都道府県のお城シリーズ 【広島県のお城】毛利一族の本拠地であり、江戸幕府が西国の防御拠点として重視した地に残る名城

日本100名城・続日本100名城を中心に、各都道府県を代表するお城をご紹介する「都道府県のお城シリーズ」。今回は広島県編です。中国地方の最大都市として栄える広島には、戦国時代や江戸時代に重要かつスケールの大きいお城が多く築かれました。日本100名城の福山城・郡山城・広島城、続日本100名城の三原城・新高山城などをご紹介します。

広島県にあるお城は?

現在の広島県域は、戦国時代に中国地方を制覇した毛利元就が本拠地とし、権力を築いた地域です。関ヶ原の戦いで西軍大将を務めた毛利輝元が他方へ移封された後は、西国の重要拠点として江戸幕府に重視され、福島氏や浅野氏が広島藩主として一帯を治めました。このような歴史から毛利氏や徳川譜代大名のお城が残ります。また、瀬戸内海に面した地形から海城・水城が築かれ、城下町の形成とともに海運の要衝として地域に発展をもたらしました。

■築城400年を迎えて新たに生まれ変わった福山城(福山市・日本100名城)

福山城
猿さんご投稿画像

江戸幕府が譜代大名の水野勝成に命じて築かせ、元和8年(1622)に完成した福山城。慶長20年(1615)の一国一城令の後に、西国鎮衛の拠点として例外的に築城を認められた貴重な近世城郭です。西国の外様大名に幕府の威厳を示すため、3段の石垣で構成された城内に5層の巨大天守や7基の三重櫓を有する一大城郭が築かれ、明治の廃藩置県まで福山藩の政治の中心となりました。

全国唯一の天守北側鉄板張りを再現
城内の遺構は昭和20年(1945)の福山大空襲でほとんどが焼失し、戦禍を免れた伏見櫓と筋鉄御門は国の重要文化財に指定されています。現在見られる天守は昭和41年(1966)に再建されたものです。そうした中、往時の福山城の姿を取り戻すため“令和の大普請”と銘打たれた大規模改修が行われ、築城400周年にあたる2022年に完了。防御が手薄な天守北側の壁に施されていたという総鉄板張りが再現されました!

福山城の所在地・アクセス・城びとおすすめの楽しみ方
所在地:広島県福山市丸之内1-8
アクセス:JR山陽本線「福山駅」から徒歩5分
楽しみ方:天守内部の博物館では、体験型展示を通じて福山城・福山藩の歴史を知ることができる。

■中国の覇者・毛利元就の本拠地・郡山城(安芸高田市・日本100名城)

郡山城
朝田 辰兵衛さんご投稿画像

大永3年(1523)に家督を相続した毛利元就が入城し、居城とした中国地方最大級の山城。築城時期は不明ですが、15世紀後半には毛利氏の城として存在したと考えられています。元就の時代に全山が城郭化されました。天正19年(1591)に広島城が築城されて拠点を移してからはその役目を終え、一国一城令によって取り壊されました。

中国地方最大級の山城は山全体が要塞!
郡山城の最大のポイントは、中国地方の覇者・毛利氏の本拠地にふさわしいスケール。東西1.1km、南北0.9kmにも及ぶ広大な城域に270もの曲輪が設けられていました。山頂の本丸を目指す道を歩いていると、次から次へと曲輪に遭遇、その複雑な構造とスケールを体感できます。また山麓には、毛利一族の墓所、三本の矢の伝説にちなんだ「三矢の訓跡」などの史跡も残っています。

郡山城の所在地・アクセス・城びとおすすめの楽しみ方
所在地:広島県安芸高田市吉田町吉田
アクセス:JR芸備線「向原駅」からタクシーで約15分。または広島バスセンターから約1時間半、「安芸高田市役所前」下車徒歩5分。
楽しみ方:日本100名城スタンプ設置所の安芸高田市歴史民俗博物館など、周辺にも歴史スポットが満載。

■デルタ地帯に築かれた巨城!広島城(広島市・日本100名城)

広島城
ryuさんご投稿画像

天正17年(1589)、毛利元就の孫・輝元が太田川の河口に広がるデルタ地帯を城地に定めて築城を開始し、約10年もの難工事を経て完成した広島城。それまで毛利家が居城としていた山城・郡山城に代わって、瀬戸内海の交易や毛利水軍を利用するのに便利な場所に平城を築いたのです。関ヶ原の戦いに敗れた輝元が転封された後、入城した福島正則が改修し、外郭や城下町が整備されました。

往時の姿を取り戻していく広島城
昭和20年(1945)、原爆投下によって天守をはじめ多くの遺構が失われましたが、昭和33年(1958)に天守が復元。その後も平成になってから二の丸表御門、平櫓、多聞櫓、太鼓櫓が復元されています。また、長らく水質悪化が問題となっていた内堀も平成に環境復元が行われ、旧太田川から導水された美しい水が城郭を引き立てています。本丸の最終防衛ラインにあたる二の丸が、馬出(うまだし)と呼ばれる出撃拠点の機能を備えているのも特徴的です。

広島城の所在地・アクセス・城びとおすすめの楽しみ方
所在地:広島県広島市中区基町21-1
アクセス:JR山陽本線「広島駅」からひろしま観光ループバスで約6分、「広島城(護国神社前)」下車徒歩約6分
楽しみ方:往時の建造物で唯一現存するのが三の丸稲荷神社。現在は多家神社に移築されているのでぜひ足を運びたい。

■鉄道が本丸を通る異色の海城・三原城(三原市・続日本100名城)

三原城
侍ホリタンさんご投稿画像

永禄10年(1567)、毛利元就の三男・小早川隆景が、瀬戸内海に面した地に島をつないで築いた三原城。小早川水軍の本拠地として機能し、江戸時代には広島藩の支城として幕末まで存続しました。満潮時には海に浮かぶように見えたことから「浮城」とも呼ばれていました。なお、天守台跡が残っていますが、天守は建ったことがありません。

駅から徒歩0秒!天守台の美しい勾配に注目
三原城のユニークな特徴として挙げたいのが、明治時代に山陽鉄道が本丸を貫いて開通したため、現在も三原駅(新幹線・JR山陽本線)が本丸と一体化していること。広島城の天守が6つ入ると言われる巨大な天守台も、三原駅の改札を出るとすぐの場所で、三方の堀を眺めることができます。また、天守台の石垣はアブリ積みという特殊な工法で積まれていて、裾を引く扇の勾配の美しさに目を奪われます。

三原城の所在地・アクセス・城びとおすすめの楽しみ方
所在地:広島県三原市城町
アクセス:JR山陽本線「三原駅」下車すぐ
楽しみ方:駅の高架下に残っている本丸石垣や、船入を監視していた船入櫓跡など、街まで散策して遺構を探したい。

■天然の要害で守りを固めた小早川氏の拠点・新高山城(三原市・続日本100名城)

新高山城

天文21年(1552)、小早川氏がそれまで居城としていた高山城に代わる新たな拠点として、標高197.6mの新高山の山上に築いた新高山城(にいたかやまじょう)。沼田川や急峻な崖など天然の要害を利用して山全体が要塞化され、60以上の曲輪が設けられました。豊臣政権の五大老に任じられた小早川隆景が三原城に拠点を移した後、新高山城は破却されています。

城下を見下ろす山頂からの眺めは絶景!
三原城を築いた時に新高山城の石垣が転用されたため、城内に石垣はほとんど残っていませんが、本丸の土の表面に御殿の跡と思われる礎石が埋まっています。また、釣井の段(井戸曲輪)には立派な石積みの井戸が6ヵ所残っていて、往時の面影に思いを馳せることができます。そして山頂の詰の丸まで頑張って足を運べば、対岸の高山城や城下の町を望む絶景が待っています。 

新高山城の所在地・アクセス・城びとおすすめの楽しみ方
所在地:広島県三原市本郷町本郷
アクセス:JR山陽本線「本郷駅」下車徒歩25分で登山口。さらに徒歩30分で山頂
楽しみ方:沼田川を挟んで対岸にある高山城にもセットで訪れたい。

■福島正則が築いた広島城の支城・亀居城(大竹市)

亀居城
todo94さんご投稿画像

広島城に2代目城主として入城した福島正則が、広島城の支城として慶長13年(1608)に完成させた亀居城。山頂の本丸から派生する形で11の曲輪が設けられるという、支城としては大規模な造りでした。しかし、正則が元和5年(1619)に改易され広島城を去ると、亀居城は破却の憂き目に。ちなみに、元々の名称は「小方(おがた)城」でしたが、亀の形に似ていることからいつしか「亀居城」と呼ばれるようになりました。

石垣の刻印から見えてくる広島城とのつながり
現在、亀居城は亀居公園として整備され、壮大な縄張りや総石垣の本丸など往時の姿が今に伝えられています。本丸は展望台になっていて、目の前に瀬戸内海の眺望が広がります。また、石垣のあちこちに刻印が刻まれていて、その中には広島城跡の石垣の刻印と共通したものもあるので要チェック。

亀居城の所在地・アクセス・城びとおすすめの楽しみ方
所在地:広島県大竹市小方2丁目
アクセス:JR山陽本線「玖波駅」からバスで10分、「小方」降車徒歩約10分
楽しみ方:桜の名所としても有名で、春になると石垣とソメイヨシノが鮮やかなコラボを織りなす。

■目の前が瀬戸内海!海城であり“岩城”?賀儀城(竹原市 )

賀儀城
織田晃司さんご投稿画像

賀儀城(かぎじょう)は、小早川水軍を率いた浦宗勝(乃美宗勝)が、瀬戸内海に面する忠海の海岸に築いた海城。海に突き出た標高20mの小山の上に位置し、山上の平地に本丸、そしてその下に帯曲輪が設けられていました。また、城跡の西にある深い湾を船溜として利用していたと考えられています。

海城ならではの「舟隠し」は必見
海岸と逆側の登城路を歩くと本丸へ。土塁がわずかに残っていて、南側の瀬戸内海を一望できます。また、城の麓の崖には「舟隠し」と呼ばれる穴(写真右側)が残っていてます。干潮だと中をよく覗くことができるので、気になる方は干潮の時間をチェックしておきましょう。

賀儀城の所在地・アクセス・城びとおすすめの楽しみ方
所在地:広島県竹原市忠海町床浦
アクセス:JR呉線「忠海駅」から徒歩約15分
楽しみ方:賀儀城からほど近い勝運寺は浦宗勝の菩提寺。宗勝の墓があるので併せて訪れたい。

執筆/城びと編集部

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