2019/11/11
超入門! お城セミナー 第80回【鑑賞】日本三大夜城って?どこのお城が選ばれているの?
お城に関する素朴な疑問を、初心者向けにわかりやすく解説する連載「超入門! お城セミナー」。
日本にたくさんある「日本三大○○」。もちろん、お城の三大〇〇もあるんです!今回のテーマは、「日本三大○○城」第二弾。夜景の美しい城が選ばれる「日本三大夜城」を紹介します! 2014年に認定された「日本三大夜城」は、どのような基準で一体誰が選んだのか。美麗な夜景写真とともに解説を行います。
大阪の夜景の中で、一際輝く大阪城
昼間の姿とは異なる「夜の城」の魅力に注目
この連載の第76回「【鑑賞】お城にも「日本三大〇〇」というのはあるの?」では、「日本三大○○」のうちの一つである「日本三大山城」についてお話しました。今回は「日本三大夜城」をご紹介。夜城って…夜の城? はてさて、いったいどんな特徴をもつ城たちなのでしょうか? そしてどの城が、この三大夜城に選出されているのでしょうか?
城郭、特に近世城郭では夜間ライトアップが行われていることが多い。昼と夜の2回訪れて、建物の姿を比べてみるのも城の楽しみ方の一つだ(写真は松本城)
「日本三大山城」をご紹介した時に、誰が呼んだか「日本三大○○」なるもの…と言ったのですが、この三大夜城は誰が決めたかがはっきりしています。選定・認定を行ったのは「夜景観光コンベンションビューロー」という団体。
和歌や俳句で夜の情景を詠んだり、月見や夜祭り・送り火といった夜の文化が古くからたくさんある日本。現代では夜景を愛でることも一つの文化となってきていますね。そこで、日本各地に埋もれている美夜景を再発見&発掘して紹介し、観光資源としてアピールする活動をしているのが、「夜景観光コンベンションビューロー」です。「夜景サミット」や「夜景観光士検定」など、夜景に関するおもしろい取り組みも。この活動の一環として、「日本三大夜城」も誕生したのです。
「夜景観光コンベンションビューロー」は、他にも全国の芸術的・文化的価値の高い夜景を「日本夜景遺産」として認定する活動も行う。こちらには、姫路城(兵庫県)や横手城(写真/秋田県)で行われるかまくらまつりなどが選ばれている
今まで語られてきた城の価値といえば…歴史・建築・城下町、マニア目線では縄張やその遺構も外せません。そして近代以降は、桜・紅葉や貴重な緑地といった公園としての価値も挙げられるでしょうか。これらに加えて、昼間の姿とは異なる魅力を放つ「夜の城」を新しい城の価値として提案したのが「日本三大夜城」で、選定するにあたり約4300名の夜景鑑定士の投票を元にして現地調査を行ったそうです。基準となった認定検証項目は、以下のとおり。
1.城郭や景観的特徴を生かし、夜間照明を効果的に活用していること。
2.演出・サービスが毎年拡張し、翌年以降への期待感を有していること。
3.園内の安全管理により、子どもからお年寄りまで幅広い方々に親しまれていること。
4.管理・運営する団体が積極的に夜型観光集客に取り組んでいること。
5.夜景観光地としてのいかんなく魅力を発揮していること。
ここが「日本三大夜城」だ!
前述のなかなか厳しい基準をクリアして選定された「日本三大夜城」は…
の3城です! この3城すべて夜に行ったことがある人は意外に少ないのではないでしょうか? では、この三大夜城のそれぞれの夜の魅力をご紹介しましょう。
<大阪城(大阪府大阪市)>
大都会・大阪の街なか、広大な公園敷地の中心に屹立する巨大な復興天守。高層ビル群を従える見事な新旧融合の威容は、唯一無二の風情です。昼間でもこの光景は圧巻ですが、夜はまた格別。
春の大阪城ライトアップは夜桜も明かりに照らされ、風情たっぷり
天守の夜間照明は昭和6年(1931)の復興天守誕生時から断続的に実施されていて、昭和27年(1952)以降は原則として毎晩点灯。時代とともに幾度も照明の改良を重ねてきました。鯱(しゃちほこ)や飾り金具などをきらびやかに見せている現行の照明デザインは平成9年(1997)から。日没直後から一部点灯〜フル点灯となり、夜が更けるのに合わせ、天守の窓明かりを残しながら段階的に照明を消していきます。この時間ごとに変化する演出は、市民の寄附によって復興した大阪のシンボルが、現代もなお城下の営みに寄り添っていることが感じられ、ちょっとジ〜ンときますね。
公園内では天守以外の古い建物もライトアップ。夜桜ライトアップなどとともに年間を通して夜の大阪城が魅力的に演出されています。
<高知城(高知県高知市)>
現存12天守の一つであり、天守・御殿といった本丸の建造物が唯一完存する高知城。この価値のみに甘んじず、夜の城の美しさをもって人々をおもてなしするという精神が、高い評価を得たのだそう。小ぶりな天守とそれに直結した御殿という構造のため、天守と追手門が写真に無理なく美しくおさまる高知城。それゆえに、夜の建造物群のライトアップは効果絶大。時代を経た建物だけが醸し出す、ゆったりとした品格を際立たせています。建物のモノトーンと松の緑という、日本美を凝縮したようなシンプルな色彩も実に美しい。
高知城の夜。時期やイベントによっては夜間に天守へ登閣することもできる
そこに、四季を通じて積極的に行われる夜間のイベントが更なる彩りを添えます。春は「高知城花回廊」。夜桜ライトアップはもちろん、桜舞い灯籠の灯りが揺れるなか、効果的にライティングされた生け花の大作が城内のメイン通路を彩ります。夏の「高知城 夏の夜のお城まつり」では、風鈴とキャンドルのコラボレーションのなか、縁日やビアガーデンを。秋は「高知城 秋の夜のお城まつり」。古典芸能とロウソクの灯りで幽玄の世界も体感できます。そして冬の「高知城 冬のお城まつり」は、ジャズが流れるなか、大がかりなキャンドル照明やイルミネーションタワーが城内を彩ります。
<高田城(新潟県上越市)>
徳川譜代の大名が不始末を犯してしまった時に、転封させられることが多かったという高田城。平城なのに石垣がない土造りなのは、大坂冬の陣前の急な築城で時間がなく、また石材も採れない土地だったからだとか。歴史上はちょっと負のイメージがあり、派手なアピールポイントがないように思いますが、とんでもない。最も日本人のソウルを揺さぶる「桜」の一大名所なのです。
高田城の夜桜。桜が見頃となる4月上旬には全国から多数の観光客が訪れる
明治42年(1909)に在郷軍人会によって2200本の桜の木が植えられたのがはじまりで、現在は4000本もの桜が訪れる人の心をわしづかみにします。毎年4月に開催される「高田城百万人観桜会」は、内堀・外堀とその周囲のソメイヨシノが3000本のぼんぼりに幻想的に照らし出され、300もの露店が立ち並ぶ越後の春の象徴となっています。ライトアップされた白い漆喰壁に効果的に黒が配された、ややシャープな印象の復元櫓は、土造りならではの柔らかな土塁のラインと絶妙にマッチして、独特の風情を醸し出しています。桜のピンクと土塁のグリーンの対比も見事。城跡公園としての現代の歴史では、「日本三夜景」「日本三大夜桜」とも讃えられてきました。
空気が澄んで夜景が美しく見える秋の夜長。昼間とはまた違った顔を見せてくれる「夜の城」を楽しみに、ぶらりと出かけてみませんか? 今までの価値とは違った「名城」が発見できるかもしれません。
「日本三大夜城」以外にも、ライトアップや夜間登城など夜を楽しめる城はたくさんある。城めぐりに行く際は、ぜひ夜の姿にも注目したい(写真は岡山城「春の烏城灯源郷」)
執筆・写真/かみゆ歴史編集部
「歴史はエンタテインメント!」をモットーに、ポップな媒体から専門書まで編集制作を手がける歴史コンテンツメーカー。かみゆ歴史編集部として著書・制作物多数。