日本100名城、続日本100名城に負けない名城 「日本100名城・続日本100名城」に負けない名城(予告)

加藤理文先生による新連載がスタート! テーマは「日本 100 名城・続日本 100 名城」に負けない名城です。実は日本城郭協会が全国から名城の数々を選定するにあたって、”優れた文化財・史跡”であること以外にも様々な条件などが設けられていて、その結果、惜しくも「日本 100 名城・続日本 100 名城」になれなかったお城がたくさんあるのです。そんな埋もれてしまうにはもったいない名城の数々を、理文先生が全国各地からピックアップし、その見どころを解説していきます。
今回はその新連載の予告編として、今後取り上げていく予定のお城とその特徴・魅力を紹介します。



我が国には、4~5万ものお城が存在していました。その中で、200城が「日本100名城・続日本100名城」に選定されています。自分の街にお城がある皆さんや、お城ファンの皆さんは、どうしてあの城が選ばれなかったの? あの城だってすばらしい! そう思っているお城ファンの方がきっと多くいるのではないでしょうか。

「日本100名城・続日本100名城」に選定されたお城にはスタンプもあり、様々な雑誌やテレビという媒体に取り上げられることも多く、皆さんが知っている情報も多いと思います。ところが、選ばれなかったお城へ行く人は、それ程多くないのではないでしょうか。そこで、取り上げられることの少ない「日本100名城・続日本100名城」に負けない名城の見所や歴史、歩き方を紹介したいと思います。

では、どんなお城を紹介するのか、ちょっとさわりだけでもご覧ください。

江戸時代のお城を造れなかった大名の陣屋

一般的に3万石以下の城を持たない大名の居所を「陣屋」と呼んでいます。陣屋は、城と比べると簡略化され、天守どころか櫓も無く、行政・居住の機能しか持ち合わせていない陣屋が多かったわけです。ところが、石垣や城門、櫓を持つ陣屋も存在していました。また、個性的な陣屋もあり、行けばその魅力が解ります。

例えば、物見櫓と城門のある三日月陣屋(兵庫県佐用町)、庭園が有名な小幡陣屋(群馬県甘楽町)などが見どころのある陣屋です。


三日月陣屋、中御門、通用御門
三日月陣屋 復元整備された中御門と通用御門

建物が再建された山城

国指定史跡だと、様々な規制があって、なかなか建物を復元することが難しいのが現状です。堀切や土塁、虎口の工夫を見て回るのは「山城歩き」の醍醐味です。しかし、まだまだ山城初心者で、イメージがわかないと言われる方も多いのではないでしょうか。そんな時は、再建された建物がある城へ行ってみるのもいいでしょう。すべてが元の通りというわけでもありませんが、かつての山城の姿をイメージするには良い材料だとは思います。ただ、あくまでもイメージとして捉えて、一つの案が形になったと思っていただくのが目的です。

具体的には、足助(あすけ)城(愛知県豊田市)とか、荒砥(あらと)城(長野県千曲市)でしょうか。

足助城、南の丸
足助城南の丸を望む 中世城郭のイメージをつかむにはいいでしょう

幕末に幕府が築いた海防のための城

幕末になると、鎖国を続ける我が国に開国を求めて様々な国がやってきました。幕府は、異国船打ち払い令を出すだけでなく、海防のための城や砲台を築いて対抗しようとしました。しかし、諸外国からの圧力は激しく嘉永7年(1854)の日米和親条約締結で、遂に鎖国政策は終わりを告げます。幕府は、イギリス・ロシア・オランダなどとも同様の条約を結びますが、諸外国への警戒のために警備は怠りませんでした。

北海道には、松前藩や東北諸藩が、蝦夷地の分割警備をすると共に、沿岸警備の目的で陣屋を築いています。動乱の幕末期に築かれた砲台や台場、陣屋も我が国の歴史を知るうえで、貴重な城跡です。続100名城に品川台場が選定されていますが、類似した見ごたえのある台場や砲台は数多く残されています。こうした城も見てほしいと思います。

唯一の難点は、北海道や海岸線に分布しているため、行きづらいことでしょうか。白老(しらおい)陣屋(北海道白老町)やモロラン陣屋(北海道室蘭市)は、一見の価値があります。砲台跡も面白いと思います。

白老陣屋、内曲輪、冠木門
白老陣屋の整備された内曲輪の冠木門

丸岡藩、台場跡
丸岡藩の台場跡 海岸線に造られています

こうした特徴的な城だけでなく、普通の山城・平山城・平城の中にも、「日本100名城・続日本100名城」にも負けない城はたくさんあります。「日本100名城・続日本100名城」も、100城しか選べないわけです。歴史的事象を見れば、十分ですが、残存状況が良くないとか、凄い遺構が残っているのにも関わらず、歴史的背景が不明だとか、こうして選からもれた城もあります。そうした城の中で、ここに行ったら満足できるというような城も紹介したいと思います。

例えば、丸子城(静岡県静岡市)、大島城(長野県松川町)などは、見どころの多い城です。

丸子城、西側丸馬出、三日月堀
丸子城西側丸馬出の三日月堀

それでは、次回からの連載をお待ちください。第1回は、小島(おじま)陣屋(静岡県静岡市)です。


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加藤理文(かとうまさふみ)
公益財団法人日本城郭協会 理事、学術委員会副委員長
NPO法人城郭遺産による街づくり協議会監事
1958年 静岡県浜松市生まれ
1981年 駒澤大学文学部歴史学科卒業
2011年 広島大学にて学位(博士(文学))取得
(財)静岡県埋蔵文化財調査研究所、静岡県教育委員会文化課を経て、現在袋井市立浅羽中学校教諭

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