2022年オススメの城【復元・リニューアル編】リニューアルした展示室や復元した文化財をピックアップ

新型コロナが猛威を振るう中ですが、お城の復元工事や歴史施設のリニューアルは着々と進んでいます。今回は、2022年に復元が完了する城門や石垣、新しくリニューアルオープンする施設を詳しくご紹介。実際に訪れることで歴史を肌で感じることができるはずです。新型コロナが終息したら、ぜひ足を運んでみてはいかがでしょうか。


名古屋城】かつての米蔵の見た目を再現した歴史資料館

名古屋城、天守
名古屋城の大天守と小天守。天下人・徳川家康の権威を示すように名古屋の街に堂々とそびえる(提供:名古屋城総合事務所)

江戸時代の名古屋城西之丸にかつてあったとされる米蔵の見た目を再現した「西の丸御蔵城宝館」が2021年11月よりオープン。重要文化財「名古屋城旧本丸御殿障壁画」をはじめとした貴重な名古屋城の「宝」の収蔵、さらには名古屋城の「情報」発信の場として「城宝館」と名付けられました。

名古屋城、西の丸御蔵城宝館
2021年11月に名古屋城内にオープンした「西の丸御蔵城宝館」。金の鯱があしらわれた「歴史情報ルーム」では屏風型のパネルで名古屋城の歴史を学べる(提供:名古屋城総合事務所)

館内は「歴史情報ルーム」と「展示室」の二段階構成。「歴史情報ルーム」では、築城以前の前史を含めた名古屋城の歴史をたどる常設展示を実施。ゲームや映像などの親しみやすいコンテンツでより名古屋城の散策が楽しくなります。「展示室」では名古屋城の所蔵品を数多く展示しているほか、ミュージアムショップでは元が米蔵ならではのお米にまつわる商品やここでしか手に入らないオリジナルグッズを販売中。

名古屋城、武家の備え
展示室で開催される展覧会「武家の備え」では名古屋城所蔵の由緒ある戦道具を展示。2022年4月10日(日)までの開催(提供:名古屋城総合事務所)

2022年1月から4月にかけては企画展「武家の備え」を開催。江戸幕府を開闢(かいびゃく)した徳川家康によって以後260年にわたる泰平の世が訪れましたが、権力者であると同時に武士でもある将軍家の人々は常に戦のための準備を怠っていませんでした。この企画展では、戦鎧である「沢瀉威二枚胴具足」や室町時代から伝わる名刀「備州長船久光」など、戦のための武器でありながら、将軍家の権威を象徴するような煌びやかな魅力を持った徳川家の戦道具を展示しています。

隣接する本物の蔵跡と合わせて当時の西の丸の姿を再現しているのもお城ファンには嬉しいポイント。名古屋城の観覧料に入館料も含まれているので、お城巡りの際にはぜひ立ち寄りたいスポットです。

高松城】戦火で焼失した御門が77年ぶりに復活!

日本三大海城の一つにも数えられている高松城(香川県)。城内の月見櫓や艮(うしとら)櫓が国の重要文化財とされ歴史的な価値も高いスポットですが、かつて国宝に指定されたスポットがあったのはご存知でしょうか。かつて三の丸にあったとされる「桜御門」です。

高松城、桜御門
桜御門完成のイメージ図。高松商工会議所の公式YouTubeチャンネルでは工事の様子を動画で見ることができる(提供:高松市教育委員会)

桜御門は幅12m、高さ9mの立派な城門であり、『寛永四年高松城図』にもその姿が描かれていることから、高松城が徳川家に渡る前の生駒家の時代からあるものとされています。その歴史的価値から1944年には国宝(現在の文化財保護法においては重要文化財にあたる)に認定されていますが、翌年の空襲により焼失、以後は空襲の影響で変色した「桜御門石垣」にその名残を残すのみとなっていました。

しかし、文化財としての価値の高さなどから高松市は2011年に復元を発表。2019年より工事を進め、2021年4月には柱を設置する立柱式、続く6月には骨組みの完成を祝う上棟式が行われました。物流のストップなどの影響により当初予定されていた2022年1月での完成とはなりませんでしたが、7月の落成式に向けて現在も作業が進められています。

高松城、桜御門
地上約20mからの桜御門の跡地。耐震工事中の「披雲閣」、奥には天守、瀬戸内海の絶景が写る。写真は2010年10月のもの(撮影:岡一洋)

また、桜御門の復興と並行して、高松城主であった松平家の別邸「披雲閣」の耐震補強工事も進行中です。重要文化財でありながらイベントスペースとしても市民に親しまれている披雲閣。島津家から送られたとされる蘇鉄を見ることができる「蘇鉄の間」の耐震工事は2022年3月に完了予定です。その他「大書院」、「波の間」などの設備も随時改修予定です。

一乗谷館】1年かけたリニューアルで朝倉氏の歴史を深掘り

一乗谷朝倉氏遺跡、朝倉義景館跡唐門
一乗谷朝倉氏遺跡の「朝倉義景館跡唐門」。全国でも類を見ないほどの良好な形で遺構が残っている

一乗谷に城を築き、越前を平定した朝倉氏。織田信長に滅ぼされるまでの5代の間、戦国時代において猛威を振るった一族の威容を今に伝えるのが「一乗谷朝倉氏遺跡」(福井県)です。特別史跡・特別名勝・重要文化財の三重指定を受けた「一乗谷朝倉氏遺跡」は、城下町の様子がほぼ完全な形で発掘され、その中に当時の街並みを再現した「復原町並」が歴史ファンのみならず観光客にも人気です。

そんな「一乗谷朝倉氏遺跡」の情報発信の拠点である「一乗谷朝倉氏遺跡資料館」が約1年の休館を経て「一乗谷朝倉氏遺跡博物館(仮)」と名称も新たにリニューアルオープンします。開館は2022年10月予定。

一乗谷朝倉氏遺跡博物館
「一乗谷朝倉氏遺跡博物館(仮)」の外観イメージ図。JR越美北線の一乗谷駅より徒歩約5分とアクセスも良好(提供:福井県庁交流文化部文化課)

館内では、大型モニターによるガイダンス映像や、子ども向けの体験学習スペースなどを設置し遺跡の散策が楽しくなる情報をわかりやすく展示。そのほかにも戦国時代の港の遺構である「石敷遺構」の露出展示、武家屋敷や町屋を再現した巨大ジオラマ、朝倉氏の居館の原寸再現などお城・歴史ファンには垂涎ものの展示が目白押しです。

一乗谷朝倉氏遺跡博物館、巨大ジオラマ
展示室内の巨大ジオラマイメージ図。一乗谷朝倉氏遺跡の発掘調査結果に基づき、1/30スケールで当時の暮らしの様子を再現している(提供:福井県庁交流文化部文化課)

また、リニューアルオープンに先駆け、福井市の複合施設「ハピリン」では「サキドリ!新一乗谷博物館」を開催。博物館にて収蔵予定の出土品を展示しています。ワークショップや、博物館の学芸員の方々によるトークライブも開催予定です。

弘前城】新発見も続出の石垣・城門屋根修理

弘前城
桜の名所としても知られる弘前城。石垣修理工事のため、天守は一時的に本丸中央側に移されている。写真は2021年4月のもの(提供:弘前市公園緑地課)

天守ごと移動させた後に石垣を一度解体して積み直すという大掛かりな修復作業を行っている弘前城(青森県)。石垣を解体するにあたっての発掘調査が2017〜2018年の間に行われ、その際に江戸時代に構築された井戸、排水設備、埋もれた石垣など、新発見の遺構が見つかったことで話題になっています。これらの遺構は弘前城の歴史を紐解く上で重要な史料として保存されています。

石垣の石材2185点は、もうすでに解体済み。現在は、耐震強度・歴史的価値・石垣としての価値をそれぞれの観点から考証する専門家を集めた「弘前城跡本丸石垣修理委員会」の指導の下、石垣を構成する石の一つ一つに番号を割り振った上で綿密な修復が行われています。天守を元の位置に移動させる「曳家」は2025年に行われる予定です。

弘前城、三の丸追手門
修復前の弘前城三の丸追手門。二の丸南門とほぼ同形状であり、どちらも重要文化財に指定されている。写真は修復前(提供:弘前市公園緑地課)

弘前城、二の丸南門
修復途中の弘前城二の丸南門。傷んだ銅板を剥がし、葺き替える作業が進められている(提供:弘前市公園緑地課)

また、石垣の修復と合わせて、重要文化財である二の丸南門・三の丸追手門の修復作業も進められています。屋根を葺き替える大規模な修理は、いずれの門においても約60年ぶりのこと。修理は2022年の年末に完了予定です。

各所で大規模な修復作業が進められている弘前城。例年開催の「弘前城雪燈籠祭り」をはじめとした各種イベントの開催は残念ながら今年も見送られていますが、新たな姿で披露される弘前城に期待が集まっています。

岡山城】令和の大改修がいよいよ11月に完了予定!

岡山城
たけ◎曲輪衆さん撮影

昭和の再建、平成の改修、天守や他の建物の耐震改修・修繕工事などの令和の大改修を経て、今年の11月についにリニューアルオープンする岡山城(岡山県岡山市)。完成後の姿についてはまだまだ秘密のベールに包まれていますが、「歴史を伝える城」かつ「集う城」へと変貌する予定だそう!
天守閣内展示の監修を行うのは、岡山市出身でテレビ等でもおなじみの歴史学者・磯田 道史先生。体験型展示や映像を駆使して岡山の歴史を体感できるように工夫が凝らされます。子ども達に興味を持ってもらうためワークショップやツアーも企画予定。また、天守閣内の多目的ホールの拡充や天守閣前広場でのイベント、周辺文化施設との連携強化などにより、人と城、人と人を結ぶ拠点となることを目指しています。

▼令和の大改修については「「令和の大改修」真っ最中の岡山城!城びとアンバサダーが現地見学会をレポート」(https://shirobito.jp/article/1495)をご覧ください!

執筆/かみゆ歴史編集部(原田 郁未)
『地域別×武将だからおもしろい 戦国史』(朝日新聞出版)や、『あやしい天守閣 ベスト100城+α』(イカロス出版)が好評発売中。2021年11月19日からは、日本中世史入門書の決定版『キーパーソンと時代の流れで一気にわかる 鎌倉・室町時代』が新発売!

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