いよいよお披露目!全面公開される名古屋城本丸御殿を最速レポート

2009年から復元工事が行われていた名古屋城の本丸御殿が2018年6月8日にいよいよ全体公開となります。全体公開に先んじて行われたプレスツアーの模様をレポート。復元された建物や豪奢な障壁画など、「御殿建築の最高峰」と称えられた本丸御殿の魅力をたっぷりお届けします。

名古屋城、上洛殿一之間、上段之間
本丸御殿で最も豪華な部屋・上洛殿一之間と上段之間。彫刻と障壁画が金色に輝く

徳川将軍が宿泊した「上洛殿」が公開

壮麗な障壁画に彩られ「御殿建築の最高峰」との呼び声高い名古屋城本丸御殿(愛知県)。これまでも一部のエリアが公開されていましたが、2018年6月8日についに全面公開されます! 豊富な史料を基に伝統工法を用いて江戸時代の姿を忠実に再現した御殿は、城ファンにとっては注目の的。全体公開に先駆けて、6月4日に開催されたプレスツアーに城びと編集部が潜入。今回初公開となった「上洛殿(じょうらくでん)」のすべてをご紹介します!

上洛殿、名古屋城、天守
6月8日に完成公開される上洛殿と天守。御殿に宿泊した将軍もこの光景を見ていたのだろうか

名古屋城の本丸御殿は、はじめ尾張藩初代藩主・徳川義直の住まいでしたが、その後、名古屋城に宿泊する江戸幕府将軍の専用御殿として改築された建物です。狩野派の障壁画など煌びやかな内装が特徴で、戦前は国宝にも指定されていましたが、残念なことに太平洋戦争の空襲で天守と共に焼失してしまいました。御殿の復元事業は9年間かけて行われ、2013年に来客を出迎えた玄関・表書院エリア、2016年には藩主が私的な宴会を催した対面所エリアが公開されています。

そして、6月8日に満を持して公開されるのが、上洛殿エリア。3代将軍・家光の宿所として増築された殿舎で、あまりにも豪華に造りすぎたため、家光がかえって不機嫌になったという逸話が残るほど。義直の父である徳川家康と名古屋城築城に携わった加藤清正(いずれも名古屋おもてなし武将隊)の案内で、いざ上洛殿へ出陣!

建築技術の粋が集まった上洛殿

まず私たちの目の前に現れたのは、金箔押しの障壁画がまぶしい梅之間(うめのま)と鷺之廊下(さぎのろうか)です。このエリアで特に注目すべきは鷺之廊下の鴨居(かもい)の上。表書院や対面所とは違い、ここは鴨居と天井の間の壁も絵画で彩られているのです。明らかに格式が高い内装に、この先のエリアへの期待感が高まります。

金碧障壁画、名古屋城、梅之間
雪中の梅を描いた金碧障壁画が飾られた梅之間

鷺之廊下、名古屋城、障壁画
鷺之廊下は障壁画を間近でじっくりと見られる

鷺之廊下を通り過ぎると、御殿内で最も豪奢な部屋である上洛殿がその姿を現します。ここから先は瞬き厳禁で見学してください。

将軍の寝所として使われていた上洛殿でまず目を引くのは、金が惜しげもなく使われた欄間彫刻。鶴や松、龍など瑞祥(ずいしょう)とされる動植物が極彩色で表現されています。案内役の家康さんによると、欄間彫刻は一枚でウン千万円かかったのだとか。障壁画は狩野探幽(かのうたんゆう)の技法を再現した古代中国の朝廷を描く「帝鑑図」や雪の「雪中梅花鳥図」など背景に金が散らされた荘厳なもの。どこもかしこも金でまばゆく飾られており、本当にここで将軍様は安眠できたのか怪しくもありますが……。

上洛殿上段之間、名古屋城
上洛殿上段之間。襖から天井に至るまで絵画や彫刻で彩られている

上洛殿、名古屋城、欄間彫刻
上洛殿の欄間彫刻。鮮やかに描かれた鶴は今にも動き出しそうだ

上洛殿のさらに奥へ進むと、将軍がくつろいだ湯殿書院と黒木書院があります。

湯殿書院とはその名の通りお風呂のこと。といっても江戸時代初期は湯に浸かる文化がなかったため、浴室はサウナのような蒸し風呂形式。そして、湯殿書院には浴室の他に脱衣場や休息所として使われていた書院造りの上段之間、一之間、二之間が存在します。

名古屋城、蒸し風呂、唐破風付きの建物
将軍が使っていた蒸し風呂。奥の唐破風付きの建物が浴室で、外にある釜で沸かした湯の湯気を浴室内に引き込んで蒸していた

湯殿書院一之間、名古屋城、脱衣所
将軍の脱衣所などとして使われていた湯殿書院一之間

黒木書院は御殿の中で最も小規模な建物。この書院だけ桧ではなく松を使っていることから、黒木という名が付いたそうです。清須城(愛知県)内にあった徳川家康の宿舎を移築した建物といわれており、家康を尊敬していた家光に対する、義直の心遣いが感じられますね。

書院の内装は他の殿舎に比べると、落ち着いた雰囲気です。障壁画は山水図など風景を描いた水墨画で欄間もシンプルな筬欄間(おさらんま)となっています。

黒木書院、名古屋城、水墨画
黒木書院。障壁画は色味を抑えた水墨画となっている

本丸御殿は細部までじっくり見よ

尾張藩の威信をかけて造られた上洛殿は見事な障壁画と彫刻に飾られた、この世のものとは思えないほどの華やかさでした。しかし、本丸御殿の見どころは障壁画だけではありません。この先は御殿を訪れた時に必ず見て欲しい見どころを紹介していきます!

一つ目は天井の違い。来客が藩主との謁見を待つ玄関は竿縁天井(さおぶちてんじょう)、藩主の私的空間だった対面所は格式高い黒漆塗折上げ小組格天井(くろうるしぬりおりあげこぐみごうしてんじょう)といった具合に、部屋の格式によって天井の装飾が変わります。障壁画や飾り金具を見るとその部屋の使用用途や格式がわかるのですが、その中で最も格式を分かりやすく表しているのが天井なのです。

竿縁天井、名古屋城、廊下
玄関と表書院を繋ぐ廊下はシンプルな竿縁天井だ

上洛殿二之間、名古屋城、黒漆塗金具付格天井
将軍が滞在した上洛殿二之間の天井。天井の格子に黒漆が塗られた上に金具と天井絵が嵌められた、豪華な黒漆塗金具付格天井(くろうるしぬりかなぐつきごうしてんじょう)

見どころ二つ目は細部の装飾や彫刻です。御殿全体に約3000個も取り付けられた様々な意匠の金具は、鏨(たがね)で文様を彫り起こした後、全体に細かな円模様を打ち出す「魚々子(ななこ)蒔き」と「金鍍金(きんめっき)」を施すという非常に根気と時間を必要とする作業でつくられているわけです。これらすべて現在の職人さんの手仕事。部屋やエリアによって金具の文様は異なっているので、ぜひ全種類探してみてください。

釘隠、名古屋城、上洛殿、引手金具、七宝細工
左/表書院の釘隠(くぎかくし)。徳川家の裏家紋である六枚葉の葵があしらわれている 右/上洛殿の引戸や襖に使われている引手金具。内側には緑色の七宝細工が施されている

また、建物に用いられている木材にも注目。御殿に使われている木材は黒木書院をのぞいて、「裏木曽」と「木曽谷」の桧が使用されています。これは戦国時代の争乱や織豊期からの築城ラッシュによって荒廃した木曽の山が、尾張藩の森林保護政策によってよみがえったという縁からだそう。柱から床材に至るまで木目の細かい厳選された桧材を使用しているので、御殿を訪れた際は美しい桧の木目も見逃さないようにしましょう。

150億円もの工費がかけられたという今回の名古屋城本丸御殿復元は、復元の枠を超えた日本建築史に残る完成度を誇ります。ツアーの案内をしてくれた武将隊の家康さんは、「江戸時代の城の中心は天守ではなく御殿じゃった。我が息子の造った御殿はそのことを知らしめるきっかけとなるだろう」と、御殿の出来映えにご満悦でした。

天守の木造再建計画も始動している名古屋城。今後ますます目が離せない城になりそうです。

名古屋城、本丸御殿
本丸御殿の全体公開は6月8日から。一度といわず何度も訪れて絢爛豪華な御殿のすべてを堪能しよう!

<城びとからのミニ情報>
1:靴を脱いでの見学
お城を見学する際、靴を脱ぐのか脱がないのか、特に女性は気になりますよね。名古屋城本丸御殿の見学は、靴を脱いでの見学になります入口で靴を脱いで、靴は「中之口部屋」にある靴箱に入れます。靴箱はカギの掛かるタイプです。御殿内は靴下またはスリッパで歩きます。基本は、靴下での見学になります。ストッキングや素足の方用にスリッパも用意されています。
2:大きな荷物は無料ロッカーに
大きな荷物(スーツケースなど)は預けます。建物を傷つけないため、御殿内は大きな荷物を持って歩けません。「中之口部屋」に無料のロッカーがあります。
3:冷暖房・トイレはありません
江戸時代の空間を正確に復元するため、照明は抑えられており、冷暖房・トイレなどは設置されていません。

見学の際は、事前にトイレを済ませ、素足の場合は靴下を持っていくなどするのがおすすめ。体調には十分注意して、本丸御殿を堪能してください!


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執筆・写真/かみゆ歴史編集部(滝沢弘康・小関裕香子)
「歴史はエンタテインメント!」をモットーに、ポップな媒体から専門書まで編集制作を手がける歴史コンテンツメーカー。手がける主なジャンルは日本史、世界史、美術史、宗教・神話、観光ガイドなど歴史全般。主な城関連の編集制作物に『日本の山城100名城』『超入門「山城」の見方・歩き方』(ともに洋泉社)、『よくわかる日本の城 日本城郭検定公式参考書』『完全詳解 山城ガイド』(ともに学研プラス)、『戦国最強の城』(プレジデント社)、『カラー図解 城の攻め方・つくり方』(宝島社)、「廃城をゆく」シリーズ(イカロス出版)など。

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