2018/08/28
ローカル線でめぐる城|【JR久大本線】福岡(久留米)~大分5つの城を楽しむ1日トリップ(前編)
夏本番!城めぐりには少し厳しい季節ですが、こんな時こそ気分を変えて、ローカル線でのんびり城旅はいかがでしょうか? 電車にコトコト揺られながら、城や歴史ある町並みを散策し、移動の合間に温泉に浸かって・・・きっと思い出に残る旅が楽しめるはず。今回は、JR久大本線で行く九州の旅をご紹介します!
天領日田を守るように流れる花月川。2018年7月14日、1年ぶりに橋の上に列車が走った
今回乗車するJR久大本線は、「平成29年7月九州北部豪雨」の影響で一部区間が運転を見合わせていましたが、約1年ぶりに全線が復旧した、今夏注目の路線です。沿線には「続日本100名城」の久留米城(福岡県久留米市)、角牟礼城(大分県玖珠町)、「日本100名城」の大分府内城(大分県大分市)が点在。ほかにも筑後吉井(福岡県うきは市)や、日田(大分県日田市)など、歴史的な町並みを残すエリアが多く、歴史や城ファンにはたまらない路線です。さらにうれしいことに、「豊後三大温泉」として知られる、湯布院温泉や天ヶ瀬温泉も沿線にあるので、湯浴みもたっぷり楽しめます。
スタートは久留米駅?それとも大分駅?
久留米駅前広場のタイヤのモニュメントは直径約4m・重さ約5t
JR久大本線を使う城旅の起点となるのは久留米駅または大分駅です。今回は、博多駅から在来線で約30~45分の久留米駅を出発して、旅の後半に天ヶ瀬温泉や湯布院温泉に立ち寄る、”ゆったり癒しのプラン”をご紹介。途中、食事処やみどころの多い日田駅、現地でのアクセスに時間を要する豊後森駅では、少し余裕をもって滞在するのがおすすめです。
参考までに、久留米駅発と大分駅発で、1日で回るスケジュール案をご紹介します。皆さまの予定に合わせて、前泊や、途中駅の日田や天ヶ瀬、湯布院で宿泊するなどアレンジしてみてください。大分駅に早く着きたい方は、途中で特急「ゆふいんの森」を利用する方法も。
【久留米発のスケジュール案】
8:23発 久留米駅 ★久留米城
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8:46着 筑後吉井駅 ★吉井の町並み
9:44発
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10:17着 日田駅 ★天領日田・月隈城・日隈城
14:17発
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14:49着 豊後森駅 ★角牟礼城・豊後森の町並み
17:35発
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19:30着 大分駅 ★府内城
※豊後森駅16:18発の特急「ゆふいんの森5号」に乗り、由布院駅で普通列車に乗り換えると、大分駅に17:45に到着。
【大分駅発のスケジュール案】
6:13発 大分駅 ★府内城
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8:07着 豊後森駅 ★角牟礼城
12:39発
※ここでは、豊後森駅 12:39 発の「特急ゆふいんの森」を利用。「10:00 豊後森駅発・13:30 日田駅着」の普通列車もあるが、豊後森での城攻めを考えると少し時間的に厳しい。または、豊後森駅から角牟礼城までタクシーを利用すれば、10:00発の豊後森駅の普通列車に乗ることも可能。
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13:04着 日田駅 ★天領日田・月隈城・日隈城
15:28発
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15:59着 筑後吉井駅 ★吉井の町並み
17:17発
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17:55着 久留米駅 ★久留米城
※大分駅発で豊後森駅に到着する列車は、大分駅6:13発の次は8:21発になるため、1日で移動しようとすると厳しい。
注:電車の時間は、全て2018年7月現在のもの。変更の可能性などありますので、ご利用の際は事前に確認してください。
久留米駅 久留米城(続日本 100 名城)とブリヂストン
江戸時代の威容を伝える久留米城本丸の高石垣
今回の旅のスタートは久留米。久留米といえば世界屈指のタイヤメーカー・ブリヂストン創始者・石橋正二郎さんの出身地で、駅前には大きなタイヤのモニュメントがあります。久留米駅から久留米城跡までは、約1.5km。ケヤキ並木のブリヂストン通りを歩き、まずは久留米城を目指します。
久留米城は、天正15年(1587)、豊臣秀吉による九州平定後に毛利秀包(もうりひでかね)が入封し修築。その後、田中氏の時代を経て有馬豊氏(ありまとようじ)が城主となり、約70年かけて完成。本丸中心部には歴代藩主を祀る篠山神社が立ち、本丸の石垣と堀は往時の姿を残しています。
悠然と流れる筑後川。久留米城の水堀の役割を果たす
筑後吉井駅 久留米城と天領日田を結ぶ白壁の宿場町
「白壁の町並み」が残る筑後吉井
久留米城を見学したら、久留米駅に戻って、いよいよJR久大本線の旅がスタート。電車に揺られて約40分、筑後吉井駅で下車。筑後吉井駅から約800m歩くと筑後街道に出ます(現在の国道210号線)。この筑後街道こそ、スタート地点の久留米と、これから向かう日田天領を結ぶ街道。そして、筑後街道の宿場町として大いに賑わったのが筑後吉井です。江戸時代中期以降、精蝋、酒造、菜種の製油など農産物の加工品を造り、有力商人によって栄えました。
現在でも、漆喰塗の重厚な土蔵造りの商家跡が続く町並みが、往時の姿を偲ばせ、重要伝統的建造物群保存地区に選定されています。「白壁の宿場町」として知られ、歴史散策にはもってこいですよ。
旧酒蔵を改修した吉井町観光案内所
日田駅~光岡駅 城下町を感じさせる花月川に架かる橋は2018年7月14日に復旧
日田の町並みに沿って流れる花月川
鉄道旅の舞台は福岡県から大分県へ。筑後吉井駅から再び久大本線に乗車。途中、緑深い山間にある夜明駅は、何とも郷愁を誘う駅名ですが、ここから大分県です。夜明駅の次、光岡(てるおか)駅を発つと次は日田駅。
日田駅の手前で花月川を渡りますが、この橋は今年7月14日に復旧したところ。2017年に起きた水害によって橋が流されてしまい、約1年ぶりに久大本線が復旧したのです。復旧初日は、大分県内で大きなニュースとして取り上げられ、復旧を待ち望んでいたたくさんの人々が集まりました。
2018年7月14日の様子。久大本線が約1年ぶりに復旧し、大勢の人々で賑わった
【旅メモ】続日本100名城を巡りたい方は
「続日本100名城」の中津城
実は久大本線が復旧したことにより、博多を起点に2泊3日で「続日本100名城」をめぐる旅も可能です!
以前城びとでご紹介した【車使わず9日で九州平定!?「続日本100名城」攻略モデルプラン!(前編)】の旅程と組み合わせて、例えば、博多を起点にし、1日目に水城と基肄城を経て久留米城を訪ね、2日目に久大本線を利用して角牟礼城を攻略し大分へ向かい、3日目には中津城と小倉城を経て博多へ戻ることができます。時間によっては、大分駅から「続日本100名城」の臼杵城と佐伯城を組み合わせてもいいですね。
執筆・写真/藪内成基(やぶうちしげき)
奈良県出身。30代の城愛好家。国内旅行業務取扱管理者。出版社にて旅行雑誌『ノジュール』などを編集。退職し九州の城下町に移住。観光PRやガイドの傍ら、「城と暮らし」をテーマに執筆・撮影。『地域人』(大正大学出版会)など。海外含め訪問城は500以上。知識ゼロで楽しめる城の情報発信を目指す。
※歴史的事実や城郭情報などは、各市町村など、自治体や城郭が発信している情報(パンフレット、自治体のWEBサイト等)を参考にしています