2021/01/28
お城EXPO 2020 徹底ガイド&レポート 【舞台裏レポート】準備から当日まで──出展ブース側から見たお城EXPO2020
全国のお城ファンが集う年に一度の祭典「お城EXPO」。そのお楽しみの一つといえば、お城に関連した各団体が出展するお城ブースですよね。しかし今回はコロナ禍ということもあり、出展を見合わせた自治体や団体も…。そんな中、出展を決めた団体はどのように準備を進めて当日に臨んだのでしょうか? 城びとアンバサダーの「たけ◎曲輪衆」さんが、福山城ブースを出展した関係者の皆さんに密着し、その舞台裏をレポートします。
違った角度から見たもうひとつのお城EXPO
お城EXPOに来ると、やはりお城に関連した各団体のブースを巡るのが一番の楽しみですね。そのお城や地域の最新情報を集めるためだったり、お城EXPO限定の御城印やお城関連グッズ集めて回ったり、ブース内の出張展示物を覗き込んだり、時間も忘れてしまうくらい夢中になってしまいます。そのお城に関しての疑問や質問にも丁寧に答えてくださったりと、専門の方とお話できるのもお城ファンとしてはとてもありがたい。そして、自分の出身地のお城ブースがあったりすると、ついつい立ち寄ったりしちゃいますね。
私たちお城ファンをいつも楽しませてくれる「城めぐり観光情報ゾーン」ですが、毎回お城EXPOに来て出展ブースを見ていると、ものすごく多くの人が行列したりして、スタッフの方は忙しそうに動き回っています。ふと、ブースの中の人たちの気持ちになって考えてみると、本番当日も然りながら準備段階からずっと携わっているわけで、自分の町や地域や会社の大きな責任を背にしょって来ているし、プレッシャーもあるでしょう。これは相当大変なんだろうなと思ったことがありました。
ということで、今回は『出展ブース側から見たお城EXPO』ということもレポートしてみたいと思います。
今年はコロナ禍の真最中での開催だったので、出展をどうしようかと悩まれた自治体や団体も多かったのではないでしょうか。現に、私が知っているだけでも、地元岡山・備中松山城の高梁市観光協会さんは、出展を決めていたけど様々の影響を考えて早々に断念。松江城の松江観光協会さんは開催直前まで状況を見ていましたが、ブースは出すけどスタッフや毎年大人気の「まつえ若武者隊」の派遣は中止という苦渋の決断。など、出展を予定されていた団体も対応に苦慮されたのではないでしょうか。
そんな中、なんとか出展までこぎ着けた福山市役所文化振興課の福山城ブースを準備段階から密着、レポートさせていただきました。
福山城は、2022年8月28日に福山城築城400年を迎えるちょうど御目出度い節目の年。現在は大規模改修が本格化し、天守や月見櫓に足場が組まれて改修工事中ですが、見学スペースも設けられていて現存する伏見櫓や筋鉄御門などの見学が可能。御城印や100名城スタンプも天守下の福山城管理事務所で購入したり押すことができます。
福山市では4年前に福山城築城400年記念事業がスタートし、城の歴史や文化資源の顕彰、城内の整備やVRの制作、専門家によるシンポジウムの開催など、いろんな事業が現在も進行中です。その事業の一環としてお城EXPOへの出展が行われているそうで、今回が3回目の出展です。
最初、福山市役所文化振興課を訪れたのは開催も間近に迫った12月2日。この時点では、出展ブース内のレイアウトも決まり、人員も選出されています。備品や幟・ポスター・看板などは、3回目なので準備もOK!
(左上)クリアファイルのデザイン校正中(左下)御城印の原版制作中(右)出来上がったお城EXPO限定御城印。黒地でカッコイイ。なんと、とても珍しい両面印刷!
この段階では、ブースで販売するお城EXPO限定御城印と、応援サポーターに就任している歴史シュミレーションゲーム「信長の野望」のキャラクター武将のクリアファイルを制作中。翌日、御城印の原版となるものを、ふくやま書道美術館の職員の方に書いてもらうそうです。「えっ!間に合うの⁈」って思いましたが、普段の忙しい仕事の合間に準備しているので大変です。
市役所内に展示中の、福山城初代藩主水野勝成の甲冑をブース内に出張展示する予定…と伺ったため、後日搬出の様子を見せていただくことに。しかし、搬出予定日前日にいただいたお電話によると、広島県知事・福山市長のコロナに関する会見などの内容に鑑み、職員の派遣中止が決定。甲冑も展示中止となり、福山城ブースにもコロナの影響が…しかし福山市出身で東京在住の方に当日の運営をお願いすることができ、そのままなんとか出展できることになりました。
まだ支給されたブース用の備品と送られてきた荷物があるだけの、更地の状態です
さあ、いよいよ本番です。開催前日の18日午後からブースの設営にとりかかります。福山市からは会場まで荷物がすでに届いています。梱包をほどいて決められたレイアウトどおりに配置していき、福山城ブースが完成! あとは、明日からの本番を待つばかり。
福山城ブースの完成! ホントは右側には水野勝成の甲冑が展示されるはずだったのに残念
初日の9時になると1階の城めぐり観光情報ゾーンに「最初のお客様が入城されました!」とアナウンスが入ります。各ブースに緊張が走り、お客様の来城を待ちます。
すぐに最初のお客様が到着。限定御城印が目当てという静岡からの若い男性の方。お話を聞いてみると、今日は各ブースを回ってお城EXPO限定御城印を集めてみるそうです。それからもひっきりなしに御城印やクリアファイルを購入するお客様が絶えません。主催者から「整理券を配ってないブースでも行列ができないように」と通達があったので気をつけていましたが、混んだのは最初の2時間位であとはとてもスムーズでした。
ブース内のスタッフは福山城築城400年記念ロゴマークの入った陣羽織を着用
御城印だけではなく、福山城に興味を持って来てくださるお城ファンの方も多くブースを訪ねて下さいました。「福山城行ったことありますよ!」「新幹線のホームから見るのがきれいですよね!」「まだ行ったことないんですが、行ってみたい!」など話してくださいます。なかには「東京に住んでいますが福山出身なんですよ」なんて方も。自分の生まれ故郷のお城にとても関心をお持ちのようでした。今、福山城天守は耐震補強工事中ですが、天守北面の鉄板も今回同時に復元される予定で、多くの方が興味を持ちこのパンフレットをお持ち帰りになっていました。
そして、福山城築城400年応援サポーターに就任している城郭ライターの萩原さちこさんがブースへご挨拶に来てくださいました。2022年8月28日に向けて、これからいろんなイベントが組まれていくと思います。お城ファンとしてもこれからとても楽しみな福山城になりそうです。
ブースの中にいると、とっても忙しいですが、たくさんの方々に出展しているお城のことを知ってもらえるし、マニアの方にお城の最新情報なども伝えることができるなど、とてもよい宣伝になるんだなと感じました。今年も御城印は大人気で、入場者数は去年より大幅に減少したにもかかわらず、前回を大幅に上回る枚数が出ていました。
そして、開催が終わり撤収作業に。各出展ブースのスタッフの皆様、2日間大変お疲れ様でした。私たちお城ファンもたくさんのお城の最新情報を楽しく集めることができました。今年のお城めぐりに役立てたいと思います。
今回は出展3回目の福山城ブースにお邪魔させていただきましたが、福山市のお城EXPO担当の方によると「お城に特化した大規模イベントなので反響は絶大なもの。市内や地方のイベントにも出向いてPR活動しますが、お城EXPOのほうが10倍、いや、100倍位の反響があると体で感じます!」とおっしゃってました。あと「他地域から来てくださるお城好きの方々から、意見や要望を直接お聞きできることもこれからのことに参考になります」と。それゆえの連続出展なのですね。
私たちお城ファンもお城EXPOの出展ブースは多ければ多いほど楽しめますし、情報量も増えて今後のお城めぐりに即、活かせます。今回はコロナの影響で出展を見合わせた自治体や団体もあり、ブースの数も少なく寂しく感じましたが、まずは早くコロナが収まることを祈ります。
その暁には、これから山城含めお城を有効活用していこうとされている各自治体や団体の方々も、お城EXPOへの出展などを検討されてみればと思います。もちろん、人員やお金・時間もかかりますが、このようにしてブースの数が増えてくると、お城EXPOや地元のお城への来城者も増えてくるはず。お城がもっともっとメジャー的な存在になってくることを願ってやみません。
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執筆・写真/城びとアンバサダー たけ◎曲輪衆(小野雅章)
※印写真は福山市役所文化振興課提供