2020年に訪れたい! 復元・イベントが行われるお城

約200年ぶりの譲位やラグビーワールドカップでの日本代表活躍などの出来事が世間を賑わせた2019年も終わり、オリンピックイヤーである2020年がスタートします。2020年はお城ファンにとってもイベントが盛りだくさん!  特別公開が行われる熊本城や山城サミットが行われる上田市の城郭など、2020年に訪れたい注目のお城をご紹介!



【熊本城】特別見学通路から復興の様子を見守ろう!


熊本城
2019年春に公開予定の特別見学路イメージ図(熊本城総合事務所提供)

2016年の熊本地震によって櫓や石垣などの文化財が甚大な被害を受けた熊本城(熊本県)。城内は着実に復興へと歩んでおり、2019年10月からは日曜・祝日限定ですが城のシンボル・大天守を間近から見学できるようになりました。

そして、2020年春にはこれまで立入が制限されていた飯田丸や本丸御殿などのエリアが見学できるようになります。見学は新たに設けられた「特別見学通路」から。飯田丸を通り、東竹の丸を経て本丸御殿に至るルートになっています。被災した城内を通り抜けるため、被災状況や復興工事の様子が近くで見ることが可能。日程詳細は2020年1月頃に決まる予定なので、HPなどのチェックを忘れずに!

さらに、まだ少し先になりますが、2021年春には天守が完全復活! 大小天守の工事が完了し、天守内の見学ができるようになります。天守復旧後は源之進櫓、飯田丸五階櫓などの遺構の復興もはじまるとのこと。ぜひ、何度も足を運んで復興へ進む熊本城を見守りましょう。

【金沢城】城を守る巨大櫓門が復元

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復元工事の様子(石川県提供)

加賀百万石の居城として築かれた金沢城(石川県)。度重なる災害によってほとんどの城内建物が失われてしまいましたが、2000年代から建物の復元事業が進められ、これまでに菱櫓や五十間長屋などが復元されました。

そんな金沢城で現在復元工事が進められているのが鼠多門です。玉泉院丸と金谷出丸(現・尾山神社)の虎口に設けられていた櫓門で、桁行(幅)約22m×梁間(奥行)約7mを誇る巨大な二階建て櫓門でした。外観は金沢城の特徴である鉛瓦になまこ壁ですが、資料によるとなまこ壁の目地は黒漆喰で塗られていたよう。完成すれば他の建物とは趣が異なる黒っぽい姿になるそうです。現在は、屋根の棟やなまこ壁の目地塗りが進められており、工事は7割以上完了しているのだとか。完成は2020年7月の予定となっています。

【水戸城】城の中枢・二の丸の建物が続々復元!


水戸城
二の丸隅櫓の完成イメージ図。(水戸市教育委員会提供)

御三家・水戸藩の居城であった水戸城(茨城県)。質実剛健な水戸藩の気風を反映してか、華美な天守を持たず、櫓の数も少ない質朴な城だったといいます。廃城や火災空襲などにより城内建物はほとんど残っていませんが、平成に入った頃から整備や復元が進められています。

現在、工事が行われているのは、実質的な城の中枢部だった二の丸。大手門と隅櫓が復元されているのです。大手門はすでに完成しており、現在見学路の整備などが行われています。水戸市によると2020年2月頃には一般公開がはじまる予定だそうです。隅櫓は、屋根瓦葺きや土壁を塗る作業などが行われている最中。2020年9月に櫓の外観と内観が完成し、その後外構(道路の舗装など建物周辺の整備)工事を経て2021年春頃には一般公開がはじまる予定だとか。

現在、水戸市では隅櫓の屋根に葺く瓦への寄付「一枚瓦城主」を募集中。寄付を行うと、瓦への記名や市内の文化施設で優待を受けられる「一枚瓦城主手形」などの特典がついてきます。寄付の募集は2020年3月まで。城郭整備や復元に興味のある人はぜひ応募してみてください!

【鳥取城】鳥取32万石の大手登城路がよみがえる!

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石垣整備の様子(鳥取市教育委員会提供)


鳥取城(鳥取県)は、豊臣秀吉の中国侵攻の激戦地となり、落城後も因幡国支配の拠点として豊臣政権や江戸幕府に重要視された城。現在の城跡には、江戸時代に築造された石垣が残り、かつての威風を偲ばせてくれます。

2006年に整備計画が策定された鳥取城では、城が使用されていた最後の時代である幕末の姿への復元を目指して建物などの復元・整備が行われています。2018年9月には大手登城路に架かる擬宝珠(ぎぼし)橋が完成し、2020年は登城路の大手門にあたる中ノ御門の復元工事がはじまります。中ノ御門は高麗門と櫓門で構成される枡形虎口。藩祖・池田光仲が徳川家康の血を引くことから、池田家は外様大名でありながら門には葵紋の瓦が葺かれていたといいます。

まずは、表門にあたる高麗門の工事が2020年夏から晩秋にかけて行われる予定で、建物の形がある程度出来上がる初秋頃には上棟を祝うイベントも計画されているそうです。2021年度以降には櫓門の復元も予定されています。また、建物の工事と平行して、門を囲む石垣の整備も進められます。整備期間中は大手登城路の通り抜けができなくなりますが、擬宝珠橋上の立ち入りは可能。橋上からは間近に工事の様子を見学することができるので、日々組あがっていく姿を観察してみては。

【砥石米山城ほか】激戦の舞台となった山城群をめぐろう!


砥石米山城
サミットでは、武田氏と村上氏の攻防の舞台となった砥石米山城や葛尾城などに焦点があてられる。写真は砥石米山城(上田市教育委員会提供)

山城をもつ自治体と山城ファンが全国から集う、年に1度の山城の祭典「全国山城サミット」。2019年は岐阜県可児(かに)市で開催され、2日間あわせて2万人を超えるお城ファンが参加。大盛況の内に閉幕しました。

2020年の開催地は長野県の上田市・坂城町。徳川の大軍を2度退けた近世城郭・上田城が有名な上田市ですが、「砥石崩れ」で知られる砥石米山城(戸石城)や武田信玄を2度破ったことで有名な村上義清の居城・葛尾(かつらお)城などを有する、山城大国でもあるのです。開催日程は、10月31日(土)、11月1日(日)。31日は、砥石米山城や虚空蔵山城(こくぞうさんじょう)、葛尾城など上田市・坂城町に残る山城の見学会が行われます。1日は、上田市内の「上田市サントミューゼ」をメイン会場として講演会やトークイベントなどが繰り広げられる予定です。

【首里城】城を訪れて復興を応援しよう!


首里城
2019年12月14日時点での見学可能エリア(首里城公園管理センター提供)

2019年10月31日に発生した火災によって甚大な被害を受けた首里城(沖縄県)。琉球王国の歴史を伝える資料や沖縄のシンボルである正殿などが失われ、沖縄の人びとのみならず国内外に大きなショックを与えました。

最も被害が大きかった「御庭(うなー)」では今もがれきの撤去作業が続いており立入はできませんが、安全が確保されたエリアから順次見学が再開されています。12月14日に奉神門前の安全確認がとれたため、現在無料エリアはすべて見学が可能になっているそう。守礼門や歓会門などの建物や城の外周にめぐらされた石積みなど、無料エリアも見どころが充実しているので、ぜひ訪れてみましょう。

また、那覇市では首里城再建のための寄付も受け付けています。現地の募金箱や口座振込、ふるさと納税など様々な方法での寄付可能なので、自分にあった方法で首里城の復興を応援してみてください。


執筆・写真/かみゆ歴史編集部
「歴史はエンタテインメント!」をモットーに、ポップな媒体から専門書まで編集制作を手がける歴史コンテンツメーカー。手がける主なジャンルは日本史、世界史、美術史、宗教・神話、観光ガイドなど歴史全般。主な城関連の編集制作物に『日本の山城100名城』(洋泉社)、『よくわかる日本の城 日本城郭検定公式参考書』『完全詳解 山城ガイド』(ともに学研プラス)、『戦国最強の城』(プレジデント社)、『カラー図解 城の攻め方・つくり方』(宝島社)、『図解でわかる 日本の名城』(ぴあ株式会社)、「廃城をゆく」シリーズ(イカロス出版)など。