都道府県のお城シリーズ 【福島県のお城】伊達氏のルーツとなり、幕末の戦乱の舞台として歴史に名を刻んだ名城

日本100名城・続日本100名城を中心に、各都道府県を代表するお城をご紹介する「都道府県のお城シリーズ」。今回は福島県編です。幕末の歴史を物語る日本100名城の会津若松城・白河小峰城二本松城や、伊達氏発祥の地に残る桑折西山城などをご紹介します。

福島県にあるお城は?

福島には3つの日本100名城(会津若松城、白河小峰城、二本松城)と2つの続日本100名城(三春城、向羽黒山城)があります。会津若松城、白河小峰城、二本松城はいずれも戊辰戦争の舞台となり、少年兵たちが健気に戦った物語などと共にその歴史を現代に伝えています。また、福島は伊達氏発祥の地でもあり、桑折西山城などゆかりのお城が今も残っています。

■戊辰戦争で高い防御力を証明!会津若松城(会津若松市・日本100名城)

会津若松城
ぴちょまるさんご投稿写真

至徳元年(1384)に蘆名直盛が築いた東黒川館を前身とし、伊達政宗も城主を務めた会津若松城(当時は黒川城)。政宗の後に入城した蒲生氏郷が七層天守を有する石垣造りの近世城郭へと大改修し、「鶴ヶ城」と命名。黒川の地名を若松に改め、城下町も整備しました。巨大な石垣によって守られた防御力の高さは、戊辰戦争で旧幕府軍が約1ヵ月にわたって籠城し、激しい攻撃に耐えたことで証明されました。

国内唯一の赤瓦の五層天守が圧巻

江戸時代の地震後に再建した五層天守は明治政府の命令で取り壊されましたが、昭和40年(1965)に鉄筋コンクリートで復元。平成23年(2011)には赤瓦にふき替えて、幕末当時の姿を再現しています。天守から走長屋、鉄門、南走長屋、干飯櫓までつながっている連結建物群が壮観! さらに、高い防御力を実現した石垣も必見ポイント。東面の高さ約20mもの石垣は扇の勾配が実に見事で、大手門の渡り櫓へ昇降できる石垣は武者走りとして全国でも珍しいV字型となっています。

会津若松城の所在地・アクセス・城びとおすすめの楽しみ方
所在地:福島県会津若松市追手町
アクセス:JR磐越西線「会津若松駅」から周遊バス(ハイカラさん・あかべぇ)に乗車し「鶴ヶ城北口」下車徒歩5分
楽しみ方:会津若松城は「桜の名所100選」にも選ばれていて、春には約1000本のソメイヨシノが咲き誇る。天守とセットで撮影したい。

■中世の山城と近世城郭をセットで楽しめる二本松城(二本松市・日本100名城)

二本松城
朝田 辰兵衛さんご投稿写真

室町時代に畠山満泰が築いたとされる山城を元に、豊臣秀吉の命令で会津領主となった蒲生氏郷や初代二本松藩主・丹羽光重が近世城郭へと改修した二本松城。明治維新の際に二本松藩が奥羽越列藩同盟に参加したため戊辰戦争の戦闘地となり、当時の激しい戦いは二本松少年隊の戦死などの悲話と共に語り継がれています。城郭内の桜が開花すると全体的に薄桃色の霞がかかったように見えることから「霞ヶ城」とも呼ばれています。

立派な石垣が伝える名城の面影

明治5年(1872)の廃城令ですべての城郭建築が破却されましたが、石工集団・穴太衆が積んだ天守台は現存しています(二階櫓と多聞櫓は昭和57年(1982)に復元されたもの)。加藤嘉明が築いた三の丸高石垣も見事です。また、山頂部分には土塁や空堀など中世期の遺構も残っていて、“中世城館と近世城郭が同一箇所で営まれた城跡”という二本松城の特色を知ることができます。

二本松城の所在地・アクセス・城びとおすすめの楽しみ方
所在地:福島県二本松市郭内3
アクセス:JR東北本線「二本松駅」から徒歩約20分
楽しみ方:日本最大級の「二本松の菊の祭典」や日本三大提灯祭りの「二本松の提灯祭り」など、お祭りの時期に訪れると楽しさ倍増。

■築城名人が手がけた奥州関門の名城!白河小峰城(白河市・日本100名城)

白河小峰城
イオさんご投稿写真

白河小峰城は南北朝時代の興国・正平年間(1340~1369)に標高370mほどの丘陵を利用して造られた城が始まりで、寛永4年(1627)に初代白河藩主となった築城名人・丹羽長重が約4年の歳月をかけて大改修。寛政の改革で知られる松平定信など7家21代の大名が居城とした後、慶応4年(1868)に戊辰戦争白河口の戦いで落城しました。

往時の姿を偲ばせる木造復元天守

城内には本丸周辺から丘陵部北側にかけての石垣や堀の一部が遺構として現存しています。なかでも総石垣の二の丸と本丸の高石垣は実に見事です。さらに見逃せないのが、江戸時代の絵図や発掘成果を参考に木造で復元された三重櫓と前御門。特に、実質的な天守として用いられていた三重櫓は、日本に5つしかない木造復元の天守で見ごたえ満点です。また、本丸の正門にあたる前御門は映画『武士の一分』のロケ地に使われました。

白河小峰城の所在地・アクセス・城びとおすすめの楽しみ方
所在地:福島県白河市追廻46
アクセス:JR東北本線「白河駅」から徒歩5分
楽しみ方:二の丸入口付近に建てられていた太鼓櫓が白河市郭内に移築され、毎月2日間だけ内部を一般公開している。

■三春藩の藩庁が置かれた三春城(田村郡・続日本100名城)

三春城
モトさんご投稿写真

室町時代後期に地元の戦国武将・田村義顕が築いたとされ、江戸時代に三春藩の藩庁が置かれた三春城。現存する城郭は寛永5年(1628)に入封した松下長綱が改修したもので、標高407.5mの山頂に本丸と居館、本丸西の山麓部分に二の丸、東側の山麓に三の丸が配されました。義顕が入城した朝に城の上空を鶴が舞ったという逸話から「舞鶴城」とも称されました。

お城坂を登って山城の遺構を巡ろう

代用天守として本丸下段に築かれた三階櫓など当時の建造物は残っていませんが、お城坂と呼ばれる坂を登っていくと、門跡や大広間跡など遺構の場所が看板で示されていて、往時の縄張りに思いを馳せることができます。本丸と二の丸の間にあるダイナミックな堀切は見ものです。また、三春城の建物遺構として唯一現存する藩講所表門が、三春小学校の校門として移築されています。

三春城の所在地・アクセス・城びとおすすめの楽しみ方
所在地:福島県田村郡三春町大町
アクセス:JR磐越東線「三春駅」から徒歩約30分
楽しみ方:スマートフォンアプリ「ストリートミュージアム」を利用すれば、パノラマVRで再現した三階櫓などを見物しながら周遊できる。

■上杉景勝が最後の砦とした天然の要害・向羽黒山城(大沼郡・続日本100名城)

向羽黒山城
カズサンさんご投稿写真

戦国時代に会津を治めた蘆名盛氏(あしなもりうじ)が8年間の歳月をかけて築城した向羽黒山城(むかいはぐろやまじょう)。標高408.6mの岩崎山の山頂にある本丸を中心に、地形を巧みに利用した曲輪群が天然の要害となっています。歴代の会津領主が拡張整備を繰り返し、慶長3年(1598)に越後から会津に入った上杉景勝は徳川家康の攻撃に備えて大改修したとされています。

東北でも屈指の規模を誇る山城

向羽黒山城の城域は東京ドーム11個分に相当し、東北でも屈指の規模の山城です。数多くの曲輪、土塁、空堀、堀切、虎口などが良好な状態で残り、往時の面影を偲ぶことができます。また、二曲輪広場や御茶屋場曲輪からは会津の一円を一望でき、この地が要衝だったことを実感させられます。

向羽黒山城の所在地・アクセス・城びとおすすめの楽しみ方
所在地:福島県大沼郡会津美里町三日町
アクセス:JR只見線「会津本郷」駅から徒歩約20分
楽しみ方:向羽黒山城跡整備資料室(向羽黒ギャラリー)では、発掘調査・環境整備の状況を紹介する写真パネルや、城跡のジオラマ模型が展示されている。

■室町時代の伊達氏の拠点だった桑折西山城(伊達郡)

桑折西山城
ぎりょうさんご投稿写真

伊達氏の拠点といえば、伊達政宗が政治の拠点に定めた仙台というイメージが強いですが、実は戦国時代までは現在の福島県伊達郡一帯が拠点でした。桑折西山城(こおりにしやまじょう)は文治5年(1189)に伊達家の始祖朝宗が築き、大永2年(1522)に室町幕府から陸奥国守護に任じられた伊達稙宗が城郭として本格的に整備。そして本拠をこの城に移し、領国支配を確固たるものとしたのです。

政治の場だった巨大建物を平面表示で復元

桑折西山城跡は標高193mの高館山の山頂にある本丸を中心に、二の丸、中館、西館という4つの曲輪で構成された複郭式の平山城。石塁、空掘、枡形状虎口などの遺構が現在も残り、本丸には稙宗の政治の場となったとみられる中心建物跡の平面表示が復元整備されています。

桑折西山城の所在地・アクセス・城びとおすすめの楽しみ方
所在地:福島県伊達郡桑折町万正寺
アクセス:JR東北本線「桑折駅」から観音寺横の登城口まで徒歩約20分。登城口から本丸まで徒歩約20分
楽しみ方:桑折西山城が破却された際に城門を移築したと伝わる桑折寺にも足を運びたい。

■奥州藤原氏が鎌倉軍を迎え撃った要塞・阿津賀志山防塁(伊達郡)

阿津賀志山防塁
dougenさんご投稿写真

文治5年(1189)、源頼朝率いる鎌倉軍が奥州藤原氏攻略のため平泉へと向かうと、奥州軍は鎌倉軍を迎撃するため阿津賀志山(あつかしやま)防塁を築きました。厚樫山の中腹から阿武隈川の旧河道である滝川まで、約3.2kmにわたる二重の堀と3本の土塁から成り、日本の三大防塁の一つに数えられています。

堅固な二重堀が激戦の跡を今に残す

奥州合戦屈指の激戦地となった阿津賀志山防塁は、一部の地区が史跡に指定されています。防塁の始点に近い国道4号北側地区は、岩盤を削って二重の堀を造るという堅固な構造になっていて、周囲の盆地を一望できます。末端近くにある下二重堀地区は遺構の残りが最もよく、二重堀の構造が明確に分かります。

阿津賀志山防塁の所在地・アクセス・城びとおすすめの楽しみ方
所在地:福島県伊達郡国見町石母田他
アクセス:JR東北本線「藤田駅」から徒歩約60分
楽しみ方:旧校舎を改修した「あつかし歴史館」では、貴重な文化財や阿津賀志山防塁の模型が展示されている。

執筆/城びと編集部

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