「お城EXPO 2017」イベントレポート 【イベントレポート】お城EXPO 2017:3日目「名残惜しいけど最終日!」

お城EXPO 2017、来城者
食い入るように続日本100名城の解説を読む来城者

子ども向けコンテンツも盛りだくさんで大満足!

「あー、岡山城の模型あるよー」「この岩櫃城ってこの前行ったよね」「今度、高天神城に連れてってよぉ〜」。お城EXPOの3日間では、子どもたちの多さが際立った。しかも、お勉強のために親に連れられているという感じではない。むしろ、お疲れ気味の親たちを従え、行き先を決めているのは子どもたちの方だ。口から飛びだす城名も、とてもマニアック。彼/彼女らが城好きのまま育てば、お城カルチャーの将来は明るいかも。

お城EXPOでは、そうした子ども向け、家族向けのコンテンツやセミナーも多く見られた。会場内で目に付いたのが、ショウワノート(株)が販売している段ボール甲冑だ。段ボールパーツをくりぬき、プラ製のジョイントパーツで繋げるだけでつくれる「着れちゃう!ダンボール」。4階に設けられたフォトスポットは順番待ちするほどの人気ぶり。また、ワークショップでもダンボール甲冑体験が行われ、つくり方のコツを教えてもらいながら、家族ごと必死に兜を組み立てていた。

お城EXPO 2017、伊達正宗、兜、ワークショップ
2日目に行われたワークショップの様子。「政宗の三日月形の前立てと眼帯がかっこいい!」と伊達政宗の兜をつくる9歳の男の子。お爺ちゃんと2人で参加

お城EXPO 2017、兜、記念撮影、前田利家
出来上がった兜を被って記念撮影。10歳の男の子は前田利家の兜をチョイス。「唯一家康に対抗できる可能性のある武将だから選んだ」と、大人顔負けの知識を披露(写真は2日目の様子)

香川元太郎さんの「お城イラストの描き方」も人気を集めた。題材とされた城は玄蕃尾城で、決して知名度の高い城とはいえないが、子どもたちの食いつきと集中力は素晴らしい。「建物がうまく描けない」「石垣を描くにはどうすればいいの?」など、香川さんに質問しながらイラスト制作の作業は進む。参加していた母子に話しを聞くと、「私は香川さんのイラストのファンだし、子どもは土塁の城が好きなので参加しました」「色も塗りたかったー! 今度、家でも描いてみます」とのこと。

他にも、「あじろ編みで小物入れをつくろう!」や「手作り甲冑使用の金襴地で作るミニ兜」などのワークショップで、子どもらの歓声・笑い声が多く上がっていた。「ワークショップ&セミナー」の会場では、子どもと大人が隣り合って、完成に向けて真剣に取り組んでいる姿が印象的だった。手作り甲冑を完成させた男の子は「説明も親切だし楽しかった。家の玄関に飾ります!」と、意気揚々と引き上げていった。

お城EXPO 2017、復元イラスト
香川さんの復元イラストを見本にケバを描き込む。子どもたちには香川さんからオリジナルクリアファイルのプレゼントもあった

お城EXPO 2017
切って、折って、貼り付けて。参加者は真剣そのもの

お城EXPO 2017、ミニ兜、金襴
豪華な金襴のミニ兜が完成

専門的な議論が行われた厳選プログラム

11時、お城のスペシャリストたちが登壇する「厳選プログラム」がスタート。3日目最初の公演は、東京大学史料編纂所准教授の金子拓先生による「信長の天下戦略と長篠城攻防戦」。長篠合戦にいたる時代状況や信長の戦略から、設楽原で激突するまでの戦術的な動きまで、最新の研究も踏まえながらていねいに解説された。書状の読み解きもともなう専門的な話もあったが、聴衆者はプリントを片手に熱心に話に聞き入った。

お城EXPO 2017、武田挟撃作戦、金子先生
武田挟撃作戦について解説する金子先生

歴史学者の平山優先生は「武田氏の領国拡大と城郭」について講演。時折ジョークを交えながらユーモラスに語る平山先生に聴衆は引き込まれていく。武田氏の領土運営をケーススタディとして、城の役割の変化や、治政と城の関係について解説された。「武田氏が領地を広げるたびに最前線の城が整備され、それまでの最前線の城は後方支援の城になり、後方支援の城は廃城になる。城の役割が変わるということが驚きだった」(40代・男性)。

お城EXPO 2017、平山先生
「破城行為には呪術的な意味合いがあったのでは」と語る平山先生

歴史小説作家の伊東潤さんとミリタリー・ライター、 編集者の樋口隆晴さんによる「城を攻める 城を守る」では、小田原攻めにおける山中城攻防戦、大坂の陣、島原の乱の三つの合戦を題材に、戦国時代の戦いの実像に迫った。島原の乱における原城について、「古い城ゆえに一揆側が防衛しやすかった、当時最新鋭の防御施設である熊本城であれば使いこなせていない」(樋口さん)など、城の守りに関して視点を変えた見方が提示された。

お城EXPO 2017、樋口さん、伊東さん
戦争の階層構造の説明をする樋口さんと伊東さん

小田原城天守閣館長の諏訪間順さんと駿河大学法学部教授の黒田基樹先生による「北条氏の領国と城」では、「大坂城など、小田原攻めに参加した諸将の城では障子堀を取り入れたことがうかがえる」(諏訪間さん)、「江戸時代初期には北条5代の中で、北条氏政の評価がもっとも高かった」(黒田先生)など、新発見を交えて講演が行われた。

お城EXPO 2017、諏訪部さん、黒田先生、講演
前半は小田原城の最新発掘状況などについて諏訪部さんが、後半は北条氏の領国支配の拠点としての城郭について黒田先生が講演

「うーん、今日の講演はハードだったねぇ。頭がショートしちゃいそうだよ」(70代・男性)とすべてのプログラムを聴いた猛者が唸ったとおり、どれも専門的で歴史学に踏み込んだ内容だった。もちろん、否定的なわけではない。先生方の講演に知的刺激を受け、それに丸1日どっぷりつかれるというのは、歴史好きにとってはたまらない体験なのだ。

3日目もにぎわう観光情報ゾーンとイベントステージ

自治体がブースを出展する「城めぐり観光情報ゾーン」は、3日目も人があふれた。「うちの地元の山城って、もしかしたら日本一人気あるんじゃないのって勘違いしちゃうほど、みなさん熱心で食いつきがいい。城でガイドしていても、こんなにたくさんの城ファンには会えないしね。疲れているけど、最後までがんばりますよ!」とは出展者の弁。パンフレットやチラシは2日目で配りきってしまったが、その分スタッフ総出で来城者を迎え入れているブースもあった。

観光情報ゾーンの奥に設けられたイベントステージでは、出展者の団体や自治体が登壇し、自分たちの城や町がピーアールされた。観光名所や歴史の紹介も興味深いが、どうしても目を惹くのはいっしょに登壇しているご当地キャラクターたち。ご当地キャラが登場すると、みんないっせいにカメラやスマートフォンを向けている。ご当地キャラブームは去ったなんて言う識者もいるが、むしろ地元のピーアールのために、ご当地キャラはなくてはならない存在として定着していることを実感させる光景だ。

お城EXPO 2017、フォトコンテスト、表彰式
イベントステージで行われたフォトコンテストの表彰式の様子

3日目のイベントステージでは、「お城EXPO フォトコンテスト」の表彰式も行われた。選考に携わったのは写真家の五島健司さんと畠中和久さん。五島さんは総評の場で「受賞作品を選ぶのに苦労しました。写真を撮る際に、ただ撮るのではなく、心の中のイメージを創り上げた上で撮影するということが大事」と撮影の心得を語った。

受賞者に話を聞いた。「受賞はもちろん嬉しいです。私は素人カメラマンで、年間10城ぐらいしか行けないのでなおさら嬉しい。どうしても、プロの写真家や地元の人が毎日撮影している写真にはかないませんから。でも、今回の受賞は素人でもがんばれって励まされたようで、来年もまた応募したいと思います」(50代・男性)。

お城EXPO 2017、応募作品、写真
1階フロアにずらりと展示された応募作品。多くの人が足を止めて美麗な写真に魅入った

「来年もまた会いましょう〜」

3日目は17時にクロージング。3日間でのべ約19,100人が来城した城の祭典もこれで終了だ。

閉幕直前、名残惜しそうに会場を後にする来城者に話を聞いてみた。「3日間来ましたが、見られなかった会場もある。時間が足りない!」(40代・男性)、「子どもが城好きで連れられてきたんですけど、こっちが城好きになっちゃいました」(30代・女性)、「ジオラマの撮影枚数がヤバい。また来年会いましょ〜」(20代・女性)などなど。

好意的な意見が多数を占めるなか、多かったのが「こんな年末の差し迫った時期ではなく、夏に開催すればいいのに」(30代・男性)という開催時期に関するご意見。ただ一方で、「クリスマスに予定があるというのは私的にはありがたい。年末の恒例イベントにしちゃいましょう」(40代・女性)という声も。確かに城ファンには、年末といえばお城EXPOという意識が2年目にしてすでに芽生えていることだろう。

会場を出ると、外はすっかり夕闇に包まれていた。帰り際、子どもがお父さんに「今度は熊本城へ行こうよ。約束だよ」とねだっている。そう、お城EXPOを3日間見て今1番感じるのは、無性にお城に行きたいということ。お城EXPOで城について学び、情報を仕入れ、実際の城におもむき、また次のお城EXPOで城ファンたちと交流を深める——それはとても素敵な循環である。

お城EXPO 2017、城番衆武者所
最後に見送りをしてくれたお城EXPO 城番衆 武者所のみなさん。「また来年会いましょう」


執筆・写真/かみゆ歴史編集部
「歴史はエンタテインメント!」をモットーに、ポップな媒体から専門書まで編集制作を手がける歴史コンテンツメーカー。手がける主なジャンルは日本史、世界史、美術史、宗教・神話、観光ガイドなど歴史全般。主な城関連の編集制作物に『日本の山城100名城』『超入門「山城」の見方・歩き方』(ともに洋泉社)、『よくわかる日本の城 日本城郭検定公式参考書』『完全詳解 山城ガイド』(ともに学研プラス)、『戦国最強の城』(プレジデント社)、『カラー図解 城の攻め方・つくり方』(宝島社)、「廃城をゆく」シリーズ(イカロス出版)など。

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