3年に一度! 瀬戸内国際芸術祭と「水と石の名城」へ/高松城・丸亀城

「瀬戸内国際芸術祭」は3年に一度、瀬戸内の島々を舞台に開催される現代アートの祭典。いよいよ2022年4月14日(木)から会期が始まります。会場への起点となる高松駅(香川県高松市)からは、徒歩で「水の名城」高松城へ、また1時間以内で「石の名城」丸亀城へと、2つの日本100名城が射程距離圏内。瀬戸内国際芸術祭と合わせて、2大名城の美しさにもふれてみませんか。初掲 2019年4月23日。2022年10月4日に2022年度の情報を更新

海水を引いて守りを固めた「水の名城」高松城

高松城、艮櫓
高松城南東に移築された国重要文化財の艮櫓(うしとらやぐら)。ローカル電車「ことでん」が脇を走る高松らしい風景

高松港からほど近く、瀬戸内海に面してたたずむ高松城(香川県高松市)。北側が瀬戸内海、残り三方は海水を取り入れた水堀を配する珍しいデザインを採用し、中津城(大分県中津市)、今治城(愛媛県今治市)とともに「日本三大水城」に数えられます。水堀に囲まれ、本丸はまるで島のように浮かんでいるよう。北側の瀬戸内海に向けて開く水手御門は全国唯一の現存例で、水堀にはボラやチヌなど海の魚が泳いでいます。「高松」の名前の通り松の木がたくさん生えており、瀬戸内海や水堀との美しい調和が楽しめます。

「瀬戸内国際芸術祭」会場への移動は、高松港から瀬戸内海の島へと渡るフェリーを利用するので、ぜひ船上からも高松城の雄姿を見届けてください。

高松城、高松港
高松港からの高松城。羽柴(豊臣)秀吉の家臣・生駒親正(いこまちかまさ)が築城した

高松城と合わせて訪れたい!ミシュラン三つ星評価の大名庭園

栗林公園、大名庭園
少し歩くだけで表情を変える栗林公園は「一歩一景」と形容される

高松城とともにぜひ訪れたいのが、大名庭園の傑作「栗林(りつりん)公園」です。高松藩主・松平家の別邸として歴代藩主が修築を重ねてきました。フランスの旅行ガイドブック『ミシュラン・グリーンガイド・ジャポン』において、最高評価の三つ星に選ばれています。「お庭の国宝」ともいえる特別名勝に指定されている全国24の庭園の中で、最大の広さを誇ります。江戸時代初期の回遊式庭園として、石組みや地割りが優れ、約1400本もの松や四季折々の自然をじっくり味わいたいですね。瀬戸内国際芸術祭のアート気分を、ますます盛り上げてくれるはずです。

高松、商店街、ガレリア
存在感抜群のドームはミラノ(イタリア)のガレリア(屋根のある商店街)を手本に作ったとされる

高松城周辺の商店街散策も楽しみのひとつ。高松市中心部7商店街は日本一の長さを誇り店舗の数に圧倒されますが、ところどころに歴史の面影あり、一方でイタリア・ミラノのガレリアをイメージしたとされるドームを取り入れ、進取の気風も感じられます。また、香川県といえば「うどん県」。商店街にもたくさんのうどん店がありますので、ぜひお気に入りの一店を見つけてください。

住所:香川県高松市玉藻町2-1
電話:087-851-1521(玉藻公園管理事務所)
営業:ほぼ日の出から日没まで ※例4~5月は5時30分~18時30分(西門)、7~18時(東門)
定休日:なし
料金:一般200円
アクセス:JR予讃線・高徳線「高松」駅から徒歩約3分

栗林公園
住所:香川県高松市栗林町1-20-16
電話:087-833-7411(栗林公園観光事務所)
営業:ほぼ日の出から日没まで ※例4~5月は5時30分~18時30分
定休日:なし
料金:一般410円
アクセス:JR高徳線「栗林公園北口」駅から徒歩約3分。またはJR予讃線・高徳線「高松駅」からことでんバスで約20分、「栗林公園前」停留所下車、徒歩すぐ

全国屈指の高石垣がそびえる「石の名城」丸亀城

丸亀城、大手二の門
大手二の門から見上げると高石垣とともに天守がよく見える

高松駅からJR予讃線約20分(特急利用)で丸亀駅に到着。丸亀駅から商店街を抜けて約10分で丸亀城(香川県丸亀市)が見えてきます。水を生かしたデザインが特徴的な高松城に対し、丸亀城の見どころは何といっても石垣。大手門から天守がそびえる標高66mの亀山(かめやま)にかけて3段もの高石垣が築かれています。特に、大手門から山上に向かう山道である「見返り坂」から見上げる、三の丸北側の石垣は圧巻。高さ20m以上の城壁が続き、隅角部の石垣は「扇の勾配」とよばれる美しい曲線美を見せています。

高石垣
勾配の美しさに思わず立ちどまってしまう三の丸北側の高石垣

石垣のインパクトに押され気味ですが、三重天守は現存木造天守です。高さ約15m、小規模ではあるものの、瀬戸内海をにらむようにそびえ風格が漂います。高松城と同じ生駒親正と息子・生駒一正(かずまさ)が慶長2年(1597)から築城。元和の一国一城令でいったん廃城になりますが、山崎家治(やまざきいえはる)が再建にとりかかり、京極高知(きょうごくたかかず)が完成させました。

丸亀城天守
丸亀城天守は「現存十二天守」のひとつで、「日本一小さな」現存木造天守

日本屈指の石垣を誇る丸亀城ですが、2018年7月の西日本豪雨による水害で、南西側の石垣が約30mにわたって崩れています。復興に向かっている姿もぜひ目に焼き付けてください。

丸亀城内観光案内所でふれる「丸亀うちわ」の伝統

丸亀うちわ
丸亀城の情報収集だけでなく「丸亀うちわ」にもふれられる丸亀城内観光案内所

丸亀城に登城する前に、大手門の奥にある丸亀城内観光案内所での情報収集がおすすめ。スタッフの方が、地図を元に丸亀城の概略や、水害の影響について詳しく教えてくれるので予習にぴったり。

さらに、丸亀の伝統工芸品である「丸亀うちわ」の実演コーナーがあり、製作体験もできます。「丸亀うちわ」は江戸時代初期に確立。全47もの製造工程のほとんどを職人が手仕事で仕上げます。また、「伊予竹に土佐紙貼りてあわ(阿波)ぐれば讃岐うちわで至極(四国)涼しい」と歌い継がれるように、丸亀は必要な材料すべてを揃えられる土地でした。最高の材料と卓越した職人技の集大成こそが「丸亀うちわ」なのです。

幸運のハート石、看板
「幸運のハート石」の案内板

大手門、桝形
大手門の桝形。「幸運のハート石」はどこに?

丸亀城の正門に当たる、大手一の門と二の門(ともに国重要文化財)から成る桝形(ますがた)にはハート形の石があり、撮影スポットになっていますのでお見逃しなく。

住所:香川県丸亀市一番丁
電話:0877-24-8816(丸亀市文化観光課)
営業:天守9時~16時30分(入館受付は~16時)
定休日:なし
料金:天守200円
アクセス:JR予讃線「丸亀」駅から徒歩約10分で登り口、登り口から天守まで徒歩約10分

高松城・丸亀城への移動にも使える!瀬戸内国際芸術祭2019期間中のおトクなきっぷ

JR高松駅
JR高松駅から高松港や高松城は徒歩圏内

瀬戸内国際芸術祭222は、春4/14(木)~5/18(水)、夏8/5(金)~9/4(日)、秋9/29(木)~11/6(日)に分けて開催されます。開催期間に合わせて移動に便利なおトクきっぷが販売されます。高松城や丸亀城はもちろん、香川県や岡山県を中心とした瀬戸内の城めぐりにも活用できます。

「瀬戸内国際芸術祭2022」

高松港、フェリー
高松港からフェリーで瀬戸内国際芸術祭2022の会場、瀬戸内海の島々へ

また、瀬戸内国際芸術祭2022の会期中、会場となる12島のうち5島を結ぶフェリーが、3日間乗り放題になる「瀬戸内国際芸術祭2022共通乗船券」(大人2600円)が発売されています。おトクな金額でゆったりと瀬戸内の島々を眺める船旅も楽しむのもいいですね。

「瀬戸内国際芸術祭2022共通乗船券」

美しい瀬戸内海を望む高松城と丸亀城とともに、瀬戸内国際芸術祭2022でアートに浸る、3年に1度の特別な城旅に出かけてみてはいかがでしょうか。


執筆・写真/藪内成基(やぶうちしげき)
奈良県出身。国内・海外で年間100以上の城を訪ね、「城と旅」をテーマに執筆・撮影。異業種とコラボした城を楽しむ体験プログラムを実施。旅行雑誌『ノジュール』(JTBパブリッシング)などを編集。

※歴史的事実や城郭情報などは、各市町村など、自治体や城郭が発信している情報(パンフレット、自治体のWEBサイト等)を参考にしています