【イベントレポート】「山城に行こう!2017」[前編](岐阜県可児市)


山城に行こう!2017、パンフレット
「山城に行こう!2017〜センゴクの城」のパンフレット

山城に触れ交流を深めた2日間

今年度最大級とされた台風21号がせまっていた10月21日(土)、岐阜県可児市の山城には、のべ500人を超える来城者が押し寄せていた。ボランティアの解説を熱心に聞き入る親子、雨にも負けず遺構を撮影する〝撮り城〟の人、豚汁をほおばりながら地元の方々との会話が弾む山城ガールたちなど、楽しみ方は人さまざま。ただ、可児市の山城4城にはこの日、山城に触れあい、城好き同士が交流することができる喜びに満ちあふれていた。孫と参加していた60代の女性は次のように語る。「私は以前からお城が好きで、この子を山城に連れて行きたいとずっと思っていました。ガイドしてくれるボランティアの皆さんが熱心で、孫が城に興味を持ついいきっかけになりましたね。こんなイベントが全国で行われればいいのに」—。

美濃金山城、発掘調査、現場
美濃金山城では、発掘調査の現場を見ながら、教育委員会や発掘担当者のスタッフが解説を行った。雨にも関わらず、参加者の関心は高かった

10月21日・22日、「山城に行こう!2017〜センゴクの城」のイベントが岐阜県可児市で開催された(10月23日にも春風亭昇太師匠と行く苗木城歩きが予定されていたが、台風到来のため残念ながら中止に)。10月21日には市内にある美濃金山城跡・久々利城跡・大森城跡・今城跡の4城で、「可児市の城を制覇せよ。」と題された山城巡りを実施。翌10月22日は、マンガ家の宮下英樹さんや落語家の春風亭昇太師匠をスペシャルゲストに迎えたトークショーが開催された。「山城に行こう!」と銘打たれた可児市のイベントがスタートしたのは2016年のことだが、まだ2年目にも関わらず、城ファンにはすっかり定着したかのようなにぎわいだ。

登城者を歓迎する地元の方々の「おもてなし」

1日目の山城巡り、話を聞いた参加者の口から多く出たのは「おもてなし」というキーワードだ。山城で「おもてなし」とはどういうことだろうか。

久々利城、登城道、むしろ
山城巡りのひとつである久々利城。地元ボランティアの手により木々が伐採され、登城道にはすべられないようにむしろが敷かれていた

山城に行こう!2017、ガイド
各城では地元のボランティアが参加者を出迎え、ていねいなガイドがなされた(可児市提供)

まずは、地元のボランティアの方々が、ほぼマンツーマンで城の遺構・ポイントを解説してくれたことが挙げられる。ある年輩のスタッフは、「最近の山城ファンはレベルが高くて困っちゃうよ」とおどけていたが、いやいや、ボランティアの皆さんの知識量と思いやりにこそ舌を巻く。地域の歴史や城の見どころをていねいに解説してくれ、初心者にはわかりやすく、「土塁」「切岸」といった城用語から手ほどきをしていた。皆さん、思い入れたっぷりに語ってくれるので、聞いているこちらも前のめりになるし、こちらも次々と質問してしまう。

さらに、各城ごとに趣向の凝らされたイベントも準備されていた。今城跡では芋煮や豚汁がふるまわれ、大森城跡ではカラーボールを用いて攻める・守るの解説がされ、美濃金山城では最新の発掘現場が公開されて、教育委員会と発掘担当者からていねいな説明がなされた。久々利城では雨のため実現できなかったが、おもちゃの刀や弓矢を用いたチャンバラ合戦が開催される予定だった。「ガイドの方が熱心で、それがすごく印象的です。子供たちも足はドロドロですけど、楽しかったって。思い出に残った城? 豚汁が美味しかった今城でしょうか」(2人の子どもと参加した30代男性)。

大森城、横堀、土塁、切岸
大森城の横堀。綺麗に草むしりがされているので、堀や土塁・切岸の形状がわかりやすい

今城、整備
数年前までは藪に覆われた今城だが、地元の手によって整備され、説明看板なども設置された(松原草太さん提供)

参加者が山城巡りを堪能できた理由としては、4城すべて、よく整備されている点も見逃せない。山城に行ったはいいけど、木々に覆われていてどこが遺構かわかりにくく、ブッシュから先には進めなかったという経験を持つ人も多いだろう。可児市の山城では、そんなストレスにさらされることはない。木々は適度に伐採され、草刈りも隅々まで行われているので遺構が見やすく、歩くルートも整然と整備されている。久々利城など坂が多い城では、雨ですべりやすくなっているため、要所要所にむしろが敷かれていた。こうした準備もすべて、地元のボランティアの手によるものだ。

登城者のことを思いやった整備と、地元の方々のおもてなしによって、小さな山城がこんな楽しいコンテンツに生まれ変わる。そんなことを実感した1日目だった。


中編へつづく

執筆・写真/かみゆ歴史編集部(滝沢弘康)
「歴史はエンタテインメント!」をモットーに、ポップな媒体から専門書まで編集制作を手がける歴史コンテンツメーカー。手がける主なジャンルは日本史、世界史、美術史、宗教・神話、観光ガイドなど歴史全般。主な城関連の編集制作物に『日本の山城100名城』『超入門「山城」の見方・歩き方』(ともに洋泉社)、『よくわかる日本の城 日本城郭検定公式参考書』『完全詳解 山城ガイド』(ともに学研プラス)、『戦国最強の城』(プレジデント社)、『カラー図解 城の攻め方・つくり方』(宝島社)、「廃城をゆく」シリーズ(イカロス出版)など。

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