8月の真夏向きのお城と、おうちで楽しめる「お城めぐり」【「お天気目線」で解説!】

まとまった休みを取りやすい夏こそお城めぐりをめいっぱい楽しみたいところですが、猛暑やゲリラ豪雨など夏ならではの天候には要注意! そこで今回は、大のお城好きである気象予報士の久保井朝美さんに、夏に訪れるのに向いているお城と向いていないお城を“お天気目線”で紹介していただきます。

お城はいつ訪れても楽しく、胸が高鳴る場所ですが、季節ごとの魅力もあります。訪れる季節によって違う顔を見せてくれます。今回はお天気目線で、夏に訪れるのに向いているお城、夏に訪れるのは向かないお城をご紹介します。

なお、実際にお城に訪れるかどうかについては、お天気だけでなく、新型コロナウイルス感染症の状況などを踏まえてご判断ください。おうち時間にオススメの「リモートお城めぐり」ができるお城もご紹介します。

山城が夏のお城めぐりに向かない理由

さて、夏はお城めぐりのベストシーズンとはいえません。暑さ、熱中症、紫外線、俗に「ゲリラ豪雨」といわれる急な雨や雷雨など、お天気目線では色々なリスクが考えられるからです。

中でも、夏に訪れるのを避けた方が良いお城は、山城です。

山城は最寄り駅や駐車場から離れているところも多く、長い時間歩くこともあります。そして、山というと木々の陰で涼しいようなイメージもありますが、山城は開けたところにあることが多いため直射日光を避けられません。特に気温が高い夏本番は、熱中症のリスクが高くなります。

また、大気の状態が不安定になり、晴れていたはずの空が突然暗くなって強い雨が降り出したり、雷雨になったりする日があります。山沿いは平野部よりも雨雲が発生、発達しやすく、雷を伴った強い雨が降ることが多いです。虫も多い時期ということもあり、避けた方が良いでしょう。

夏のお城めぐりに適した場所と天気は?

夏に訪れるのに向いているお城は、先ほど挙げたリスクを回避できるお城です。山沿いより平野部の方が良いと思います。

さらに、暑さや急な雨などに見舞われにくいのは、外を歩く距離が短いお城でしょう。車で行く場合は近くの駐車場に止めれば良いですが、電車で訪れる場合でも歩く距離が短くて済む、駅から近いお城がオススメです。

実際にお城を訪れるなら、暑さを避けるには時間帯は気温が低い朝や夜が良いですが、お城は夕方頃に閉まるところが多いため、朝が現実的かと思います。午後に起こりやすい急な雨を避けるためにも、朝が良いでしょう。大気の状態が不安定になる日は、降水確率が30%くらいでもにわか雨や雷雨になる可能性があるので、天気予報をよく確認することをオススメします。

日本で初めて41℃以上の気温が観測された日の天気図です。

天気図
2013年8月12日の天気図【出典:気象庁HP】

2013年8月12日に高知県四万十市の江川崎(えかわさき)で41.0℃を観測しました。

そして、現在日本の最高気温ランキングで1位になっている埼玉県の熊谷で41.1℃を観測した2018年7月23日の天気図です。

天気図
2018年7月23日の天気図【出典:気象庁HP】

2つの天気図の共通点が見つかるでしょうか? 青色でなぞっている高気圧がどちらも日本付近に張り出し、西側がそり上がっているように見えます。そり上がった部分がクジラの尾のように見えるため「クジラの尾型」といわれ、暑い空気に覆われる気圧配置です。この天気図になるときは、大陸のチベット高気圧も日本付近に張り出していることが多く、お布団を2枚重ねにしているような状態で気温が高くなります。

ちなみに、上空の暑い空気に加えて、風下に山を越えた暑い風が吹き下ろす「フェーン現象」があると、さらに気温が上がります。

熱中症警戒アラート 発表時の予防行動
熱中症警戒アラート 発表時の予防行動【出典:熱中症警戒アラート 発表時の予防行動

暑さの情報としては、今年から全国を対象に運用がスタートした「熱中症警戒アラート」も参考にしてください。気温だけでなく、湿度や輻射熱、風を考慮して熱中症のリスクを計算して発表します。気温がそれほど高くなくても、湿度が高いと熱中症のリスクは高まります。環境省の「熱中症予防情報サイト」で発表状況を確認でき、メールで通知されるように設定することもできます。

熱中症警戒アラートが発表されている日は、極めて危険な暑さになる日です。不要不急の外出は控えて、屋内でも対策した方が良いでしょう。

夏にオススメの駅近お城3選

先ほど「夏に訪れるのに向いているお城」として挙げた駅近のお城はいくつもありますが、その中からさらにオススメをご紹介します。

オススメ①三原城(広島県三原市)
まずは、広島県の三原城です。最も駅から近いお城ともいわれています。山陽新幹線と山陽本線の線路が三原城を貫通していて、三原駅はお城の本丸の上にあります。駅近というより、もはや駅ナカにあるお城です。

駅と三原城天守台
駅と三原城天守台

駅構内から無料で天守台に登ることができ、東西の2つの出口からはお堀端に出られます。三原城は天守が建てられることはなかったそうですが、広島城の天守が6つも入るという巨大な石垣の天守台は見応えがあり、駅からすぐの場所でこんなに立派な石垣を見られるなんてお得!?かもしれません。

ガード下の三原城石垣
ガード下の三原城石垣(三原市教育委員会文化課提供)

ガード下にも石垣があります。三原城の石垣は、石の控えの寸法より表面の方を大きくした「アブリ積み」という珍しい積み方です。不安定な積み方ともいわれますが、400年以上経っても残っています。

三原城と海の模型
三原駅構内に置かれている三原城の模型。かつて海に面していた様子がよくわかる

三原城は、毛利元就の三男・小早川隆景が築城しました。島を石垣で繋いで、堀には海水を引き込んだ海城です。

小早川隆景は瀬戸内海の水軍を掌握していたため、水軍を利用しやすいように海に面していて、城郭とお軍港の機能を兼ね備えていました。瀬戸内海から見ると、満潮時には海に浮かんでいるように見えるため「浮城(うきしろ)」という異名を持っています。豊臣秀吉や徳川家康も泊まったことがあり、感激するほど素晴らしい景観だったという話も聞いたことがあります。

三原城の舟入櫓
三原城の舟入櫓(三原市教育委員会文化課提供)

また、三原城には船が入れるように海に面した舟入櫓(ふないりやぐら)がありましたが、現在は公園のようになっています。

オススメ②福山城(広島県福山市)
同じ広島県にある福山城も、駅からとても近いお城です。

福山城
福山城のすぐそばに駅がある(画像提供:福山観光コンベンション協会

新幹線に乗っていると、車窓から復元された天守を臨むことができます。駅のホームや線路はお城を貫通しているのです。ホームからすぐ近くに天守と現存する伏見櫓が見えますが、伏見櫓は京都の伏見城から移築されたものだといわれています。

伏見城
伏見城

こちらは私が数年前に伏見城(京都府京都市)を訪れたときの写真です。伏見城は豊臣秀吉が築城させ、最期を迎えた場所です。現在の天守は遊園地ができたときに建てられた模擬天守なので史実に基づかない建物ですが、この地で豊臣秀吉が亡くなったのかと思うと胸に迫るものがありました。のちに、徳川家康が入城しました。福山城を築城した水野勝成は徳川家康のいとこだったということもあり、伏見櫓の他にも伏見城から移築された建物があったそうです。

福山城の伏見櫓
福山城の伏見櫓(画像提供:福山観光コンベンション協会

そんな福山城はバーチャルお城ツアーを行っていて、リモートお城めぐりが可能です。CGで再現された築城当時の福山城内を自由に散策することができます。

■福山城バーチャルツアー

見どころの1つは伏見御殿です。本丸御殿の一部は伏見城から移築されたため、伏見御殿といわれました。現在、実際には建物はないですが、バーチャルお城ツアーでは伏見御殿が再現されています。日本古来の伝統技法といわれる「檜皮葺(ひわだぶき)」の屋根は周囲と違う雰囲気があります。他の建物や壁、石垣もリアルな映像で、ズームすると間近に見られて迫力あります。当時の空気を感じられてワクワクしました。

オススメ③小諸城(長野県小諸市)
続いての駅近のお城は、長野県の小諸城です。私が初めて訪れたのはロケで、季節は夏でした。

小諸城三の門
小諸城三の門

小諸駅構内は城内にあり、駅を挟んで東西にお城の遺構があります。

小諸城の特徴は城下町との位置関係です。日本で唯一、城下町よりも低い場所にあるお城だといわれ、「穴城(あなじろ)」という異名を持っています。武田信玄の軍師・山本勘助などによって縄張りされたそうですが、豊臣秀吉の小田原攻めの後は仙石秀久が城主になりました。私も大好きな漫画「センゴク」の主役のモデルになった戦国武将です。

小諸城大手門
小諸城大手門

こちらの大手門や野面積みの石垣は仙石秀久が整備したもので、今もその姿を見ることができます。苔むした石垣は趣があって、良いですね。その後、明治には本丸跡に神社が祀られて、「懐古園(かいこえん)」と名付けられました。島崎藤村ゆかりの地としても知られていて、詩碑が建てられています。

小諸城の天守台
小諸城の天守台

春は桜、秋は紅葉の名所としても有名ですが、夏は生い茂る緑と展望台から見える千曲川が涼しげです。

そして、「最新技術でよみがえるかつての小諸城」では、3DCGで復元された小諸城を解説付きの動画で見ることができます。大手門から入り、現在は小諸駅構内になっているエリアを通って、城内をめぐります。苔むした石垣もリアリティがありました。中仕切り門は全国的にも珍しい名前の門で、黒門の前にある城内唯一の橋である黒門橋はいざというときに取り外しができるそうです。解説があるので、学びながら当時の雰囲気を感じることができます。石垣に囲まれた本丸も素敵でした。

■最新技術でよみがえるかつての小諸城

現在の小諸城も大変趣があって好きですが、復元された小諸城にはまた違う魅力を感じます。エアコンが効いた快適なお部屋の中で、リモートお城めぐりをするのも良いでしょう。

今回紹介した福山城や小諸城以外にも、「城びと」で紹介されているお城バーチャルツアーや、ライブカメラによっておうち時間にリモートで楽しむことができるお城もあるので、リモートお城めぐりも取り入れながら無理せず過ごしましょう。

▼お城バーチャルツアーについて詳しくはこちら


執筆・写真:久保井朝美(くぼいあさみ)<お城情報WEBメディア 城びと>
久保井朝美
城ガール&お天気キャスター(気象予報士・防災士)。愛知県岡崎市出身。徳川家康が生まれた岡崎城のすぐ近くで育ち、お城に愛着を抱く。長野県の松本城に感動して一層お城への愛が増した。日本100名城スタンプラリーでお城めぐりの楽しさを感じ、日本100名城や続日本100名城ほか、北海道から沖縄まで全国のお城をめぐっている。日本城郭検定2級、気象予報士、防災士、漢字検定1級、チョークアートの資格などをもつ。TBS「はやドキ!」「ひるおび!」などテレビ番組にレギュラー出演し、全国各地で講演会を開催している。