの?

お城に関する素朴な疑問を、初心者向けにわかりやすく解説する連載「超入門! お城セミナー」。今回はお城の持ち主について。お城の持ち主は造った人? それとも住んでいた人? 明治時代以降は誰のものになったの? など、意外と気になるお城の所有者に関する疑問を解説します!

大阪城
天下人・豊臣秀吉の居城だった大阪城。豊臣家の滅亡後は徳川将軍家のものとなり、近代は陸軍、現在は大阪市が所有・管理している

基本は守備する武将や領主が城の持ち主

「一国一城の主」。う〜ん、いい響きです。現代では「持ち家がある人」のことを指すことばになってしまっていますが、「本物の城に住んでみたい!」という夢を胸に抱いている人は、少なくないのでは。うらやましいことに、ヨーロッパでは個人で城を所有するということはそう珍しくないもよう。日本はどうかというと、自分の土地に天守モドキを建てることで夢に近づいている人がごく一部いるくらいでしょうか。あとは、城びとでも特集した城泊(夢の「城泊」!全国「泊まれるお城」大調査!)に参加したり、熊本城(熊本県)などが実施している「一口城主」の制度に出資して、プチ満足……といったところ。

あれ? そういえば、日本の城って誰のものなのでしょうか? ということで今回は、意外と考えたことのない、過去から現在までの「日本の城の所有者」について解説します。

城がもっぱら軍事的な防御施設で、使い捨ても当たり前だった中世までは、「城主」とは、詰めている兵を指揮してその城を守るリーダーのことを指したようです。そして、城が巨大化してその役割も増えていった近世以降は、その土地の領主である大名、つまり藩主が「城主」となり、住居・防御施設・政庁として城を日常的に使用・管理していました。

諏訪原城
静岡県の諏訪原城。武田勝頼が築かせた城だが、実際に守ったのは家臣の今福長閑斎。しかし、後に徳川家康に奪われ、徳川方の今川氏真が城主となる。このように、戦国時代の山城は情勢や合戦結果によって頻繁に城主が代わっていた

ところが、幕府の国替やら改易やらのお達し一つで、領地替えはけっこう頻繁に行われていました。現代のように法で定められた土地の所有権がなかったため、一国一城の主といえど、「いやいや、この国はそれがしのものでござる!」と幕府に楯つくことなどできず、心血を注いだ城普請の途中でも、渾身の政策で領地を豊かにしようとがんばっている最中でも、黙って引っ越さなければなりませんでした。ということは城の所有者は、城主のようでじつはそうではなく、幕府だったことになります。

姫路城
西国防衛の要とされた姫路城。能力のない大名を城主にできないため、江戸幕府の命令で9度城主が代わっている

備中松山城
江戸時代に4回城主が代わった備中松山城。2番目の城主・水谷家が改易される際、家臣が城の明け渡しに反対。城に立て籠もる事件が起こったという

近代以降の持ち主は城によって様々

ところが明治時代になって城が役目を終えてしまうと、全国の城は明治政府陸軍省の所有となります。そして「廃城令」によって、陸軍省所管の「存城」と大蔵省所管の「廃城」に仕分けされます。存城処分の城は改変されながらも軍用地として残り、廃城処分の城は普通財産となって、払い下げの後に取り壊されたり、学校用地になったり。あの姫路城天守が、な・な・なんと現在の価値で50万円足らずで売られていたほどなので、このころならば個人で城を買い取って「われは城主なり!」とふんぞりかえることは可能でした。とはいえ当時、使い道がない上に巨大すぎて管理も取り壊しも莫大な費用がかかる天守を、欲しがる人はほとんどいなかったのです。

そんな中、現在天守が国宝の彦根城(滋賀県)は、旧藩主である井伊家が国から城を買い戻したとみられ、明治以降も所有していました(下賜されたとも)。その後、彦根城は第二次世界大戦中に「団結の精神のため」と、市からの依頼で市に寄付され、その時に所有権が移った珍しいケースです。中津城(大分県)も最後の藩主だった奥平家の子孫が経営する企業が所有し、鉄筋コンクリート造りの天守と櫓を建造。しかし、2010年に大分出身の社長が経営する企業が購入して所有権が移りました。

中津城
日本唯一の株式会社が所有する天守である中津城(奥平家歴史資料館)

また、一般的にも有名なのが、国宝天守の犬山城(愛知県)のケース。こちらは、明治時代の地震で天守の修理が必要となった時、尾張徳川家の重臣だった成瀬家に国から譲与され、なんと2004年までずっと個人所有でした(現在は公益財団法人が所有)。(参照「現存天守はなぜ12城しか残っていないの?」「明治時代にお城がたくさん破壊されてしまったって本当?」

犬山城
古式の天守が人気の犬山城。現在は、成瀬家の子孫が理事長を務める犬山城白帝文庫が所有している

この他、地元の豪農と元藩士ががんばって買い戻した松江城(島根県)、民権運動家が落札主から天守を借り受けて博覧会を催し、その収益で買い戻した松本城(長野県)、町民が奔走して買い戻した後、町に寄付されて公会堂として使用されていた丸岡城(福井県)、地元亀岡出身の大本教教祖が買い取って石垣を修復して以来、現在も同団体の所有(見学可)である丹波亀山城(京都府)など、城の運命と所有権は、廃城令を境にあわただしく変化しました。

とはいえ、中津城(企業所有)、犬山城(公益財団法人所有)、亀山城(宗教団体所有)といったかたちはあくまでも例外で、今残っている近世城郭は、ほとんどが公的機関の所有になっています(県・市・省など一つの城でも管轄が分かれて入り乱れているケースも多いようです)。

ただし、公園化などされていない山城跡は、また事情が違います。個人やお寺の所有であることが非常に多いので、見学したい場合は役所などで所有者を確認し、必要に応じて立ち入りの許可をもらわなければいけません。くれぐれもご注意を。

芥川山城
三好長慶が居城とした芥川山城。三好時代の石垣が残る名城だが、現在は私有地。見学に特別な許可はいらないが、所有者の厚意で見学ができることを忘れず、登城マナーをしっかり守ろう

「所有者の移り変わり」という視点から、それぞれの城が歩んだ歴史に思いをはせる……。ほお〜、コレもなかなか“通”な鑑賞の仕方ではないでしょうか。

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執筆・写真/かみゆ歴史編集部
「歴史はエンタテインメント!」をモットーに、ポップな媒体から専門書まで編集制作を手がける歴史コンテンツメーカー。主な制作物に、『地域別×武将だからおもしろい 戦国史』(朝日新聞出版)や『歴史と人物 面白すぎる!鎌倉・室町』(中央公論新社)など。お城の“どうしてそうなった!?”な構造や戦国武将との奇妙な関係を紹介する『ざんねんなお城図鑑』(イカロス出版)が2022年4月4日に発売予定!

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