2020/01/17
お城EXPO 2019 徹底ガイド&レポート 【イベントレポート】限定プログラムも!「お城EXPO 2019 プレミア前夜祭」に参加
昨年12月21日(土)・22日(日)に行われ、大盛況のうちに幕を閉じた「お城EXPO 2019」。その前日に行われた「プレミア前夜祭」の模様を、テレビにもたびたび出演、城びとに何度も記事・レポートを寄せてくださる城びとアンバサダーの小城小次郎さんがレポートします!
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何はともあれ、「プレミア前夜祭」に参加してみる
これまで「年末三連休」をまるまる使う形で3日間の開催が続いていたお城EXPOですが、2019年は2日間での開催となりました。3連休がなくなってしまったので仕方ないのかなあと思っていたら、何と「前夜祭」という起死回生?のプログラムが公表されました!
これは嬉しいぞ!どれどれ…。
ううむ。平日金曜日の17時開城、ステージは18時開演か(お城EXPOでは「開場」を「開城」と表記します)。私のオフィスからだと、定時退社でも開演時刻ぎりぎりの線。えーい。ここは思い切って有給休暇で!(笑)
開城15分前に会場に到着してみると、そこには何と長蛇の列が。開城前に行列ができるのは毎年恒例のことですが、前夜祭でも行列とは。うーむ。お城EXPO人気、恐るべし。
会場に入ると、そこにはさっそくパンフレットを抱えた武将隊コスチュームのお姉さん。否応なしにテンションが高まりますね。前夜祭とあって、公開エリアはかなり限定的。そんな中に燦然と輝くのがプレミア前夜祭の目玉である「大坂冬の陣図屏風」です。撮影自由のこの屏風、あっという間に人だかり。この屏風については後で詳しく述べることにします。
屏風に最も人が集まるものだと思っていたら、別のところにもっと長い行列が。あれ? また並ぶの?
どうやらグッズ販売と、御城印に並んでいるようです。御城印はお城EXPOにて限定配付される、国宝五城オリジナル。国宝天守を持つ彦根城(滋賀県)、松本城(長野県)、犬山城(愛知県)、姫路城(兵庫県)、松江城(島根県)の五城が一枚に集結し、さらにお城EXPOのロゴと前夜祭当日の日付が記載された、「絶対に前夜祭でしか手に入らない」逸品。グッズもお城EXPOオリジナルの限定です。
プレミア前夜祭で開催されていた、位置情報ゲームアプリ「ニッポン城めぐり」の弓矢イベントにも行列が出来ています。開演までの約1時間で、御城印を手に入れてグッズを買って弓矢イベントにも参加しようとすれば、確かにいち早く入城したくなる気持ち、わかりますね。
プレミア前夜祭のステージプログラムはミニコンサートとトークショー
「弦楽カルテット&ピアノによるミニコンサート」
鈴木理恵子氏(ヴァイオリン)、山田百子氏(ヴァイオリン)、百武由紀氏(ヴィオラ)、苅田雅治氏(チェロ)、若林顕氏(ピアノ)が弦楽四重奏あり、ピアノ独奏ありと様々に構成を変化させながら、戦国時代を題材とする大河ドラマで用いられた以下の8曲を次々と演奏して行きます(カッコ内はドラマ放送年)。
・小六禮次郎/大河ドラマ「秀吉」メインテーマ(1996)
・小六禮次郎/大河ドラマ「功名が辻」メインテーマ(2006)
・大島ミチル/大河ドラマ「天地人」オープニングテーマ(2009)
・吉俣良/大河ドラマ「江~姫たちの戦国」メインテーマ(2011)
・菅野祐悟/大河ドラマ「軍師官兵衛」官兵衛紀行(2014)
・服部隆之/大河ドラマ「真田丸」メインテーマ(2016)
・菅野よう子/大河ドラマ「おんな城主 直虎」天虎~虎の女(2017)
・池辺晋一郎/大河ドラマ「独眼竜政宗」テーマ(1987)
うーん。何とも豪華なラインナップ。大河ドラマって、概ね1年を通じて放送されるせいでしょうか。曲を聴いた瞬間に「その年」「その頃」の出来事や思い出が脳裏を駆け巡ったりしませんか? 私も取材を忘れ、しばし感慨にふけってしまいました。また会場では、それぞれの曲に合わせてドラマに関連するお城の写真が次々と映し出されていきます。さすがはお城EXPO。心憎いばかりの演出です。
「トークショー:デジタル想定復元された『大坂冬の陣図屏風』」
屏風の想定復元に携わった凸版印刷株式会社文化事業推進本部の木下悠氏と徳川美術館学芸部部長代理の原史彦氏が、図屏風の歴史的位置付けや見どころ、復元に当たっての苦労話など、非常にわかりやすく伝えてくださいました。
「トークショー:歴史ドラマの時代考証の裏話」
日本城郭協会理事長の小和田哲男氏と歴史研究家の小和田泰経氏が親子トークを展開。同じステージにお二人が並んでいらっしゃるというだけでも貴重ですよね。
これら2つのトークショーの内容の詳細は、当日入城された方だけのお楽しみとのことでお伝えすることができませんので、簡単なご紹介に留めさせて頂きました。
「大坂冬の陣図屏風」は、よく考えたらものすごく貴重な史料だった
お待たせしました。いよいよ「大坂冬の陣図屏風」のご紹介です。
今回展示された屏風は、東京国立博物館が所蔵する屏風に記された色指示に従い、凸版印刷株式会社が奈良大学文学部教授の千田嘉博氏、徳川美術館並びに東京藝術大学の監修の下、デジタル技術を駆使して想定復元されたものです。
実は私も、実際に見るまではその「凄さ」に気が付きませんでした。何が凄いのかというと、まず何よりもこの屏風が「冬の陣」であって「夏の陣」ではないということ。大坂の陣を描いた屏風というものはそれなりの数があるので私も油断していたのですが、そのほとんどが夏の陣を描いたものですね。
「夏の陣」は野戦でしたが、「冬の陣」は攻城戦。当然のこととして「堀が埋められる前の大坂城」が描かれているわけですし、「真田丸」も存在します(真田信繁(幸村)もちゃっかり存在します。トークショーを聞かずにお城EXPOの現場でご覧になった方、どれが信繁か、ちゃんとわかりましたか?)。
橋板を半分だけ落とした橋や、堀端ぎりぎりまで掘り進めた”仕寄り”と呼ばれる塹壕状の溝の中に身を潜める兵士たちや、今まさに取ったばかりの首を引っ提げ、意気揚々と城に引き返す兵士など、実際に攻城戦を体験した時代の人間でなければ到底描くことができない「リアルな戦場の風景」が克明に描かれています。一方で、攻城兵に食べ物を売っている町人がいたり、呑気にご飯を食べている兵がいたり、喧嘩している兵がいたり、おにぎりを拾い集めるちゃっかり者がいたり…リアルさを通り越してコミカルとさえ言えそうな種々雑多な人間模様が、一双の屏風の中に実に生き生きと描き込まれています。
今回の復元作業を経て鮮やかな彩色が蘇った大坂冬の陣図屏風には、そもそもこの屏風を誰が作成したのかという点を含め、まだまだ解明されていない謎が数多く存在します。屏風の両端の各一枚(一曲)に絵柄がないのも不思議ですよね。これからどこかでまた大坂冬の陣図屏風を目にする機会がありましたら、ぜひ端から端まで「じーっ」とご覧頂き、いろんな謎解きにチャレンジしてみてはいかがでしょうか。
前夜祭を終えて会場を後にした時、観覧車の大時計は20:50を指していました。あっという間の4時間近く。関係者の皆様、入城者の皆様、本当にお疲れさまでした。
執筆・写真/小城小次郎
城びとアンバサダー。9歳で城を始めた「城やり人」。TV東京系「TVチャンピオン極」ほか出演。