理文先生のお城がっこう 城歩き編 第10回 縄張りの形

加藤理文先生が小・中学生に向けて、お城のきほんを教えてくれる「お城がっこう」の城歩き編。今回は、「縄張りの形」について紹介します。縄張りとは、曲輪や堀、門、虎口の配置のことで、これらの組み合わせかたのこと。組み合わせや形について、一緒に学んでいきましょう!

曲輪(くるわ)城の一つの区画のことで、通常は平らに造成されていますがどのような形に配置(はいち)されているかで、その城(しろ)縄張(なわばり)曲輪や堀、門、虎口等の配置のことで、これらの組み合わせかたのことですを、連郭(れんかく)梯郭(ていかく)輪郭(りんかく)円郭(えんかく)などと呼(よ)びます。

この呼び方は、曲輪をどのような形に配置(はいち)したのか、城(しろ)の全体の形がどうなっているのかを考えるために、その特徴(とくちょう)によって大きく分けたものです。分け方の基本(きほん)は、本丸(ほんまる)主郭(しゅかく)に対して、他(ほか)の曲輪を、どこにどのように配置しているかによって区分したものです。

曲輪の配置を、すごく単純(たんじゅん)に、誰(だれ)でもわかるように描(えが)いた絵や図を見ると、その違(ちが)いは一目でわかります。しかし、実際(じっさい)の城の構造(こうぞう)が、絵に描いたようにきれいにあてはまることはほとんどありません。

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縄張の分類(るい)形式

連郭式とは、本丸とその他の曲輪(二の丸、三の丸など)を連(つら)なるように並(なら)べて配置したものです。ほぼ、直線上に配置されることが多いのは、山の尾根筋(おねすじ)など、地形を変えることが難(むずか)しい場合に多く見られます。

側面(そくめん)の守りが薄く(うすく)なるため、曲輪の横に帯曲輪(おびぐるわ)曲輪の外側に帯状に配置された細長い曲輪や、腰曲輪こしぐるわ)斜面の中腹に配置された小さな曲輪が置かれることもあります。この特徴(とくちょう)をよく現(あらわ)しているのが、水戸城(みとじょう)(茨城県水戸市)や、島原城(長崎県島原市)などです。

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「水戸城実測図」(みとじょうじっそくず)(茨城県立図書館蔵)(いばらきけんりつとしょかんぞう)

那珂川(なかがわ)と千波湖(せんばこ)に挟まれた台地の先端部(せんたんぶ)に本丸を置き、連続(れんぞく)して二の丸、三の丸を設(もう)けた連郭式の城の代表(だいひょう)です。

梯郭式とは、本丸を谷など険(けわ)しい地形に面した片隅(かたすみ)に造(つく)り、その二~三方向を二の丸が取(と)り囲(かこ)み、さらにその外側(そとがわ)の二~三方向を三の丸が取り囲む構造の城です。曲輪で囲われない方向には、絶壁(ぜっぺき)や川、湖(みずうみ)や沼(ぬま)などの自然の険(けわ)しい地形(ちけい)がありました。この特徴をよく現しているのが、高遠(たかとお)城(長野県伊那市)や府内城(ふないじょう)(大分県大分市)などです。

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府内城図(「府内城・城下町遺跡-第15次調査報告書」2004 大分市教委より転載)

海岸に面して本丸を置き、その周りをL字の二の丸(西丸と東丸)が囲み、さらに三の丸と外郭(がいかく)がL字(エルじ)で取り囲む梯郭式の代表的(だいひょうてき)な城です。

輪郭式とは、中心に本丸を置(お)き、その周囲(しゅうい)を二の丸が取り囲み、さらにその周囲を三の丸が取り囲む構造の城です。四方に対(たい)して等(ひと)しく守りを固めることができますが、必ず(かならず)城の規模(きぼ)は大きくなってしまいます。この特徴をよく表しているのが、山形城(山形県山形市)や駿府城(すんぷじょう)(静岡県静岡市)などです。

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駿府城復元図(ふくげんず)(作成:加藤理文)

中央部に方形(ほうけい)の本丸、その周りに二の丸、さらに三の丸が回の字型に取り囲む輪郭式の特徴を良(よ)く表している城です。

円郭式とは、本丸の周囲を囲む曲輪群が円形あるいは半円形となる城のことを呼びます。この他(ほか)並郭(へいかく)渦郭(かかく)階郭(かいかく)などと呼ぶ分類(ぶんるい)もありますが、細(こま)かい点までこだわった分け方ではありません。

円郭式と呼ばれるのは、全国で田中城(静岡県藤枝市)しか無(な)く、分けることが必要(ひつよう)とも思えません。実際の城を見れば、どの分類なのかはっきりしない城が余(あま)りに多く存在します。これは、江戸時代の「軍学(ぐんがく)兵の動かし方・戦いに勝つための具体的な方法など、戦いの方法に関する学問のこと」によって、軍学者が全国に残っている城の構造を分けたからです。あくまで、大まかに曲輪をどのように配置している城かを考える材料(ざいりょう)として、利用(りよう)すればよいでしょう。

様々な城の形
実際の城の構造を見て見ましょう。高根城(静岡県浜松市)のように、東側(ひがしがわ)と西側(にしがわ)が自然(しぜん)の谷(たに)地形になっていれば、自然と曲輪は南北方向に造られます。これが連郭式です。諏訪原城(すわはらじょう)(静岡県島田市)のように、本丸の東側に谷と川が流れていれば、その他の方向に曲輪を造っていきます。これが梯郭式となっていきます。

しかし、実際に城が造(つく)られる場所の自然地形は、実にさまざまです。曲輪も攻(せ)めにくいように、工夫を凝(こ)らした配置にします。曲輪と曲輪の間も、堀(ほり)で仕切(しき)るだけではなく、土塁(どるい)石垣(いしがき)も利用(りよう)されます。そうすると、「この城の構造は、〇〇式に当てはまる」ということは、ほとんどありません。大部分(だいぶぶん)の城は、あそこの構造は輪郭式、ここは梯郭式というように、多くの組み合わせによって守られることになります。

明石城(あかしじょう)(兵庫県明石市)を見てみましょう。東西(とうざい)に細長く伸(の)びた丘(おか)の上を使って、西から稲荷郭(いなりくるわ)、本丸、二の丸、東の丸が一列に並(なら)んだ部分は、まさに「連郭式」です。ところが、本丸の南側には水堀(みずぼり)で囲まれた居屋敷(きょやしき)藩主の生活する場所)があります。

本丸と居屋敷の位置(いち)関係を見ると、梯郭式にも見えます。また、北側にある剛(ごう)の池を利用して、本丸や居屋敷を方形に取り囲む姿(すがた)は、輪郭式と言えるでしょう。この方形(ほうけい)の区画(くかく)をさらに取り囲むように、北側を除いた三方に外堀(そとぼり)が設けられています。この関係を見ると、梯郭式に見えてきます。

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「明石城正保城絵図」部分(国立公文書館内閣文庫蔵)

自然地形を利用すればするほど、曲輪の配置は、自由に出来なくなります。地形に左右されるからです。ところが、自然地形を利用しない平坦部(へいたんぶ)では、必要とする場所に堀や石垣を廻(まわ)し、自由に城を造れるのです。山城(やまじろ)平山城(ひらやまじろ)は、自然地形を利用する部分が多いため、制約(せいやく)が生まれます。

その点、平野部(へいやぶ)に築(きず)かれた平城は、制約のない自由な城造りが可能(かのう)だったことになります。城は、それぞれが上手(うま)く自然地形を利用しつつ、造られています。それぞれが異(こと)なる形であるため、大まかな分類しか出来ないということです。


今日ならったお城(しろ)の用語

連郭(れんかく)
本丸、二の丸、三の丸を一列(れつ)に並(なら)ぶように配置した城のプランのことです。

梯郭(ていかく)
本丸を最(もっと)も奥(おく)まった場所に置き、二の丸、三の丸がL字型に取り囲む配置をした城のプランのことです。本丸の後ろは、自然が険しい地形が選(えら)ばれました。

輪郭(りんかく)式
本丸を中心に置いて、その周りを二の丸、三の丸が取り囲んだ城のプランのことです。大きな敷地(しきち)を必要とするため、平城に多く見られます。

円郭(えんかく)
輪郭式とほとんど同じで、本丸の周りの曲輪が円形か半円形になったものを言います。田中城(静岡県藤枝市)以外で認めることはできません。

江戸軍学(えどぐんがく)
(へい)の動かし方・戦いに勝つための具体的(ぐたいてき)な方法など、戦いの方法に関(かん)する学問(がくもん)のことです。江戸時代は、戦(いくさ)の無い平和な時代でしたので、軍事的(ぐんじてき)な知識(ちしき)を絶(た)やさずに引き継(つ)ぐ目的(もくてき)を持っていましたが、実戦(じっせん)で行かされたことの無い学問でした。

帯曲輪(おびぐるわ)
曲輪の外側(そとがわ)に、帯のように細長(ほそなが)く置かれた補助的(ほじょてき)な小曲輪です。

腰曲輪(こしぐるわ)
曲輪の側面(そくめん)や、斜面(しゃめん)の中腹(ちゅうふく)に設(もう)けられた小さな曲輪で、帯曲輪のように長くならない短(みじか)い曲輪のことです。

次回は、「曲輪の役割(やくわり)を考えよう」です。

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加藤理文(かとうまさふみ)先生
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公益財団法人日本城郭協会理事
(こうえきざいだんほうじん にほんじょうかくきょうかい りじ)
毎年、小中学生が応募(おうぼ)する「城の自由研究コンテスト」(公益財団法人日本城郭協会、学研プラス共催)の審査(しんさ)委員長をつとめています。お城エキスポやシンポジウムなどで、わかりやすくお城の話をしたり、お城の案内をしたりしています。
普段(ふだん)は、静岡県の中学校の社会科の教員をしています。

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