【イベントレポート】お城EXPO 2017:2日目「お城ファンの熱気でムンムン!」

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3日間で最大の来城者を集めたお城EXPO 2日目。入城口には昼間、長い行列ができた

にぎわう城内は城ファン同士の出会いの場に!

1日目に引き続き快晴で迎えた「お城EXPO 2017」2日目。休日とあって家族連れやカップルが多く来城。来城者数も3日間のうちで一番多く、会場のどこのブースに行っても人、人、人、城ファンで溢れている。「城ファンってこんなにいるのか〜」と感慨深い。

熊本県のくまモンや、群馬県沼田市出身の武将・真田信之の甲冑を着たぐんまちゃんなど人気のご当地キャラクターも集結し、会えるのを心待ちにしている来城者も。「1日じゃとても回りきれませんでした」(30代・女性)と、前日に引き続き来城する人も多く見受けられた。

開城を迎え入城ゲートをくぐると「ハイし〜ろ(城)!」と元気なかけ声が飛び交う。お城EXPO公式城番衆武者所との記念撮影ブースだ。その横のティールームでは、1日40食限定のチョコ兜ケーキ(500円)が販売されており、昼過ぎには売り切れてしまった。最後の1つをゲットした女性2人組は食べる前にiPhoneで写真撮影。「このケーキは絶対食べたかったんです」と笑顔で話してくれた。

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武将たちを侍らせ大将スタイルで記念撮影。合い言葉は「ハイ、し〜ろ!」

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城めぐり観光情報ゾーン前に登場したくまモンの前には、瞬く間に人垣が出来上がった

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伊達政宗の甲冑をモチーフに、三日月形の前立て(兜の前面にある飾り)を板チョコで表現したチョコレートケーキ

「お城EXPOは大好きなお城に囲まれながら、趣味を共有できる友だちがつくれる素敵なイベントです」と語るのは30代の女性。日本全国3000城をめぐるアプリ「発見! ニッポン城めぐり」を通じて出会った友だちと、会場で会う約束をしているという。会場を見渡すとスマートフォンをつき合わせながら、このアプリを介して「友達申請」を行っている人をちらほら見かけた。お城EXPOは城ファンの輪を広げるファンミーティングの場にもなっているようだ。

特別会場では「日本城郭検定特別編 お城EXPO検定 2017」も行われた。「今年お城デビューしたばかりなんですけど、挑戦しちゃいました」(40代・女性)という声もあり、腕試しとして受験した人が多かったようだ。正規の日本城郭検定は、入門編の4級から上級者向けの1級まで全5クラスからなる検定で、現在の受験者は述べ1万8000人。お城好きなら是非チャレンジしたい検定だ。実際、今回のお城EXPOで取材していると、「じつは僕、1級を持っているんですよ〜」と向こうから話してくれる来城者も多かった。2018年の開催日はまだ決定していないが、機会があれば挑戦してみてはいかがだろうか。

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日本城郭検定特別編受験会場の様子。他のブースとは違い、緊張感の漂う中で受験する挑戦者たち

登城者を夢中にさせた展示品の数々

お城EXPOでは、「日本100名城&続日本100名城パネル展」「厳選城絵図展」「お城ジオラマ・お城模型展」などさまざまな展示が企画されていた。日本城郭協会と学研プラスが共催した「城の自由研究コンテスト」は、全国の小中学生を対象とするもので、2017年で16回を迎えた。しのぎを削った応募作品392点の中から、受賞した20作品がお城EXPOに集結。そのレベルの高さに、子どもだけでなく大人も感心しきりだった。

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名古屋城の集客力に迫った「尾張名古屋は城でもつは本当か?」(小学4年生/文部科学大臣賞)を熱心に見る小学生

出展作品を見に来ていた12歳の男の子は「毎年学校の宿題としてお城関連の自由研究を提出していました。もっと早くコンテストを知っていたら応募していたのに!」と悔しさを滲ませた。この男の子と同じように熱心に見ている子どもも多く、ここから未来の城郭研究者が誕生するかと思うと、日本城郭界の未来は明るい。

「お城ジオラマ・お城模型展」では、岐部博さん、長谷川進さん、二宮博志さんの3名によるジオラマ・模型30点を展示。長谷川さんの1m近い高さにもなる天守群や、高低差まで正確に再現された二宮さんのジオラマなど、その精密さに来城者は目を奪われ、思い思いにシャッターを切っていた。制作者の岐部さんや長谷川さんが会場に登場するというサプライズも。作品のこだわりや撮影のコツを語りかけてくれるという交流が生まれたのも、このブースならではだろう。

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長谷川さんによる宇和島城や大阪城などの天守の模型。100均などで入手できる安価な材料を用いているのが特徴。「つくりながら『こういう構造なのか!』とわかるのがおもしろい」と長谷川さん

模型やジオラマを “築城”する時のポイントは、制作者によって異なるという。岐部さんは「私の場合、ひと目でバッと飛びこんでくるような、見栄えを重視したジオラマ作りを目指しているため、縮尺や配置を意図的に変えることもある」とも。11歳の男の子は「自分も自由研究でお城のジオラマを作ったことがあるけど、ここにある作品はすごい!」と興奮気味に話していた。

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岐部さんの豊臣期大坂城のジオラマ。本丸の石垣は、迫力を出すためにあえて実際の比率より2倍近い高さにしている

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角度を気にしながら安土城の撮影に挑む来城者

「特別展示 真田兄弟の絆」では、真田信繁(幸村)直筆の書状が公開された。2016年に約100年ぶりに発見された書状で、関東地方での展示は初めて。お城EXPO開催直前に急遽決定した企画で、岐部さんのジオラマや城郭写真家・畠中和久さんの写真とともに展示された。大河ドラマ「真田丸」人気の影響もあってか、展示室の外に行列ができるほど多くの人が詰めかけた。

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信繁直筆の書状を熱心に見る来城者。義兄の小山田茂誠へあてた文面からは、九度山での配流生活における信繁の苦労が読みとれる

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明治5年に陸軍省が作成した城郭調査絵図を集めた「厳選城絵図展」。展示会では初展示のものも登場した。「絵図や書状に、廃城にいたるまでの詳細が事細かく書いてあることが、自分にとっては意外で驚いた」(20代・男性) 

昇太師匠の登場から大爆笑に包まれた厳選プログラム

2日目の厳選プログラムは、芸能界屈指の山城好きとして知られる春風亭昇太師匠と、城郭ライター・萩原さちこさんによる絶妙なかけあいからスタート。昇太師匠が「今川義元でーす」と言いながら登場すると、会場はいきなり笑いに包まれた。

「三大名城について考える」と題された2人のトークショーでは、萩原さん曰く「独断と偏見による2人の三大名城」がカテゴリーごとに紹介された。天守の三大名城では、「姫路城(兵庫県)・松本城(長野県)・松江城(島根県)」と初心者にもわかりやすい3城を挙げた萩原さんに対し、昇太師匠は「備中松山城(岡山県)・弘前城(青森県)・高知城(高知県)」のややクセのある3城を選択。弘前城は「天守と言い張って、頑張っている感じ」がポイントだという。

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石垣の三大名城では萩原さんが「長岩城(大分県)・丹波岩屋城(兵庫県)・米子城(鳥取県)」、昇太師匠が「赤木城(三重県)・江戸城(東京都)・横須賀城(静岡県)」を挙げた

話題は2017年に訪れた三大名城に。昇太師匠は「米子城(鳥取県)・知覧城(鹿児島件)・前川本城(宮城県)」を、萩原さんは「姫野々城(高知県)・小笠原氏城(長野県)・村上連珠砦(長野県)」をチョイス。昇太「姫野々城は僕も大好き!」、萩原「姫野々城は昇太師匠が誉めた城として高知で有名でしたよ〜」、昇太「ウソ!そうなの!?」。昇太師匠がブログで紹介したことがきっかけとなり知名度があがったことに、当の本人も大興奮。二人の軽快なかけあいであっという間に時間が過ぎていった。

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々城(高知県)の写真を見ながら楽しそうに話すお二人

昇太師匠と萩原さんのトークが終わり一息ついていると、次の登壇者である千田嘉博先生(奈良大学教授)が観覧席に登場。瞬く間にサインや握手を求める行列ができた。

お城イベントに参加する若い女性が増えたことを喜ぶトークからはじまった、千田先生の「江戸始図から見た江戸城」。松江市歴史館で千田先生が再発見した「江戸始図」を読み解きながら、家康の築いた江戸城の歴史的意義を論じた。

千田先生は慶長期江戸城を「戦国時代の城づくりの最終形」だと語る。「連続外枡形」は西日本の城の最終到達点、「連続丸馬出し」は東北の土の城の最終到達点と考えられているが、江戸城にはその両方が設けられている。慶長期江戸城には当時の全国における城造りの最先端技術が集結しており、お城の歴史を語る上で極めて重要な資料だと力説した。

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矢印が動いたり拡大されたりとモーションを自在に駆使した千田先生のプレゼンは大好評

天下分け目の「関ヶ原合戦」をテーマに語ったのは、日本城郭協会理事長の小和田哲男先生、国際日本文化研究センター名誉教授の笠谷和比古先生、静岡英和学院大学講師であり、小和田哲男先生の息子でもある小和田泰経先生の3名。「家だと呼び捨てにしているのですが、さすがに今日は泰経『さん』と呼びましょうか」と、親子共演ならではのなごやかな雰囲気でスタート。

2017年夏に司馬遼太郎の小説を映画化した『関ヶ原』の話題を皮切りに、まずは笠谷先生が関ヶ原合戦の基礎となる、5つの政治的対立構造を解説。その後、泰経先生を交えて“小山評定は実際にあったのか否か”という話題になると、議論はヒートアップ。笠谷先生は「絶対にあった」と断言し、「家康が小山に一ヶ月留まっていたのも、豊臣方の状況が変わったから」などと持論を展開した。来城者も用意されたレジュメに熱心にメモをとっており、こう語る人もいた。「自分の知らない新しい説がポンポン出てきた。もっとギリギリまで聞きたかったね」(70代・男性)

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1000人収容できるメインホールがほぼ満員となった

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左から小和田哲男先生、笠谷和比古先生、小和田泰経先生

広島大学大学院教授の三浦正幸先生は、「天守の構造や意匠を見直す」と題して登壇。「天守は櫓が巨大化したわけではありません」と、専門である建築学の観点から見た天守の歴史や構造を、軽快にテンポ良く解説。そして天守にあって櫓にはない意匠として廻縁、四方の窓、破風などを挙げ、ただのデザインではなく、それぞれに意味があると説いた。「天守の窓の位置は上下が互い違いになるよう造ります。ところがこれを踏襲できない事態が発生した時、破風でごまかすことも」など、今後城を訪れた時に確認したくなるような話題が盛り沢山だった。

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姫路城天守は欠陥建築だった!?」という衝撃のワードも持ち出し、姫路城や名古屋城の天守の構造的な弱点や矛盾などを指摘した三浦先生

「続日本100名城」の公式ガイドブックは2日目で売り切れ!

物販ブースも大盛況だ。「売り切れちゃうと思って真っ先に来ました。2WAYトートが欲しかったので買えてよかったです」(30代・女性)、「熊本城Tシャツと丸岡城のバンダナをゲットしました!」(20代・女性)と女性にはアパレルグッズが人気な様子。「ノートがあれば学校で使えるのになぁ。来年に期待!」(10代・男性)と、普段使いできる文房具グッズを望む声も聞かれた。

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城本が大集合した公式ショップの書籍コーナー。子どももおじいちゃんも熱心に品定め

「城下町 物販ブース」では、お城ジオラマ復元堂や童友社などの城郭模型の他、各出版社によるお城関連の書籍も販売されていた。学研プラスは「続日本100名城」の公式本となる『続日本100名城公式ガイドブック』を先行販売。加藤理文先生の宣伝もあってか、ブースには購入者がひっきりなしに訪れ、15時頃には完売した。

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先行販売された『続日本100名城公式ガイドブック』(学研プラス)は3日目を待たず売り切れ。現在は全国の書店で手に取ることができる

3日間のうち、最も多くの入城者があった2日目。やや人疲れしながらも、笑顔で帰宅していく来城者の表情が印象的だった。


執筆・写真/かみゆ歴史編集部
「歴史はエンタテインメント!」をモットーに、ポップな媒体から専門書まで編集制作を手がける歴史コンテンツメーカー。手がける主なジャンルは日本史、世界史、美術史、宗教・神話、観光ガイドなど歴史全般。主な城関連の編集制作物に『日本の山城100名城』『超入門「山城」の見方・歩き方』(ともに洋泉社)、『よくわかる日本の城 日本城郭検定公式参考書』『完全詳解 山城ガイド』(ともに学研プラス)、『戦国最強の城』(プレジデント社)、『カラー図解 城の攻め方・つくり方』(宝島社)、「廃城をゆく」シリーズ(イカロス出版)など。

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