名城を支えるボランティア〜滝山城がよみがえるまで〜


城を守るカギは“ボランティア”にあり!?

年々高まりを見せるお城ブーム。実際に各地の城を訪れる「お城めぐり」を行う人も増えており、姫路城(兵庫県)や大阪城(大阪府)のような有名城郭だけでなく、これまで城好きしか訪れなかった山城でも多くの人を見かけるようになりました。

東京都八王子市にある滝山城も、近年訪城者数が急増している城の一つ。関東随一の規模を誇る山城で、大規模な横堀や北条の城の特徴である馬出などが往時のまま残り、初心者にオススメです。現在は滝山公園となっており、2015年には山麓の大手口入り口付近に観光用の駐車場が設置されました。

滝山城を訪れたことがある人はわかると思いますが、オールシーズンいつ訪れても丁寧に下草が刈られているため、登城しやすく遺構の見やすさも抜群。さらに、城内には遺構の説明看板も設置されており、お城めぐり初心者も楽しめる至れり尽せりな城です。

こうした訪城者思いな城内環境の裏には、ボランティアの方々の地道な活動があります。実は現在、城を訪れる人が増える中、城内をいかに整備して鑑賞しやすい状態に保つかが、全国の城で喫緊の課題となっているのです。特に自然の要害を利用して築かれた山城は、文字通り山の上や山一帯を切り開いて築かれているため、城跡内は草木が生え放題。さらに管理の行き届かない城では、遺構の崩壊が進み、立入禁止にせざるを得なくなってしまう場合も。文化財や登城者の安全を守るためにも城跡の整備が急務なのですが、自治体のみでは人手が足りず追いついていないのが現状です。

そこで注目されているのが、有志の力を借りて城内整備を行うボランティア。姫路城や佐賀城(佐賀県)、岩村城(岐阜県)など全国各地の城で城内清掃のボランティア活動が行われていますが、この活動に特に力を入れている城の一つが滝山城です。では、具体的にどのような活動をしているのでしょうか。

有志の力を借りてよみがえる滝山城

滝山城の環境整備を行いその魅力を広く発信するために立ち上げられたのが「滝山城跡群・自然と歴史を守る会」(以下「守る会」)。「守る会」では、毎月第3日曜日に一般から募集したボランティアの方と城内の整備活動を行っています。2018年に入ってからは小宮曲輪を囲む堀の整備が進められており、4月までに堀内の竹林の間伐や倒木の片付け作業などが行われてきました。

「守る会」の城内整備活動は堀や土塁上に生えていた下草刈りや城内の見通しを悪くする木々の間伐が中心。滝山城で活動している「守る会」会員は滝山城のことを隅々まで知っている人ばかり。作業の合間にボランティアの人たちとお城談義に花が咲くこともあるのだとか。

しかし、この整備活動に参加するボランティアの人数は平均3〜4名で、「守る会」からの参加者は平均13〜14名。毎回20人前後という人数で作業をしているため、1回に整えられる範囲が限られてしまっているのが目下の悩みだそう。一人でも多くの方にボランティアとして参加していただくために、ブログで毎回の活動の様子を報告して、参加者と募るなどの活動をされています。

滝山城、集積場所
まずは片付けた木をまとめる集積場所づくりから(守る会の公式ブログより)

滝山城、斜面、竹、間伐
斜面にある茶色くなった枯れた竹を間伐する作業(守る会の公式ブログより)

滝山城、竹、斜面、間伐
足元の悪い斜面で、竹の間を縫うようにして間伐した竹を運ぶ(守る会の公式ブログより)

滝山城、竹、間伐、清掃
清掃前(左)と清掃後(右)の写真。その差は一目瞭然(守る会の公式ブログより)

参加には「守る会」への事前申込が必要になります。こちらの「守る会」のホームページから申込手続きを済ませ、注意事項をよくお読みただき、ご参加ください。当日は動きやすい服装(長袖シャツに長ズボンで底の丈夫な靴が望ましい)で帽子、軍手、昼食、飲物、タオル、着替え、健康保険証を持って行きましょう。作業に使用する道具類は「守る会」から貸し出されるので持参不要です。

滝山城 ボランティア活動
活動予定日:毎月第3日曜日(雨天の場合は第4日曜日に延期か中止) 

※「滝山城跡群・自然と歴史を守る会」主催のボランティア活動となります。参加には「守る会」への事前申込みが必要です。
 当日の服装や持ち物、注意事項など、「守る会」のWEBサイトをよくご確認の上、お申込みください。
※滝山城の下草刈りボランティア体験記はこちらからご覧ください。→https://shirobito.jp/article/348

滝山城(たきやま・じょう/東京都)
滝山城は戦国時代に山内上杉氏の家臣が築いた城。川越城の戦いで上杉氏が北条氏綱に敗れると北条氏の支城となった。永禄12年(1569)に武田信玄が攻め寄せた際、落城寸前まで追い込まれるも撃退。八王子城(東京都)の築城にともない廃城となった。

執筆/かみゆ歴史編集部
「歴史はエンタテインメント!」をモットーに、ポップな媒体から専門書まで編集制作を手がける歴史コンテンツメーカー。手がける主なジャンルは日本史、世界史、美術史、宗教・神話、観光ガイドなど歴史全般。主な城関連の編集制作物に『日本の山城100名城』『超入門「山城」の見方・歩き方』(ともに洋泉社)、『よくわかる日本の城 日本城郭検定公式参考書』『完全詳解 山城ガイド』(ともに学研プラス)、『戦国最強の城』(プレジデント社)、『カラー図解 城の攻め方・つくり方』(宝島社)、「廃城をゆく」シリーズ(イカロス出版)など。

※2021年7月1日更新/2018年4月3日初回公開

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