お城EXPO 2019 徹底ガイド&レポート 【イベントレポート】令和も大盛り上がりの「お城EXPO 2019」に潜入!

2019年12月21日(土)、22日(日)に行われた「お城EXPO 2019」。デジタル想定復元された「大坂冬の陣図屛風」や御城印など、お城ファン注目のコンテンツが多数登場したイベントは大盛況の内に閉幕した。のべ1万8000人が参加した2日間のお城の祭典を振り返ってみよう!



 お城EXPO2019
2019年で4回目を迎える「お城EXPO」。前日の20日には、初のイベントとなる「プレミアム前夜祭」では、専門家によるトークショーやミニコンサートが行われ、大いに盛り上がった

「お城EXPO 2019」が開幕! 限定御城印にファン殺到

12月21日朝、空は曇りがちで冬の冷気が身にしみる。しかし、そんな寒さもどこ吹く風、パシフィコ横浜会議センターには“開城”時間の9時を前に、100人を超える城ファンが並んでいた。彼らの目的は、開催4回目を迎える「お城EXPO 2019」。お城の専門家による貴重な講演が聞ける「厳選プログラム」や、全国各地のお城情報を入手できる「城めぐり観光情報ゾーン」などなど、城の祭典が幕を開ける瞬間を今か今かと待ち受けているのだ。

お城EXPO2019
先頭に並んでいる男性は、なんと朝6時に会場入りしたという。「はじめてのEXPO参加で、今日は観光情報ゾーンや物販をまわる予定。明日は春風亭昇太師匠のトークショーのチケットを取ったので、今から楽しみです!」とのこと

お城EXPO2019、城番衆
今年も城番衆が出迎えてくれた。みんないっしょに〜、「しーろっ!!!」

毎年おなじみの公式城番衆「武者所」が開城を宣言すると、参加者たちは一斉に、厳選プログラムやセミナー、テーマ展示など目的のイベントに急ぐ。その中でも多くの人が向かったのが、3階の観光情報ゾーンの手前にあるインフォメーションだ。ここに並んだ人たちのお目当ては、「国宝五城オリジナル御城印」の整理券。国宝松江城がある松江市の路上詩人・こーたさんが一枚一枚書き下ろすEXPO会場限定の御城印をゲットするため長蛇の列ができ、整理券はあっという間に完売した。

お城EXPO2019、御城印
国宝五城のオリジナル御城印は、自分の好きな国宝城をセンターに描いてもらうことができる。整理券を勝ち取った人たちは、嬉しそうに自分の“推し城”をこーたさんにリクエストしていた

会場内では、他にも災害修復募金のお礼として会場限定御城印を頒布した田丸城や先行発売の黒井城御城印など多数の限定御城印が入手できた。そうした限定御城印なども含め、会場内でゲットできた御城印はなんと約30枚(編集部調べ)。御城印ブームを肌で感じられた。

お城EXPO2019、国宝五城
「国宝五城」ブースでは、輪投げに挑戦すると国宝城の別名が書かれた限定御城印がゲットできるアトラクションが行われていた。「毛利元就「三矢の訓」連携会議」のように、武将に関連する城の御城印をセット販売するブースも

城びとブース
「城びと」のブースでは、取材時に集めた全国の御城印を展示。ジャバラの「城びとポケット御城印帳」に入れた御城印を広げると、なかなかの迫力。また、SNSフォローでのステッカープレゼントも好評だったそう

お城EXPO2019、公式グッズコーナー
御城印は公式グッズコーナーでも大人気だった。お城EXPOオリジナルの「御城印ステッカー」と会場限定「御城印帳」は午前中で完売。「城びと」の御城印帳も多くの人が手に取っていた

「大坂冬の陣図屏風」に首里城写真展…2019年も展示がアツい!

プログラムが満載の「お城EXPO」だが、特別展示も充実していた。

豊臣政権から江戸幕府へと天下人が移り変わった激動の時代を、書状などの史料から紐解く「天下の行方−大坂の陣その後−」では、1枚の屏風絵が注目を集めていた。豊臣家と江戸幕府の決戦・大坂冬の陣を描いた「大坂冬の陣図屏風」のデジタル想定復元図だ。大坂城はもちろん、合戦に参加した将兵一人ひとりが色鮮やかに再現された屏風絵はお城ファンたちを大いに魅了したようで、鑑賞と写真撮影のために長〜い行列ができていたほど。隣室では、石田三成や真田昌幸・信繁(幸村)父子の書状などを展示。来城者は武将たちの人生を読み取ろうと、史料に熱い視線を向けていた。

お城EXPO2019、大坂冬の陣図屏風
デジタル推定復元された「大坂冬の陣図屏風」(制作:凸版印刷株式会社)は写真撮影可。赤備え同士が戦う「真田丸の戦い」の場面が人気の撮影スポットだったようだ

4階ではもう一つ、お城ファンの注目を集めた展示があった。それは、10月31日の大火災で大きな被害を受けた首里城の写真を展示する「在りし日の首里城」。火災前の美麗な写真と火災の現場を撮影した報道写真、そして前回の復元工事の様子を追った映像に釘付けになる来城者たち。炎上する建物や燃え落ちた正殿に涙ぐむ姿も見られた。展示室内にはメッセージボードが設けられ、「首里城がんばれ!」「ふるさと納税で応援しました」といった応援の言葉が並んだ。

お城EXPO2019、首里城
多くの見学者がいたにもかかわらず、室内は静寂に包まれていた。メッセージボードには再建を祈る暖かい言葉が並ぶ

子どもたちも熱狂! クイズラリー「EXPO城を攻略せよ!!」に挑戦

今年初の試みとなった「EXPO城を攻略せよ!!」は、会場の全フロアを利用したクイズラリーだ。問題ボードを探し、解答用紙の正解だと思う番号にハンコをペタリ。引換所で、正解数に応じて抽選機が回せるという仕組みだ。会場では、一生懸命ボードを探し、「う〜ん」と悩みながら答えを考える子どもたちの微笑ましい姿が見られた。

ラリークイズ
「公式ポスターに忍者は何人いる?」のようなサービス問題から、「上州真田三名城に含まれないのはどれ?」など、大人でも即答できない難問もあった

家族や子ども向けのワークショップも多数。城郭復元イラストの第一人者・香川元太郎さんによるワークショップ「お城の絵を描こう」では、城の写真や縄張図を使った実践的なレッスンが行われ、子どもたちは目を輝かせつつペンを走らせていた。また、こちらも毎年恒例となった「真田紐のワークショップ」にも、多くの親子連れが参加。コツを教えあったり、お父さんに助けを求めたりと、悪戦苦闘しながら真田紐づくりを楽しんでいた。

お城EXPO2019、ワークショップ
香川さんが今回の教材として選んだのは美濃金山城の本丸。親子で一緒に作業する風景も。出来具合はどうかな?

発想の柔軟さや徹底した調査研究が素晴らしい「お城の自由研究」

小・中学生を対象にした「城の自由研究コンテスト優秀作品展」には、毎年数百点もの応募があり、その中から10〜15点ほどしか選ばれない。それだけに、研究者顔負けのレベルの高い作品が毎年受賞している。文部科学大臣賞の「尾張名古屋は城でもつ」は、議論が続く名古屋城木造天守再建問題について、現地レポートや文科省への取材まで敢行してその是非を問う意欲作。また、審査員特別賞を獲得した「攻城兵器の発達と城の形」は、各戦争における城と攻城兵器の関係を考察するだけでなく、戦争の状況をボードゲームに転換したアイデア満点の作品だ。

お城EXPO2019、城の自由研究コンテスト優秀作品展
子どもだけでなく、大人でも思わずうなってしまうような作品が並ぶ。「来年は○○君もがんばろうね」「こんな難しいの僕にはムリだよ〜」という会話も聞かれた

「北条氏照の城は「縄張」がおもしろい!!」で学研プラス賞を受賞した五十嵐智洋くん(小4)、充輝くん(小2)の兄弟は、加藤理文先生のセミナー「お城の自由研究ってどうやるの」に登壇。この作品は「滝山城の堀はなぜすべるのか?」という問題意識から、関東ローム層の土や南九州のシラス台地の土を集めて、水に濡らしたり顕微鏡で観察したりして土の性質にアプローチした、たいへん実証的な研究だ。「関東ローム層の土はつるつるして滑りやすいため、その理由を知りたかった」とは充輝くんの弁。実験結果を模造紙にまとめた兄の智洋くんは、「いつもテーマを探している」「作品は夏休みだけで終わらず、コンテストの提出期限ギリギリまでかかった」という。これからも研究を続け、来年も新しいテーマでコンテストに参加するようだ。

お城EXPO2019、北条氏照の城は「縄張」がおもしろい
滝山城の堀切模型は充輝くんの作品。傾斜は本物と同じ60度で、紐を引っ張ると忍者が動く仕掛けだ

明智光秀が目立った「城めぐり観光情報ゾーン」

地方自治体や企業がお城に関するさまざまな情報を発信する「城めぐり観光情報ゾーン」。毎年のように出展団体の数が増加しており、今年も最多記録を更新した。そんな中、出展ブースの一角をずらっと占めていたのが2020年のNHK大河ドラマで注目を集める「明智光秀」関連のブース。光秀出生地やゆかりの地が残る岐阜県、光秀が統治した滋賀県、京都府、兵庫県などが軒を連ね、なかには明智光秀の銅像を建てる募金活動を行う城も。

お城EXPO2019、城めぐり観光情報ゾーン
お揃いの法被を着て、明智光秀ゆかりの地をアピール。背中には光秀の娘ガラシャと結婚した細川忠興、その父の細川幽斎の名前も

各ブースそれぞれに工夫を凝らして自治体やお城をアピール。人気武将である真田関連の限定グッズが人気を博す「上州真田三名城」、甲冑を着た武将が紙芝居を読んでくれる「うんぱく三城・松江城月山富田城米子城」、郡山城跡の模型が目を引く「毛利元就『三矢の訓』連携会議」、金田城を舞台にしたマンガ『アンゴルモア』とのコラボを行う「古代山城 金田城」、年末に「消えた戦国の城 白川郷の埋蔵金を追え!」の放送を控えていた「株式会社ファミリー劇場」などなど…、どのブースも絶えず人だかりができていた。

お城EXPO2019、お城EXPO2019、城めぐり観光情報ゾーン
松江城のブースでは、“城主”の堀尾吉晴公が花押を書いてくれる

「国宝五城(松江城、姫路城彦根城犬山城松本城)」のブースでは、輪投げで成功した城の御城印を参加者にプレゼント。「小田原城石垣山城・北条五代観光推進協議会」では、マンガ『センゴク』のパネルと一緒に記念撮影ができるスポットを用意していた。ブースは年々、エンタメ度合いがアップ。出展者は城ファンを喜ばせようと、切磋琢磨してアイデアを出しているのが感じられる。両手に持つバッグは、ゲットしたパンフレットやグッズ類でパンパンだ。そして気持ちは、次の休日にどこを訪れようか、城へと思いが馳せている。

また、ブースの様子や会場の様子は、城びとのTwitterでも当日、速報レポートがされていたので、
一つ一つのブースの詳細は下記ツイートを参照してほしい。(②以降は、①のツイートにぶら下がる形で閲覧可能)


観光情報ゾーンにイベントステージ、厳選プログラム、セミナーやワークショップと慌ただしくブースをまわっているうちに、あっという間に2日間が終了した。「EXPO」という名称のとおり、城とは何かを考え、城の最新情報に触れ、城のあらゆる側面に触れられる2日間。訪れた人の誰もが、「だから自分は城が好きなんだ」と納得して帰路についたことだろう。2020年のお城EXPOも今から楽しみだ!


執筆・写真/かみゆ歴史編集部
「歴史はエンタテインメント!」をモットーに、ポップな媒体から専門書まで編集制作を手がける歴史コンテンツメーカー。手がける主なジャンルは日本史、世界史、美術史、宗教・神話、観光ガイドなど歴史全般。主な城関連の編集制作物に『日本の山城100名城』『超入門「山城」の見方・歩き方』(ともに洋泉社)、『よくわかる日本の城 日本城郭検定公式参考書』『完全詳解 山城ガイド』(ともに学研プラス)、『戦国最強の城』(プレジデント社)、『カラー図解 城の攻め方・つくり方』(宝島社)、「廃城をゆく」シリーズ(イカロス出版)など。