日本城郭協会大賞 【お城TOPICS】第2回日本城郭協会大賞が発表!久野城址保存会が受賞

日本唯一の城郭関連顕彰事業として2022年から始まり、日本城郭協会が城郭文化の振興に寄与した団体や個人を顕彰する「日本城郭協会大賞」「日本城郭文化振興賞」「日本城郭文化特別賞」。その第2回の受賞者が2023年4月6日に発表されましたので、受賞内容と併せてご紹介します。

日本城郭協会大賞とは

公益財団法人移行10周年を記念し、日本城郭協会が2022年に開始した城郭文化の振興に貢献した団体及び個人を顕彰する事業です。小和田哲男理事長を審査員長とする審査会にて「日本城郭協会大賞」を選定します。ほかにも、城郭城址の維持・整備を自主的に行うボランティア団体等を賞する「日本城郭文化振興賞」、城郭文化の普及に寄与した個人・団体を賞する「日本城郭文化特別賞」、さらに今回から城郭管理者として特筆すべき成果を挙げた自治体等を「調査・整備・活用賞」として別枠で顕彰します。

第2回「日本城郭協会大賞」は「久野城址保存会」

第2回「日本城郭協会大賞、久野城址保存会
(左)久野城址 (右)久野城の景観を守るため定期的に「草刈り大作戦」を実施

第2回日本城郭協会大賞に選ばれたのは「久野城址保存会」です。久野城(静岡県)は、今川氏家臣の久野宗隆が築城したと伝わり、徳川家康の関東移封後は関東・東海道の押さえとして戦略的に重要な場所となった平山城です。久野城址保存会は、城址の史跡化実現に尽力するだけでなく、地域全体を巻き込んだ活動によって城址を地域のシンボルに定着させるという長年の取り組みが評価されました。

協会は受賞の理由を以下のように説明しています。

久野城址保存会は昭和52年(1977)に宅地造成計画が持ち上がった城址を残すべく、当時約200人の地元有志で結成された団体。袋井市指定史跡化を目指した活動の結果、昭和54年(1979)に認定された。史跡化が実現して以降は、単に城址の保存と顕彰だけを目的とするのではなく、城址を地域のシンボルとして地域活動や地域づくりの核と位置づけ、平成元年(1989)からは市全域の保存会へと飛躍・発展させるため、法人会員を募集する等、組織の強化・拡大を図るとともに、会員自らの会費により保存会活動を展開している。団体結成以来、地元の北小学校 6 年生を対象にした久野城教室を毎年開催したり、年数度の広大な城址の草刈りを行ったりなど、長きにわたる地道な取り組みを評価した。

第2回「日本城郭文化振興賞」は「可児市山城連絡協議会」

第2回「日本城郭文化振興賞」、可児市山城連絡協議会
(左)美濃金山城跡ガイドの様子 (右)久々利城守隊のメンバー

第2回日本城郭文化振興賞に選ばれたのは「可児市山城連絡協議会」です。可児市は美濃金山城久々利城など山城の城跡が多く残り、「山城に行こう」などのイベントを通じて広く山城ファンに親しまれています。城跡の保存だけでなく、このような活用についての積極的な活動が認められました。

岐阜県可児市には、小さな村の城から地域支配の拠点となった大規模な城まで多様な城跡が残っている。とりわけ天正12年(1584)の小牧・長久手の戦いの際に改修された遺構が良好な状態で残っている城跡が多く、その特性を地域団体がよく理解し、継続的な整備活動を行っている。山城を地域の誇りとなる資源としてとらえる行政(文化財課・観光交流課)と連携し、保存と活用のバランスを考えた整備活動に取り組んでいる。
また城跡の持つ魅力や整備活動の成果を多くの方に知ってもらう機会として、行政や専門家、企業や他地域の城跡の整備に関わる団体、山城ファンが一体となったイベント「山城に行こう」を開催しており、保存整備・活用のあり方のモデルとして評価した。


香川元太郎さんと島 充さんが「日本城郭文化特別賞」受賞

城郭文化の普及に寄与したとして顕彰されたのは、復元城郭イラストの第一人者であるイラストレーターの香川元太郎さんと、日本随一の城郭模型製作技術を持つ模型作家の島 充(しま みつる)さんです。

香川氏の姿なき戦国時代の山城を見事に可視化した鳥瞰イラストは、城ファンの理解の手助けになり、今や城の本質に迫るための教科書となっている。緻密で丁寧な作品群は専門家から信頼も厚く、イラストの範疇を超えた学術資料に匹敵すると評価する。同氏の長年にわたる膨大な山城イラスト作品制作実績を評価した。

島氏が製作した城郭模型は、天守や城郭建造物、あるいは城郭全体を対象としたものであり、その模型は復元模型・破損状況模型・再建工事中模型など多岐にわたる。特に天守および城郭復元模型は学術的成果物として他の模型製作者と一線を画すものである。復元模型の制作にあたって、島氏は古写真や古絵図などの各種資料を渉猟し、それをもとにして綿密な復元考察を行っている。その研究成果物である城郭復元模型は、それまでの復元研究で見落とされてきた点や誤って復元された点が完璧に修正されたものである。
また、模型の製作技術は全国一と高く評価され、城郭のもつ荘厳さや華麗さにおいて実物を目の当たりにしているがごとくに詳細かつ写実的に再現しており、芸術作品としての価値をも示すものである。城郭復元模型の価値を学術的かつ芸術的水準に高めた点において、島充氏の業績は並ぶ者がないと高く評価した。

「調査・整備・活用賞」に輝いたのは「福島県白河市」と「福山城」

今回から新たに設けられた「調査・整備・活用賞」。城郭管理者として特筆すべき成果を挙げた自治体に顕彰されたのは、東日本大震災で被災した白河小峰城(福島県白河市)の石垣を復旧した「福島県白河市」と、“令和の大普請”での天守外観復元において全国唯一の北側鉄板張りを復元した「福山城」です。

白河小峰城は史跡指定後の平成23年(2011)3月11日に発生した東日本大震災で、東北地方の城郭の中でも最大級の被害を受けたが、令和4年(2022)に本丸西側から北側にかけて取り囲む「帯曲輪」の整備が完了し、一般公開が始まった。
石垣の再建は難しい作業となったが、震災から11年を経て完全復活を果たした。江戸時代の伝統工法を用いつつ、大きさや形状、加工の痕跡を記録する「カルテ」も作成された。これらの手法は、熊本地震で石垣が大破した熊本城(熊本県)、西日本を襲った豪雨や台風の被害を受けた丸亀城(香川県)などの修復にも参考とされ、石垣復旧のモデルケースとして認知されている。災害大国の日本で、大震災による苦難を経つつ、石垣という文化財を後世に守り伝える取り組みを評価した。

福山城は城郭自体は戦後の復元城ではあるが、福山藩の城下町としての町おこしが熱心で、市役所を中心に、市民も参加し、近年、オペラなどの文化事業にも取り組んでいる。令和4年(2022)の事業の中心である「令和の大普請」の目玉として、かつて天守北側に張られていた黒塗り鉄板を復元。令和4年(2022)8月、77年ぶりに真っ黒の頑丈そうな重みのある城壁が完成した。報道にも大々的に取り上げられ、全国に城郭の話題を提供した功績を評価した。

受賞された皆さま、おめでとうございます! 今後は、受賞者による記念講演等も予定されているとのこと、楽しみですね。

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執筆/城びと編集部、画像/公益財団法人 日本城郭協会