超入門! お城セミナー 第98回【構造】お城の曲輪や出入口の配置の仕方にはルールがあったの?

お城に関する素朴な疑問を、初心者向けにわかりやすく解説する連載「超入門! お城セミナー」。今回のテーマは、お城の出入り口となる虎口や、曲輪といった城を構成するパーツの配置の仕方について。効果的な曲輪の配置にはいくつかのパターンがあり、配置の特徴によって分類されます。江戸時代に描かれた城絵図を見ながら、それぞれの特徴を見ていきましょう。

篠山城
輪郭式に分類される篠山城の縄張。内堀内に本丸と二の丸があり、これを囲むように馬出を持つ三の丸が設けられ、その外側には三の丸が広がる(『正保城絵図』部分 国立公文書館蔵)

近世城郭は曲輪配置によって種類分けできる!?

城を構成する、本丸・二の丸・三の丸などの曲輪(陣地や蔵などを造るために堀や土塁で区画された平場のこと)。この曲輪をどう配置するのか、どんな虎口(出入口)をどこに造るのか、また城壁のどの部分をどう折り曲げるのか……といった城全体の平面プラン(設計)を「縄張」といいます。(縄張については「第6回 【鑑賞】よく聞く「縄張」って何のこと?」でおさらいしましょう)

この曲輪や虎口の配置には決まりやルールがあるのでしょうか? 結論から言うと、曲輪の配置の仕方にこうしなければいけないというルールはありません。城の縄張は、立地や役割によって大きく左右されるからです。しかし、効果的な曲輪配置にはいくつかのパターンがあり、分類がなされています。とはいえ、これは文献によって、また研究者によってその見方も名称も違ったりするのですが、今回はこの曲輪配置について見ていきましょう!

現在一般的にほぼ定着している曲輪配置による縄張分類では、「輪郭式(りんかくしき)」、「梯郭式(ていかくしき)」、「連郭式(れんかくしき)」の3つを基本としています。以下に、その特徴や典型例を紹介しましょう。

曲輪配置による縄張の分類法

<輪郭式>
米沢城、縄張
米沢藩の居城だった米沢城。本丸を中心に二の丸・三の丸が広がる輪郭式の縄張だ(『正保城絵図』部分 国立公文書館蔵)

本丸を中心に置き、その周りを「回」の字型にぐるりと二の丸や三の丸が取り囲む配置。四方への防御力のバランスが取れているので、理想的な曲輪配置だといわれています。比較的平城にこのタイプが多いようです。

また、輪郭式の変形として、円形の曲輪を同心円状に配置した城を「円郭式(えんかくしき)」と呼ぶことがあります。しかし他に実例が静岡県の田中城しかないため、一般的ではありません。

田中城
田中城復元イラスト。円形の曲輪を重ねる珍しい構造だが、輪郭式の一種と言って差し支えないだろう(イラスト=香川元太郎)

<梯郭式>
城絵図、岡山城
梯郭式に分類される岡山城(岡山県)の縄張。旭川を背後に本丸が小高い山上に築かれ、山麓に中の段・下の段が広がる(『正保城絵図』部分 国立公文書館蔵)

本丸の一方ないし三方を囲むように二の丸を置く配置。本丸は中心ではなく片寄った位置になります。本丸の背後を川や断崖とすることが多く、これによって輪郭式のように四方すべてを囲まずとも防御が可能に。ただし本丸背後が城外に近くなるため、大砲の攻撃には注意が必要。自然地形を応用することが多いため平山城や山城向きで、近世城郭の平山城の多くがこのタイプです。

<連郭式>
城絵図、水戸城
連郭式に分類される水戸城(茨城県)の縄張。那珂川と千波湖に囲まれ、本丸・二の丸・三の丸を階段状に配置している(『正保城絵図』国立公文書館蔵)

本丸・二の丸など主要な曲輪を一直線上に連ねた配置。山の尾根上を利用した山城や平山城に多いタイプですが、防御力はこの3つで最も低くなります。このため、戦がなかった比較的新しい年代の平城にもみられます。

この他、江戸城(東京都)のように曲輪を渦巻状に配置する縄張を「渦郭式(かかくしき)」または「螺旋式(らせんしき)」と呼ぶことがあります。他に、シラス台地を侵食した谷を深い堀とし、独立性の高い曲輪が林立している知覧城(鹿児島県)のような縄張を「群郭式(ぐんかくしき)」と呼ぶこともあります。

城絵図を見て縄張を分類してみよう!

今回は、3つの縄張の種類を紹介しました。では、ここまで読んできた内容が身についたか、クイズで試してみましょう! 下の3つの城絵図を見て、輪郭式・梯郭式・連郭式のどれに当てはまるか考えてみましょう。

<第1問>
Q:下の城絵図は、輪郭式・梯郭式・連郭式、どれに当てはまるでしょうか?

城絵図、山形城
「羽州の狐」として知られる最上義光が築いた山形城(山形県)(『正保城絵図』部分 国立公文書館蔵)

A:これは簡単ですね。本丸を中心に二の丸・三の丸が広がる縄張は、そう輪郭式です。

<第2問>
Q:下の城絵図は、輪郭式・梯郭式・連郭式、どれに当てはまるでしょうか?

城絵図、小田原城
かつて北条氏の居城だった小田原城(静岡県)。絵図に描かれているのは、江戸時代の改修後の姿『正保城絵図』部分 国立公文書館蔵)

A:山を背後にして本丸を築き、これを三方から取り囲むように二の丸と御用米曲輪が設けられ、さらにその外側には三の丸が広がっています。ということで、答えは梯郭式です。

<第3問>
Q:下の城絵図は、輪郭式・梯郭式・連郭式、どれに当てはまるでしょうか? これは、上の2問よりも少し難しいですよ。

城絵図、福山城
一国一城令以降に築かれた福山城(広島県)。(『正保城絵図』部分 国立公文書館蔵)

A:梯郭式のようにも見えますが、答えは輪郭式。水堀がないためわかりづらいのですが、石垣に囲まれた本丸を、同じく石垣をめぐらせた二の丸が取り巻いています。

クイズはここまでです。さて、何問正解できましたか?

今回は、曲輪配置による縄張の分類方法を紹介しましたが、冒頭でも触れた通り、見方・考え方によって曲輪配置の分類は実にさまざまなのです。実際の城の縄張が、最初にあげた基本の3パターンにきっちり当てはまるかというとそうではなく、実際には多くが2つ以上のパターンを組み合わせた縄張になっています。さらに複雑な縄張だと、分類はもっと困難になります。

つまり、曲輪配置の分類の基準はあいまいで、あまり学術的とはいえないのです。だからといって、ガッカリしないで下さい。これらの基礎知識を持っていれば、近世城郭を訪れた時に曲輪を歩いて、また縄張図などを見て、自分で分類する楽しみができます。じっくり縄張を見ることでその土地への理解も深まり、ひいてはなぜその場所にその縄張の城をなぜ築いたのか? という築城主の思いまでも感じ取れるようになるかもしれませんね!

▼超入門!お城セミナー【構造】のその他の記事はこちら!


執筆・写真/かみゆ歴史編集部
「歴史はエンタテインメント!」をモットーに、ポップな媒体から専門書まで編集制作を手がける歴史コンテンツメーカー。手がける主なジャンルは日本史、世界史、美術史、宗教・神話、観光ガイドなど歴史全般。主な城関連の編集制作物に『日本の山城100名城』『超入門「山城」の見方・歩き方』(ともに洋泉社)、『よくわかる日本の城 日本城郭検定公式参考書』『完全詳解 山城ガイド』(ともに学研プラス)、『図解でわかる 日本の名城』(ぴあ株式会社)、『カラー図解 城の攻め方・つくり方』(宝島社)、『隠れた名城 日本の山城を歩く』(山川出版社)、「廃城をゆく」シリーズ(イカロス出版)など。