2018年オススメの城【前編】よみがえる城郭の姿ー復元・公開が待ち遠しい注目のお城!

2018年に訪れて欲しい城をテーマごとに前・後編でご紹介。前編では、名古屋城や福井城、尼崎城など、復元や公開が待たれる注目の城を取り上げます。



名古屋城、御殿、玄関
第1期に復元された御殿の玄関。2013年から公開が始まっている

御殿建築の最高峰・名古屋城本丸御殿がよみがえる

まず、1城目は御三家の一つ、尾張徳川家の居城・名古屋城(愛知県名古屋市)。金の鯱が輝く天守の南側には、かつて将軍の宿所として使用された本丸御殿がありました。武家風書院造の御殿は近世城郭御殿の最高傑作と称され、戦前は国宝に指定されていましたが、太平洋戦争まっただ中の1945年5月、空襲によって天守とともに焼失してしまいます。

本丸御殿の基本設計がスタートしたのは、2006年。2年間の設計期間を経てはじまった工事は3期に分けて行われ、すでに完成した玄関・表書院エリアと対面所等エリアが公開されています。現在は上洛殿等の復元が行われており、6月8日に御殿全体が完全公開となります。名古屋城はその姿を今に伝える資料が多数残されているため、かつての御殿が忠実に再現されています。
また、名古屋城下には新たな観光スポットとして「金シャチ横丁」が2018年3月29日にオープン予定。名古屋が誇る「うまいもの」が集まる横丁は、注目のスポットになること間違いなしです。

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名古屋城、素屋根、上洛殿、ミュージアムショップ
素屋根がかかっている左側が上洛殿エリア。右側は2016年にオープンしたミュージアムショップ(2017年2月撮影)

福井城の本丸を守る山里口御門が公開

福井県福井市にある福井城は天下普請によって築かれた、徳川家康の次男・結城秀康の居城です。家康が自ら縄張を行ったともいわれている福井城には、四重五階の壮大な天守が築かれていました。

福井城、櫓門、錺金物
本丸側から見た櫓門。門扉には錺金物が取り付けられ、完成も間近だ(福井県提供)

福井県と福井市は2013年に「県都デザイン戦略」を策定。その一環として福井城山里口御門の復元整備が同年からはじまりました。門周辺の石垣の積み直しが終了した後、2016年5月から翌年10月にかけて門の建築工事が行われました。重機設置場所など作業に必要なスペースを確保するため内堀の水が一部せき止められるなど、普段とは異なる福井城の姿を見ることもできたようです。そのほか、門の屋根瓦や土塀の腰板には、足羽山(福井市)で採掘されていた笏谷石(しゃくだにいし)が用いられるなど、往時の福井城の特徴も復元されています。

現在は、2018年3月の公開に向けて門周辺の整備が行われています。県によるとお披露目の式典を予定しているそうなので、日程をチェックしてみましょう。

福井城、内堀、水堀
内堀から見た工事の様子。水堀がせき止められて工事が進められた(福井県提供)

新たなシンボルを目指す尼崎城天守

兵庫県尼崎市にある尼崎城は譜代大名・戸田氏鉄によって築かれた近世城郭です。畿内防御の役割を持っていた尼崎城は四層四階の天守を持つ巨大な城でしたが、明治6年(1873)の廃城令により建物は取り壊され、城の面影はほとんど失われてしまいました。

尼崎城、再建天守、完成予想図
尼崎城再建天守の完成予想図(尼崎市城内まちづくり推進課提供)

尼崎城では天守を再建する「尼崎城プロジェクト」が進行中。尼崎市創業の旧ミドリ電化創業者が私財を投じて天守を建築し、完成後に市へ寄贈されるのだそう。天守を含む本丸の4分の1ほどが再建されます。本来の天守が建っていた位置から300m北西にずれた、尼崎城址公園に築かれる予定です。ちなみに本来の天守が築かれていた本丸が小学校の敷地となっているため、本丸に天守を再建するのは断念されたのだとか…。

尼崎市ではこの模擬天守が市のシンボルとなるよう、さまざまな取り組みを行っています。中でもプロジェクト情報の発信やイベントへの参加協力を行う「尼崎城プロジェクトサポーター」は登録者が1000人を超える盛況ぶりを見せています(2017年11月現在)。

天守は2018年秋頃に完成し、周辺整備が完了した2019年3月に公開される予定とのこと。公開後は尼崎の歴史を学び体験できる展示が行われます。天守の公開まで、城下町では城をアピールするイベントが開催される予定となっているそうなので、情報を確認して気になるものに参加してみては。

尼崎城、天守再建工事
天守再建工事の様子(尼崎市城内まちづくり推進課提供/2017年12月撮影)

ここにあげた3城以外にもさまざまな城郭で復元や整備が行われています。
例えば、弘前城は本丸の曳屋工事が完了し、現在は石垣の解体が行われています。天守の曳き戻しは2021年頃の予定ですが、2018年も特別なイベントや現地での説明会などが計画されています。
また、小田原城では馬屋曲輪の住吉橋架け替え工事が2018年3月に完了し、新しい橋がお披露目されます。
松坂城(松阪城)は城跡の整備計画にもとづいて表門付近の石垣の修復が行われ、国宝天守を持つ彦根城でも藩主の隠居所として使われていた楽々園の保存整備が進んでいます。

後編では来年行われるサミットや、150周年を迎える明治維新に関する城を紹介します。
後編はこちら

執筆・写真/かみゆ歴史編集部(小関裕香子)
書籍や雑誌、ウェブ媒体の編集・執筆・制作を行う歴史コンテンツメーカー。日本史、世界史、美術史、宗教・神話、観光ガイドなどを中心に、ポップな媒体から専門書まで編集制作を手がける。城関連の最近の編集制作物に、『よくわかる日本の城 日本城郭検定公式参考書』『完全詳解 山城ガイド』(ともに学研プラス)、『日本の山城100名城』『超入門「山城」の見方・歩き方』(ともに洋泉社)、『カラー図解 城の攻め方・つくり方』(宝島社)、『戦国最強の城』(プレジデント社)、「廃城をゆく」シリーズ(イカロス出版)など。

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