小・中・高校生の「城びとお城部」 【城びとお城部レポート】日本初!?城好きが集まる日本之城専門の部活動!(駒場東邦中学校・高等学校)

部活や授業でお城や歴史について学んでいる小・中・高校生が研究内容や活動内容を発表する「城びとお城部」。今回は、駒場東邦中学校・高等学校(東京都)のクラブ、「日本之城研究会」のレポートをご紹介します。創設からなんと50年を超える伝統あるクラブだそうです! 部員の伊藤拓生さんは2022年に開催された第21回「城の自由研究コンテスト」中学生の部(日本城郭協会主催)で日本城郭協会賞を受賞されました。レポートでは会長の藤田直希さんが文化祭活動について、部員の吉田悠人さんが合宿について紹介してくださいます。

藤田直希(以下藤田): 「城びとお城部」へ寄稿させていただきます。東京都私立駒場東邦中学校・高等学校(以下、駒東) の日本の城を専門に研究している部活の、日本之城研究会です(以下、城研) 。この部活は中1から高2までの会員22名で構成されていて、今年で創設52年周年の歴史ある部活です。
普段の活動では部所有の城に関する本を読んだり会員同士で城について語りあったり、はたまた普通に雑談したりと、結構自由に活動しています。
そして、それとは別に長期休暇中や文化祭中にも活動を行っています。それらは大きく分けて課外活動と文化祭の2つに分けることができます。ここからは合宿担当にバトンタッチして課外活動のメインイベントである合宿ついて紹介していきます。

課外活動メインイベント①合宿の様子

吉田悠人(以下吉田): 城研は城郭の研究、会員の交流を目的に年に春と夏の2回の合宿を行っている。城研の合宿は行き先の決定から行程の作成、ホテルの予約に至るまで全て生徒が行っている。なかでも大変なのは切符の購入である。団体券の学生割引を購入するには学校長の検印を要するなど手続きが煩雑で、また乗車する列車、乗降駅などを事前に詳細に決めておく必要があり、大変である。しかし、そのぶん旅行の行程を細かなところに至るまで自由に決められるので城研の活動の中でも最も楽しい活動であるといっても過言ではない。早速昨年(2022年)の夏合宿を紹介させていただきたい。

8/26合宿初日、メンバーは8:30に東京駅に集合する。遅刻してきた人が2人もいたのは大変遺憾だった。なにはともあれ無事、予定通りの新幹線に乗り名古屋へ向かった。名古屋に到着すると名古屋城を見学。天守は工事中だったが、再建されたばかりの御殿を見学できた。その後、昼食の時間だ。例年はいくつかの班に分かれて自分たちで店を探し食べに行くのだがコロナ禍のため今年は弁当を食べた。
次に見学したのは犬山城だ。木曾川の対岸から見た犬山城は美しかった。一番驚いたのは天守で望遠レンズを使うと岐阜城が見えたことだ。天守の高欄の柵が低かったことにも驚いた。高所恐怖症にはきつい。

1日目の見学は終わり、彦根のホテルへ向かう。ビジネスホテルで例年は他学年と2人だが、今年はコロナ禍のため1人部屋だ! ホテルに荷物を置き、夕飯を食べに行く。ご当地グルメを堪能できた。ホテルの近くからはライトアップされた彦根城が見られた。

お城部
夜景モードで撮影したライトアップされた彦根城

8/27 合宿2日目はまず観音寺城に行った。大石垣までの道のりは険しかった。行くときは心して臨んでほしい。その後、信長天守の館で昼食を食べた。僕は近江牛丼を食べたが、とても美味しかった。顧問の先生がデザートを食べたのに追従して多くの会員がデザートを食べていた。和気あいあいとした雰囲気も城研の良さである。

次に安土城に行った。頂上から湖を一望できた。美しい景色を見ることができるのは山城の利点だと思う。しかし、階段の一段一段が結構高く適当に下りていたら、足が筋肉痛になった。
2日目の見学が終わり夕飯はハンバーグシチューを食べた。山城を2城も登城したのでかなり疲れてしまった。

8/28合宿最終日はまず彦根城に行った。平山城に分類されているが本丸の付近はかなり標高が高く景色もきれいだった。一方低地にある庭園の玄宮園からは天守と庭園を一緒に撮ることができるのでおすすめだ。
次に岐阜城へ行った。ロープウェーも使えるが上級者コースの山道を登っていった。岐阜城の遺構は麓と頂上の2カ所にあるので、麓の遺構を見てから登るのがおすすめだ。天守から望遠レンズを使うと犬山城が見えた。

これで全行程が終了し、名古屋駅から東京に帰ってきた。
というわけで今年(2022年)の夏合宿紹介はこれで以上だ。3年ぶりに合宿に行くことができて本当によかった。ただ例年は3泊4日だが2泊3日だったり、昼食をグループに分かれてとることができなかったり、イレギュラーなことも多かった。私たちの代はコロナ前の合宿を知る最後の世代だ。城研の伝統をつなげるために頑張っていきたいと思う。

課外活動メインイベント②文化祭の様子

藤田: 次に2つ目のメインイベントである文化祭について紹介していきます。文化祭では会員全員が執筆したレポートと完全自作の城の模型を展示しています。

お城部,駒東
お城EXPO 2022で行われた「城の自由研究コンテスト」授賞式の様子(編集部撮影)

レポートは毎年合宿で行った城を中心に論文形式で作成しています。会員の中には日本城郭協会が主催し、城びとが後援している「城の自由研究コンテスト」にこのレポートを提出している人もいて、今年度は日本城郭協会賞という大変素晴らしい賞を頂きました。来年度からはこれらのレポートを一冊にまとめた部誌を作成する予定です。

お城部,駒東
名古屋城の模型(上から見た図)

また城の模型は毎年20~30基ほど展示しています。縄張り図などの資料を元に設計や買い出しを生徒のみで行うのでとても時間がかかりますが、完成した時の達成感は何物にも代えがたいものがあります。
城研の模型は主に工作用紙で作っていて、市販のペーパークラフトなどには頼らずに制作します。一から地道に作業していくので非常に時間がかかりますが、その分クオリティは高く今年度(2022年度)は新たに名古屋城・姫路城小田原城松前城今治城岡山城を作成しました。

メインの名古屋城は天守だけではなく御殿全体も作成しました。この模型は天守・御殿・櫓・土台の4パーツに分けて作成されました。

お城部,駒東
名古屋城の模型(横から見た図)

天守は見ての通り非常に精密に作成されており、屋根は片面段ボールという素材を使うことで凹凸を再現しています。御殿や櫓は大変細かいパーツを用いて作成したため困難を極めました。土台は発泡スチロールを鋸で切って断面を敢えて粗い目にすることで石垣感を出し、組み合わせてスプレーで塗装しました。部屋中に発泡スチロールの粉が飛び散り静電気で粉が体にくっついたことが最も大変でした。

そして文化祭当日を迎えます。毎年来場者にさらに楽しんでもらうためレポートの内容に関するレポートクイズというものを実施しています。このクイズの沼にはまって何時間も滞在している方も少なくないです。もちろん高得点を取った方には景品を用意しています。また城の模型を見て「城研に入りたい!」と言ってくれる小学生もいます。自分たちで作った模型が人の心動かすその瞬間が私はとても好きです。もし気が向いたら毎年9月ごろに文化祭を行っているので是非来てみてください。


城研の活動紹介に関しては以上となります。読んでいただきありがとうございました。

執筆・画像/東京都駒場東邦中学高等学校日本之城研究会 藤田直希さん(会長。高等学校1年)、吉田悠人さん(合宿担当。高等学校1年)

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