2017/12/13
城びとインタビュー 春風亭昇太師匠インタビュー[中編] | 落語会で地方に行ったら、まずタブレットで山城リサーチ!
お城好きの著名人に、城を好きになったきっかけやその楽しみ方を聞く「城びとインタビュー」。『笑点』の司会も務め多忙な春風亭昇太師匠は、一体いつ城めぐりを楽しんでいるのでしょうか? 昇太師匠の山城の見方・歩き方のポイントとは?
落語会場の裏が山城。空き時間にサッと登城
—2016年には長寿番組「笑点」の6代目司会に就任されています。ご多忙の中、どうやって城に行く時間を見つけているのでしょうか?
実は落語会をやる会場のそばに山城があるケースが案外多いんです。何と言っても山城は3万程度あったと言われていて、全国どこにでもありますから。落語会で地方に行ったら、まずはタブレットで近くに城がないか調べて、空き時間ができたらサッと山城へ出かけちゃいます。「えっ、今?」なんて関係者にびっくりされることもありますね(笑)。
この間、ロケで佐賀県の鳥栖市に行く機会がありました。街をぶらぶら歩いている時に、スタッフから地図を見せられて。よく見ると川があって、そばに独立丘陵がある。「これはにおうぞ」と思って確かめたら、案の定、その丘陵は朝日山城という山城だったんです! 当然ロケでも行きましたよ。見事な堀切や竪堀が残っていました。残念ながら、放送ではカットされちゃったんですけど(笑)。
あと、先日は落語会の関係者の方に前川本城に連れて行ってもらいました。どの道を進んでも矢玉の集中砲火を浴びるような巧みな縄張が良好に残っていて、もう終始興奮しっぱなし! 僕がこれまでに見てきた中でも3本の指に入るんじゃないかというくらいの素晴らしい山城でした。こんな山城がまだまだ全国には眠ってるんだから・・・奥が深いです。
昇太師匠のブログでは前川本城のレポートが、全3回にもわたって綴られている。春風亭昇太ブログ「ザブトン海峡・航海記」より
行きは「攻める」視点、帰りは「守り」の視点で
—昇太師匠の山城の楽しみ方を教えてください。
僕が山城に行く時は、行きは「攻める」視点、帰りは「守る」視点で歩きます。足軽兵になったつもりで「どうやってこの城を攻め落としてやろう?」と妄想しながら昇ると、「あの土塁の上から狙われている!」「どっちが本丸なんだ?」とゾクゾクするような臨場感が味わえるんです。本丸にたどり着く頃には何十回も射貫かれていますけどね(笑)。逆に、下りは城主や守り手の気持ちになって遺構を観察します。400年以上前の築城者の意図が汲み取れると、山城がとても身近なものに思えてきますよ!
最近は山城を楽しむ人が増えてきた一方で、まだ「やっぱりわかりづらい」という声もよく耳にします。縄張の見方など、最低限の知識が必要なので、最初は難しいと感じる人も多いでしょう。でも、自転車の乗り方を一度覚えたら忘れないように、山城の見方も一度理解すれば忘れることはありません。なんとなく難しそうと感じている方は、山城マスターの友だちと行って見方を習ってみましょう。きっとすぐにおもしろさがわかるはずです。
—では、ビギナーの人たちが山城の魅力に気付けるような、師匠おすすめの山城を教えてください。
まずは整備の行き届いた城に行くのがいいでしょう。最近は草が刈られて遺構が見やすくなっていたり、新たに説明看板が設置されたり、自治体や地元の方々の手によってよく整備されている城も増えてきました。
整備でよみがえった諏訪原城の二の曲輪の三日月堀
滝山城の空堀。深さは10m以上もある
福井県と滋賀県にまたがる玄蕃尾城は、パーツ同士の繋がりが絶妙。雪に覆われる冬以外は遺構も見やすいので、ビギナーにはおすすめです。
福井県・滋賀県の玄蕃尾城。地形が隆起した様子は圧巻
前編はこちら
後編につづく
城びとプロフィール
春風亭昇太
落語家。1959年生まれ。静岡県出身。1982年に春風亭柳昇に弟子入り、92年に真打ちに昇進。2016年5月から、人気長寿番組「笑点」の司会を務めている。2011年に『城あるきのススメ』(小学館)を出版。ブログ「ザブトン海峡・航海記」では師匠が行った山城レポート記事も多数。
執筆者/かみゆ歴史編集部(滝沢弘康、小沼理)
書籍や雑誌、ウェブ媒体の編集・執筆・制作を行う歴史コンテンツメーカー。日本史、世界史、美術史、宗教・神話、観光ガイドなどを中心に、ポップな媒体から専門書まで編集制作を手がける。城関連の最近の編集制作物に、『よくわかる日本の城 日本城郭検定公式参考書』『完全詳解 山城ガイド』(ともに学研プラス)、『日本の山城100名城』『超入門「山城」の見方・歩き方』(ともに洋泉社)、『カラー図解 城の攻め方・つくり方』(宝島社)、『戦国最強の城』(プレジデント社)、「廃城をゆく」シリーズ(イカロス出版)など。