熊本城の「いま」 熊本城の「いま」第1回 | 名物ガイドとめぐる 最新の熊本城2時間コース ~前編~

4月14日で熊本地震からちょうど2年。復興に向かって進んでいる熊本城の姿は見る人に勇気を与えています。また、NHK大河ドラマ『西郷どん』のクライマックスの一つは西南戦争。その舞台となるのが熊本城です。どんな風に描かれるのか、今から楽しみですね。そんな熊本城の「いま」を1年かけてお伝えしていきます。

震災以前に負けず人気の熊本城

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復旧が進む大天守・小天守の姿は、見る者に勇気を与えてくれる

第1回目は、熊本城はどういうお城なのかという基本知識と、今こそ見学しておきたいコースをご紹介します。震災の影響で見学できる範囲は限られていますが、数多くの観光客でにぎわい、統計によれば熊本地震前の倍以上になっているそうです(後述くまもとよかとこ案内人の会)。

熊本城への愛と知識あふれる名物ガイドさん

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笑顔が素敵な「くまもとよかとこ案内人の会」吉村徹夫会長

熊本城を歩くのにぜひおすすめしたいのが「くまもとよかとこ案内人の会」によるガイドです。熊本地震発生2ヵ月後から、二の丸広場から加藤神社を結ぶコースを整備し、無料ガイドを開始。現在の熊本城の様子を、地震前と比較して詳しく案内してくれます。ガイドさんは、月に1回の勉強会で研鑽を積み、それぞれが個性を生かした面白い案内を行っています。現在、熊本城では至るところでガイドさんの熱の入った案内と、聞き入る観光客の姿が見られます。

取材当日のガイドは吉村徹夫会長。「第1に熊本地震における熊本城の被害、熊本城の復旧状況を正しく伝えます。第2に熊本市民が元気に頑張っている姿をお伝えします。第3に熊本城にまつわる物語をお伝えします」と、お会いして早々から熊本城に対する愛に満ちたご紹介から始まりました。ガイドは、二の丸広場からスタートし、60分、90分、120分と3つのコースがあります。

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スタート地点の二の丸広場

<基本情報>
くまもとよかとこ案内人の会
住所:熊本県熊本市中央区二の丸1-1-1(桜の馬場 城彩苑 総合観光事務所)
電話番号:096-356-2333 ※対応時間9~17時(土・日曜、祝日は~16時)
受付時間:9~15時
料金:無料(予約不可)※時間指定でガイド希望の場合は、現地までの交通費2000円が必要(黄シャツ着用)。60分、90分、120分のコースがあり、3日前までに公式ホームページhttp://www.k-yokatoko.comより申込み
※詳細については、ホームページをご参照ください


大小天守と宇土櫓の「スクラム」姿は必見

集合場所の二の丸広場からまずは西大手櫓門へ。2017年10月より見学できるようになりましたが、その被害の大きさには息を飲みます。不思議なのは、同じような場所にあるにも関わらず、西大手櫓門の左右で石垣の崩れ方が全く異なっていることです。

そしてまさに工事が進んでいる熊本城天守。大きさから大天守と小天守の2つに分けられます。工事が進んでいる大天守は2018年4月3日に仮設屋根が取り払われ、6日には鯱(しゃちほこ)が1体載りました(もう1体は4月28日に載る予定)。ダメージの大きい小天守は宙に浮いたような姿。手前に見える堂々とした建物が宇土(うと)櫓。被害を受けているものの一見すると、熊本地震の影響をほぼ受けていないように見えます。「よくぞ耐えてくれた宇土櫓。宇土櫓を中心にして、傷んだ大天守と小天守を背景にスクラムを組んだように見える力強い場所です」と吉村さんのガイドが一段と熱を帯びます。

実は、この二の丸広場はほかの城ではお目にかかれない場所です。どういうことかというと、なんと熊本城の中に参勤交代の道が通っていたのです。普通は城の内部を秘密にしたがるはず。物流への意識が高い、加藤清正の性格がうかがえるエピソードのひとつです。

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西大手櫓門では多くの観光客が足を止める

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西大手櫓門には熊本地震の被害が色濃く残る

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宇土櫓を中心にして左に小天守、右に大天守。3つの櫓が並ぶ姿が見られるのは全国的に珍しい


加藤神社から望む天守閣は迫力満点

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中央部から石垣が崩れている戌亥櫓

天守閣と宇土櫓を右手に見ながら二の丸広場を歩くと、崩れている石垣の多さに思わずハッと息を飲み込みます。そして目に飛び込んでくるのが、一本の石垣によって支えられている戌亥(いぬい)櫓。

堀に沿ってさらに歩くと加藤神社に到着。神社の名は、熊本城を築城した武将・加藤清正(かとうきよまさ)に由来します。熊本城は加藤清正によって築かれました。その自慢の雄姿を目近で見られるのが加藤神社なのです。

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「加藤清正」ののぼりがはためく加藤神社

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勇猛な人物を思わせる加藤清正公像。熊本城南側、坪井川を挟んで飯田丸五階櫓の向かい側に立つ

熊本城は「武者返し」と呼ばれる、反り返るような石垣で有名ですが、天守が2、宇土櫓や飯田丸五階櫓など、築き上げられた城郭はあまりにも広大です。これは、防御に人一倍神経を配った、清正の性格が出ていると考えられています。

熊本城は明治時代に大きな戦いの舞台になっています。そう、大河ドラマ『西郷どん』の主人公である西郷隆盛が薩摩軍を率いて攻めたのです。しかし、官軍(明治政府側)が立てこもった熊本城は堅固で落とすことは叶いませんでした。「わしは官軍に負けたのではなく、清正公に負けたのだ」と隆盛は言ったと伝えられています。

また俗説ではありますが、「食べられる城」という話もあります。朝鮮出兵の際に城に籠る戦い(籠城戦)で苦しい想いをした清正は、食用できる、ずいき(芋茎)を城内の畳に用いて有事に備えたというエピソードです。清正の慎重な性格を表しているのかも知れませんね。

「この神社から熊本城の天守を見ると、な~に負けんぞ!という気持ちが沸き起こってきます」と吉村さんは感慨深げに語ります。

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震災前の写真と見比べながらガイドする吉村さん


宇土櫓は見た目以上に恐ろしい造り

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大きな被害から免れた宇土櫓

大規模な工事が進む大小天守の手前に堂々と立つのが、「第3の天守」とも呼ばれる宇土櫓。今回の地震で大きな被害を受けず、熊本市民は安心しました。石垣の高さが約21m、櫓の高さが約19mもあり、熊本城を除けば天守閣級の規模。江戸時代に起こった大きな地震を経て、西南戦争でも燃えず、太平洋戦争でも空襲されていない櫓です。

一見、攻めやすそうに見えますが、堀に降りて見上げてみると、スケールの大きさを体感します。石垣3つ分で、160㎝くらいのスケール。攻めやすそうで攻めにくい、これも加藤清正が考慮した仕掛けです。多くの人々を魅了してきた宇土櫓は、黒澤明監督の『影武者』(1980年公開)のロケ地にもなっています。

さて、加藤神社の境内で見逃せないのが、崩れた石垣の中から見つかった、観音様が刻まれた石垣。観音様が刻まれた面は石垣の内側を向いていたため、今回の地震まで存在が気づかれていませんでした。人知れず400年間熊本城を見守ってくれてきてくれたのですね。加藤神社では、7月第4日曜(2018年は7月22日)に「清正公(せいしょこ)祭」が開催されます。ぜひお祭りと一緒に、見学されてみてはいかがでしょうか。

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加藤神社境内から見つかった観音様が刻まれた石垣

<基本情報>
加藤神社
住所:熊本県熊本市中央区本丸2-1
電話番号:096-352-7316
開園時間:境内自由 

さて、「くまもとよかとこ案内人の会」によるガイドコース(120分コース)は、加藤神社からさらにぐるりと熊本城をまわっていきます。

※記事中のデータはすべて取材時(2018年4月4日)の情報となります。


執筆・写真/藪内成基(やぶうちしげき)
奈良県出身。30代の城愛好家。国内旅行業務取扱管理者。出版社にて旅行雑誌『ノジュール』などを編集。退職し九州の城下町に移住。観光PRやガイドの傍ら、「城と暮らし」をテーマに執筆・撮影。『地域人』(大正大学出版会)など。海外含め訪問城は500以上。知識ゼロで楽しめる城の情報発信を目指す。

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