念願の映画化を実現した原田眞人監督にインタビュー!新選組の真実を描く『燃えよ剣』に込めたこだわりは?

司馬遼太郎(※遼のしんにょうは点2つ。以下同)のベストセラー小説を完全映画化した『燃えよ剣』が、2021年10月15日からいよいよ全国の劇場で公開! 学生時代から司馬作品の愛読者であり『燃えよ剣』の映画化を長年熱望していたという原田眞人監督にインタビューし、この歴史スペクタクル大作が完成するまでの舞台裏を、小説への思い入れや主演の岡田准一との関係などいろいろな側面から語っていただきました。

燃えよ剣、原田眞人

司馬遼太郎が描く“筋を通す土方歳三の生き方”に惚れた

──小説『燃えよ剣』を高校時代に初めて手に取ったそうですが、もともと歴史ものがお好きだったのですか?

原田「当時は映画といえば時代劇が主流で、子どもの頃から新選組ものや幕末ものはよく見ていて、小説も時代小説をよく読んでいましたね。その中で短編小説『幕末』を手に取ったのが、司馬先生の作品との出会いでした」

──『燃えよ剣』を初めて読んだ時のご感想は?

原田「それまで新選組のイメージといえば“ワルの集団”で、映画でも土方歳三はいつも陰険そうな役者が演じていました。それが『燃えよ剣』を読むことで、土方はこういうカッコイイ人間だったかもしれないと思うようになったんです。特に、筋を通す土方の生き方は、どんな時代にでも通用する素晴らしいもの。今のような混乱した時代にこそ、指針とすべき生き方じゃないでしょうか」

──原田監督は『燃えよ剣』の映画化を長年熱望していたそうですが、土方の生き方以外ではどのような点に惹かれたのですか?

原田「土方と近藤勇と沖田総司とのやり取りです。彼らは新選組の一員として人を殺して生きていかなければいけませんでしたが、そんな中でも明るさを失わなかった。なかでも土方と沖田の会話が好きで、司馬先生が書いた明るい沖田像を大事に描きたいという思いがありました」

──上下巻に渡って豊富なエピソードが描かれた『燃えよ剣』を、2時間半の映画にまとめるのは大変だったんじゃないでしょうか?

原田「『燃えよ剣』を1本の映画に収めるには、物語の始まりから池田屋事件までぐらいが精一杯かなと思っていたけど、制作側からはバラガキの時代から土方の最期まで描いてほしいと頼まれ、どうまとめるかがネックでした。その解決策として『関ヶ原』でも行った回想形式を検討していたところ、ポール・トーマス・アンダーソン監督の『ファントム・スレッド』を見て、その意外性のある語り口にピンときました。土方が自らの過去を誰かに語り、その話を誰にしゃべっているかが分かるところで歴史の大きな絵が見えてくる──そうした回想形式を思いついたのです」

──回想形式の語り方に工夫を加えることで、物語の意味合いを深めたのですね。

原田「ただし、それだけだと単なるダイジェストになってしまうので、プラスの要素も考えました。司馬先生の『燃えよ剣』や『新選組血風録』だけを読んでいると新選組結成の流れがはっきり分からなかったけど、会津藩主・松平容保(かたもり)を主人公にした『王城の護衛者』を読むと分かりやすかったんです。そこで、会津藩の視点から新選組結成の流れを描くなど語り方を工夫し、自分で納得のいく構成に仕上がりました」

──今回の映画『燃えよ剣』は、原田監督がこれまでに作った『関ヶ原』『日本のいちばん長い日』から続く“日本の三大変革期”の最終章を飾るわけですが、日本の変革期を描いた達成感はありますか?

原田「『関ヶ原』の戦国時代、『日本のいちばん長い日』の第二次大戦終戦、そして『燃えよ剣』の幕末。いずれの時代もドラマの宝庫だから、これだけで終わらせたくない。できれば“幕末三部作”“戦国三部作”“1945年終戦三部作”とかも作りたいし、『燃えよ剣』がヒットすれば『新選組血風録』の1エピソードとして沖田総司の前日譚を作って、もっと土方や近藤たちと付き合っていきたいですね」

──それらの時代の何が原田監督をそこまで惹きつけるのでしょう?

原田「まず、三大変革期という視点は日本由来ではなくハーバード大学の歴史家によるもので、それを知った時に外国人ならではの大胆な歴史の切り取り方に感心しました。そしてこれらの時代に共通するのが、負けていく者たちの無念さが色濃く出ていること。いわば敗者の美学ですね」

──負けた無念を抱えたまま死んでいく者たちのドラマに惹かれたわけですね。

原田「ただ、『燃えよ剣』の土方は無念だけを抱えたまま死ぬのではなく、己の人生をまっとうしたと思います。旧幕府軍が五稜郭の戦いで明治新政府に降伏することは分かりきっていたし、もし自分が捕まったら他の仲間たちも一緒に処刑されるはず。だったら自分が戦死するのが一番いい──そこが土方らしい筋の通った生きざまであり魅力的なところです」

“土方を演じるために生まれた男”岡田准一と築いた信頼関係

燃えよ剣、原田眞人

──物語の軸を担う人物は何と言っても土方になります。この土方を見事に演じきった岡田准一さんの存在は原田監督にとって大きかったんじゃないですか?

原田「岡田さんは歴史が好きでたくさん本を読むし、体の動きも良くて、なかなかいない俳優ですね。初めて組んだ『関ヶ原』では石田三成を演じるのは彼しか考えられなかったし、今回はそれ以上に『土方を演じるために生まれてきたんじゃないか』と思えるぐらいハマリ役でした。『関ヶ原』でアクションをもっと演じたいという気持ちがひしひしと伝わってきたので、最強の剣客集団・新選組の副長として存分に戦える『燃えよ剣』では、土方に関する殺陣は100%岡田さんに剣技の構築・指導を任せました」

──岡田さんは自らMCを務める「ザ・プロファイラー 夢と野望の人生」で土方を取り上げた際に「この人物をいつか演じるかもしれない」と思ったそうですが、それほど土方に思い入れが深いと、原田監督が描こうとする土方像とズレが生まれることはなかったのですか?

原田「それは全然ありませんでした。今回描きたかったのは土方の実像ではなく、小説『燃えよ剣』で書かれていた土方。実際の土方は女性関係でけっこう浮名を流していたらしいけど、『燃えよ剣』ではお雪だけを愛していた土方でいてほしい──そうした史実とフィクションの住み分けはお互いに感覚が揃っていたと思います」

──原田監督と岡田さんはお互いに強く信頼しあっているんですね。

原田「そうですね。こちらが軽く球を投げると、いい球が返ってくるような。岡田さんは近藤勇役の(鈴木)亮平から『土方と沖田の仲が良すぎるから自分も入れてほしい』と頼まれて、近藤・土方・沖田による3人剣も考えてくれたんですよ。亮平もそういうことを言えるぐらいの関係性を築いていて、沖田役の山田涼介君も含めたこの3人は“日本代表チーム”と言っていい絶妙な距離感でした」

──その絶妙な距離感が映画を見ていてとても伝わってきますが、そうした関係性のイメージを原田監督はどのように岡田さんや鈴木さんたちへ伝えましたか?

原田「分かりやすいイメージとして、NYのリトル・イタリーで育った悪ガキ仲間たちがそのままマフィアになっていく映画『グッドフェローズ』を見るように言いました。また、もっと穏やかな一面を表現するイメージとして、ハワード・ホークス監督の西部劇『リオ・ブラボー』の保安官4人組が京都に行ったような感じだよと説明し、イメージの柔軟性を広げてもらいました」

──近藤勇を演じた鈴木亮平さんについてはデビュー以来から「私のイサミ君」と思い続けていたと伺いましたが、どこに惹かれたのですか?

原田「亮平を初めて見た時に、体の大きさなどの雰囲気が近藤にピッタリだなと思いました。あとは人柄。それ以来、私の中で近藤=亮平というイメージはブレていません。今回の作品で特に印象的だったのは、土方との別れのシーン、そして芹沢鴨の暗殺と対比される酒席のシーンで見せてくれたアイリッシュダンス。あのダンスは本当によく頑張ってくれました」

──岡田さんや鈴木さんなどハマリ役のキャスティング以外にも、『燃えよ剣』の世界観を描くためにこだわったポイントはありますか?

原田「新選組に対する誤解を正したいという気持ちがありました。その1つが制服。新選組はダンダラを着なかったので、今まで大島渚監督の『御法度』でしか描かれなかった“黒の集団”として見せたかったんです。もう1つが池田屋事件の真相。尊王攘夷派の宮部鼎蔵(ていぞう)を探しながら、土方が古高俊太郎を拷問し居場所を自白させたという話が伝わっていますが、いろんな資料を読んでいくとそれだと時間軸が合わない。そのあたりの真実もちゃんと描きたいと思いました」

──他にも原作小説のエピソードで大切に描きたかったことはありますか?

原田「土方とお雪が初めて結ばれる西昭庵でのエピソードですね。司馬先生が奥様のイメージをお雪に重ねていることが十分伺えたので、ロケ場所探しだったり二人が交わす情の描き方において、慎重かつ大胆に作りました」

お城での撮影も!作品に本物感を出すためのこだわり

燃えよ剣、原田眞人

──原田監督の作品は映像から醸し出されるリアルな説得力が特徴的ですが、今回も池田屋事件のシーンは圧巻でした。

原田「池田屋のフルスケールのオープンセットを、周囲の町筋も含めて造れたのは大きかったですね。池田屋といえば階段落ちが有名ですが実際にはなかったことなので、セットは本物の池田屋と同じく階段の幅を狭くし、27人の尊王志士と新選組の4人が戦うシーンは一つひとつの細かい動きまで入念にリハーサルしました」

──セットだけでなくロケーションでも本物感にこだわりましたか?

原田「今回に限らず私は常に、作品で本物感を出すために場を大事にしています。東福寺の「三門」で土方とお雪のシーンを撮影したり、岡山の吉備津神社の回廊などを新選組の屯所に隣接する施設として加えたり、自ら車でロケハンして撮影場所を一つひとつ探し回り、かなりこだわりました。なかには土方が尊王攘夷派の久坂玄瑞や岡田以蔵と遭遇する場所のように、あらかじめ目をつけておいたのではなく下見で偶然見つけたロケ地もあります」

燃えよ剣、津山城
連続した高石垣が見事な津山城(提供:ニッポン城めぐり)

──クライマックスの五稜郭の戦いは岡山県の津山城(岡山県)で撮影されていますが、この城を選んだ理由は?

原田「津山城は石垣が素晴らしく、ずっとうねっている石段もイメージにピッタリでした。本当はもっと多くのシーンも撮りたかったけど、スケジュールの都合で五稜郭の部分だけに使ったんです」

──お城だと他には姫路城(兵庫県)も撮影に使われていますね。

原田「姫路城は時代劇に欠かせない城ですから。『関ヶ原』でも石田三成の作戦室のシーンで撮影しましたが、今回初めて案内された小天守がとてもいい雰囲気で、病に伏せた沖田が隔離される療養部屋として使わせてもらいました」

──お城での撮影ならではの難しさはありますか?

原田「姫路城は一般の見学者が多いので、その交通整理や足音が入らないように台詞を録音するのが大変でした。その点、津山城は見学者もそれほど多くなく、撮影も自由が利きました。火を使う撮影ができないといった制約はあるけど、それはCGで加えることができますから」

燃えよ剣、姫路城
原田監督もお気に入りの国宝姫路城(提供:ニッポン城めぐり)

──原田監督はお城をお好きですか?

原田「小さいころから好きです。一番すごいと思うのはやっぱり姫路城。広いのでどの部分を切り取っても絵になるし、行くたびに新たな発見があります」

──他にも今後の映画の撮影で使ってみたいお城はありますか?

原田「石垣の素晴らしさが有名な高知城(高知県)に惹かれていますが、時代劇の撮影は京都が中心なので四国に渡るのは予算面で難しいんですよ。畿内であれば大丈夫なので、今度は和歌山城(和歌山県)で撮影してみたいですね」


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<作品情報>
『燃えよ剣』
監督・脚本:原田眞人
出演:岡田准一、柴咲コウ、鈴木亮平、山田涼介ほか
配給:東宝 アスミック・エース
2021年10月15日(金)公開

執筆・写真:城びと編集部

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