2023/04/06
クリス・グレンの お城へGO! ~日本のお城、英語でいうとどうなるの?~ きっかけはサムライ&ニンジャ! クリス・グレンさんがお城好きになるまで
最近、お城で外国の方を見かけることも増えてきました。せっかくなら日本のお城の面白さを海外の方とも共有したい! でも英語で日本のお城を説明するのって、ちょっとハードルが高いですよね。
そこで、お城好きラジオDJで知られるクリス・グレンさんが「英語でどう説明したらいいの?」に答えてくれる、新連載「クリス・グレンのお城へGO! ~日本のお城、英語でいうとどうなるの?~」が始まります。今回は連載開始にあたって、クリスさんと日本のお城の出会いや、新連載への意気込みを伺いました。
5月から新連載「クリス・グレンのお城へGO! ~日本のお城、英語でいうとどうなるの?~」が始まります!
春は始まりの季節! 何か始めるのにぴったりのシーズンですね。
というわけで、城びとでも新連載が始まります!
執筆は、お城好きDJで知られるクリス・グレンさん!
名古屋在住のクリスさんは、日本全国550箇所以上、名古屋城にいたっては850回以上、訪れるほどのお城マニア。お城EXPOをはじめとする、さまざまなお城イベントで、クリス・グレンさんの講演やトークショーをご覧になった方も多いのではないでしょうか。
そんなクリスさんが今回始める連載が「クリス・グレンのお城へGO!~日本のお城、英語でいうとどうなるの?~」です!
最近、外国人の旅行客の皆さまの姿をお城で見かけることが増えてきました。せっかくだから、お城の魅力や面白さについて英語で説明してみたい! そんな思いを、実はインバウンド観光アドバイザーでもあるクリスさんがサポートしてくれる内容で、毎回テーマを設けて、「これって英語でどういえばいいの?」を楽しくガイドしてくれます。
今回は、連載開始を記念して、クリス・グレンさんに「お城との出会い」など、色々お伺いしました!
クリス・グレンさんとお城の出会い
―オーストラリア出身のクリスさんが、日本のお城に興味を持ったきっかけは何だったのでしょうか?
11歳のころ、学校の授業で「オーストラリア以外の国について調べましょう。」という宿題が出たんです。そのとき、たまたま自分が調べることになった国が、日本でした。
まずは学校の図書館へ行って、日本の歴史や文化について書かれた本を読んだんですね。
「日本には天皇がいる」「日本人は、米が主食で箸を使って食事をする」「部屋の中には畳と呼ばれるマットが敷いてあって、家に入るときには靴をぬぐ」「将軍と呼ばれる殿様がいて、将軍には多くの家臣がいた」とか、まぁ、そんなことが書かれていたんですけど、その本の中に「大阪城」の空撮写真があったんです。
天守の屋根の色と白い壁のコントラスト、複雑な屋根の形、天守の下にある石垣などを見て、難しいことはわからないけど、まずはシンプルに「美しい!」と思いました。オーストラリアにはないユニークな建物だという点にも、興味をそそられましたね。
春の大阪城。天守と桜は、外国人が好きな日本の風景の一つ
――この頃から、いつか日本へ行ってみたい!と思っていたのですか?
いや、まだ小学生だったし、海外へ行くなんて想像できなかったから「いつか日本へ…」というところまで思いが至らなかったです。ただ、母国オーストラリアとは言葉も、宗教も、歴史も文化もまったく違う「日本」という国のことは、もっと知りたいと思うようにはなりました。
80年代になると、オーストラリアでもウィリアム・アダムス(三浦按針)をモデルにした映画「SHOGUN」が大ヒットしたり、60年代にオーストラリアでも放送された「隠密剣士(英語名:The Samurai)」が再放送されたりして、サムライ&忍者ブームが巻き起こったんですよ。
ちなみに、この「隠密剣士」を演じていた大瀬康一さんがオーストラリアを訪問するためにメルボルン空港にやってきたときには、ビートルズを上回る7千人が彼を見に集まっちゃった! それくらいの大ブームでした。
こうした日本の時代劇を映画やドラマで見ていると、当然、城も出てくるわけです。
そういうものを見ているうちに、彼らが生活していた「城」について、もっと知りたい!と思うようになってくる。
僕が城に興味を持ったのは、サムライや忍者、時代劇がきっかけなんですよ。そして16歳のときに留学するチャンスが巡ってきて…札幌に1年間、留学することになりました。
留学生時代の私。留学生活中は、日本のことを必死で勉強しました
友達と忍者ごっこをする16歳の私。衣装は、ホームステイの家族がつくってくれたハンドメイド
16歳の時に初めて見た日本のお城は、思っていたのとちょっと違った!?
――日本で最初に見たお城は、どこでしたか?
ホームステイの家族と一緒に東京観光をしたときに見た、江戸城です。
ガイドブックでよく見る二重橋の風景をリアルで見て、感動しました。
ただ、正直なことを言うと、ちょっと期待はずれな部分もあったんですよね。だって、映画やドラマで見ていた江戸城には、立派な天守があるじゃないですか(笑)。
江戸城・二重橋
でも実際に城へ行ってみると、「天守がない!いったい、どういうこと?」と、日本の城には天守があるのが当たり前だと思っていた17歳の僕は、ちょっとガッカリしました。
――お城=天守だと思っていらしたのですね
ただ、城内を歩いてみると、隙間なくキレイに積み上げられた見事な石垣が、あちこちにあることに気づいたんです。それが400年前につくられたものだとわかった時には、それはもう感動ですよ。
だって400年前って、オーストラリアの歴史よりも古いんですよ!
しかもサムライたちが、こんなにも美しい、アーティスティックな石垣をつくったなんて「やっぱりサムライって、すごい」と思いましたね。
江戸城天守台。天守がなくてショックだったけど、石垣の美しさに感動!
友達の家の近くの山…もしかしてここはお城!?
――日本は山城も多いですが、初めて山城に行ったのはいつですか?
20歳の頃だったかな?オーストラリアから日本へ遊びにきた時に、長野県の友達の家へ行ったんです。その家の近くに、まぁまぁ高い山があったんですけど、そこが明らかに他の山とは違う雰囲気で。麓から見ても、はっきりわかるくらいの人工的な段差があることに気付きました。
「もしかして、この山ってお城?」と聞いてみたら、なんと大正解! なんとそこは、替佐城という武田氏の城だったんです。
もちろんその頃は、ほとんど知識もないので細かいことはわからなかったけど、土を掘ったり盛ったり、削ったり、山の地形を上手に利用しながら、巨大な軍事施設を築いたということだけはわかりました。その知恵と工夫、400年前の人たちが人力だけで築いたという、そのパワーに驚いたことを覚えています。
ちなみに、替佐城は、大堀切、竪堀もある素晴らしい山城なので、おすすめですよ。
――これをきっかけに、山城に目覚めたのですか?
いや、まだこの頃はまだオーストラリアに住んでいたし、日本語で城の本を読めるほどの語学のスキルもなかったので、本格的に山城の勉強をするのは、もっともっと後のこと。というか、15年前くらいからなので、つい最近です(笑)。
地元の人も知らない歴史を伝えたい
――山城は建物もないので、ちょっと難しく感じる方も多いです。クリスさんは、どんな風に勉強したのですか?
はじめの頃は、とにかく山城へ行って、現地を見て、WEBサイトの情報や現地の看板などから勉強する感じ。あとは、その近くん住んでいる人を見つけたら「すいませ〜ん、ちょっと聞いてもいいですか?」と声をかけて聞いてみる。そんなことを繰り返していました。
でも、けっこうな確率で「え?ここ城なの?誰の?」と、逆に質問されることもあったりして。昔から住んでいる地元の人でも知らないんですよね、山城って。僕は、それがとてももったいないなぁ…と思っていて。だからこそ、もっと勉強して、人に伝えられるようになろうと思いました。
山城って、たしかに初めはちょっと難しいんですけど、その見方がわかるようになってくると、本当に面白いんですよねぇ。だから今は、土の城も大好きですよ。
消失してしまった山城・南山城(岡山県)。発掘調査現場を見学。この素晴らしい城がなくなってしまうなんて…と、心が痛みました
外国人旅行者は自国にない歴史や文化を体験したい
――ヨーロッパにもお城はありますが、クリスさんは海外のお城も好きですか?
正直に言ってもいいですか? 実は、海外のお城には、そんなに興味が…ありません(笑)。
さっきも少し話しましたけど、もともと城に興味を持ったがサムライだったので、その歴史に関係のない城には、あんまり興味がわかないんですよ。でも、日本の城を知る上で、他国の城との違いを知ることは重要なので、もちろん勉強はしています。
あと、建造物ということでいうと、ヨーロッパの城と似ている建物はオーストラリアにもあるんですよね。たとえば、教会とか。
でも、日本の城の天守のような建物は、オーストラリアには絶対ない。だからオーストラリアとはまったく違う文化への憧れもあって、僕は日本の城が好きなんだと思います。
そういう意味では、外国人旅行者(インバウンド)のみなさんも僕と同じで、自国にない歴史や文化を体感したいという思いが強いんです。その象徴的なもの一つが、日本の城。当然ですが、いきなり「土の城へ行こう!」と考える人は、まずいないので(笑)最初は、やはり天守のある城へ行きますね。
分かるようになるとこういうお城も楽しい! 明知城(岐阜県)
――海外の方には、どんな城が人気なのでしょうか?
そうですね、テレビや雑誌、ガイドブックなどで紹介されている城、有名観光地(東京・大阪・京都など)にある城、新幹線で行けるアクセスの良い城などでしょうか。そういう意味では、現存天守以外の城へ行く外国人も多いですよ。
外国人と一言でいっても、日本の歴史文化に対する興味関心も、知識量も感性も、みんなバラバラ。たとえば天守にエレベーターがついていることに対して「クールだ!」という人もいれば、「ガッカリだ…」という人もいる。人それぞれです。
圧倒的な知名度、アクセスの良さ、天守群の美しさ…世界遺産・姫路城(兵庫県)は、やはり外国人にも人気です
――連載「クリス・グレンのお城へGO!~日本のお城、英語でいうとどうなるの?~」が始まります。どんな内容になりそうでしょうか?
いわゆる「インバウンド」の方々に対して、城の説明する機会って、これからますます増えてくると思うんですよね。なので、外国人が興味関心を持っていること、よくある質問などをトピックとして取り上げながら、説明する際のポイントや使える英単語などを紹介していければと思っています。
ただ…まだ初回の原稿も書いていないので、どんな感じになるのか…正直、僕もわかりません(笑)。
――連載名「クリス・グレンのお城へGO!」の「へGo!」は「英語」とかけているのですよね。「お城へGO!」で「お城英語」。うまいですね! 最後に意気込みをどうぞ!
念願の「城びと」での連載、楽しみながら、がんばりま〜す!
彦根城(滋賀県)と私
執筆・画像/クリス・グレン
オーストラリア・アデレード市出身。93年より名古屋在住。ラジオDJのほか、テレビプレゼンター、ナレーター、翻訳者、ライターとしても活躍。インバウンド観光アドバイザーとして、自治体や観光施設に対するアドバイスなども行う。日本全国550箇所以上、名古屋城にいたっては850回以上、訪れるほどの城マニア。お城好きラジオDJとして、各地の城イベントにも出演。「城バイリンガルガイド」(三浦正幸著・小学館)、「Japanese Castle-24 Best Castles Stamp Rally-」(日本城郭協会監修)などの翻訳も手掛けるほか、城郭に関する翻訳やアプリの監修なども行っている。NHK WORLD 「SAMURAI CASTLES」ではナビゲーターもつとめる。