クリス・グレンの お城へGO! ~日本のお城、英語でいうとどうなるの?~ 1. Tenshu, The Tower Keep 天守は英語でいうと、どうなるの?

日本全国で外国の方をお見かけすることが本当に増えてきました。その中にはもちろん「日本のお城」を観光する方も!! 多くの方に日本のお城を好きになってもらいたい! お城で海外の方とお話する機会があれば、さっそくこの連載が役に立つ!? クリス・グレンさんによるお城英語解説はじまりはじまり~。

Let’s Talk Castles!Welcome to「クリス・グレンのお城へGO!~日本のお城、英語でいうとどうなるの?~」。どーもどーもどーも!お城好きラジオDJのクリス・グレンです。日本のお城を英語でどう表現するのかを紹介するこの連載。記念すべき第1回のテーマは「天守」です。

クリスグレンさん

4月に掲載されたインタビュー記事「きっかけはサムライ&ニンジャ! クリス・グレンさんがお城好きになるまで」の中でもお話しましたが、一般的に外国人に人気があるのは、テレビや雑誌、ガイドブックなどで紹介されている城、有名観光地(東京・大阪・京都など)にある城、新幹線で行けるアクセスの良い城などです。具体的にいうと、姫路城(兵庫県姫路市)や松本城(長野県松本市)、江戸城(東京都千代田区)、二条城(京都府京都市)、大阪城(大阪府大阪市)などなど。

姫路城
姫路城

なかでも人気なのは日本独自の建築「天守」のある城です。
城の天守は、外国人にとっては、富士山や神社の鳥居などと同様に、日本という国そのものをイメージさせるシンボル的存在なんです。

そんな天守、英語で言うとどうなるの? 
What do you call the tenshu in English? 


「天守」の英訳は、Donjon? Dungeon?

一昔前、天守の英訳として、日本国内でよく使われていたのは「donjon(ドンジョン)」という言葉。実はこれ、気づかずに使っている人も多いようですが英語ではなくフランス語です。donjonは「中世ヨーロッパの城や要塞の内側にある中心的な塔」という意味なので「天守」を表現する言葉として間違ってはいませんが、英語圏の人には通じない可能性大。しかも英語には「牢獄」や「地下牢」という意味を持つdungeon(ダンジョン)という言葉(映画「ハリー・ポッター」やRGP(ロールプレイングゲーム)「ドラゴンクエスト」でも使われてるから、知ってる人も多いかな?)もあるので、注意が必要です。

Himeji Castle’s donjon is designated a National Treasure.
姫路城天守は、国宝(National Treasure)に指定されています。

Himeji Castle’s dungeon is designated a National Treasure.
姫路城の牢獄は、国宝に指定されています。

というように、日本の天守の役割そのものが間違って伝わってしまう可能性も! 実際に、西洋の城の中心的な建物には「地下牢」が設けられていることがあるので「日本の城の『天守』は地下牢なのか!」と納得されてしまうかもしれません。じゃぁdonjon以外に、もっといい言葉はないのかな?

Bastion?  Chateau? 実は「天守」の意味もつ英語は、いろいろあるよ

「天守」という一つの言葉に対して、実は複数の英語表現があります。

bastion(バスティオン)、redoubt(リダウト)、keep(キープ)、fastness(ファステネス)、Hold(ホールド)、Safehold(セーフホールド)、chateau(シャトー)、tower(タワー)、peel(ピール)などなど…。

「たくさんあり過ぎて困っちゃう…」なんていう声が聞こえてきそうですが、心配しなくても大丈夫。英語ネイティブの僕だって、すべての言葉は使いません。

僕がよく使う言葉はkeepです。

(例文) 
Himeji Castle’s keep is designated a National Treasure.
姫路城天守は、国宝に指定されています。

Iyo Matsuyama Castle’s keep is at the top of the mountain.
伊予松山城の天守は、山の上にあります。

alt
(左)姫路城、(右)伊予松山城

と、こんな感じ。

keepって、日本では「保つ」という意味でしか習わないみたいですが、実はDonjonと同じ「中世ヨーロッパの城や要塞の内側にある中心的な塔」という意味もあるんです。日本の城の天守の役割や位置付けをわかりやすく伝える言葉としてはkeepが一番しっくりきます。自分が説明したい城を想定して、早速、使ってみましょう!

(例文) 
Nagoya Castle’s main tower keep is the largest in Japan.
名古屋城の大天守は、日本最大です。

Okayama Castle’s keep is an interesting shape.
岡山城天守は、面白い(興味深い)形をしています。

alt
(左)名古屋城、(右)岡山城

クリスグレンさん


「大天守」「小天守」は、英語でなんていう?

さきほど書いた例文にmain tower keep という言葉が出てきましたね? これは大天守という意味で使っています。じゃぁ、小天守の英訳は、どうなると思いますか?
Main(メイン)」の対義語は「Sub(サブ)」ですから、sub keepということになります。大天守をmain keepとしているのに、小天守をsmall keepminor keep と訳しているものも見かけますが、英語ネイティブから見ると、かなり変な感じ…。その理由は、対義語にあります。

<正しい対義語>
main(メイン)        :主              ⇄  sub(サブ):副
major(メジャー) :大きいほうの  ⇄  minor(マイナー):小さいほうの
big(ビッグ)           :大                         ⇄      small(スモール):小

これを見れば、一目瞭然。大天守をmain keep としたら、小天守は必ずsub keep! ちょっと難しいかもしれないけれど、対義語はできるだけ正しく理解しておきましょう。

クリスグレンさん

「クリス・グレンのお城へGO!~日本のお城、英語でいうとどうなるの?~第1回天守」いかがでしたか? 次回は、天守の装飾についての英語表現を紹介します! Enjoy castle studies, see you next time!

【コラム:天守は、どう使われた?】

外国人ツーリストから、よくある質問は
○天守は、何のためにあるの?
○天守は、どう使われていたの?
○天守には、どんな人が住んでいたの?
と、こんな感じ。自分が知っている西洋(海外)の城、自分の国にある城と比較して質問をされることも多いです。

「天守は、何のためにあるの?」という質問に対しては、人によって様々な説明の仕方があると思いますが、僕は「権威の象徴として: A symbol of power and authority」「最後の砦として: The last bastion in times of attack」と説明します。そうすると「なるほど…じゃぁ、ここに人は住んでいなかったたんだね?」という話になり「そうそう!西洋の城のように人が住む場所ではなかったんだよ。」というように、海外の城と比較しながら説明を加えていきます。

先日のインタビューの中で「海外の城には、そんなに興味がないんです」って言っちゃったけど(笑)、やはり外国人に対して日本の城の説明をするときには、海外の城との比較をすると理解してもらいやすいことも多いです。ちょっと勉強しておくと、海外の方へのご案内に役立ちますよ。

※この連載で取り上げる英訳、英文は、あくまでも一例です。前後の説明や文章によって使用すべき単語が変わる場合があります。


クリスグレンさん
執筆・画像/クリス・グレン
オーストラリア・アデレード市出身。93年より名古屋在住。ラジオDJのほか、テレビプレゼンター、ナレーター、翻訳者、ライターとしても活躍。インバウンド観光アドバイザーとして、自治体や観光施設に対するアドバイスなども行う。日本全国550箇所以上、名古屋城にいたっては850回以上、訪れるほどの城マニア。お城好きラジオDJとして、各地の城イベントにも出演。「城バイリンガルガイド」(三浦正幸著・小学館)、「Japanese Castle-24 Best Castles Stamp Rally-」(日本城郭協会監修)などの翻訳も手掛けるほか、城郭に関する翻訳やアプリの監修なども行っている。NHK WORLD 「SAMURAI CASTLES」ではナビゲーターもつとめる。

関連書籍・商品など