2021/01/22
お城EXPO 2020 徹底ガイド&レポート 【イベントレポート】城びとアンバサダーが満喫!お城EXPO2020「2日目」参加レポート
新型コロナウイルス感染防止対策を徹底しながら2020年12月19日(土)・20日(日)に開催された「お城EXPO 2020」。人々の密集や会話がないという例年とは違った雰囲気ではあるものの、そこには確かにお城ファンたちが醸し出す“熱狂”がありました! 今回は、2日目に参加した城びとアンバサダーの「小城小次郎」さんが、初心者向けからマニア向けまでバラエティ豊かなお城EXPOのプログラム・展示・ブースの模様をレポートします。
お城EXPOが生み出す「熱狂」
雲一つない青空の下、例年より大きなスペース(パシフィコ横浜ノース)を活用してのお城EXPO(2日目)がスタートしました。それにしてもスペースの広いこと広いこと。
5年目を迎えたお城EXPOですが、感染リスクを避けるため、あるいは「密」を避けるために、来城を見送った方も多かったことと思います。筆者の周辺でも「今年で皆勤賞が途絶えてしまう」と嘆く声が多く聞かれました。
でもそこは、何といってもEXPOです。EXPOとはそもそも”EXPOSITION”の省略形で、EXPOSITIONとはすなわち博覧会のこと。博覧会とは「物品や資料などを集めて一般公開する催しのこと」(Wikipedia)なのだそう。インターネットという仮想空間の中で限りなく便利な情報共有手段を手にした私たちがそれでもお城EXPOに足を運ぶのは、仮想ではなく現実空間の中で、同好の士でなければ共感することのできない貴重な(マニアックな)情報やグッズを目の当たりにし、その興奮が人から人へと伝わって、やがて会場全体が熱狂の坩堝と化してゆく…そんな心地よい空間を共有できるからなのだと思います。
お城EXPOに行くとなんだかんだとたくさんの本やグッズを買い漁ってしまうのも、「だってEXPOだし」との言い訳が成り立つからに違いありません。お城EXPOで勢い余って散財してはため息をついている貴方、それがつまり「EXPOの熱狂」です。
コロナウィルスの猛威が終息の気配すら見せない中、お城EXPOは中止ではなく開催の道を選びました。EXPOならではの熱狂を演出する一方で感染防止対策を貫徹するために、運営サイドの皆様には例年とは比べ物にならないほどのプレッシャーがあったに違いありません。私が見る限り、感染防止のために考えられる、ありとあらゆる手が尽くされていたように感じられます。啓発ポスターの掲載もそのひとつ。これらのポスター、ちゃんと目に入ってくるだけでなく、お城EXPOならではのちょっと「くすっ」とさせる要素も織り込まれています。こうした仕掛け一つにも、恐らく十分な時間をかけての検討がなされたに違いありません。
城好きNo.1決定戦に参加してみた
話は変わりますが、筆者は今回、どうしても参加してみたいイベントがありました。それが、「日本城郭検定特別編『城好きNo.1決定戦』」。お城EXPOで行われていた「日本城郭検定」は結果発表が後日になってしまうという問題がありましたが、今回は嬉しい「当日結果発表」。これならドキドキ感も倍増です。かつて全国1位で日本城郭検定1級を突破したことのある筆者にとって、ここは改めてその実力を試すチャンス! これはもう、受験しないわけにはいかないでしょう。1位、狙いますよ(にやり)。
制限時間50分で、設問は100問。おいおい、ちょっと多すぎませんか?(笑)。レベルは準1級~4級の問題が散りばめられている感じでしょうか。9割くらいは解けたかな、という印象でしたが、他の受験者がみんな95点という可能性もあるわけですから、ここは午後の発表をどきどきしながら待つこととしましょう。結果は本編の後半で。
出展ブースでもマニアックな面白いクイズを見つけました。「戦国ワンダーランド 滋賀・びわ湖」が企画した、「滋賀県内に残る25のお城の写真の城名当てクイズ」。建物の写真はほんのわずかで、ほとんどの写真が石垣と土塁だけ。これを検索せずに解ける人は相当な変人でしょう。ちなみに25城のうち筆者が訪ねたことのあるお城は5、6しかありませんでした。うーん。こんなことなら宇佐山城くらいは訪ねておくべきだった…。
何はともあれ解いてみましょう。湖が写っている二つのお城は膳所城と坂本城、土塁の写真は甲賀のお城、建物があるのは長浜城と彦根城、あとは…石垣の写真ばっかり!
大苦戦の末の採点結果は25点満点中の23点という意外なほどの善戦となり、同時に筆者の変人ぶりを再確認する結果となりました。でも宇佐山城と小堤城山城という、時代の異なる二つのお城の石垣を見分けられなかったのは痛恨です。ほら、だからやっぱり宇佐山城に行っておけば…という言い訳はともかく、本気になって考えて、喜んで、悔しがりながら思ったことがあります。そう、これこそがEXPOの熱狂なんです。滋賀県さん、良い企画をありがとうございました。来年もまたやってください。今度は満点取ります(笑)。
初心者向けから専門家向けまで、バラエティに富んだプログラム
ここで、2日目のプログラムをざっとおさらいしておきましょう。
厳選プログラム5本のうち、中井均氏、加藤埋文氏、萩原さちこ氏や春風亭昇太師匠など、お城EXPOの「顔」とも呼べる方々のプログラムは初のオンライン方式でも視聴できることとなりました。
ワークショップやEXPOサロンでは、姫路城クイズ解説や彦根城絵図解説、熊本城講座、名古屋城豆知識講座など、メジャーなお城を掘り下げる企画が多数登場し、彦根城は”ひこにゃん”が、熊本城はいなもとかおり氏とともに”くまモン”がそれぞれ解説。残念ながら時間の関係でどちらも観覧は叶わなかったのですが、さぞやほっこりしたプログラムだったことでしょう。名古屋おもてなし武将隊の皆様は名古屋城講座やら演舞やらに八面六臂の大活躍。さすがは天下に名を馳せた武将の皆様、バイタリティーも人並み以上です。
セミナーは、新旧二つの天守台が同じ場所から発掘されて一躍「時の城」となった駿府城をはじめ、岡崎城や首里城など、特定の城郭に焦点を絞った専門的なテーマ発表が目立ちました。また、EXPOサロンでは「多古の山城」など、これまであまり注目を集めてこなかった地域のお城が登場したのも新しい動きかもしれません。お城が町おこしの一助になるということが次第に認知されてきた結果、「おらが町」のお城がいよいよEXPOの舞台に登場してきたということでしょう。
そういう意味では「多古の山城」、何としても観覧したかったのですが、時間が合わずこれも断念。ただ、講師の山城ガールむつみ氏は旧知の間柄ということもあり、幸いにも会場内で行き会うことができました。他にも各種イベントで講師を務められた方々とあちらこちらですれ違ったりご挨拶したり。こうした距離感の近さも、現実空間で行われるEXPOの魅力でしょう。
お城シアターやイベントステージのプログラムもぎっしり。ただし座席間隔が広いのはもちろんのこと、一定時間で完全退出、30分以上の休憩付きという徹底した感染予防対策にも抜かりがありませんでした。
まだまだあるぞ、なんでもあるぞ
ステージやスクリーンを用いたプログラムの他にも、様々な企画が盛りだくさん。恒例のフォトコンテストもスライドショー形式で上映され、テーマ展示「城郭の役割‐実用と表象‐」大パノラマ模型展の模型は何と赤色立体の日本地図の上に乗っかりました。全国を俯瞰するもよし、天守の後ろに天守を写すもよし。実物では絶対に実現できない、ここだけのアングルで写真を撮ることができるわけです。試しに国宝5城の天守を一枚の写真に収めてみたり、名古屋城の背後に姫路城を入れたりして、遊んでみました。
日本100名城・続日本100名城パネル展は、いつになくゆったりと200城を拝むことができます。ここで筆者はかつてテレビ番組で対戦した「お城くん」と再会。共演させて頂いたのは2年近く前ですが、彼は今や各局のお城番組に必ずと言ってよいほど声がかかる売れっ子に成長しました。折角なので記念写真をということで、「諏訪原城」のパネルの前で一枚。かつてお城くんと一緒に諏訪原城を訪れたのは、筆者にとってもよい思い出です。
城めぐり観光情報ゾーンは例年より少なくなったかな?という印象です。目に付いたのは「郡山城下の土管」と「岡豊城の文字瓦」。郡山城下の土管は、江戸時代に作られ、つい最近まで現役の下水管として使用されていた土管が発掘されたという新聞記事の展示です。
また、岡豊城の文字瓦も現物が展示されていました。関係者の方によれば「現物を持参したブースはなかなかないのではないか」とのこと。確かにこれまでのお城EXPOでも、前年の「大坂冬の陣屏風」や「金箔瓦」のように企画物としての現物展示はあっても、ブースでの現物展示は少なかったかもしれません。最新の発掘成果や貴重な現物を一度に目にすることができる場所として、お城EXPOの新たな可能性を発見したような気がしました。
「城の自由研究コンテスト優秀作品展」で驚いたのは、その質の高さ。仮説検証プロセスをしっかりと踏まえた本格的な研究が目立ちました。パネルが少なく「論文」が多くなったのは、関係者の方によればどうやら「コロナ禍の影響で外出ができず、写真に頼らず研究を行った結果」なのだとか。困難な環境の中で工夫を凝らした結果だったのですね。小中学生の意欲的な取り組みには頭が下がる思いです。
お城No.1決定戦の結果は?
さあ、いよいよお城No.1決定戦の結果発表。日本城郭検定のブースへと急ぎます。
結果は…第1位!
やった!やりました!…やっちまいました!(爆)
いつの間にか現れた、これまたテレビで共演した盟友(ライバル?)のいなもとかおり氏や、たまたま近くで「北条五代を大河ドラマに」の署名活動を行っていらっしゃった小田原城の諏訪間順館長にも祝福して頂き、栄えある表彰式では加藤埋文先生と名古屋おもてなし武将隊・前田慶次氏、それに日本城郭検定の公式キャラクター”シロッぷ”とともに壇上に立つという栄誉にも服しました。いやもう、ただただ単純に嬉しかった!
…え?何?大人げない?お前が出ちゃだめだろう?
…そ、それはそうかも(笑)。
でも…ですね。やっぱりEXPOの本質は「熱狂」にあると思います。当代最高のものが集まり、披露し、唸り、楽しむ。仮想ではなく、現実の空間の中で、同じ場所で同じ空気を共感し、熱狂する。そういう場をEXPOと呼ぶのであれば、筆者のような一般参加者が全力でぶつかることができるのも、お城EXPOがあってこそのこと。これからもお城EXPOは続いていかなければならないと思います。すべてのお城マニア・お城ファンと、お城の魅力にいまだ気付かぬ多くの方のためにも。
2021年はもっと自由な空気の中で、あの熱狂を大勢の方と味わえることを切に願います。
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執筆・写真:小城小次郎
城びとアンバサダー/9歳で城を始めた「城やり人」/日本城郭検定1級(2016年全国1位)/TV東京系「TVチャンピオン極」ほか出演