都道府県のお城シリーズ 【滋賀県のお城】近江を制する者は天下を制する!戦国の雄たちが琵琶湖周辺に競って築いた名城

日本100名城・続日本100名城を中心に、各都道府県を代表するお城をご紹介する「都道府県のお城シリーズ」。今回は滋賀県編です。交通の要衝であり京の都にも近い近江(滋賀)には、名だたる戦国大名たちがこぞってお城を築きました。織田信長の拠点・安土城や小谷城をはじめ、日本100名城・続日本100名城にも選定されている名城を中心にご紹介します。

滋賀県にあるお城は?

現在の滋賀県である近江国は、主要な街道が交わり琵琶湖の水運もある、水陸の交通の要衝地。さらに京の都に近いこともあり、「近江を制する者は天下を制す」と言われるほど重要視されていました。そうした背景もあって、有力な戦国大名たちが競うように近江にお城を築き、安土城や彦根城など歴史的な名城が琵琶湖周辺に並んでいるのです。滋賀県のお城の数は実に1300以上で、都道府県別のお城の数として単位面積当たりでは日本一と言われています。

■織田信長が築いた幻の城・安土城(近江八幡市・日本100名城)

安土城

織田信長が天下統一の足がかりとして、琵琶湖を望む標高199mの安土山上に築いた安土城。畿内の名工たちを集め、天正4年(1576)から約3年の歳月をかけて完成させました。信長は自身の権力・財力を示すために豪華絢爛な天主を築き、当時最新鋭の総石垣造りと合わせて近世城郭の礎を確立しました。

“天下人の拠点”にふさわしいスケール

安土城は本能寺の変の後に焼失し、残念ながら天主や屋敷などの建物は残っていません。しかしそれでも、高く積まれた立派な石垣や大手道の長く壮大な石段などが現存。また、山腹の大手道両側には羽柴秀吉、徳川家康、前田利家ら信長の家臣たちの屋敷跡(伝家臣団屋敷跡)と伝わる場所も数多くあり、安土城がいかに広大かつ重要な城郭だったかを物語っています。

安土城の所在地・アクセス・城びとおすすめの楽しみ方
所在地:滋賀県近江八幡市安土町下豊浦
アクセス:JR琵琶湖線「安土駅」から徒歩約25分
楽しみ方:安土駅前の城郭資料館に展示されている安土城模型を見てから登城すると、当時の光景に思いを馳せやすくなる。

■現存天守を誇る国宝・彦根城(彦根市・日本100名城)

彦根城
アイラさんご投稿画像

関ヶ原の戦いで勝利を収めた徳川家康は、豊臣家と西国大名を監視するための城を築くよう“徳川四天王”の井伊直政に命令。直政は慶長9年(1604)から彦根城の建設に着手し、その遺志を継いだ嫡子直継が元和8年(1622)に完成させました。井伊家は明治維新まで14代にわたって彦根城を守り、明治の廃城令も昭和の戦禍も乗り越え、築城当時の姿が偲ばれる城郭が今も残っています。

現存天守を彩る多彩な装飾に注目!

何と言っても最大の注目は、全国に12しかない現存天守! 屋根には切妻破風・入母屋破風・唐破風、さらに華頭窓や高欄付きの廻縁などを多様に配し、変化に富んだ美しい姿を見せています。他にも国の重要文化財である天秤櫓、西の丸三重櫓、二の丸佐和口多聞櫓、太鼓門櫓、そして大名庭園・玄宮園と、名城と呼ぶにふさわしい景観を楽しめます。

彦根城の所在地・アクセス・城びとおすすめの楽しみ方
所在地:滋賀県彦根市金亀町1-1
アクセス:JR琵琶湖線「彦根駅」から徒歩約15分
楽しみ方:井伊直弼が青春時代を過ごした埋木舎や中濠沿道の松並木「いろは松」など、城外にも歴史を感じさせるスポットが満載。

■日本五大山城に数えられる堅城・小谷城(長浜市・日本100名城)

小谷城
キンヤさんご投稿画像

標高495mの急峻な山にそびえる小谷城(おだにじょう)。湖北を拠点とする浅井氏の発展と共に築かれ、天正元年(1573)に織田信長に攻め落とされるまで、浅井氏三代の拠城として機能しました。前面には虎御前山・山脇山・丁野山、西に高時川、背後には伊吹山系が控えるという天然の要害を構える堅城で、日本五大山城の一つに数えられています。

要衝の地であったことを物語る一大パノラマ

小谷山の地形を利用して尾根伝いに多くの曲輪が配置され、建築物は残っていませんが石垣や堀切が現存し、当時の面影を感じさせます。また、城跡からは琵琶湖や湖北一帯を一望でき、小谷城が要衝の地であったことを実感できます。その一大パノラマは圧巻で、ハイキングしながら歴史も楽しめるスポットとして人気を集めています。

小谷城の所在地・アクセス・城びとおすすめの楽しみ方
所在地:滋賀県長浜市湖北町他
アクセス:JR北陸本線「河毛駅」から徒歩約40分
楽しみ方:登山ルートが複数あるので、立ち寄りたい史跡を通るか確かめてから登城したい。

■戦国時代屈指の山城・観音寺城(近江八幡市・日本100名城)

観音寺城
イオさんご投稿画像

近江守護六角氏の居城として機能した観音寺城(かんのんじじょう)。標高432mの繖山(きぬがさやま)一帯に城域が広がり、曲輪の数は1000以上! その広さは関西の山城では屈指です。城域は天然の要害で守りを固めつつ、安土城以前の中世城郭では珍しく高石垣を導入しました。

安土城よりも早い本格的な石垣に注目!

観音寺城の最大の特徴は、総石垣造りの城の元祖として知られる安土城より前の時期でありながら、城内の要所に本格的な石垣・石塁が多く見られること。なかでも、平井氏の居館があったとされる高さ3.8m・長さ32mにも及ぶ虎口跡の高石垣には、長辺2m以上の巨石まで用いられていて圧巻です。また、滋賀県立安土城考古博物館では観音寺城出土資料を見ることもできます。

観音寺城の所在地・アクセス・城びとおすすめの楽しみ方
所在地:滋賀県近江八幡市安土町下豊浦
アクセス:JR琵琶湖線「安土駅」から桑実寺(要入山料)登山口まで徒歩約30分、もしくは石寺登山口まで徒歩約60分(駅前レンタサイクルあり)
楽しみ方:安土駅前のレンタサイクルを利用し、登山に費やすエネルギーを節約するのもおすすめ。

■度重なる合戦の最前線となった「境目の城」鎌刃城(米原市・続日本100名城)

 鎌刃城
がっくんさんご投稿画像

琵琶湖や中山道、さらに周辺の山城も望む標高384mの山に築かれた鎌刃城。江北と江南の国境線に位置する“境目の城”で、合戦の最前線になることも多く、その時々の勢力争いによって城主が入れ替わりました。山頂の主郭と副郭を中心に、3方向の尾根筋に曲輪が階段状に設けられていました。当初は土造りの山城と考えられていましたが、石垣を多用していたことが発掘調査によって判明しています。

遺構も眺望もスケール満点!

鎌刃城には石垣、堀切、曲輪などが良好な状態で残っていて、なかでも北の曲輪に現存する大石垣が見事! また眺望も抜群で、見晴らし台が整備された北Ⅳ-2曲輪からは伊吹山、琵琶湖、さらには佐和山城なども見渡すことができます。防御力の高さを物語る畝状竪堀群や連続堀切も見逃せません。

鎌刃城の所在地・アクセス・城びとおすすめの楽しみ方
所在地:滋賀県米原市番場
アクセス:JR東海道本線「米原駅」からバス「番場」下車、徒歩約45分
楽しみ方:滝から城内へと導水する「水の手」という全国的にも珍しい水路遺構が残っている。

■織豊系城郭の特徴を今に伝える八幡山城(近江八幡市・続日本100名城)

八幡山城
イオさんご投稿画像

信長の死から3年後の天正13年(1585)、豊臣秀吉の甥・秀次が標高271.9mの八幡山山頂に築いた八幡山城。最頂部に本丸を設け、その周囲に二の丸・西の丸・北の丸・出丸が配置された一大城郭で、秀次館跡で金箔瓦が多数出土していることからも豪華な城だったことが伺えます。しかし、文禄4年(1595)に秀次が謀反の疑いで切腹させられると、八幡山城も廃城となりました。

“天下人の甥”が築いた見事な高石垣

総石垣造りだった八幡山城では、各曲輪を囲む高石垣が残っていて、織豊系城郭ならではの特徴を色濃く示しています。山腹の居館跡に残る巨大な内枡形虎口の石垣も圧巻です。山城ということもあり眺望が抜群で、なかでも西の丸跡や北の丸跡からは琵琶湖や比良山系を望むことができます。また、本丸跡には秀次の菩提寺である村雲御所瑞龍寺(むらくもごしょずいりゅうじ)が京都から移築されています。

八幡山城の所在地・アクセス・城びとおすすめの楽しみ方
所在地:滋賀県近江八幡市宮内町
アクセス:JR琵琶湖線 「近江八幡駅」からバス約7分、「大杉町」下車徒歩約5分
楽しみ方:重要伝統的建造物群保存地区に選定されている情緒豊かな城下町もセットで訪れたい。

■賤ヶ岳の合戦で柴田勝家が本陣を置いた玄蕃尾城(長浜市・続日本100名城)

玄蕃尾城
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現在の滋賀県と福井県の県境にそびえる柳ヶ瀬山の山頂に、織田信長の家臣・柴田勝家が砦として築いた玄蕃尾城(げんばおじょう)。南北300m・東西150mに及ぶ城域には石垣がなく、空堀をめぐらせ土塁を築くことで守りを固めていました。賤ヶ岳の合戦で勝家が本陣を置きましたが戦に敗れ、その後使用されることなく廃城となりました。

天然の要塞を体感したい!

建築遺構は現存していませんが、山城としての構造はほぼ手つかずのまま残されていて、山上の主郭では一段高い櫓台(天守台)も見られます。防衛を強く意識して土塁や空堀を構成した複雑な縄張りは圧巻で、織豊系山城の最高水準と言えます。

玄蕃尾城の所在地・アクセス・城びとおすすめの楽しみ方
所在地:滋賀県長浜市余呉町柳ヶ瀬/福井県敦賀市刀根
アクセス:JR北陸本線「余呉駅」または「木ノ本駅」からバス「柳ヶ瀬」下車徒歩約1時間30分
楽しみ方:長浜市の柳ヶ瀬集落から山頂まで約1時間半歩くコース以外にも、福井県側から峠近くまで自動車で登り、林道で山頂を目指すコースもある。

■彦根のもう一つの名城・佐和山城(彦根市)

佐和山城
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鎌倉時代に近江守護佐々木氏によって築かれ、近江の要衝を守る城として重視された佐和山城。天正18年(1590)に城主となった石田三成が5層の天守を構える近世城郭へと大幅に整備し、その出来栄えは「三成に過ぎたるもの」と言われるほど立派なものでした。関ヶ原の戦いで三成が敗れた翌日に落城すると、徳川四天王の井伊直政が新しい城主に。その後、近隣に築かれた彦根城へ井伊家の居城機能が移ったため、廃城となりました。

“歴史の中にのみ生きる城”のわずかな面影を偲ぶ

廃城となった佐和山城の石垣や建築物は、ほとんどが彦根城や周囲の寺院に移築・転用されました。現在では大手口付近の土塁や本丸付近にわずかに残る石垣などが、往時の面影をひっそり偲ばせ、歴史ロマンの想像力を刺激します。標高232.9mの山頂に設けられた本丸からは、彦根城はもちろん琵琶湖や街道も一望でき、この地が要衝であったことが伺えます。

佐和山城の所在地・アクセス・城びとおすすめの楽しみ方
所在地:滋賀県彦根市古沢町
アクセス:JR琵琶湖線「彦根駅」から徒歩約20分
楽しみ方:清凉寺や宗安寺など佐和山城の建築物が移築されたという周囲の寺にも足を運びたい。

■築城名人・明智光秀が築いた!坂本城(大津市)

坂本城
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元亀2年(1571)、比叡山延暦寺を焼き打ちした織田信長は家臣の明智光秀に対して、比叡山や湖西地域を押さえることを目的に、琵琶湖に面した要衝地である坂本に新たな城の築城を命じました。そうして完成したのが坂本城です。城内に琵琶湖の水を引き入れた総石垣造りの水城で、安土城よりも早く壮麗な天守が建っていたとされ、築城名人・明智光秀の本領発揮というべき豪壮絢爛な近世城郭だったようです。

琵琶湖の水底に眠る“幻の石垣”

光秀が山崎の戦いに敗れた後に坂本城は焼失し、その後再建されるも天正14年(1586)に廃城。遺構は現在ほとんど残っていませんが、琵琶湖底にある本丸石垣が唯一面影を残していて、琵琶湖の水位が下がるとわずかに見ることができます。なお、大津市にある聖衆来迎寺(しょうじゅらいこうじ)の表門が、坂本城の城門を移築したものと考えられています。

坂本城の所在地・アクセス・城びとおすすめの楽しみ方
所在地:滋賀県大津市下阪本3
アクセス:JR東海道本線「大津駅」から江若バス「下阪本」下車、徒歩約3分
楽しみ方:坂本は名人石工集団・穴太衆の地元。僧侶の住居として使われていた里坊などで、穴太衆による見事な石垣を見ることができる。

■秀吉が初めて城持ち大名となった出世城・長浜城(長浜市)

長浜城
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天正元年(1573)、浅井氏の小谷城を陥落させた武功によって浅井領を拝領した羽柴秀吉が、その統治拠点として築いたのが長浜城。賤ヶ岳の戦いでは秀吉の軍事拠点として用いられました。本能寺の変より前、琵琶湖周辺にはこの長浜城の他にも、織田信澄の大溝城、明智光秀の坂本城、そして信長の安土城が建ち、それぞれ連携することで近江国を支配するためのネットワークを形成していました。

秀吉も眺めた琵琶湖の絶景を模擬天守から一望!

長浜城は江戸時代に廃城となり、当時の面影はほとんど残っていません。現在見られる天守は、昭和58年(1983)に安土桃山時代の城郭を模して復元されたもの。天守内部は歴史博物館として公開され、展示を通じて長浜の歴史・文化を紹介しています。さらに5階のパノラマ展望台から琵琶湖や長浜市街を一望し、初めて城持ち大名となった秀吉の感慨に思いを馳せることもできます。

長浜城の所在地・アクセス・城びとおすすめの楽しみ方
所在地:滋賀県長浜市公園町10-10
アクセス:JR琵琶湖線「長浜駅」から徒歩約10分
楽しみ方:長浜城跡に整備された豊公園は、日本さくら名所100選にもなっている桜の名所なので、ぜひ春に訪れたい。

■徳川将軍の上洛御殿・水口城(甲賀市)

水口城
カズサンさんご投稿画像

江戸幕府の3代将軍・徳川家光が上洛する際の宿泊所として築城された水口城。本丸には御殿などの建物が二条城に準じて配置され、茶室のデザインを取り込んだ2階建望楼風の御亭(おちん)も建てられました。その後は水ロ藩の居城として使われ、湧水を利用した薬研堀に水をたたえていたことから「碧水城(へきすいじょう)」とも呼ばれました。

水堀と復元隅櫓が伝える“碧水城”の面影

水口城は明治維新後に廃城となり建物や石垣の大半が処分されましたが、本丸には水堀や高石垣が残り、碧水城と呼ばれた往時の面影を偲ばせます。さらに石垣の上には、城外に移築されていた乾櫓の部材を再利用し隅櫓が復元され、水口城資料館として様々な資料を展示しています。

水口城の所在地・アクセス・城びとおすすめの楽しみ方
所在地:滋賀県甲賀市水口町水口
アクセス:近江鉄道本線「水口城南駅」下車徒歩約5分
楽しみ方:乾櫓跡の石垣は、下部は石の目が横に入った布積み、上部は斜めに積んだ谷積み(落とし積み)と異なる方法で築かれていて興味深い。

執筆/城びと編集部

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