2018/06/07
理文先生のお城がっこう 城歩き編 第3回 服装選びのポイントは(山城の場合)
加藤理文先生が小・中学生に向けて、お城のきほんを教えてくれる「お城がっこう」の城歩き編。今回は「山城」に行く時の準備について。山に築かれたお城なので、事前の準備や服装、持ち物が大事です。
■理文先生のお城がっこう
前回「第2回 服装選びのポイントは(近世城郭の場合)」はこちら
今回は、山城(やまじろ)に行く準備(じゅんび)をしてみましょう。最初から、高い山城をめざすのは、さすがに厳(きび)しいですので、最初は手頃(てごろ)な山城(埼玉県嵐山町(さいたまけんらんざんまち)の杉山城(すぎやまじょう)、静岡県三島市(しずおかけんみしまし)の山中城のような城)からチャレンジしてみましょう。ハイキングに行く感じをイメージしてみてください。
行く前にしたいこと
第1回の最後に「交通手段(こうつうしゅだん)と天気予報(てんきよほう)」に注意をと書きました。覚えていますか?山城に行く場合は、交通手段を事前に調べておくことは当然ですが、登城口(とじょうぐち)や駐車場(ちゅうしゃじょう)から、山城の中心部までどれくらいの時間がかかるかをしっかり調べておきましょう。また、急坂の道や細い道があるかも調べておくとよいでしょう。もちろん、明るいうちに下山できるような余裕(よゆう)のある計画で登ることが第一です。
天気は大切です。山城は、斜面(しゃめん)を登ることになりますので、途中(とちゅう)で雨になる予報だったら、無理をしてはいけません。少雨でも滑(すべ)る危険性(きけんせい)はかなりあります。雨の日に出かけることは、絶対(ぜったい)にしてはいけません。ちょっとした不注意が大きな怪我(けが)になるかもしれません。
とても大切な下調べ
近世のお城も下調べが大事でした。山城は、しっかりと下調べをしておくほど、楽しみが増(ふ)える城です。山城は、専門家(せんもんか)であっても事前の下調べをおこたると、理解(りかい)できないこともあります。まず、城の範囲(はんい)や、どこまで広がっているかが解(わか)りません。しっかりと山城の範囲と、遺構(いこう)(石垣(いしがき)・堀切(ほりきり)・竪堀(たてぼり)・横堀・土塁(どるい)・櫓台(やぐらだい)・井戸(いど)など)の場所を調べておきましょう。図面も同様です。インターネットや本で図面を入手してから出かけましょう。現地(げんち)で、スムーズに遺構を確認(かくにん)できますよ。
服装の確認
山城ですので、前回とは少し服装(ふくそう)が異(こと)なります。まず「靴(くつ)」を確認しましょう。前回同様、スニーカーでも構(かま)いませんが、ゴツゴツした岩がある場合もありますので、底の固いトレッキングシューズの方が、向いています。スニーカーと違(ちが)い、トレッキングシューズは固いだけにサイズに気を付けてください。長さだけでなく、足全体にフィットするものがベターです。しっかりフィットしていないと、靴擦(くつず)れやマメができたり、爪(つめ)が痛(いた)くなったりします。登りは、いいのですが、下りは靴の中で足が滑ってつらいことになります。
服装は、襟付(えりつ)きの長袖(ながそで)シャツが基本(きほん)です。虫や樹木(じゅもく)が少なければ、袖をまくって対応(たいおう)しましょう。下は、長ズボンが基本です。丈夫(じょうぶ)で軽いものが望ましいですね。長時間の屋外活動を想定して設計(せっけい)されたアウトドアパンツがあります。透湿性(とうしつせい)や撥水性(はっすいせい)、防風性(ぼうふうせい)や耐久性(たいきゅうせい)など、悪天候を想定した機能(きのう)が満載(まんさい)の上、動きやすさと履(は)き心地も考慮(こうりょ)されていて、快適性(かいてきせい)も高くて便利です。
タオルは必需品(ひつじゅひん)です。汗(あせ)をふくためですが、首に巻(ま)いて汗を吸収(きゅうしゅう)したり、肌(はだ)の露出(ろしゅつ)を防(ふせ)いだりすることもできます。手には、手袋(てぶくろ)(軍手)をつけましょう。木をつかんだり、草を分けたりすることもあるかもしれません。帽子(ぼうし)も忘(わす)れないでくださいね。もう一つ、ストックやステッキもあると楽かもしれません。長さ調節が出来るものにしてくださいね。
最後に、黒や緑の衣服はさけましょう。黄色やオレンジ、ピンクなど遠くからも目立つ色を身に付けるようにしましょう。どこにいるかが仲間から解ります。
荷物入れ
荷物は、両手があいた状態(じょうたい)をたもてるリュックのような肩掛(かたか)けの入れ物にしましょう。スタンプを押(お)したり、写真をとったり、メモをしたり、手すりにつかまったりと、城は案外手を使う場面が多くあります。常(つね)に、両手があいているようにしたいですね。カメラも同様です。小さなデジタルカメラでも、首掛けストラップを使いましょう。メモ帳や筆記用具も、首掛けのクリアファイルに入れるか、リュック手前のすぐにだせる小さなポケットに別に入れておきましょう。そうそう、パンフレットやチラシは、クリアファイルに入れましょう。少し硬(かた)めのクリアファイルを一つリュックに入れておきましょう。案外役立ちます。
持ち物
山城に登る時にあると便利なものを考えて見ましょう。
①飲み物と軽食 … 汗をかくため水分補給(すいぶんほきゅう)が必要です。ペットボトルでOKです。軽食は、チョコレートやクッキー、飴(あめ)など、疲(つか)れた時に甘(あま)いものが嬉しいですね。塩飴もいいです。
②予備(よび)のタオル … 汗だくになる時もあります。予備があると心強いですね。
③着替(きが)え … 今は、すぐに乾(かわ)く素材(そざい)の下着やTシャツがあります。万が一のために。
④ウエットティッシュ … 手が汚(よご)れた時のために、また軽い擦過傷(さっかしょう)やケガに備えて。汗だくになったときにふき取る、ウエットシートがあると便利です。
➄虫よけスプレー … 携行用(けいこうよう)のジェルタイプが手ごろです。
⑥救急薬 … カットバンや湿布薬(しっぷやく)、腹痛(ふくつう)や頭痛薬を少し持っていくと気持ちが楽です。
⑦ビニール袋 … 濡(ぬ)れた下着やタオル、ゴミ入れ用。チャック付が便利です。
⑧熊除(くまよ)けの鈴(すず) … リュックに付けておけば、野生動物除けになります。
⑨地図・図面… 地図や図面、パンフレットなどはクリアファイルに入れましょう。
⑩スマートフォン …方位、地図や天気が解ります。緊急連絡用(きんきゅうれんらくよう)としても。
1人で行ってはいけません
山城ですので、必ず大人の人と行きましょう。最初は、現地の案内ポランティアの方がいる山城がお勧(すす)めです。ツアーもありますので、初めて行くときは利用するのも良いでしょう。
天ヶ岳砦(てんがたけとりで)(静岡県伊豆(しずおかけんいず)の国市)の道 ロープを持って登らなくてはなりません。
次回は、いよいよ山城を歩いてみましょう。前述(ぜんじゅつ)のとおり、初級編(しょきゅうへん)として「山中城」に行ってみたいと思います。
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加藤理文(かとうまさふみ)先生
公益財団法人日本城郭協会理事
(こうえきざいだんほうじん にほんじょうかくきょうかい りじ)
毎年、小中学生が応募(おうぼ)する「城の自由研究コンテスト」(公益財団法人日本城郭協会、学研プラス共催)の審査(しんさ)委員長をつとめています。お城エキスポやシンポジウムなどで、わかりやすくお城の話をしたり、お城の案内をしたりしています。
普段(ふだん)は、静岡県の中学校の社会科の教員をしています。