古代日本の最前線!国境の島「対馬」のお城をめぐる!

「続日本100名城」の金田城は長崎県の対馬にある、お城ファンの間でもアクセスが難しいことで知られているお城。対馬は朝鮮半島を臨む、国境の島です。せっかく対馬まで足を運ぶなら、金田城だけでなく、ほかのお城も訪ねたいですよね! 数奇な歴史をたどってきたこの土地ならではの、魅力的なお城をご紹介します!
※2023年1月26日更新



「お城」だけじゃない! 今注目されている歴史の島、対馬とは?

金田城、山頂、浅茅湾
金田城山頂からは浅茅(あそう)湾が一望できる

金田城が「続日本100名城」に選ばれたのは平成29年(2017)4月6日。それに先駆けること2年。平成27年(2015)、「国境の島 壱岐・対馬・五島 ~古代からの架け橋~」が文化庁の日本遺産に認定され、さらに平成29年10月には「朝鮮通信使に関する記録」が、ユネスコの世界記憶遺産に登録されました。古代から受け継がれてきた大陸との交流の歴史。対馬は今まさに注目を浴びています!

 厳原港、清水山城、石垣
厳原(いづはら)港付近から清水山城を望む。山の中腹に石垣が見える(写真右)

実は対馬の面積は、佐渡島・奄美大島に次いで日本第3位。南北約82km、東西約18km、属島を含む面積は709平方キロメートルほどあり、東京23区よりも広いんです!

島の中央部には、対馬の空の玄関口「対馬やまねこ空港」と浅茅湾が広がり、南部には海の玄関口「厳原港」があります。対馬やまねこ空港へは、福岡空港または長崎空港から、厳原港へは福岡港からのアクセスが主となります。

「続日本100名城」に選ばれた金田城は、対馬の中央に位置する浅茅湾の南にあり、周囲には厳原の城下町を中心に、金石城清水山城桟原(さじきばら)と、対馬を代表するお城が集まっています。結石山(ゆいしやま)城や、韓国の釜山が見える韓国展望所がある島の北部へは、移動に時間がかかるので、難易度が高いかも!

今回は車がなくてもアクセスしやすい、城下町厳原付近のお城を中心に紹介します。

いざ清水山城へ! 城下町厳原から、あっという間の山城トレッキング!

清水山城、厳原、総石垣
清水山城は城下町厳原を守るようにそびえる総石垣の山城

早速、城下町厳原から山城トレッキングを楽しみながら、清水山城へ!山頂からの眺望は圧巻です。眼下に厳原の城下町、厳原港を見下ろすことができ、気象条件がよければ大海原の先に壱岐を見ることもできます。

清水山城は、標高210mの清水山の尾根沿いに、城下町厳原を守るようにそびえる山城です。東西約500mにわたり、石塁が並ぶ総石垣の城で、天正19年(1591)、豊臣秀吉の朝鮮出兵の際に、肥前名護屋城(佐賀県唐津市)から、壱岐、朝鮮半島を結ぶ中継点として築かれました。

厳原港、城下町、清水山城
山頂からは厳原港と城下町がはっきり見える

朝鮮通信使を迎えた「日本の迎賓館」金石城

金石城、櫓門、復元
金石城の櫓門。平成2年(1990)に復元された

清水山城から下山して、ふもとにある金石城へ向かいます。金石城は、対馬藩主・宗(そう)家の拠点として整備された城館。延宝6年(1678)に桟原城が新しく完成するまでの間、宗家の居城として使われていました。

金石城は、朝鮮通信使を迎える際に、迎賓館の役割も果たしました。朝鮮通信使とは、朝鮮国王の国書を日本の将軍まで届ける外交使節団のことです。現在では櫓門のほか、日本の玄関口として彼らを迎えた「旧金石城庭園」が復元され、当時の石垣の一部が遺されています。

 金石城、櫓門、石垣、対馬
櫓門を支える石垣。対馬の城には独特の積み方が残る

対馬藩主とともに、対馬200年の歴史を歩んだ桟原城

桟原城跡、駐屯地、陸上自衛隊
桟原城跡は陸上自衛隊の駐屯地となっている

桟原城は、3代藩主宗義真が金石城から居を移すため、万治3年(1660)に築城を開始。18年の歳月をかけて、延宝6年(1678)に完成しました。桟原城は、明治11年(1878)に熊本鎮台対馬分遣隊が置かれるまで、200年にわたって宗家の居城として機能してきました。現在は陸上自衛隊の駐屯地が置かれ、外部から当時の石垣の一部を見学することができます。

防人が守る国土防衛の最前線!「朝鮮式山城」金田城へ! 

金田城南東部、石塁、
金田城南東部の石塁。膨大な量の石に圧倒される

「続日本100名城」に選ばれた金田城へ。日本は、天智天皇2年(663)、百済を応援するために向かった白村江の戦いで敗北。その後、唐と新羅からの攻撃に備え、日本の最前線防衛施設として、標高約276mの城山に築城されたのが金田城です。城は天智天皇6年(667)に完成。最大の高さ6.7mに達する石塁を用いた城壁が、2.2kmに渡って築かれています。金田城は「日本書紀」に記載がある朝鮮式山城の一つであり、その築城方法には百済の影響が強く見られます。

金田城内、大吉戸神社
金田城内の大吉戸神社付近。湾に突き出している造りがよく分かる

対馬の城めぐりは車がなくても大丈夫?

結石山城、対馬北部
結石山城跡など対馬北部にも山城跡は残る

車がなくても対馬の城めぐりはできます! もちろん対馬やまねこ空港や厳原港付近でレンタカーを借りるのが便利ですが、城下町厳原へは、対馬やまねこ空港や厳原港から路線バスで約30分。そこから清水山城、金石城、桟敷原城は徒歩圏内。山城トレッキングとともに、厳原の城下町散策も楽しめます。

ただし、金田城へは車かタクシーの利用がおすすめ。路線バスでのアクセスは本数に限りがあるうえ、停留所から登城口まで約3kmの距離があります。金田城の滞在にじっくり時間をかけたければ、車かタクシーの利用が無難。

韓国展望所、韓国、釜山
韓国展望所から韓国の釜山までは約50km  
※2023年1月4日から韓国展望所リニューアル整備工事に伴い、安全確保のため敷地内への立ち入りが禁止となっています(工事完了予定2023年12月)

豊臣秀吉が見張り台にした結石山城や、大陸からの防衛拠点として使われた山城が残る、対馬北部。韓国・釜山を望む韓国展望所があるのもこのエリア。せっかくなら、足をのばしたいところではありますが、路線バスで向かうのは難しいかも。

ですが、実際に現地へ行けば、対馬のおかれた特異な地理的条件や、古代から続く、日本と大陸の交流を実感できることは間違いありません! 事前にしっかり計画を立てて向かいましょう!

島内の路線バス路線や時刻表、運賃表は、対馬交通株式会社ホームページをご参照ください。

最寄り停留所から各城(登城口)までの距離の目安
・清水山城:「厳原」停留所から約500m
・金石城:「厳原」停留所から約500m
・桟原城:「税務署前」停留所から約250mまたは「厳原」停留所から約2km
・金田城:「箕形」停留所から約3km
・結石山城:「河内」停留所から約2km 

対馬についての情報収集は、一般社団法人対馬観光物産協会へどうぞ! 城下町厳原の中心地にありますので、ぜひ城めぐりの前に訪ねてみましょう。

見どころのいっぱい対馬、最後にもうひとつ、歴史ファンにはたまらない史跡が残っています。「対馬藩お船江跡」は、厳原港から約2kmの場所にある久田川の河口に造られた人工の入り江で、対馬藩の所有する公用船を格納していた船渠です。突堤4基と船渠5つが現存しています。多くの公用船を所有し、大阪や長崎、朝鮮半島との交易を行っていた、対馬藩の歴史を象徴する史跡です。

対馬藩お船江、江戸時代
江戸時代当時の石積みが残る対馬藩お船江

執筆・写真/藪内成基(やぶうちしげき)
奈良県出身。30代の城愛好家。国内旅行業務取扱管理者。出版社にて旅行雑誌『ノジュール』などを編集。退職し九州の城下町に移住。観光PRやガイドの傍ら、「城と暮らし」をテーマに執筆・撮影。『地域人』(大正大学出版会)など。海外含め訪問城は500以上。知識ゼロで楽しめる城の情報発信を目指す。

※歴史的事実や城郭情報などは、各市町村など、自治体や城郭が発信している情報(パンフレット、自治体のWEBサイト等)を参考にしています

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