2020/12/18
【『廃城をゆく7』連動企画】新幹線から見える城〜山陽新幹線編
コロナ禍が収束したら、新幹線で城旅に出かけたい!と思っている人も多いはず。しかし、城旅は目的の駅に着いてからではなく、その車中からはじまっています。今回は、山陽新幹線の車中から見える城を徹底的に解説しましょう。
姫路城前を通過する山陽新幹線。姫路市・手柄山公園から撮影
山城ブームの牽引役でもある「廃城をゆく」シリーズの最新刊、『廃城をゆく7〜〝再発見〟街中の名城』が2020年11月に刊行! 役所や学校となっている城跡、市民公園やお寺として親しまれている城跡を取り上げ、新しい城歩きの魅力を提案する意欲作だ。
本書内では、東海道新幹線から見える全14城を紹介し、見つけ方やその難易度を徹底解説している。今回はこの『廃城をゆく7』の連動企画として、山陽新幹線から見える城を解説。新幹線「のぞみ」または「みずほ」に乗車して、新大阪駅から博多駅まで約2時間半の城旅をご堪能あれ!
【1城目】明石城
緑の一角に屋根だけ見える
新大阪駅を出発して約20分。駅弁も食べ終えた頃に見えるのが、明石市民の憩いの場として親しまれている明石城だ。巽櫓と坤櫓の2基の櫓が現存しているが、山陽新幹線から見えるのは坤櫓のほう。とはいえ、新幹線から城までは1.5kmほど離れている上、明石公園の木々が櫓を覆っているため、発見はなかなか困難である。目印は公園の奥に建つタワーマンション(プラウドタワー明石)。タワーマンションの真下に注目していると、緑のカーテンから恥ずかしげに顔をのぞかせているような坤櫓を発見できるだろう。なお、JR山陽本線・明石駅のホームからは目の前に明石公園が広がる。
新幹線と坤櫓とタワマンが一直線になるタイミングがポイント。背後の橋柱(主塔)は明石海峡大橋
【2城目】姫路城
国宝天守を横目にランデブー
言わずと知れた、国宝で世界遺産でもある姫路城。新幹線からの見つけやすさも国宝級! 新幹線から天守までの距離は明石城と変わらないのだが、天守が丘の上に建つことに加え、城の周囲に高層建造物や木々がないため発見しやすい。新大阪から向かう場合、市川を過ぎた直後から姫路駅通過後のしばらくの間、進行方向右手に1分程度にわたって、断続的に国宝天守を拝むことができる。白亜の天守との1分にわたるランデブーは、城ファンにとって至上の時間だろう。
姫路城通過直後の光景。小天守や天守台の石垣まで見えるのが嬉しい
姫路駅の新幹線ホームは全面ガラス張りのため、駅通過中にも天守が見える!
【3城目】岡山城
市街地の先に復元天守が堂々とたたずむ
国宝天守との逢瀬を楽しんでから約20分、岡山駅到着直前に見えるのが岡山城だ。太平洋戦争の空襲で炎上したため現在の天守は外観復元天守だが、ほかの天守とは一線を画する特異なフォルムが特徴である。「次は岡山駅」の車内アナウンスが聞こえたら心の準備を。やがて旭川から分岐した百間川に差し掛かるが、その直前から岡山駅停車前まで左手の車窓に復元天守が見える。新幹線が大きくRを描いて向きを変えるため、異なる角度の天守を楽しむことができるだろう。
百間川通過後から旭川に差し掛かる手前まで、天守を正面に捉えることができる
岡山駅到着直前の光景。ビルが邪魔するが、新幹線が減速する分、見つけやすいだろう
【4城目】福山城
駅に近づいたらまばたき厳禁!
『廃城をゆく7〜“再発見”街中の名城』に収録している「駅チカ城ランキング」で見事2位を飾った福山城(それでは、1位はどこでしょう? 是非本書を手にとってお確かめください)。ただ、近すぎることがネックとなり、福山駅の直前まで城を確認することができない!
下り方向だと、ビルの合間に一瞬天守が見えた後、ビルの陰から突如、高石垣と月見櫓が現れ、すぐさま福山駅ホームに突入。ホームを過ぎると、右側後方に見える天守が次第に遠のいていく……。その間わずか20秒。ちょっとしたアトラクションを体感しているような、じつにダイナミックなお城鑑賞となる。なお、博多→新大阪の新幹線で、福山駅に停車し追い越し待ちをする場合は。ホームに下りての撮影も可能。ただし、乗り遅れには要注意!
博多方面行きの新幹線が福山駅に停車する場面。新幹線ホームが全面ガラスのため、大パノラマが楽しめる
福山駅通過直後。左手に復元天守、右が現存の伏見櫓。わずか数秒で遠のく儚いランデブーとなる
【5城目】三原城
天守台の真横を通過!
福山駅の次は三原駅。三原駅と聞いてピンときた人は、城マニアか駅鉄のどちらかだろう。三原駅は三原城跡の本丸から二の丸にかけて築かれており、新幹線は城跡を分断するように走るのだ。駅のすぐ脇に天守台が残るのだが、福山城のように建物が建たない。新幹線ホームから天守台が見られるのだが、車中からの視認は困難だろう。
連続でシャッターを切ったところ、天守台の上端とそこに立つフェンスが写っていた! 肉眼で見えた人はその動体視力を自慢していい
大人しく駅を下りて撮影した天守台。天守台のすぐ背後が新幹線ホームとなる
【6城目】広島城
ビルの隙間からのぞく復元天守
太田川のデルタ地帯に築かれた広島城。原爆で倒壊した天守は、昭和33年(1958)に外観復元された。線路から天守までの距離は最短でわずか600m程度と近いにも関わらず、ビルに隠れてなかなか見えない! かつては新幹線の車窓から太田川越しの天守が長い時間にわたり見えたというが、現在はビルの隙間からなんとか確認するしかない。1本目の川(猿股川)を渡ってから2本目の川(太田川)に差し掛かる間に2回チャンスがある。
マンションやビルの合間にのぞく復元天守。天守の左後方の建物は広島県立総合体育館
【7城目】岩国城
城の立地と景色を味わう
眼下に錦川が流れる横山の先端部に築かれた岩国城。現在の模擬天守は、観光名所である錦帯橋からの見栄えを優先したため、往事とは異なる場所に建てられた。新幹線はその錦帯橋の反対側を走る。新岩国駅に到着する直前の長いトンネルを抜けてすぐ、左手後方に横山が見えてくるが、天守を見つけるのは困難だろう。木々にまぎれ、屋根の一部しか見ることができない。城のあった横山は数秒間にわたって見られるので、錦川越しの地形と風景を楽しみたい。
わずかに模擬天守の屋根がのぞく。葉が落ちる冬ならもう少し見えるか?
【8城目】小倉城
動体視力が問われる南蛮造りの天守
幕末の第二次長州征伐で長州藩が攻めたことでも知られる小倉城。最上階の窓が張り出した南蛮造り(唐造り)の天守が特徴だ。その天守の周囲は商業ビルが建ち並び、新幹線は城の間近を走るのだがなかなか見えない。その後、高速道路の高架をくぐった直後、ビルの谷間からひょっこり顔を出す。最初の明石城と同様、動体視力が問われる城だ。
都市高速の高架を通過したら要集中! 南蛮造りの顔がのぞく
以上、山陽新幹線から見える8城となる。中には発見が困難な城もあるので、「見えたらラッキー」ぐらいの気持ちで臨むのがよいだろう。
東海道新幹線から見える14城については、『廃城をゆく7〜〝再発見〟街中の名城』を手に取って確認してほしい。本書内では他にも、「駅チカランキング TOP20」「都市開発で埋もれた名城」「刑務所・古墳・ゴルフ場——城跡百景」など、城ファンなら絶対楽しい企画が盛りだくさんだ!
[編 者]かみゆ歴史編集部
[書 名]廃城をゆく7〜〝再発見〟街中の名城
[版 元]イカロス出版
[刊行日]2020年
執筆者/かみゆ歴史編集部(滝沢弘康)
「歴史はエンタテインメント!」をモットーに、ポップな媒体から専門書まで編集制作を手がける歴史コンテンツメーカー。人気の「廃城シリーズ」第7弾、『廃城をゆく7〜〝再発見〟街中の名城』(イカロス出版)が2020年11月に刊行。また、横長の判型が特徴的な『流れが見えてくる日本史図鑑』(ナツメ社)が5刷りの大ヒット中。