超入門! お城セミナー 第65回【歴史】お城を持てない大名はどんな所に住んでいたの? 

お城に関する素朴な疑問を、初心者向けにわかりやすく解説する連載「超入門! お城セミナー」。お城を持てなかった大名がいるのをご存知ですか? 今回のテーマは、お城を持てなかった大名たちが居住した「陣屋」について。江戸時代、全国には藩が300以上存在しましたが、その多くの大名は城を持つことができず、住居兼役所となる「陣屋」を構えていました。陣屋の構造と全国にある陣屋跡をご紹介します!

名張陣屋
名張陣屋。藩主の住居や家臣との謁見の間などが現存している

全国には城を持てない大名が多数いた!?

「城持大名」とか「一国一城の主」という言葉がありますが、武士にとって自分の城を持つということは、何にも替えがたいステイタスでした。江戸時代には一国一城令によって、建てていいのは一つの国に大名が住むための一城だけ! と決められていました。でも実は、厳しい家格の取り決めによって、その一城さえも許されない大名もたくさんいたのです。実質的に城を持てたのは、「城持大名」という家格以上の大名たちで、「徳川300諸侯」といわれた大名のうち、100余りの大名が「無城大名」という築城が許されない家格だったのです。

(大名家の家格については「第54回【歴史】大名なのに城が持てない!? 「石高」とお城の意外な関係とは」を、お城の定義については「第14回【歴史】居館や台場もお城なの?」をご参照ください。)

姫路城
壮大な石垣に優美な天守を持つ城は、全国の大名たちのあこがれだった。写真は姫路城(兵庫県)

とはいえ国を治めるには、住居も役所も必要。無城大名たちが城の替わりに住居兼役所にしたのが、「陣屋」です。上級の旗本や、知行地を持つ大藩の家老が陣屋を持った例もありました。また、城持大名が飛地支配のために「出張陣屋(でばりじんや)」を設けた例もあります。また、幕府の直轄領を治める郡代の役所(例:建物が現存する岐阜県の高山陣屋)も陣屋と呼ばれますが、今回は無城大名の拠点だった陣屋を紹介します。

陣屋の構造は、城の「御殿」の部分だけのような感じ。でも城と比べると、石垣は低く堀も狭くて浅めでした。曲輪は一つだけが基本で、陣屋内の施設は、部下が住む小屋や長屋、外向きの役所、内向きの住居といったところ。櫓や櫓門を設けること、また塀や壁に狭間を設けることは許されませんでした。高石垣のある小島陣屋(おじまじんや/静岡県)や、本丸と外郭という複数の曲輪を持った鹿島陣屋(佐賀県)もありましたが、これは例外。防御性の低さが城との決定的な違いで、陣屋の機能は住居と役所だけに限られていたのです。

鹿島陣屋
鹿島陣屋は、佐賀藩の支藩だったため築城が許されず、陣屋を構えていた。しかし、その規模は城郭と遜色ないほどであった。写真は現存遺構の表門(鹿島市提供)

門や屋敷……大名の暮らしぶりがわかる陣屋遺構

陣屋の現存例はとても少なくなっています。建物が現存するのは、まずは藤堂高虎で有名な藤堂氏の一門・名張藤堂家の名張陣屋(三重県)。「名張藤堂屋敷跡」として公開されています。時代とともに増築されていったようで、かなり立派な陣屋です。また、森可成・長可・蘭丸などで知られる森家の一門が築いた三日月陣屋(兵庫県)には、(禁止だったはずの?)2階建ての物見櫓が現存しています。他の建造物も復元されているので、陣屋の雰囲気をしっかり味わえる貴重な施設です。

三日月陣屋、物見櫓
三日月陣屋の物見櫓(写真右)。廃城の際に解体されたが、部材が保管されていたため、2001年に元通りに復元された

建物遺構があるもう一つの陣屋は、園部陣屋(京都府)。立派な白漆喰の櫓や櫓門があり、「園部城」と呼ばれています。大名の小出氏は代々、城を建てたい! と、約250年にわたって幕府に築城を嘆願し続けてきました。無城大名だからとそのたび却下されてきたのですが、幕末になって政情が変化し、大政奉還後に京都の守り固めの名目で悲願の築城許可をGET! 明治2年(1869)に、日本の城郭建築最後といわれる門と櫓が完成しました。その後、わずか5年で廃城となってしまったのですが、悲願の結晶は現在もしっかり残っています。

園部陣屋
園部陣屋は、現在も櫓や門などの遺構が残っている。写真は大手櫓門

幕末には、この他にも特殊な陣屋の例がありました。函館開港にともなって蝦夷地防衛のため松前藩に構築を命じた戸切地陣屋(へきりちじんや/北海道)は、土塁と砲台を持った軍事用の陣屋で、日本初の洋式城塞でした。龍岡城と呼ばれる田野口陣屋(長野県)も、函館の五稜郭と同じ大砲での攻撃を想定した星形の要塞で、別名・龍岡五稜郭とも呼ばれています。

田野口陣屋、龍岡城
龍岡藩の政庁だった田野口陣屋(龍岡城)。幕末の動乱期に築かれたため、西洋軍学を取り入れた縄張を持つ(佐久市提供)

この他、陣屋の門や石垣・土塁など一部の遺構が見られる所は全国にたくさんあり、近年は調査や復元・整備も進んでいます。城めぐりを計画する際は、付近に陣屋跡があるかどうかもチェックしてみてください!



執筆・写真/かみゆ歴史編集部
ポップな媒体から専門書まで編集制作を手がける歴史コンテンツメーカー。かみゆ歴史編集部として著書・制作物多数。

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