超入門! お城セミナー 第76回【鑑賞】お城にも「日本三大〇〇」というのはあるの?

お城に関する素朴な疑問を、初心者向けにわかりやすく解説する連載「超入門! お城セミナー」。今回はお城がテーマの「日本三大○○」を紹介。険しい山の地形を利用した山城の中でも、唯一無二の個性を持っているのが今回紹介する「日本三大山城」です。いったい、どのような特徴を持っているのかご紹介しましょう。

備中松山城
日本三大山城の一つ備中松山城。条件が整えば、雲海に浮かぶ現存天守を見ることもできる

高さにまつわる「日本一」を有する日本三大山城

誰が呼んだか、「日本三大○○」なるものってものすご〜くたくさんありますよね。日本の城関連でもいくつか呼び習わされているものがあって、「日本三大名城」、「日本三大山城」、「日本三大水城」などがそれです。今回はこの中の「日本三大山城」についてのお話です。それぞれに素晴らしい特徴がある3つの山城、皆さんはもうすべて訪れましたか?

日本三大山城と呼ばれているのは、岩村城(岐阜県)・高取城(奈良県)・備中松山城(岡山県)の3城です。何万とある山城の中でこの3城が「日本三大」と呼ばれるのは、おそらく「日本一」または「日本唯一」の要素があるからでしょう。その要素とは‥‥

●岩村城…標高が日本一。本丸最高所の標高は717m
岩村城
昔ながらの街並みが残る城下町と、岩村城を擁する城山

●高取城…比高が日本一。麓から本丸までの高低差を表す比高は390m
高取城
城内からは飛鳥や橿原など大和国が一望できる

●備中松山城…日本唯一の山城の現存天守。現存城郭建造物所在地の標高430mは日本一
備中松山城
標高430mの臥牛山に建つ備中松山城天守

‥‥う〜む、なるほど! と納得いただけるでしょうか。
でも、三大山城の魅力は、もちろんこれだけではありません。それぞれの山城のさらなる特徴や見どころを紹介していきましょう!

遺構にも歴史にも魅力がたっぷり詰まった日本三大山城

まずは、標高日本一の岩村城。戦国時代には織田氏と武田氏が城をめぐって攻防を繰り広げた要衝で、「おんな城主の里」として知られています。一時、織田信長の叔母にあたるおつやの方という女性が亡夫の跡を継いで女城主を務めていたからです。武田方に攻められ、家臣と領民を守るため武田の武将である秋山虎繁(あきやまとらしげ)と再婚しますが、後に織田方に攻められて落城し処刑された哀話が残ります。

大将塚
処刑されたおつやの方と秋山虎繁が眠る「大将塚」(恵那市観光協会提供)

国の重要伝統的建造物群保存地区の風情ある城下町も女城主にちなんだ町づくりをしていますが、岩村城は、源頼朝の家臣が築城してから明治初期までの約700年、連綿と城主が続き歴史を刻んだ山城なのです。

近世城郭に大改修されたのは、小牧・長久手の戦い後に森忠政(もりただまさ)が入封してから。現在は山麓に櫓や門が復元され歴史資料館が開館していますが、この場所は関ヶ原の戦い後に建てられた藩主邸の跡になります。ここから本丸までは徒歩約20分。出丸にも駐車場がありますが、ぜひとも地形や石垣を堪能しながら徒歩での城攻めを。

新旧の石垣の積み方が一度に見られる本丸埋門、そして本丸北東面のひな壇状の石垣「六段壁」は必見です。城主専用の霊泉「霧ケ井」も忘れずチェックを。

岩村城、六段壁
岩村城の六段壁。もともとは一段の髙石垣だったが、崩落を防ぐために積足しを行った結果、六段になったという

次に、比高日本一の高取城。城の範囲が広大なので、全体を歩くには2〜3時間を要します。また、城周辺には駐車場がないので、駅や城下町がハイキングのはじまりに。複数のルートがあり各登城口から本丸までは20分程度ですが、駅や城下町エリアから徒歩1〜2時間かかるので、たっぷり時間を取りましょう。

南北朝時代から500年以上にわたり14人の城主が居城した高取城は、羽柴秀長の命で近世城郭へと大改修されました。見どころは、なんと言っても山中を歩いても歩いても現れる壮大な石垣群。12mもある本丸の高石垣を見ると築城の苦労が思いやられ、大名の権力を実感できます。

また、大和国を一望できる国見櫓は、地元ガイドさんもイチオシのスポット。明日香村から運ばれたのでは?といわれる謎の「猿石」や、古墳からの転用石も探してみましょう。登城には厳重な装備が必要。高取町観光ガイドのHPや城下町の「夢創舘」で最新情報のチェックを!

高取城、宇陀門
高取城の宇陀門。高取城では、山上の曲輪のみならず、山中の登城道でも髙石垣を楽しめる

最後は、現存天守のある山城・備中松山城。雲海に浮かぶ幻想的な城の姿も有名ですね。こちらも広大な山城で、麓の高梁城下町も楽しむなら、丸一日空けて望みたいところ。鎌倉時代築城の山城で、中世城郭らしい堀切などの遺構も残ります。

近世城郭としての外観が整ったのは、関ヶ原の戦い後に小堀氏が入場して以降。いちばんの見どころである現存天守は、昭和まで放置されていたものを修復するため、子どもや学生も協力して地元の人たちが山頂まで瓦を運んだという感動エピソードが。二重櫓と土塀の一部も現存しており、山上の美しい建造物群は、まさにハイキングのご褒美。

そして、岩盤と一体化した圧巻の石垣群もこの城ならではの見どころ。一見ワイルドですが、自然地形と石垣の融合は、技術なくしては成り立たないもの。ぜひじっくりと鑑賞を! 城下町の頼久寺では、城主を務めた小堀遠州(こぼりえんしゅう)作の庭も見学できます。

大手門脇、岩盤、石垣
大手門脇の岩盤を利用して築かれた石垣。髙石垣が幾重にも重なる様は圧巻の一言

紹介しきれない超・魅力的な要素がいっぱいの日本三大山城。お城ファンならいつかは必ず3城とも踏破してみたいですね!



執筆・写真/かみゆ歴史編集部
ポップな媒体から専門書まで編集制作を手がける歴史コンテンツメーカー。かみゆ歴史編集部として著書・制作物多数。

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