【イベントレポート】「山城に行こう!2017」[後編](岐阜県可児市)

お城紹介やオリジナルグッズがずらりと並ぶブースエリア

「山城に行こう!2017〜センゴクの城」の2日目となる10月22日(日)。会場となった可児市文化創造センターalaは、10時のオープンと同時に来場者であふれた。会場の外は台風の影響による大雨が続いており、さらにこの日は衆議院議員総選挙と重なったため、元々予定されていた会場から変更となっての開催だった(関係者の方々は本当にたいへんだったと思います)。しかしそんなアクシデントなどどこ吹く風、城ファンの〝祭典〟といえる1日がスタートした。

山城に行こう!2017、可児市文化創造センター
会場となった可児市文化創造センターala。幟が立ち並び、まるで城ファンに占拠されたかのようだ

この日のメインイベントは、多くのゲストを迎えたトークショーだろう。ただし、その前に見るべきものが多くある。メインロビーには、各地の城紹介や、書籍・おみやげなどの物販、美濃金山城からの出土品の展示など、多彩なブースが所狭しと立ち並んだ。可児の各城のブースも出され、昨日ガイドしてくれたオジサンたちが気軽に話しかけてくれる。久々利城のブースで売られていたバランスオブジェのような民芸品は、地元の人の手作りだそう。物販のブースでは、ステッカーやクリアファイルなどのオリジナルグッズに並んで、家紋クッキーが販売。地元ゆかりの戦国武将がパッケージにあしらわれたこの商品は、地元の学生スタッフが考案したアイデア商品だ。トークショーを前に、両手にお土産を抱え込む人もちらほら。

山城に行こう!2017、久々利城、民芸品
久々利城のブースで販売されていた手作りの民芸品

山城に行こう!2017、おみやげ
中井先生と加藤先生も会場に到着するなりブースにくり出し、おみやげを物色していた

親子向けには「ミズノ流忍者教室」や「チャンバラ合戦IKUSA〜センゴク試し合戦」が開催され、子どもたちの笑顔と歓声にあふれた。「チャンバラ合戦IKUSA」は、可児市の観光事業「戦国城跡巡り」の一環として行われており、各城跡でも開催されてきた人気イベントだ。子どもたちはスポンジ製の刀を手にとり、雄叫びをあげながら敵陣営目指して突撃。相手の命(と呼ばれるボール)を狙い、あちこちで白刃が舞い踊っている。こんなチャンバラを城跡でできるなんて、ファンには垂涎のイベントだといえるだろう。

山城に行こう!2017、チャンバラ合戦IKUSA
「チャンバラ合戦IKUSA」の会場。各回とも定員オーバーだったという

山城に行こう!2017、戦マルシェ、食事コーナー
食事コーナー「戦マルシェ」も充実。「セクシーおむそばめ」「明智裏切りご麺」「荒れくれ者のかち割り氷」などなど、ここでしか食せない限定メニューが多数

城のスペシャリストによる楽しく真面目なトークショー

午後1時、メイン会場におけるトークショーがスタートした。登壇したのは滋賀県立大学教授の中井均先生、日本城郭協会理事の加藤理文先生、イラストレーターの香川元太郎さん、落語家の春風亭昇太師匠、スペシャルゲストである漫画家の宮下英樹さん、そして司会を務める可児市文化財課の長沼毅さんの6人。出演予定だった萩原さちこさんは体調不良のため残念ながら欠席だったが、城ファンにはたまらないスペシャリストたちの競演である。

山城に行こう!2017、陣羽織姿、自家製足軽衣装
出演者は陣羽織姿で登場。昇太師匠は自家製足軽衣装をフル装備

山城に行こう!2017、センゴク、昇太師匠
マンガ『センゴク』の一コマを用いて、昇太師匠が山城の攻め方・守り方を解説。マンガ家と落語家の、贅沢でどこか不思議なコラボレーション

トークショーの第1部は、宮下英樹さんが描いているマンガ『センゴク』を題材に、戦国時代の山城のリアルな姿をめぐって話が展開。登壇者が各自の好きな城を取り上げながら山城の歩き方や注目ポイントを解説するのだが、城がスライドに映し出されるたびに、なぜか会場のお客さんを巻き込み、「この写真は何城?」のクイズ大会が発生。正解者には登壇者の著書やゆかりのグッズなど、素敵な景品がその場で贈られた。

トークショーの途中では、昇太師匠による「山城を買い取りたい!」という宣言も飛びだす。昇太「どんな山城でもいいんで、一山買ったらボランティアを集めて木をバンバン伐採して、これぞ山城だ!というものをご披露したい」。加藤「その時は(ドラマ内で木々を伐採した井伊直虎役の)柴崎コウさんにお願いしたら?」。昇太「それは大河ドラマの見過ぎですよ!!」という、昇太師匠が大河ドラマ『おんな城主 直虎』に出演したことに絡めたツッコミも。

山城に行こう!2017、クイズ大会、トークショー
第1部は即興の城当てクイズ大会となり、正解者には著書やグッズが直接手渡された。笑いと拍手が絶えないトークショーに

山城に行こう!2017、美濃金山城、議論
 第2部では発掘現場の写真や城絵図、香川さんの復元イラストなどを見ながら、戦国時代の美濃金山城の姿について議論された

和気あいあいとした雰囲気にあふれた第1部とは一転、第2部の「発掘!美濃金山城」では、現在までの美濃金山城の発掘状況の報告と、それをどう解釈するかというレベルの高い議論が繰り広げられた。美濃金山城では今年から、中井先生の研究室が現場に入って発掘調査が行われており、これまで知られていなかったさまざまな新発見があった。

ただし、その調査を踏まえて森氏が治めていた時代の姿が何かわかったかというと、「憶測ばかりで何もわからない」(中井先生)というのが正直なところ。石垣の築造は天正か慶長か? どんな建物が建っていたのか? 地下空間はあったのか? など、一部学術的な議論もあったが、調査団長である中井先生からは「すごく張りきって調査に望んで、長沼さんからは良い宿があるよって言われていたのに、あてがわれた宿は公民館(笑)。それでも個室で寝られるかなと思っていたら、個室は女子学生にとられてしまい、僕は男子生徒とともに雑魚寝でした・・・(泣)」というぼやきも聞かれた。発掘調査は来年以降も継続して行われる。戦国時代の美濃金山城は果たしてどんな姿だったのか、市民も城ファンも来年の報告が楽しみである。

午後5時頃にトークショーが終わって会場を出ると、夕闇の中、まだ雨が降り続いていた。ただ、帰路につく人々の足取りは軽やかで、みんな笑顔で今年の「山城に行こう!」を振り返っている。

「じつは今週末は家族で出かける予定だったんですけど、可児のイベントとかぶっていることに気付き、家族には平謝りで山城をとりました。来年? もちろん来ますよ!」(京都から参加した40代・男性)

「僕が驚いたのは、全国各地から山城を見るためだけに、可児に訪れるファンがこんなにたくさんいるということ。山城は工夫次第で、これほど多くの人を楽しませる素材なんだって再認識した。山城は全国にあるんだから、どこでも人を呼ぶイベントができるということです」(中井先生)

「全国から人が集まれば、可児の市民も自分たちの山城はこんなにすごいんだって再発見できる。それが地域の良さを見直すきっかけにもなるし、郷土愛とか誇りのようなものにもつながる。相乗効果が生まれていますね」(長沼さん)

山城と城ファンと地域の人と城のスペシャリストを結びつけた、お腹いっぱいな2日間。来年もまた楽しみである。


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執筆・写真/かみゆ歴史編集部(滝沢弘康)
「歴史はエンタテインメント!」をモットーに、ポップな媒体から専門書まで編集制作を手がける歴史コンテンツメーカー。手がける主なジャンルは日本史、世界史、美術史、宗教・神話、観光ガイドなど歴史全般。主な城関連の編集制作物に『日本の山城100名城』『超入門「山城」の見方・歩き方』(ともに洋泉社)、『よくわかる日本の城 日本城郭検定公式参考書』『完全詳解 山城ガイド』(ともに学研プラス)、『戦国最強の城』(プレジデント社)、『カラー図解 城の攻め方・つくり方』(宝島社)、「廃城をゆく」シリーズ(イカロス出版)など。

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