【イベントレポート】「山城に行こう!2017」[中編](岐阜県可児市)

ライバル関係にもある城単位のボランティア組織

岐阜県可児市で開催された「山城に行こう!2017〜センゴクの城」の1日目は、地元のボランティアのおもてなしによって、悪天候にも関わらずのべ500人を超す城ファンが山城歩きを楽しんだ。地元の人々が、ここまで熱心に城ファンを受け入れてくれるのはなぜなのだろうか。

可児市には、続日本100名城にも選ばれている美濃金山城をはじめ、戦国時代の城跡が10城点在する。木曽川と飛騨川が合流する可児は、古くから交通の要衝として栄え、織田信長の有力家臣である森氏が美濃金山城を築城し、東美濃支配の拠点とした。そうした歴史的背景を持つ山城を観光資源にしようと、可児市では「戦国城跡巡り」と銘打った観光事業を展開。地域住民と地元企業を巻き込んだ山城の活用がスタートしたのだ。

可児市の取り組みの特徴は、各城ごとに、住民によるボランティア組織を立ち上げている点にある。そして、ボランティア組織が中心となって、地元の人が自分たちの地域にある山城の整備やガイドにあたっている。つまり、可児の山城は、それぞれに熱狂的なサポーター、またはファンクラブを持っているようなものなのだ。それゆえ、今回のイベントでも城ごとにきめ細かいガイドとおもてなしにつながった。

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久々利城ボランティアのオリジナルスタッフジャンパー。左は久々利城の縄張図が描かれ、右は「久々利城主 悪五郎」の文字。「欲しい!」という参加者も多かったが、残念ながら非売品だ

山城に行こう!、春風亭昇太、足軽隊
写真は「山城に行こう!2016」の様子。春風亭昇太師匠率いる足軽隊(参加者)を、地元の子どもたちがスポンジ製の弓矢や新聞紙を丸めた石で迎え撃った。地元と行政の連携でイベントが企画・運営されている

そうした各城ごとのボランティア組織の活動を、可児市では「山城連絡協議会」を通じてサポートするという体制ができあがっている。山城連絡協議会の中心人物で、「山城に行こう!」イベントの仕掛け人でもある可児市文化財課の長沼毅さんは次のように語る。「自分たちが手がけた山城に全国から城ファンがやって来ることが、地元の人の喜びでありモチベーションにつながっています。そうした意識から、『他の城よりも整備やおもてなしをがんばる』というライバル意識も芽生えているようです」。地元の人が地域にある山城を整備する、その山城に全国から城ファンが集まる、城ファンと触れ合った人たちが、さらに整備やおもてなしに尽力する——そんな両者がハッピーになるスパイラルが、可児市では育まれているのだ。

山城歩きをさらに楽しむキャンペーンの数々

山城巡りイベントでは、ボランティアのガイドとおもてなし以外にも、さまざまな仕掛けによって来城者の関心を惹いた。そのひとつが、城ごとに発行される「通行証」だ。可児市山城連絡協議会への運営協力金500円以上を募金することで得られる通行証を2枚以上集めると、翌日のトークショーを優先席で観覧できるというもの。さらに、トークショーに登場する宮下英樹さんのイラストと美濃金山城縄張図が描かれた、特製レジャーシートをゲットすることもできた。1城だけではなく、多くの城に参加者を促すうまい手段だ。実際参加者に話しを聞くと、4城巡って4枚すべての通行証を持つ人が多かった。「通行証2枚はレジャーシートと交換しましたが、2枚は思い出にとっておきます。久々利城と今城の通行証を持ち帰りますが、う〜ん、どの城の通行証を交換するか迷っちゃいました」(20代・女性)。

山城に行こう!2017、通行証、城ガール
各城で発行された「通行証」。4城すべてコンプリートした城ガールも多かった

美濃金山城、レジャーシート、センゴク
マンガ『センゴク』の主人公・仙石秀久が描かれた、美濃金山城の縄張レジャーシート

さらに、アプリ「発見!ニッポン城めぐり」とのコラボレーションも、多くの参加者を生んだ。3000城の位置情報を巡るスタンプラリーが人気の同アプリだが、今回は可児市と連携し、地域限定の城を巡る「石田三成、幻の東軍迎撃作戦」というイベントを実施。可児周辺の20城を巡ることで、さまざまな特典や特別な「異名」(ウルトラレアは「大一大万大吉」!)をゲットできるというキャンペーンで、9000人近い参加があった。

山城はもちろんおもしろい。でも、山城の城としておもしろさ——遺構や縄張——だけを訴え続けても、広がりには限界がある。山城に行けば地域の人と触れ合える、特典がある、リアルとデジタルの両方で楽しめる、そうしたプラスαが城ファンにはとても嬉しいし、次なる城ファンを生み出すきっかけづくりになっている。

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後編へつづく

執筆・写真/かみゆ歴史編集部(滝沢弘康)
「歴史はエンタテインメント!」をモットーに、ポップな媒体から専門書まで編集制作を手がける歴史コンテンツメーカー。手がける主なジャンルは日本史、世界史、美術史、宗教・神話、観光ガイドなど歴史全般。主な城関連の編集制作物に『日本の山城100名城』『超入門「山城」の見方・歩き方』(ともに洋泉社)、『よくわかる日本の城 日本城郭検定公式参考書』『完全詳解 山城ガイド』(ともに学研プラス)、『戦国最強の城』(プレジデント社)、『カラー図解 城の攻め方・つくり方』(宝島社)、「廃城をゆく」シリーズ(イカロス出版)など。

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